【AFTER GAME】 2021-22 千葉戦(4/2〜3)〜緊急事態を戦い抜くも連敗。結束をさらに高めて~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

B1東地区の優勝争い真っ只中だった千葉ジェッツをアダストリアみとアリーナに迎えての2連戦。試合前の段階で、#15マーク・トラソリーニの退団が発表され、さらにこの2試合には#8多嶋朝飛が欠場するなど、ロボッツはベンチ入り選手が9人という戦いを強いられた。GAME1で63-92と大差を付けられて敗れたロボッツだが、GAME2では一転して攻めのバスケットを披露した。しかし、終盤に個人技から立て続けに失点を喫し、82-87とされて万事休す。苦しい台所事情は百も承知だが、この終盤戦で、改めてチームとしての戦いぶりが重要であることが示された一戦となった。そこで今回は、攻守両面で活躍を見せ続けた#2福澤晃平の言葉を中心に、コラムを展開していく。

ガード陣も一体となり、動くオフェンスを確保

GAME1のロボッツはペイントエリアでの得点がなかなか伸びず、試合を通じて18得点に抑え込まれた。加えてリバウンドでも千葉に12本の差を付けられる。つまり、ゴール下そのものを抑え込まれた形だった。

GAME2も、序盤は#11チェハーレス・タプスコットが得点を重ねたものの、#21エリック・ジェイコブセンがインサイドに入りきれず、シュートメイクにも苦しんだ。ところが、第2クォーターからロボッツが見せた形が、千葉をかき乱していくこととなった。

現在のメンバーで考えた場合、通常、ボールプッシュに対してはジェイコブセンやタプスコット、控え選手で考えれば#0遥天翼や#55谷口大智らがその後のプレーでの進路を確保するために、スクリーンをセットする。ただ、ディフェンスのプレッシャーが強いチームに対してはタプスコットがボールを持つ機会が増えていて、ここで他のビッグマンがスクリーンに入ってしまうと、ゴール下に味方がいないという事態が起きてしまう。

こうした問題への対処はいくつかある。代表的なものは、外側に陣取った選手がゴール下に駆け込んで隙を狙う「カッティング」だ。特にGAME2ではジェイコブセンがアウトサイドに出た状態でも、ガード陣が入れ替わり立ち替わりゴール下に陣取り、タプスコットやジェイコブセンがしっかりその意図を酌んでパスを送り込み、得点につなげた。こうしたオフェンスの変化については、#29鶴巻啓太が試合後にこう語っている。

「第1クォーターだけでターンオーバーを9個もしてしまい、そのミスを取り返さなければいけないと感じていました。まずはしっかり攻める。それが徹底できたのが良かったのではと思います。」

そして、もう一つ行われたプレーが、よりハードではあったが、しっかり相手に効かせたプレーとなった。ガード陣によるスクリーンである。特に福澤が、体格で上回る相手選手に対してしっかり壁になり、ビッグマンの進路を作った。これが撒き餌となる形で、ビッグマンからパスを受け取った福澤が、今度は自ら攻め込む形も作る。こうした連動性を見せることで、ロボッツが徐々にオフェンスの形を取り戻していった。

GAME2を終えての記者会見で、こうしたプレーの意図を問うと、福澤は率直な事情を明かす。

「僕の一番の武器は3ポイントだと思っているんですけど、自分に打たせないために相手のディフェンスも付いてきます。そこでスクリーナーになることで、相手の動きを見ることができます。今日の試合では結果としてゴール下が空いたので、飛び込んだという感じです。狙いだった、と言うよりは自分の武器を活かしつつ、それが止められた時にチームとしてどういう動きをするか。その上で相手の反応を見て、またプレーをしていく。臨機応変に戦っている感じです。」

GAME1では、ここ数試合で得点を量産していたタプスコット、鶴巻、そして#25平尾充庸が揃って1桁得点に終わり、目指すオフェンスの形からは遠のいてしまった。相手のプレッシャーをかいくぐってのシュートが決まらなかったということもあるが、プレッシャーが来る状態で、どのように相手の穴を見つけ出していくか。こればかりはコートに立つ者たちにしか見えてこない部分でもある。

コート上でしっかり結論を出し、それを遂行した選手たち。あとは勝利が手に入れば、というところまで来た。千葉へのリベンジは来シーズンに持ち越しとなってしまったことだけが悔やまれる。週末まで続く強豪チームとの連戦の中でも、こうした場面をどれだけ増やせるかが、必ず重要になってくるだろう。

「ハンドラー福澤」に見えたチームの成長

多嶋が欠場したこと、また#13中村功平が戦線を離脱していることで、今節のロボッツは平尾に対する負担をシェアしつつも、攻撃の形を模索する必要があった。そこでまず出番を得たのが、ロボッツきってのスピードスター・#14髙橋祐二だった。GAME1では今シーズン最長となる21分45秒のプレータイムを得ているが、プレータイムが20分以上を記録するのは、昨年10月の開幕戦以来のことだった。実に4ヶ月ぶりとなる得点も記録するなど、改めてロボッツに彼がいることの重要性が垣間見えた。「ハンドラーとしてと言うよりはディフェンダーの意識でプレーをした」とは話したものの、復調の兆しを見せていることに対して、髙橋自身はこうコメントする。

「つくばでのサンロッカーズ渋谷戦から良い感覚でバスケットができていて、今日の試合に対しても、相手のキーマンを止めてくれとグレスマンHCからも話を受けていました。今シーズンは腰を痛めて欠場することもあったんですけど、いつかチャンスが巡ってくると自分に言い聞かせて、我慢強く毎日を過ごしていました。」

その一方で、この2試合でたびたび形を見せていたのが、福澤をポイントガードやボールハンドラーとして起用することだった。

ロボッツのガード陣の中でもシューター寄りのプレーが目立つ福澤。今シーズンは中盤に平尾が一時的に離脱していた場面も訪れたものの、その際も多嶋・中村・髙橋がハンドラーとして主にローテーションを組んでいたため、なかなか見られなかった光景でもある。

彼がハンドラーを務める場面は、決してチーム状態が万全でない表れでもあるが、それでも確実にフロントコートにボールを運び、ロボッツのオフェンスを機能させた。これが可能となった理由はいくつかあるが、特にGAME2において、彼を起点とした状態でもフィニッシャーの選択肢が豊富だったことがその大きな理由だろう。人とボールが動くという状態を作り出し、多くの選手が優位なポジションを取れていたことで、福澤が組み立て役になることができた。一方で他の選手に警戒が向けば、スクリーンで相手を引きつけてからの3ポイントも放つことができる。苦肉の策ではあるが、決して苦し紛れということではない。ここに来て見えた、ロボッツの新たなオフェンス構築でもあった。

だからこそ、こうした状況でも勝利を果たしたかったのだろう。かつて、福澤はROBOTS TIMESで行われたインタビューで、「1点差でも勝ちは勝ち」と話したことがある。GAME2を終えて、コート上で行われたインタビューでの言葉には、短いながらも一貫した想いが見えてきた。

「どんな状況であっても、負けは負けなので。この結果をしっかりチームとして受け止めて、チームとしても個人としても上に行けるように頑張っていきたいと思います。」

ベンチ入りが9人だとしても、残りわずかなところまでリードをしようとも、試合終了のブザーの瞬間にリードをしていなければ、負けという結果が突きつけられてしまう。ある意味ドラスティックではあるが、これもまた試練。残り少なくなってきた今シーズンの戦いで、乗り越えた姿を見せてくれることを待ち望みたい。

敵地に乗り込み、苦い記憶を振り払え

次節は神奈川県の川崎市とどろきアリーナで行われる、川崎ブレイブサンダースとの一戦。シーズン前半にアダストリアみとアリーナで3試合を戦っているが、いずれもロボッツが敗れていて、特に昨年12月29日に行われたゲームでは、ロボッツがシーズンワーストとなる39点差をつけられての敗戦を喫している。敵地での戦いとなるが、そうした過去の悔しさを払拭できるような試合にできるかが注目される。チャンピオンシップ出場争いを繰り広げる川崎は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてチームの活動が止まっており、この試合が再始動の初戦となる。ロボッツも千葉戦から中2日という状態のため、両チームがどれだけコンディションと集中力を高く保てるかが勝負の分かれ目になってくるだろう。

#22ニック・ファジーカス、#23マット・ジャニング、#34パブロ・アギラール、#35ジョーダン・ヒースを中心に据えたビッグラインアップを持ち味としている川崎だが、ロボッツ戦においてはその戦い方ばかり、ということではない。ロボッツのシューター陣を波に乗らせないことを念頭に、#33長谷川技が本来のマッチアップを超えたディフェンスを仕掛けてくる。ここまで長谷川はロボッツ戦3試合全てでスターターを務めており、今回も彼が立ち塞がってくることは十分に考えられる。さらに、#0藤井祐眞や#7篠山竜青らがボールハンドリングからプレッシャーをかけてくる。思い切りの良いダブルチームで囲まれる危険性もあるため、ロボッツとしてはシュートチャンスを作るところから丁寧にバスケットを展開することが重要となる。ボールを誰に持たせるのか、誰に運ばせるのか。臨機応変な役割分担をしていくことと、千葉戦でも見せたように、上手く相手の懐に潜り込むようなプレーも時には必要になってくるだろう。

ロボッツはオフェンスの軸に鶴巻がどこまで絡んでいけるかがポイントになる。川崎の高さに対して、鶴巻がどこまでスピードで渡り合うか。彼の活躍で川崎ディフェンスの的が分散するため、結果的に他の選手のシュートチャンスも増大させられる。千葉戦ではプロでのキャリアハイに並ぶ17得点を挙げただけに、良い波を継続できるかを見ていきたい。

残り1ヶ月となったレギュラーシーズン。ロボッツに求められるのは、戦うこと、そして勝つこと。赤く染まるであろう会場を、ロボッツのいばらきブルーが切り裂いていけるか。平日のナイトゲームだが、見逃せない一戦となるだろう。

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