歓喜のために「歯を食いしばって」

「B2優勝」、「B1昇格」。これまで新たなシーズンが到来するたびに、ロボッツに関わる面々が口をそろえて目標にしてきた言葉である。しかし、現実には今年こそ、今年こそと言いながら、達成することはできていない。「今季こそ、目標を実現するためには」。ここにおいても、平尾は「覚悟」という言葉を口にする。

「今シーズンは必ずB2優勝B1昇格しなきゃいけないと思っている。そういった面でも歯を食いしばって、自分自身がみんなを背負って戦わなければいけないという覚悟をしっかり持っていければと考えています。」

その「覚悟」は、今季チームを率いるリチャード・グレスマン氏の「哲学」とともに、着実にチームの中に伝わりつつある。そこには、一種の危機感も隠されていた。

「新体制で練習を重ねていく中で、練習の中での厳しさというのは例年に比べて増してると思いますし、ただここで満足するわけにもいかないので。より厳しく、『強いロボッツ』というのを作らなければいけないです。そんな責任も自分たちにはあるので、一人一人がしっかり責任と覚悟を持たなければいけない。そうでないと、例年と同じ結果になってしまうと思っています。しっかりコーチの言うことを信じて、戦う。一方で、一人一人が自分に何が足りないのかというのを理解しなきゃいけないです。今までのロボッツは、例えばドリブルが苦手な選手が、ずっとドリブルの練習をしているとか、技術やプレーの短所を無理に個人が練習で補おうとしていました。それは今年のリッチコーチの求めているバスケット、unselfish(=無欲、利己的にならない)ではないと思っていて、できないことは、みんなで補い合わないといけません。誰かのために自分が犠牲になる。誰かのために何かをしてあげる。辛いときに誰かに声を掛けてあげる。そういったバスケットを今年しっかりと体現することが、昨年と違う一つのことかもしれません。今まで足りなかったことをリッチコーチが言葉にしてくれたのかなと思っているので、それをしっかりとみんなで理解して戦っていきたいと思っています。」

グレスマンHCが掲げる「unselfish」。それを体現すべく、平尾は若い仲間へのフォローも怠らない。すべてはロボッツが「戦う集団」になるために行っていることなのだ。

「キャプテンになったからこそ、一人一人の選手の扱い方には、変化を出すようにしています。例えで言うなら、特に若い子たちには、コト(鎌田選手)なんかは礼儀から教えていて。若い選手たちは、高校大学といろんな指導者の中でプレーしてきて、そのバスケットが根付いている中でプロに入った。しかしプロに入ったら、今まで教わってきたバスケットと全然違う。プロになったら、できて当たり前。だから、コーチに教えられて、できないときに何をしていいのか分からない。僕自身も『なんで教えてくれないの』っていう経験もしてきているので、若い子たちに、自分自身がコーチの言っていることをかみ砕いて教えてあげられればっていう風にも思っています。ただ上から言うのではなくて、その選手のことをしっかり考えながら、どういう風に言えば伝わるのかな、とか、言い方一つ変えて、教えています。」

感謝を胸に、コートに立つ

大入り満員のアリーナで、万雷の歓声を受けながらプレーする。今季は残念ながら、そんな風景を思い描くことは難しい。試合を一つ運営するだけでも様々な困難が予想される中、平尾は改めて、感謝の思いを胸に、元気を与えるプレーをすることを誓う。

「会場を設営してくれるロボルツさんだとか、日頃から自分たちを支えてくれているスポンサーさんだったりだとか、もちろん、会場で応援してくれるブースターだったり。僕達一人一人では、まずバスケットすらできない。感謝の気持ちを持ってコートに立たなければいけないと思っていますし、自分たちのバスケットを見て、少しでも、『明日頑張ろう』だとか『また見に行ってみよう』だとか、そういう風に思ってくれたらいいなとすごく思っています。5000人のアリーナに2500人しか入れないだとか、たくさんの課題というのは出てくると思うんですけど。しっかりと来ていただいたお客さんに、自分たちのバスケットで、元気になっていただければと思います。」

決して未来は見通せるものではない。それでも、彼らの活躍を願う人たちがいることも忘れてはならない。支えてくれる人たちがいてこそのプロなのだと、改めて感じさせられる。

「自分たちはブースターの方々のために、スポンサーさんのために、準備はしているので、見に来ていただいたときやバスケットLIVEで視聴していただいたときに、しっかりとしたパフォーマンスを出す。(観戦していただいた方に)何か一つでも、僕らの気持ちを感じ取っていただければありがたいと思っているので、本当にこういう状況ですけど、お互いにしっかり気をつけながら共に戦っていきましょう。」

例年とは違った緊張感のもとで始まるBリーグ。その中でライバルたちと競り合うための日々はすでに始まっている。平尾のもとで、新たに生まれ変わったロボッツが、栄光を掴み取ることはできるのか。「覚悟」の戦いが、まもなく幕を開ける。

#25 平尾 充庸選手プロフィールページはこちら | 茨城ロボッツ公式サイト

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