運営ディレクターが語る『アダストリアみとアリーナ』で感じてもらいたいこと

現在の茨城ロボッツは、読み切りでは語り尽くせない苦節・逆境を乗り越えてきた4人のメンバーがベースになっている。

そのうちの一人、興行の運営全般をになっているのがディレクターの渡邊大輔だ。

渡邊は、元教師という異色の経歴を持ち、先行き不透明な当時の茨城ロボッツに自ら飛び込んできた人物である。今回は『アダストリアみとアリーナ』での興行に向けて渡邊が活動してきた内容や彼の心境を紹介していく。

茨城ロボッツはホーム会場を4月6日より『アダストリアみとアリーナ』へと変える。

ブースターの皆さんと育ててきたつくばカピオアリーナ、青柳公園市民体育館から移転するその心境に迫る。

渡邊大輔
興行ディレクター。元教師。中学からバスケットボールを始め、教師時代はバスケット部の顧問を務める。茨城ロボッツには、ボランティアとして参加し、2015年入社となる。現在は、会場運営責任者としてホームゲームでの設営・運営全般業務を担う。

『白紙』となった日から水戸での歴史が始まる

茨城ロボッツの本拠地であったつくば市から水戸市に変わったのが2016年のこと。

当時、新たに発足するB.LEAGUE参入に向けて3,000人収容の施設をホーム会場にすることが必須の状況であった茨城ロボッツ。つくば市では5,000人収容できる体育館の建設予定があったのだが、住民投票の結果白紙となったことにより、B.LEAGUEへの参入が危ぶまれる危機にあった。

「B1昇格の条件のひとつに、5,000人を収容できる体育館がホーム会場であるというものがあります。なんとしても、つくば市に5,000人を収容できる体育館を作りたいと署名活動をしたのですが、願いは叶いませんでした。その月の月末までに、ホーム会場をリーグに申請しなければいけなかったのですが、新体育館の建設が白紙になってしまったのはその月の頭のことでした」

想像していなかった事態が起き、ひと月もない中で茨城県内に5,000人収容が可能な施設を探すという窮地に立たされた茨城ロボッツ。時を同じくして当時水戸市では、2019年に開催される「いきいき茨城ゆめ国体」に伴う施設整備で、東町運動公園にあった体育館を建て替えている最中だった。

「それが4月6日に試合をする『アダストリアみとアリーナ』なんです。B2の資格でも3,000人を収容できる体育館が必要です。その条件をクリアできたのが唯一、青柳公園体育館(現・リリーアリーナMITO。以降、青柳)でした。B1資格の5,000人を収容出来る体育館とB2資格の3,000人を収容できる体育館。この2つの条件を、ひと月もない中で山谷さんが水戸市と話をまとめたんです」

新しい本拠地が水戸市へと変わる。ということは、これまで興行にあたり行っていた会場設営・運営方法にも少なからずとも影響があるということにある。当時、新しい本拠地移転に向けてひと月もない中で、どのようにしてオペレーションを設計していったのだろうか。

「前のシーズンに3節ほど青柳でゲームを開催していたので、全くのゼロからのスタートではありませんでした。オペレーションの予測は立っていましたし、アップデートで済んだかたちです」

渡邊は当たり前のように語るが、本拠地移転には多くの苦労があったに違いない。アップデートの中には、小さな改善要望がいくつかあった。

「当初青柳は土足禁止でした。しかし、プロスポーツの興行を行う施設でお客様が一人一人、靴を脱いで入場するのは現実的ではありません。土足でも会場に入れるようにするには…、あれもこれもといった小さな問題点を、水戸市と施設管理者の方と話し合い、解決していきました」

青柳公園体育館からアダストリアみとアリーナへ

アダストリアみとアリーナでの練習を眺める渡邊と山谷

約三年間、茨城ロボッツのホームとして、チームを支えてきた青柳公園体育館。
急な本拠地の移転、色々な方の働きかけから興行ができるようになった青柳公園体育館だが、3月27日が最後のゲームとなった(取材は3月20日)。当時、来場者が1,000人にも満たないことも珍しくなかった青柳公園体育館も、今では2,000人を超えるほどの来場者を集客できるまでに育っていた。青柳公園体育館から離れる寂しさというものは計り知れない。

「青柳がホームになってから三年も経つので、寂しさはありますね。色々と思い出がありますから。青柳を本拠地にする前の一番最初の週の日曜日に勝つことが出来たのですが、その頃は過重労働気味だったこともあり(笑)、勝った負けたということで感情が揺さぶられることはありませんでしたね。金曜日に会場の準備をしていると、『自宅で寝たら起きられないな』と思い、スーツを取りに帰ってすぐに青柳へ戻り、駐車場の車中で2時間ぐらい寝るといったことをしていましたよ(笑)」

たった三年前、興行前は睡眠時間を削り、会場設営・運営を行っていたハードな時代だった。思い出深い青柳公園体育館から、新しいホームとなる『アダストリアみとアリーナ』はディレクターとして希望している通りのホームアリーナに完成したという。

「水戸市が大変協力してくださいました。ロボッツのアリーナとしての目指すべきビジョンをお伝えし、何度も話し合いを重ね、バスケットゴールや必要な備品の選定といった細かい部分まで、こちらの要望に対して柔軟に対応していただきました」

一般的に、行政主導の施設は一般利用を目的に作られるケースが多く、『プロスポーツの観戦施設』という視点では協力が難しいケースが多いと聞く。その点からも、今回のアダストリアみとアリーナの立ち上げにおいて、水戸市側の協力は茨城ロボッツにおいても大きな追い風になっていると同時に、期待してくださっていることを強く感じる。

「この規模のアリーナは、ロボッツとしては経験したことがありません。また、どこにでもある規模のアリーナではないので、お客さんが入った時に『うわ、すごい!』って感動、高揚してもらえるような空間は創っていきたいと思っています」

4月6日、『アダストリアみとアリーナ』からはじまる新しい歴史。
渡邊のこだわり・情熱が詰まったホームゲームを是非会場で感じていただきたいです。

新しいホームはどのように育っていくのか。

チームだけで育てていけるものではありません。
『アダストリアみとアリーナ』をブースター、水戸市や茨城県の皆さんと一緒に『特別な場所』へと育てていければと願っています。

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