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【AFTER GAME】 2020-21開幕節 群馬戦(10/3-4)~チームはまだ発展途上。まずは戦略の徹底を~

取材・文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE

2020-21シーズンのBリーグが開幕を迎えた。茨城ロボッツは敵地で群馬クレインサンダーズと激突。いきなりプレーオフや優勝を争うライバルと目されるチームとの対戦となったが、結果は2連敗。重苦しい滑り出しとなってしまった。しかし、試合全体を見ていくとロボッツに全く良いところが無かったわけではない。ただ、今後シーズン中に幾度と訪れるであろう厳しい試合を勝ち切るに当たって、チームとして取り組むべき課題がはっきりしてきたことも事実である。開幕節の2戦から見えてきたのは、「unselfish」と「tough」という、リチャード・グレスマンヘッドコーチ(HC)が掲げる今シーズンの戦略そのものだった。

2戦ともに掴みかけた流れ

開幕節の2戦を通じて確実に言えることは、群馬に対して、手も足も出ずに敗れたというわけではないということ。ロボッツは確実に見せ場を作り、優勝候補の群馬に食い下がった。共通していたのは、ディフェンスから攻撃への流れをしっかりと作れていたことだ。ポイントガードが持ち前のスピードで相手の自由を奪い、苦し紛れのパスミスを誘った。また、#15マーク・トラソリーニを中心にビッグマンたちがディフェンスリバウンドも奪い、攻撃へのリズムも作った。

これに応える形で、オフェンスも躍動した。開幕戦(10/3)では、インサイドを塞がれたと見るや、#2福澤晃平を中心にアウトサイドでシューター陣が3ポイントを沈めていく。第2クォーターでは、計5本の3ポイントシュートを沈め、一時4点差まで迫った。日曜日の第2戦では、第1クォーターからパスワークで相手を翻弄し、インサイドでも#6小林大祐のフェイドアウェイが決まるなど、一時はリードを奪う展開となった。

だが、開幕戦の試合後、福澤が「自分たちでオフェンスの形を崩してしまった」という言葉を残したように、ロボッツは2試合ともに掴みかけた流れを手放してしまった。開幕戦では、第3クォーターでパスワークが重くなり、外側でボールを動かしてもシュートをなかなか沈められない状況に。特に3ポイントシュートが全く決まらず、7本を放って成功なし。ディフェンスリバウンドにおいても9本を奪われたロボッツは、全くリズムを掴めないまま、このクォーターで大幅なリードを許した。

第2戦では、第2クォーターの攻撃で問題を抱えた。クォーター序盤は守備が機能し、相手にも得点を許さない展開に持ち込んだ。しかしその後、チャンスを掴んでも、自滅とも言えるオフェンスファウルを犯して相手にボールを渡してしまい、十分な攻撃時間を作ることができなかった。結果として12連続失点となり、あっという間にビハインドの展開となってしまった。

試合後の会見で、福澤や#25平尾充庸は、流れを失った理由を「ボールが止まり、個で攻める展開となった」と述べた。この状況を打開するキーワードは、「unselfish」に他ならないだろう。その言葉通り利己的にならず、「渡せば誰かが決めてくれる」ことを信じて、パスを出す。その結果、一点でボールが止まらず、隙を生み出すこともできる。グレスマンHCもボールと選手の連動を課題として掲げているだけに、今後シーズンが進む中での改善を期待したいところだ。

タフショット、3ポイント…「優勝候補」群馬に突きつけられた差

一方で、2戦ともに大きな課題となったのが、タフショットや3ポイントシュートの精度だ。相手にディフェンスを固められ、打たされるような展開になったとしても着実に得点を奪うという点において、群馬との差は明らかだった。特に際立ったのが、3ポイントの成功率だ。2戦とも、3ポイントシュートの試投数ではロボッツが上回ったが、成功数・成功率では群馬が上回った。また、難しいシュートが入ることで、相手を気持ちの面で乗せてしまったことも否めない。結果的に、開幕戦ではチーム全体で13本の3ポイントシュートを被弾。第2戦では群馬の#13笠井康平に4本、#30山崎稜には5本の3ポイントを決められ、大量得点を許す格好となった。また、ゴール下の密集や、厳しいシュートチェックの中においても、群馬は着実に得点を決め、特に#3マイケル・パーカーには開幕戦でダブルダブルを許した。こうした「泥臭さ」の差も、点差に現れたのではないだろうか。

ロボッツにおいて光ったのが、トラソリーニであった。開幕戦では最終第4クォーターに連続でバスケットカウントを記録。第2戦でもペイントエリアで体を張り、20得点を記録した。一方で苦しんだのが、#31アブドゥーラ・クウソーである。ゴール下で体を張り、リバウンドを積極的に奪うものの、なかなか得点につながらない。これまでの彼の「黄金パターン」が通用しなかったことが、彼の苦しさを深めたのではないだろうか。ただ、そこで焦れて個の能力に走っては、「unselfish」に反する。得点を決められないときには、一種の割り切りも必要で、ファウルを誘う、体を当てに行くことに徹することも時には必要だろう。直接得点に結びつくプレーではないかもしれないが、強度の高いプレーが、得点へのチャンスを作り出すことにつながるし、失点を減らすことにもつながる。ここにおいては、グレスマンHCの掲げるもう一つのキーワード「tough」であることが試されている。昇格を争うライバルたちも力をつけつつある今シーズン、恐らく全てが満足に進む戦いはそう多くないだろう。戦いで最終的に勝敗を分けるのは、タフさに他ならないのではないだろうか。

今回の対戦で敗れた群馬とは、シーズンの途中にまだ4回の対戦が残されていて、うち2戦はシーズン最終盤の4月に待ち受けている。この4戦のうち、一体いくつを勝ち取れるか。「B2優勝・B1昇格」という悲願を果たすには、上位チームとの直接の星取りが重要度を増す。今回の敗戦に落ち込んでいる暇など無く、逆襲の時に向けて、準備を進めなくてはならない。開幕戦で明らかになった、「unselfish」「tough」という課題。改めてチームとして習熟を深め、勝利への近道としていきたい。

シューター陣を断って勝利を目指せ

ホーム開幕節となる第2節の相手は、アースフレンズ東京Z。昨シーズンB2中地区最下位に終わったが、B1の京都ハンナリーズから#10岡田優介、#17綿貫瞬を獲得するなど、積極的に補強を行ってきた。ただ、東京Zには他にも止めなくてはならない選手がいる。#24髙木慎哉だ。昨シーズン、特別指定選手として東京Zに加入すると、3ポイントシュートを武器に得点を量産。今シーズンの開幕節では合わせて8本の3ポイントを決め、B2リーグを代表する長距離砲に名を連ねようとしている。ロボッツとしては、岡田、髙木に対するシュートチェックを徹底し、相手の得点源を断っていきたい。

一方、攻撃陣から見ると、シューター対決は望むところ。福澤や#13中村功平、#27眞庭城聖といった日本人選手だけでなく、トラソリーニや#11チェハーレス・タプスコットも積極的に3ポイントを狙えるだけの力を持っている。一本一本のシュートを確実に沈めることで、勝利はグッと近くなるだろう。

開幕ダッシュとはならなかったロボッツにとって、ホーム開幕節は「第2のスタート」となる。アダストリアみとアリーナでしっかりとロボッツブースターに勝利を届けることで、シーズンの再出発を図りたい。

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