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[選手対談3]悔しさを喜びに変えるために 今シーズン必要なこと

※本記事は、2019年9月21日刊行の『2019-20 IBARAKI ROBOTS OFFICIAL FANBOOK』に掲載したものです。

チームを勝たせられる選手になれず悔しさを味わった平尾。
特別指定選手としてチームに加わったが、プロのレベルの高さに苦しんだ鶴巻。
昨シーズンから信頼しあえる師弟関係を築いてきた凸凹コンビの二人が
今シーズン飛躍をするために誓った決意とは。
インタビュー・文=鳴神富一 取材日=2019年7月25日

チームとして戦えずに苦しんだ昨シーズン

―昨シーズンの悔しさを拭えない中ではありますが、改めて新しいシーズンが始まりました。オフを挟んだ中で昨シーズンをまずは振り返っていただけますか。

平尾 個人としてもまわりの下馬評としても、やっぱりこのチームはいけるなと思っていました。しっかりとしたロースターが揃った中で、チームとしても本気で勝ちにいく決意が見えていて。自分の中でもワクワクしていたし、早くシーズンが始まって欲しい、チームを皆さんに見せたい!と感じていました。シーズンが始まって、序盤は問題なかったんですが、時間が経つにつれて勝ちにつなげられず、徐々にチームとして噛み合わなくなって…。個で戦うようになり、チームでは戦えない状況が続いてしまいました。チーム力のある対戦相手に勝てなくなり、加えて取りこぼしも多くありました。正直いけるだろうと思っていた試合もあったと思いますが、バスケはそんな簡単ではないし、チームで戦えていればもっと良かった。チーム力を最後まで発揮できなかったシーズンだったと感じています。

鶴巻 大学にいたころから評判が高かったロボッツにシーズン途中から加入させていただいて、僕自身もみていて上へいけると感じていました。自分自身がチームに対してプラスになればと思っていたんですが、やはり大学とプロとの違いを様々な面で痛感したと同時に、厳しい世界だと突きつけられました。チームの先輩方にいろいろと聞いて教わって取り組んだんですが、(プロのレベルに)慣れるまでが難しかった、と言うのが正直なところです。

―その部分で昨シーズン何が足りなかったとか、できなかったとか実感している部分はありますか。

鶴巻 プロとしての意識の高さをもたなければいけないと感じる場面は本当に多くありました。その差を埋めていかないといけないと思っています。今シーズンは本当のプロとしてルーキーシーズンを迎えるので、サラリーをもらってバスケをしている意識を大事にしていきます。

平尾 僕自身は様々なチームでプレーしてきた経験から、もっとこのチームを引き上げられたかなと感じています。ガードとしても人間としても勝ち方を知っていることが大切で、成功経験を活かしてチームを引き上げられる選手にならなければいけない。そういう選手がいるかどうかが、チーム力の差、違いにつながってくるのだと思います。ガードとしてチームを勝たせたかったし、みんなを引っ張り上げたかったので、それができずに個人として悩み続けたシーズンでした。

―鶴巻選手は昨シーズン特別指定選手として加入して、平尾選手にいろいろと戦術も含めて指南を受けていたと聞きました。昨シーズンと今シーズンでお互いに印象に変化はありましたか。

平尾 彼は本当にフレッシュだし、いろいろなことを覚えてプレーする1年目は一番大切だと思うんですよね。フォーメーション一つ取っても、何のためにやっているのかを考え、理解する。例えば、教えられた自分の動きを覚えることは大事。でも、それだけではなくて、他4人の動きを覚えられていないと、理解不足でチームに迷惑をかけるし、自分自身が後悔します。彼はロボッツに入っていろいろなポジションを経験し、間違えることなく、本当にアグレッシブにプレーしてくれていました。彼の姿をみていてすごく気持ち良かったです。その反面で、もっとトライして失敗しないと成長もないですし、失敗からどんどん学んでほしいと思っています。彼は自分からいろいろと積極的に聞いてきてくれて、成長したい、学びたいという姿勢をみせてくれていたので、今シーズンはすごく期待しています。

鶴巻 僕が初めてチーム練習に参加させてもらったときに、平尾さんは誰よりも一番声を出していて。プレー中もいろいろと指示をしっかり出していて、この人に聞いたらだいたいの戦術がわかるだろうと思っていました。それで聞きにいったら、優しくアドバイスしてくれて。バスケに対してストイックで信頼できる先輩ですね。

―そんな信頼している間柄だからこそ、ここはもう少し改善してほしいというところはありますか。

平尾 バスケに関しては、本当にすごく頑張っていて、いつでもアグレッシブにプレーしていて、いうことはないですね。強いていうなら…慣れてきたのか、普段でも先輩に対して敬語とか使わないんですよ(笑)。そこは「親しき仲にも礼儀あり」ではないけど、先輩をもう少し立てて、リスペクトしてくれたら嬉しいですね。その辺はプロになったばかりだから、徐々に理解してくれるかなとは思っています(ニヤリ)。

鶴巻 プレーに関していうことは全くないですね。

平尾 上からやな(笑)。

鶴巻 先輩方は馴染みやすい方ばかりなので嬉しいですけど、もう少し優しくしてくれたら嬉しいです!(笑)

自信をもって戦える今シーズンにするために

―いろいろなバックヤードがある選手たちが揃っているロボッツですが、今シーズンさらにロースターが充実していると思います。今シーズンへの手応えはどのように感じていますか。

平尾 2シーズン前の「いわきの悲劇」という最後の最後でプレーオフにいけなかった経験をした人間がいて、そこにニノ(二ノ宮康平)さんや大祐(小林大祐)さんが加入して、自分たちに新しい風を起こしてくれるんじゃないかと思っています。走るバスケを目指してきた中で、ハーフコートでしっかりとチームで頭を使って戦えるようになるための”経験”と”実績”のある2人が加入したことは自分たちが成長するためには必要であり、プラスであることは間違いなく、大切なピースであると考えています。自分自身も2人から勉強できるのが純粋に楽しみだし、トップで戦ってきて培った経験は頼もしいですね。

鶴巻 昨シーズンのロースターが残った上に、B1で活躍していたすごい選手が加入してきて、もっと強くなれると感じています。さらに素晴らしいヘッドコーチが就任して、練習は厳しいですが、しっかり意図を理解しながら頑張ろうと必死です。シーズンに向けて充実した期間を過ごせていますし、自信をもって戦えると感じています。

―鶴巻選手は本当のプロ1年目になりますが、具体的にどうやって成長してチームに貢献したいですか。

鶴巻 昨シーズンは何試合かコートに立てましたが、徐々に出場する機会がなくなり悔しかったです。だからこそ、今シーズンは試合に出られるようにすべての技術やプロ意識を向上させないといけないと思っています。ポジションとしてはマニ(眞庭城聖)さんという素晴らしい選手がいるので、彼を越えられるように、いずれはチームの中心となって試合に出られるようになりたいですね。素晴らしい先輩がいるので、自主練習など積極的に参加しながらコミュニケーションをとって成長していきたいです。

平尾 高い身体能力を兼ね備えている部分を考えると、リバウンドにより貪欲に絡んでいくと良いアウトサイドシュートも打てるし、チームの助けにもなると思います。また、彼がいまの目標を達成したときに、次はどうなりたいのかというのが大切だと考えていて。自分もルーキーシーズンに当時いたチームのアシスタントコーチだった大野篤史さん(現千葉ジェッツヘッドコーチ)から「目標っていま何?」と言われて、答えがすぐ出なかったことがあったんです。常に目標や課題をアップデートして過ごしていくことも大切にしてほしいです。

―逆に平尾選手は今シーズン、チームを引っ張っていくためにどのように過ごそうと考えていますか。

平尾 やはりヘッドコーチが言っていることをガードが一番に体現しないといけないと感じていて。全員がそれをできたかといったら昨シーズンは違いました。だから、まずはトニーヘッドコーチが言っていることを自分自身が誰よりも一番先に理解して、そして体現して、チームメイトに伝えていきたいです。コーチは常に信頼関係は一方通行ではダメで、お互いに信頼しあうのが大切だといっています。それをしっかり遂行すれば、昨シーズンとは違った、進化した自分やチームが生まれると感じています。

すべてが一つになってファミリー全員でB1の舞台へ

―お二人とも外国人ヘッドコーチと一緒にシーズンを過ごすのは初めてだと思います。ガーベロットヘッドコーチについて印象を教えていただけますか。

平尾 非常にコーチングが細かいですね。いままで様々なコーチと出会ってきましたが、いろいろとざっくりとしている部分もありました。自分たちがすでに理解しているだろうから、「こういう風にやりましょう」みたいな。でも、トニーさんはステップの使い方一つから教えてくれるし、基礎の部分まで踏み込んで練習でアドバイスをしてくれます。この環境は非常に恵まれているなと思っていて、自分の癖やスタイルが染み付いた中で、また一から細かいことを教えてもらえるのは、自分自身での再確認にもなりますし、勉強になることも多いです。自分自身を成長させてくれる素晴らしいコーチだと思っています。

鶴巻 平尾さんと同じで、トニーさんは本当に攻守において細かく教えてくれます。本当にわかりやすいですし、自分のためになっていると実感しながら練習できていますね。

―今シーズンのスローガンが「RUN as ONE」となりました。初めて聞いたときにどういった感情をもち、どのように解釈されましたか。

平尾 もちろんチームだけではなく、会社も、ロボッツファミリーであるファンの皆さんも、スポンサーさんも、すべてが一つになるということだと感じています。それは非常に大切なことで、自分たちがどういう風に恩返しできるかと考えたときに、やはり勝利しかないですよね。水戸のまちがロボッツカラーに染まりつつある中で、もっと水戸や茨城の皆さんにロボッツのことを知ってもらう大事な時期です。いろいろと地盤が固まっているので、あとはどれだけ選手が頑張れるかです。感謝の気持ちを一つにしてコートに立つ、そしてその感謝をロボッツファミリーの皆さんにみせることができたら、初めて一つになったと感じられると思います。そういう意味でこのスローガンはすごく良いなと率直に感じました。

鶴巻 みんなで一つになって目標を達成するという部分は非常に良い言葉だと思います。先日行かせてもらったBリーグの新人研修でも、プロとは何かというものを学んできました。スローガンをしっかりと体現できるように、常にプロらしい振る舞いというものをしていきたいと考えています。

―最後にファンに向けて、今シーズンの意気込みやメッセージをお願いいたします。

平尾 ロボッツのファンは非常に優しくて、不甲斐ない試合や負けたときでも温かい声援を送ってくれます。すごくありがたいことですが、今シーズンはもっと厳しい目でみてもらって、ときには叱咤激励してくれたらと感じています。そうならないように自分たちは常に戦い、勝利を届けてもらえるようにします。今シーズンは新しいアリーナでフルシーズン戦います。やはり満員のアリーナは僕たちも非常に燃えるので、ぜひ1人でも多くの方を連れて来ていただいて、大きな声援で僕たちの背中を押してくれたらと思います。ファンの皆さんが納得する試合をお見せする約束をしますので、ファンの皆さんとともに最高のチームをつくりあげるためにも、アリーナに足を運んでもらいたいですね。

鶴巻 昨シーズン自分がチームに加入した際に、ファンの皆さんから「地元で一緒に頑張っていこう」と温かい声援をいただけました。非常に嬉しかったですが、その恩返しをコートでできていません。その悔しさを晴らすべく、今シーズンこそはコートにすこしでも長く立って、ファンの皆さんに満足していただけるようなプレーをみせていきます。100%の力で戦っていきますので、是非応援に来ていただいて、一緒にB1昇格をしましょう。

よくしゃべる先輩と、ちょっと生意気な後輩。気を抜くとすぐに笑いに走り出す、そんな2人の対談。それでもインタビュー中の随所に、年齢関係なくお互いが信頼しあっているということがひしひしと伝わってきた。それぞれが味わった、それぞれの苦しみや悔しさ。解決方法は明確になっているだけに、2人の活躍がこれから楽しみで仕方ない。

PG.25 平尾 充庸 Atsunobu HIRAO
1989年4月4日 徳島県生まれ
天理大学卒 177cm/74kg

SG/SF.29 鶴巻 啓太 Keita TSURUMAKI
1996年4月24日 茨城県生まれ
中央大学卒 189cm/89kg

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