4月6日、GM 上原和人の目に「県スポ」はどのように映ったのか<後編>

前編に引き続き、『アダストリアみとアリーナ』のこけら落としを振り返るGM上原和人。
4月6日当日のチーム内の動き、そして最終節への想いについて聞いてみた。

上原和人
<バスケットボールの主なプレー経歴>
小学校4年生でバスケットに出会い、ミニバスでは全国大会3位。
中学時代には茨城県選抜として、全国準優勝を経験。土浦日本大学高等学校、国士舘大学を経て、東京日産自動車販売の実業団チーム『東京日産ブルーファルコン』所属。日産自動車に就労しながら『大塚商会アルファーズ』へ所属。茨城ロボッツGMに就任後は、チームマネジメントとスポンサー営業責任者を兼務し領域を超えて活躍。

あの瞬間を選手はどのように感じたのか

黎明期からチームを支える上原は選手からの信頼も厚い。
選手たちはあの日何を感じ、上原にはどのように見えたのか。

「まずはこの環境を創ってくださったブースターとスタッフに感謝していました。前半が終わった時に眞庭選手と話した時は『やっぱり気持ち良い』と。1つのシュートが入った時の声援のパワーが違うと話していました。同時に...固くなってしまったのかな。『必ずホームは守ろう』と私も選手も常に言い合っているので、新しいホームアリーナのこけら落としという一生に一度しかない状況にプレッシャーを感じてしまったのかなと感じています。自分たちのペースに巻き込むためにも岩下HCは『最初の3分を大切にしよう』と強く言っていましたが、それを体現できなかった」

この光景、この悔しさを忘れないと誓ったあの日。

6日に敗戦したことで7日にロボッツが負けると、他の会場の状況次第では群馬の優勝が決まる可能性があった。

「Bリーグ参入1年目には、群馬さんに青柳で優勝を決められてしまった経験があります。本当にいけないことではあるのですが、悔しさのあまりこっそりモノに当たってしまって…。試合後、山谷さんに『僕はこの光景、この悔しさを絶対忘れない』と誓いました。二の舞を演じるわけにはいかないのに、自分たちで阻止できなかったことは悔しいです」

結果的に、群馬の優勝は『アダストリアみとアリーナ』で決まることはなかったが、上原にとっては様々な葛藤があっただろう。
新アリーナの開幕。そのスタートを勝利で飾れなかった悔しさは想像に難くない。

仲間同士でぶつかること、ブースターやスポンサーからの苦言や指摘はあるべき姿

「演出も含めて試合前にあれだけ盛り上がる空間を創ってくれました。必然と盛り上がれる空間があるからこそ、選手もブースターさん、スポンサーも感情的になります」

GMとして練習だけでなく試合中も選手とともに行動することが多い上原。
また、クラブの役員としてブースターやスポンサーから熱い声援と時に厳しい指摘を受けるのも上原だ。

「新アリーナで2連敗したことで、ブースターさんからも叱咤激励を頂きましたが、それはあるべき姿だと思います。プロ野球やJリーグもヤジがありますよね。『ブースターやスポンサーがチームを育てる』というのは本当だと思っており、ロボッツもそういう場面は増えています。一方で、選手も期待に応えようと取り組んでいる。ブースターのため、スポンサーのため、スタッフのためにも自分たちが返せるのはバスケしかないという声が自然と出てきてくるようになっています。だからこそ、敗戦の時にどんな声をかければ良いかは私自身も考えています」

5,041人という超満員の会場。
アドレナリンが高まっていたのは選手も同様だ。
そんな時にGMとしての上原はチームとどう向き合うのか。

「選手の意見がぶつかり合うことは良いことなんです。ただそれは練習中にすべきで、試合中に味方のプレーや審判の判定などに向かってしまうのは間違っています。相手と戦わず身内と戦ってしまっている姿をブースターはすばやく察知します。指摘を受けるのはそういうときです。そういう時こそ進むべき方向に舵を切り、雰囲気を整えるのがコーチや私の仕事だと思います。ロボッツ1年目の時に、青島心(2016-17シーズンに在籍)という選手がいました。彼は本当にアツかった。練習中から熱くて、試合は必ず相手と戦っている。チームメイトと練習中に何度もぶつかりそうになりましたが、それぐらい本気でやっていることだと思います」

プロとして残りの2試合にどう臨むべきか

アダストリアみとアリーナでの初勝利。
そして最終戦を勝って終わりたいというのは選手はじめブースター、スタッフ全員の願いだ。
最後の2試合において、上原が求めるものとは。

「プロである以上、目の前の勝利を追求するものだと思っています。消化ゲームなんてものはなく、試合の中でチームや選手の成長がなければいけません。残り2試合は、チームとしても個人としても、より強く勝利を追求して成長を実感して欲しいと思っています。岩下HCとも話しましたが、最初の頃はお客さんが200−300人でした。入ったとしても500人で、1,000人もお客さまが来てくれれば驚いていたのが、ここ数年は、2000人の来場が無い日は少ないなと感じるようになりました。ブースターさんはロボッツの進化、成長に期待してくださっています。近い将来5000人が当たり前になるように努力しないといけない」

シーズン最後のホーム2戦は、必ず良い結果でシーズンを終わらせる。
上原の決意は固い。

「近い将来、『あの時があるから今があるんだよね』って言いながらみんなで飲みたいですね」

上原は既に新たな目標を見据え走り出している。
5,041人、一人ひとりの心の中に刻まれた4.6の記憶。
自分たちが進化することで、ともに新しい歴史を築いていきたい。

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