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2020-21シーズン開幕特集・#2 福澤晃平編

#2 福澤晃平

取材・文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide Toyosaki
取材日:2020年9月9日

Bリーグ5年目となる2020-21シーズン。新型コロナウイルスによる脅威は未だ去っておらず、異様な雰囲気を持ったまま開幕を迎えようとしている。今、競技としてのバスケットボール以上に、プロとして、ファンや地域を元気づける力が求められている。今季からロボッツのバイスキャプテンを務める福澤晃平は、オフの間に自らを見つめ直してきた。チームを勝利へ導き、茨城を盛り上げていくためには何が必要か、彼の率直な言葉を聞いた。

長い準備期間となったオフ。リーダーシップを探りながら

新型コロナウイルスの感染拡大によって、途中打ち切りという結末を迎えた2019-20シーズン。その結果として、選手たちには例年よりも長いオフが訪れた。感染症対策として、人数制限をかけながらの自主練習を行う一方、福澤は空いた時間を読書やヨガ、料理などに充て始めた。今までなかなか経験していなかったことに挑戦し、バスケットにつながる収穫があれば、という想いからだった。

「読書は自分が読みたいと思ったものを中心に読んでいました。服に興味があるので、『ファッション業界は今後どう生き残る』みたいな本とか、リーダーシップに関する本も読んでいました。」

リーダーシップ。今季の福澤が大事にするものでもある。2018-19シーズンにロボッツに加入し、今年で在籍3年目を迎える彼は、これまでの自身を振り返り、「自分を尺度に物事を考えていた」と明かす。しかし、今季は自分の行動でチームに好循環をもたらすという、「チーム」を本位にした行動を目指す。

「自分に足りないものを考えたとき、『責任』ということが一つありました。自分がプレーで結果を残すという責任もありますけど、そうじゃなくて、チームを勝たせるという責任です。若手なりに、練習や、試合で劣勢の時に雰囲気が悪いなっていうのを感じることがあって、自分に何ができるかを考えていました。バイスキャプテンを務めることで、チームにいい影響を与えられたらいいなと、すごく思ったので、立候補しました。その上で任せてもらえたからこそ、期待にもしっかり応えなきゃいけないなと思いますね。」

福澤自身もキャリアを重ね、その中で年下の選手も徐々に増えてきた。ロボッツにおいては、鶴巻啓太、鎌田真、そして今季は中村功平が加わった。彼らの模範となるべく、まずは行動で引っ張ろうとしている。

「練習をサボっている人が、急に『練習しろよ』って言ったところで、『あんたもサボってるじゃん』って思われるのがオチだと思っています。まず、自主練習や練習からしっかり気合いを入れていく。練習に身が入っていない人の言葉には、年下の選手ほど、付いてこないと思うんです。だから、自分が上手くなりたいからやっていることとは言え、まずは日々の練習を大事にする。そこもバイスキャプテンとしての責任ですよね。あとはバイスキャプテンとして、チームを勝たせる。自分が試合に出ようが出まいが、チームが勝てばいいと思うので。特に、劣勢になった時、自分が試合に出ていても出ていなくても、みんなの志気を高められるような言葉を発していければ、みんなも応えてくれるんじゃないかと思います。」

劣勢での立ち振る舞い。今季のロボッツにおいて、大きなテーマになるであろう部分だ。福澤はコートで、ベンチで、チームを鼓舞し続け、特に若い選手たちのメンタルを支えていくことも、自らの仕事と捉えている。

「特に、鶴巻と鎌田に関しては、自分の調子の良し悪しで、結構メンタルが左右される部分があります。自分もプロになってからいろいろな経験を4年間でしてきているので、そこでうまく乗せてあげる。厳しく言うときももちろんあるんですけど、いざ試合になったら、そこで厳しく言っても試合中に切り替えることってなかなかできません。そこで『若いんだから自由にやっていいよ』っていう環境を作ってあげなきゃいけません。」

悲願達成へ。必要なのは「安定感」と「負けず嫌い」

ロボッツが毎年のように目標として掲げる「B2優勝」と「B1昇格」。もはやチームにとっては悲願となっていることだが、福澤は、その鍵を「チームとしての波を小さくし、安定感を出すこと」と考える。

「昨シーズンはホームで勝つことがすごく多かったですけど、アウェーで負けるって言うのも多かったんです。その原因は、選手個人によって違うだろうし、明確に何かと言われると分からないですけども。とは言え、僕らはプロなので、どんな状況でもベストのパフォーマンスをするっていうのが必要だと思うんです。アウェーだから勝てないとか、そんなことは本来無いはずなんです。そこで必要なのが、安定感です。ロボッツは劣勢の時に、ビハインドを1桁とか10点という段階で止められないんです。一度ダメになったら一気に15点とか大きな差をつけられて、そこから追いつくために頑張っても、体力が切れるとまた離されてしまう。こう言った場面を減らさないといけません。」

昨シーズンのロボッツは、アウェーでの大幅な負け越しに加え、試合後半での失点が目立った。第3クオーター、第4クオーターでの失点は平均41.1と、得点の40.5をわずかだが上回る。昨シーズンのB2で上位に入ったチームは軒並み、後半の平均失点が平均得点を下回っている。上位進出のためには、まずは体力的に苦しくなる後半で、失点を重ねないディフェンス力が必要だ。

「一度流れが悪くなった時に、バイスキャプテンとして声を出して、苦しい時間帯を踏ん張って、また逆転に持っていかなくてはいけません。去年は本当に波がすごかったので、いかに不調なときに、全員でカバーし合っていけるかが大事です。バスケットは1点差でもいいから、試合が終わるまでに相手を上回れば、その試合は勝ちです。その積み重ねが、優勝につながると思うんです。」

1点差でも相手を上回って勝つ。それを試合で実践するためにも、福澤は普段の練習から「負けず嫌い」をむき出しにする。

「普段、対人プレーやシュートの練習をしていても、目の前の人には負けたくないなって思っています。例えば、マニさん(眞庭選手)が193cmあって、僕は177cmしか無いですけど、マニさんのフィジカルに押されても、小さいからって負けたくないですし。背が小さいからとか、足が遅いからと言い訳をつけず、マッチアップしたからには目の前の選手を止めたいですよね。」

開幕が近づき、徐々に対外試合の機会も増えてきている。取材が行われた9月9日は、B2・福島ファイヤーボンズとの公開練習試合(9月5日開催)を終え、B1の横浜ビー・コルセアーズとのプレシーズンゲームを控えているところだった。「負けず嫌い」の成果は、試合の結果となって現れつつあると言う。

「ファイヤーボンズと試合をした時、相手に外国籍選手が1人いた中で、第4クオーターまで全てリードを奪えたって言うのは、一つ自信になったと思います。それでも、ここから横浜(ビー・コルセアーズ)、宇都宮(ブレックス)とB1チームと当たっていく中で、格上相手にどこまでできるかって言うのは、自信にもなるだろうし、改めて足りないところを感じられると思うんです。同じB2のファイヤーボンズからは、いいものをたくさん得られたと思うので、次はB1相手にどこまでできるかって言うのを確認しないといけないと思います。」

その後行われたビー・コルセアーズとの一戦(9月12日開催)は、第3クオーター終了時点で21点のリードを奪ったロボッツが、最終第4クオーターに猛追を受けたものの、勝利を収めた。終盤のゲームプランに課題を残したものの、B1チームからの勝利は、また一つ、自信を深める材料になったはずだ。

喜んでくれる人のためにバスケを

未曾有のコロナ禍の中、自分のために充てる時間も増えた。その中で、福澤は改めて、プロバスケットボール選手であることに感謝の思いを抱いたという。

「コロナの世の中になって感じたのは、自分はバスケットボールが本当に好きで、それを仕事にして、お金をもらってるって言うことが、当たり前ではないということでした。会社員の方たちが、コロナの影響で給料やボーナスが下がったとか言う話を耳にする中で、僕らは給料をいただいて、なおかつ自分の好きなことをさせてもらっている。って言うことには本当に感謝しなきゃいけなません。」

チームメイトと会うことさえ制限されたオフシーズンを過ごし、開幕を控えた今も、外部との接触を極力減らしながら練習を続けている。そう言った日々を過ごす中で、ファンのためにも、プレーで応えなくてはならないと、福澤は語る。

「福島戦の時、制限があった中でもあんなに人が来てくれるんだって思いました。僕達のバスケットをする姿を、見に来たいと思っている人が、茨城や水戸を中心にたくさんいらっしゃる。それに対して、本当に僕達は勝つことで恩返ししなきゃいけません。応援してくれている人は、僕らが勝つところを見たいと思うんですよ。僕らがバスケを練習して、勝つ。それが、ファンの人への恩返しです。」

ロボッツの勝利を待つのは、ファン・ブースターだけではない。スポンサー、チームスタッフを含め、ロボッツに関わる誰もが、B2優勝、B1昇格を願う。福澤は、勝利に貢献することで彼らの願いに応えることが最も大事とした上で、ある個人的な目標も口にした。

「僕が3ポイントシュートを得意としているのを知っている観客の皆さんが、打とうとすると、ちょっと沸き立って、外すと残念がる声がするんですよね。僕のシュートは入るとファンの方々には思われているんでしょうね。その期待に、僕はしっかり応えないといけないなと思います。今年はメンタルも鍛えて、応援に応えられるようにしたいですね。シュートが入って盛り上がるのは、調子が上がる一番の材料なので。どんどん決めないといけませんね。」

とは言え、コロナウイルスの影響は、一朝一夕に収まるものではない。福澤もそれを理解し、ありとあらゆる手段での応援を呼びかけた。

「会場に来てもらって、試合を見てもらいたいところではありますが、こういうご時世でもあるので、バスケットLIVEなどの動画を通してでも応援してくれることが、僕らにとっても力になると思います。ロボッツのことを、どんな形であっても応援してくれれば、僕らは頑張れるし、そういう人たちが0にならない限り、僕らも戦い続けます。たとえ無観客でも、僕らが勝てば、SNSで喜んでくれる人もいますし、そんな人たちのために、僕らも戦って、かつ勝っていきます。今年も、ロボッツを応援してください。」

チームの悲願を共に叶えようと、応援してくれる人のために。福澤は、メッセージに「勝っていく」と、ただ「戦う」と言うよりも、一段強い言葉を付け加えた。勝利を願う人たちに、結果で応える。ロボッツは、開幕の瞬間から、結果を残し続けることができるか、期待に満ちあふれた日々は、すぐそこまで迫っている。

> 福澤晃平選手のプロフィールページはこちら | 茨城ロボッツ

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