#0 遥天翼

取材・文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide Toyosaki
取材日:2020年9月5日

Bリーグ5年目となる2020-21シーズン。新型コロナウイルスによる脅威は未だ去っておらず、異様な雰囲気を持ったまま開幕を迎えようとしている。今、競技としてのバスケットボール以上に、プロとして、ファンや地域を元気づける力が求められている。今季、ロボッツへと加入した遥天翼。トップリーグで数多くの経験を重ねてきたベテランが、初めてB2の戦いに挑む。激動のオフを迎えて茨城へとやってきた彼は、ロボッツの昇格に全力を尽くそうとしている。

前所属チームは経営難、まずはコンディションを取り戻す日々

2019-20シーズンは、B3リーグの東京サンレーヴスの一員として戦っていた遥。このコロナ禍とともに突入したオフシーズンにおいて、プロバスケットボール選手として、家族の生活を守るために、遥は早くから移籍交渉を進めてきた。

「代理人をつけず、自分で契約をまとめると決めて、もう自分からいろんな人に連絡して、動き出していました。コロナでチームの経営状況が危ない上に、今シーズンのBリーグは、成績が悪くても降格がない。そうなると、補強しないチームも出てくる。契約できない選手が増えてくるなと言うのは、最初から分かっていました。そんな中、上原GMにもまた声をかけていただいたので、すぐに返事をしましたね。」

「上原GMにまた声をかけていただいた」と言うが、実はロボッツと遥には浅からぬ縁がある。まだロボッツがつくばを本拠地としていた時代、当時からGMを務めていた上原は、遥にロボッツへの移籍を持ちかけたのだと言う。この時、遥は結果的に他クラブへと移籍することになるが、その後もロボッツは毎年のように獲得の意志を伝え続けていた。今回の移籍加入は、長年のラブコールが実った格好とも言える。

一方、遥が昨シーズン所属していた東京サンレーヴスは、コロナ禍の中でスポンサーの撤退などから経営難に陥り、後にB3リーグからの退会を余儀なくされる(2021-22シーズンからのB3復帰が決まっている)。クラブのもとでの練習さえもままならない状況となった中で、数ヶ月を過ごした遥は、コンディションに対する不安を募らせていた。

「コロナでシーズンが中止になって、7月にロボッツに合流するまで、全然体を動かせる環境ではなかったんですよ。体を動かせなかった分を、7月に入ってから取り戻さないといけないところから始まりました。そこから2ヶ月になるところ(9月5日現在)に来ているんですけど、トレーナーさんと動きを確認して、間違いなく、状態は上がってきています。徐々にコンディショニングや、プレーの感覚というところは、戻りつつあります。」

しかし、ロボッツに合流後も、遥にとって満足のいかない日々が続く。ロボッツへの外国籍選手の合流が遅れ、チームは、体格の大きな選手との練習に不安を抱える状態となった。195cmと、ロボッツの日本人選手で最長身であるという事情から、遥は本来のスモールフォワードではなく、パワーフォワードやセンターと言ったポジションでの練習を求められるようになった。

「グレスマンHCから『我慢してくれ』と言われています。正直、僕自身にとってはもどかしいです。やっぱりセンターは地味な役回りで、ゴール下で体を張って、味方を活かすのが仕事です。でも、本来やるべきところはスモールフォワードで、HCを含めて、周りに『俺はここまでできる』ってアピールしたいんですが、チームでの練習に入ると、どうしてもセンターになってしまいます。すごくもどかしいですが、そこは自己犠牲ということで、やらなきゃいけません。」

もどかしい思いが多々あるだろうところを、「自己犠牲」という言葉で納めてしまう。それどころか、センターポジションの視点から目に付いた他の選手のプレーにアドバイスを惜しまない。今の自分にできることを、着実にこなすことで、遥は着実にチーム内のポジションを築きつつある。

「押し上げる力」をチームに注入

遥から見たロボッツのイメージは、「B2にいながら、いい意味でB2離れしている」というものだ。同郷である小林大祐や眞庭城聖を始めとして、旧知の選手が数多く今のロボッツに在籍することも、少なからず影響を与えているようだ。

「ダイス(小林選手)だったり、マニー(眞庭選手)だったり、アツ(平尾選手)もそうだし、(かつてのトップリーグだった) JBLやNBLを経験している選手がいる。一方で、功平(中村選手)もそうですし、B1を経験している選手もいる。B2のチームだけど、選手の粒の大きさはB1に近い。B1でも全然やっていける選手層なのかなという風に思っています。サンレーヴスの時なんかは、僕を主軸にオフェンスをしていたんですけど、ロボッツに来てからはいい意味で楽です。得点能力がみんな高くて、誰かが1本、大事なところで決めてくれるから、チーム力としては格段に上だと感じています。やりやすいですし、心強いですし、総合的にアリーナも環境も、人も揃っている。逆に、なんで上がれないの?って言う感じです。」

ロボッツは、毎年のようにB1昇格を目標に掲げながら、その目標を未だに達成できていない。その理由の一つが、最近になって明かされたと、遥は話す。

「ビデオミーティングでグレスマンHCに『なんでロボッツがB1に上がれないのか、ビデオを見て分かった』と言われました。(グレスマンHCは)流れや調子がいいときは、お祭りじゃないけど爆発力を持ったチームでいられる。ただ、流れが悪い、しんどいというときに、エネルギーの落ちるスピードが速いって言ったんですよ。だからアウェーでも勝てていないと。」

指揮官から懸念点を突きつけられ、遥は実際の場面が思い浮かんだと言う。

「試合の前半と後半の入り方を見ると、エネルギーとか覇気が見ていて違うんですよね。そこは間違いなく一つの課題です。逆に、後半、しんどい時をチームで耐えられるようになれば、チームとして力が波打たずに、常に高いパフォーマンスで、やっていけるはずです。」

取材が行われた9月5日、ロボッツは福島ファイヤーボンズとの公開練習試合に臨んだ。コートに立つ遥は、積極的に声を張り上げ、リバウンドを果敢に奪いに行く。チームを押し上げるために、自らのエネルギーを、積極的にチームに注入する姿が目立った。

「この1本、疲れているけど耐えなきゃいけない、誰かが声を出さないといけないって時に、気づいたら僕自身も声を出さなきゃいけない。グレスマンHCも試合になると、ところどころで『ハドルを組め(一丸になれ)』とか、『ここで1回リセットしよう』とか、口酸っぱく言っていて、選手もそれを体現しようとしていたと思います。」

この試合、時折劣勢に立たされながらも、ロボッツはここぞという場面で選手たちが躍動した。特別に行われた5つ目のクオーターを除いて、リードして終えることができたのも、収穫と捉えている。

「負けていても誰かが頑張って起点を作って、シュートを決めて、逆転することができた。今までは、ちょっと逆転されただけで、そのままクオーターが終わるまで負けていたと思うんですけど、第4クオーターまで全部勝てたので、今日は良かったなって思いました。」

一方で、遥は今のチームの状態に、ある注文をつける。

「このチームに入って感じたのは、自分の意見を言う人が多いんです。タイソンさん(柴田ストレングスコーチ)だったり、桂太(岩下アシスタントコーチ)だったり、アツもそうだし、マニーもそうだし、ダイスもそうだし。円陣を組んだときに、気づいたことを発信する人が多い。僕はそれがすごくいいなと思うんですよね。ただ、2ヶ月経って分かったことがあって、発言者が一緒になってきていると感じるんです。ひょっとしたら、もともと一緒だったのかもしれませんが。コト(鎌田選手)やツル(鶴巻選手)、功平と言った若手も発言してほしいんです。発言することで言った選手自身にも責任が生まれますし。自分の意見を言う人が増えたら、チームはもっともっと良くなると思います。」

若手も遠慮すること無く、意見をぶつけ合ってほしい。それがチームのさらなる進化につながると、彼は信じている。

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