キャプテン決定の舞台裏、選手たちが持った「責任」

今季のロボッツにおける、もう一つのトピックが、新キャプテンの誕生である。2017-18シーズンから3季にわたって務めてきた眞庭城聖に替わり、今季、平尾充庸がキャプテンに就任した。昨季のキャプテン発表は7月14日。今季は8月13日と、実に1ヶ月の開きが存在する。キャプテン決定の裏に、何があったのか、上原が明かす。

「7月に行われた新体制発表会見の時に、『近日中に決めます』なんて言いましたが、HCの考えに寄り添える人とか、キャラクターを含めてもう少し時間を掛けたいというのがありました。なのでまず、選手みんなの前で『キャプテンをやりたい人は名乗り出てくれ』と伝えました。(バイスキャプテンの)福澤に関しても、『そういう責任を持ちたい』ということで指名しました。平尾はそのときみんなの前では言わなかったんですけど、『僕が責任を持って務めたい』と。」

キャプテン決定までの間には、チームスタッフのミーティングの中でも「キャプテンの選出状況」というのが議題に挙がっていたという。ただ、ロボッツのキャプテンとは、非常に注目される立場。ある種デリケートな問題もはらむだけに、段階を踏んで、上原が説明できる部分は、可能な限り説明を尽くした。
気になるのが、前任のキャプテンだった眞庭の存在である。上原曰く、眞庭は「年下の選手がキャプテンを務めても、それをサポートすることはできる」と、眞庭自身が前向きに捉えていたと言う。また、それ以上に大事なことを、上原自身もしっかりと伝えてくれた。

「眞庭が『ロボッツの顔』というのは変わりませんので。」

新キャプテンのもと、練習を重ねるロボッツ。上原は、「チームは変わった」と感じている。

「(平尾は)いつも積極的に声を出していたんですよ。さらに、言うタイミングとか、もう目の色が違って『本当にチームのためを思って言っているな』『上辺だけじゃないな』と。雰囲気をなんとかしようと言ったこともあると思うし、おちゃらけているところもあったんですけど、そういうのががらりと変わりました。平尾は広島(ドラゴンフライズ)時代もキャプテンをやっていて、結構苦い思い出もあるみたいなんですけど、それでもやりたいと。平尾も覚悟を持ってキャプテンを務めています。」

制限されている状況で、僕もできる限りの協力を

コロナ禍がまだ明ける気配の無い中迎える、今年のBリーグ。U-15など、未来の選手たちの育成にも携わる上原は、その異常さを感じ取っている。

「プロの試合だけでなく、自分の子どもがやっているバスケの試合なのに保護者が体育館には入れない。これは異常ですよね。バスケットにとって、通常が通常じゃない状況です。」

だからこそ、上原はGMとして、チームの活動を事細かに伝えようとすることを選んだ。

「僕らができることと言えば、バスケットしかない。僕は今まであまり表に出てなかったんですけど、茨城で生まれ育ってきたので、僕にしか分からないことがたくさんあるんじゃないかと思いますし。地元の人間がバスケットの編成、GMやってるんだなというのを。大泉洋さんがやっていた『ノーサイド・ゲーム』のような。あれも地域の人たちと進んでいくと言う話。あんなにうまくいかないですが(笑)。」
「(コロナで諸々の活動が)制限されているからこそ、みんな知恵を絞っていると思うので、そこは僕も一緒に協力してやっていきたい。僕は最大の裏方であろうと思っていて、草の根活動とかもオープンにして、『チームってこういうものなんですよ』というのは、発信していきたいです。」

そして、改めて地元を盛り上げていくためにも、「勝つこと」を明確に目指すとした。

「やっぱりスポーツが盛り上がると、地域が盛り上がると思うので、そこに直結するのは勝利だと思うんですね。勝ってまず目立つこと。そこで、『やっぱり地域にプロバスケットボールチームがあるとなんかいいよね』となってくれると思うんです。熱を持って選手の後押しをしてくれるっていう、今まで通りの応援じゃなく、バスケットLIVEでの観戦など、新たなバスケットの見方で、ロボッツに興味を持ってもらう。そのためには、僕らが開幕までしっかり準備をして、開幕と同時に勝利という結果をブースターに見せる。『がんばるので応援してください』ではなく、『勝つので、後押ししてください』というスタイルです。勝利で応援してもらった人たちにちゃんと還元をする。もしかしたら一番インパクトに残るシーズンになるかもしれないので、活動が制限されて『あのときはこういうシーズンだったよね』と言う中で、僕らが昇格する。チームの歴史としてそれを達成できるようにしたいです。チームが強いというだけではそれは実現しないと思うので、フロントも、スポンサーも強く、みんなが強い、というシーズンにしていきます。」

試合や開幕ではなく、その場での「勝利」への準備を進めるロボッツ。ブースターとともに歓喜の瞬間を迎えるという目標に向けて、上原もその一員として戦う決意を固めている。困難に打ち勝って、「みんなが強い」チームで昇格を掴み取るべく、歩みを進めていく。

上原和人

上原和人 Kazuto Uehara

1979年6月26日、茨城県出身。小学校4年生でバスケットに出会い、ミニバスでは全国大会3位。
中学時代には茨城県選抜として、全国準優勝を経験。土浦日本大学高等学校、国士舘大学を経て、東京日産自動車販売の実業団チーム『東京日産ブルーファルコン』所属。日産自動車に就労しながら『大塚商会アルファーズ』へ所属。現役引退後、茨城ロボッツGMに就任。チームマネジメントを行う傍ら、スポンサー営業責任者を兼務し領域を超えて活躍。2020-21シーズンよりGM専任となる。

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