【AFTER GAME】 2020-21第26節 熊本戦(4/07)~立ち直り、帰ってきた戦士たち~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

新型コロナウイルスの影響で、一時的にチーム活動を止めたロボッツ。チーム活動再開から4日目にして試合に挑むという強行軍で、ホームに熊本ヴォルターズを迎えた。強度や試合勘など、様々な不安がよぎったものの、蓋を開けてみればロボッツは序盤から力強いゲーム運びを見せつけた。3ポイントシュートをラッシュのように浴びせ、後半からは度重なるペイントタッチで効率よく得点を重ね、107-71で大勝。復帰初戦を見事に飾ってみせた。鮮やかなまでの復活劇の裏に何が隠されていたのか、探っていくことにしたい。

「Unselfish」に立ち返ったオフェンス

2週間の行動制限を経て、どのような試合運びとなるのか。直前にインタビューに答えた選手たちも不安を明かしたほか、リチャード・グレスマンHCも「どういったレベルのパフォーマンスになるか、想像もつかない」という言葉を残すほどだった。しかし、それは試合開始とともに杞憂となって吹き飛んでしまう。

ロボッツは序盤、アウトサイドを中心として、ひたすらにボールを動かし続けた。無理な体勢になった段階で、次の選手へ、またその次の選手へと、ボールをつないでいく。その中でも、シュートチャンスの見極めを続け、オープンの体勢ができるや否や、積極的にシュートを打ち込む。ただ、闇雲にボールを回すのではなく、「フィニッシュにつなぐためのパスワーク」だった。

#6小林大祐の先制攻撃を皮切りに、#25平尾充庸、#2福澤晃平が立て続けに3ポイントを沈める。第1クォーター、6本の3ポイントシュートを決めたロボッツは、あっという間に試合の主導権を握った。第2クォーターではさらに攻勢を強め、7本の3ポイントシュートで得点を重ねたロボッツ。この力強さはどこに隠されていたのか、福澤は試合後にこう振り返る。

「こんなに3ポイントが入るというのはなかなかないというくらい入りました。逆に2週間が空いたことでみんな思い切りよくバスケットを楽しめた、というのもあったのかなと思います。」

後半になっても、ロボッツのオフェンスの激しさは収まることはなかった。前半はやや静かともいうべき状態だった#11チェハーレス・タプスコットや#15マーク・トラソリーニが、積極的にペイントエリアへのアタックを仕掛ける。これに呼応するかのように、平尾や福澤もペリメーターエリアから積極的にシュートを仕掛け、得点へとつなげていった。

結果、誰かが無理に打開を図ろうとする場面は、この試合ほとんど無く、今季のロボッツが掲げる柱、「アップテンポ」「アンセルフィッシュ」「タフネス」の3つを、全員が体現してみせた。グレスマンHCは、試合を振り返って、こんなコメントを残している。

「本当に2週間の活動休止を感じさせないプレーができたと思います。練習をしていく中で良いプレーができるという兆しのようなものはありました。もちろんシュートの確率がここまで高いということは練習でもなかったのですが、非常に良い予兆があったのかなと思います。これだけ高確率にシュートを決めることができたのも、選手のアンセルフィッシュさというのがよく出ていたのではないでしょうか。」

盤石とも言うべきオフェンスの状態を、コートに立っていた福澤はこう表した。

「不安とかを払拭するぐらいアグレッシブにプレーができたので、そういったところがうまくいったのかなと思います。バスケットボールをしたいという思い、みなさんの前に帰ってきて試合ができたっていうのは選手全員楽しみにしていたことですし、その気持ちが前面に出た試合だったと思います。」

最終的には、5人が2桁得点を記録し、ベンチ入り12人中10人が得点。さらに、試合を通した3ポイントの成功数「19」は、ロボッツのチーム新記録であり、B2の全体でも歴代2位タイというめでたい記録までついてきた。再開初戦にして、これだけ手数の豊富のオフェンスを見せられたことは、朗報というほかない内容だったのではないだろうか。

思い切りの良さ、寄せの早さは鈍らず

一方で、ロボッツは序盤から守備の強度も高かった。熊本はスターターに#3ファイサンバと#30イバン・ラベネルを起用し、時折#1シャヒード・デイビスや#27ウィタカケンタらを織り交ぜたビッグラインアップでロボッツに襲いかかったが、ロボッツはこれにひるむことはなかった。ロボッツのスターター陣では#31アブドゥーラ・クウソー、ベンチメンバーでは#4小寺ハミルトンゲイリーが、決して押し負けることなく最後の砦としてラベネルに対峙した一方で、ボールの出し所に向けた積極的なディナイディフェンスを展開し、線でつながった攻撃をさせない。直前の試合でリーグ記録となる1試合19アシストを記録した#11石川海斗を、半ば孤立させるような状態に追い込んだ寄せの早さ、勝負の思い切りの良さは、全く鈍っていなかった。福澤も、「立ち上がりからしっかりディフェンスをやる、いいバスケットができた」と、手応えを振り返る。

ディフェンスにおいてはさらに、#14髙橋祐二や#29鶴巻啓太の力強さも見事だった。特に3月の対戦の際に石川を抑えきった鶴巻は、今回の対戦でも躍動。これまではフォワード陣を筆頭に「点取り屋」を抑えてきた彼だが、熊本戦で石川に見せたディフェンス能力は、今後もスピードやパスセンスを売りにするガードの選手と相対する際に、大きなオプションとなり得ることを示した。3月の対戦後、グレスマンHCが「鶴巻は守りで優位性を作れる選手」と評したその働きを、これからも存分に発揮してほしいところだ。

スタッツを見ても、ロボッツのディフェンスが非常に「動いていた」ことが分かる。それが特に表れているだろう部分が、ファウル数だ。終盤にややファウルがかさんだ#27眞庭城聖が3つの個人ファウルを記録したのが最多。B2全体で最少のファウル数というディフェンスも、しっかりと結果を残してみせた。

今節のようにシュートタッチがよい試合ならなおのこと、試合を優位に進めるにはディフェンスの強度が必要となってくる。シュートの応酬ではなく、「相手を一本止めて引き離す」ということを大切にしつつ、ここからの終盤戦を走りきってもらいたいところだ。

さらに強度を上げ、再び勝利へ突き進め

ロボッツの次の戦いは、すぐさまやってくる。次節は、山形ワイヴァンズとのアウェーゲームに臨むことになる。ほとんど連戦ともいうべきスケジュールなだけに、体を休めるのも大事だが、練習からの強度を着実に上げて、相手を打ち倒していかなくてはならない。山形は、プレーオフ争いの最後の椅子を奪い取るべく、猛チャージをかけようとしているところ。ロボッツとしてはきっちり山形を叩いて、上位の足固めをしなくてはならない。グレスマンHCも、終盤戦については「ここからの数週間、プレーオフに向けてチームの高められる部分を伸ばしていきたい」と、抱負を語っている。

山形は#0アンドリュー・ランダルを中心に、外国籍選手のパフォーマンスが優れている。#22ランス・グルボーンや#33キース・クラントンなど、プレースタイルもそれぞれ違うため、「誰かを抑えればそれでOK」というわけではないことを、しっかりと認識して挑みたい。

そうしたことを踏まえ、ロボッツのキーマンとなるであろう存在は、#11チェハーレス・タプスコットだ。決して上背に恵まれていなくともリバウンドを奪いに行く姿勢から、攻撃面での多彩な役割を含め、今シーズンのロボッツを大いに支えてきたのは明らか。彼が攻守両面で山形を撹乱することで、ロボッツの勝利は近づいてくるだろう。

シーズンは残り10試合少々を残すまでとなり、ロボッツにとって初めてとなる、プレーオフの舞台が近づいている。ここで山形に連取できるかどうかが、そのままプレーオフまでの道のりを左右するといっても過言ではない。飽くなき執念で勝利だけを目指し、この週末を戦ってほしい。

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