ブレずに、戦い続ける~2021-22 開幕前特集 平尾充庸〜

「覚悟」「責任」という言葉と共に、昨シーズンキャプテンに就任した#25平尾充庸。その想いは、B1昇格というチームの悲願となって結実した。明けて今シーズンもキャプテンを続投。B1への熱意、そして新たな覚悟を見せながら、バスケットに、そしてチームに対して真摯に向き合おうとする姿勢が見えてきた。彼が目指す、今シーズンの青写真とは。ロングインタビューの中から解き明かしていく。

チームとしてのまとまりを感じながら

まずはキャプテンとしてのチームの感触から問いかけることにした。練習が進む中、平尾は昨シーズンと比べてチームの進化を感じ取っていた。

「一つ一つの声かけやアドバイスと言った部分が、何人かしか練習の中で出ていなかったところもあったのですが、試合や練習を通じてベテランが若手に教える、伝えるというのをよく見ます。疲れているときに『もっと頑張ろうよ』とか、『いいハードワークできていたよ』とか、そう言った細かな部分も出てきているので、いい雰囲気で練習ができているのかなと思います。」

昨年のシーズン前の練習では、どこかピリピリとした固い雰囲気が体育館を覆っていた。しかし、今年は「inside ROBOTS」の映像などからも分かるように、非常に賑やかに、一方ではハードにというメリハリが見える。ロボッツの土台とも言うべき雰囲気の良さと、リチャード・グレスマンHC流のハードワークが、2年目を迎えてしっかりなじんでいると言えそうだ。平尾は加えて、それ以外にも理由があると話す。

「プレシーズンの試合はできていませんが、ロボッツのチーム内での競争も相当高いレベルだと思います。練習の時間も増えましたし、強度も一気に上がりました。ケガがないようにとは思いますけど、高いレベルでのバスケットは現時点でできていると感じています。あとは、シーズン中にレベルアップができるかという部分かなと思っています。いい緊張感の中で日々の練習で課題を持って、一日の中で克服していくということもできています。いい競争をしながら成長できていると思いますし、今は練習が楽しいです。」

2年目を迎えたキャプテン。昨シーズンは「覚悟」「責任」「歯を食いしばって」という言葉を連ね、今までの明るいキャラクターを一時的に封印し、バスケットに向かい合い続けた。そうした「キャプテン像」に変化はあるのか。平尾はここにも、チームとしての成長が効いていると言う。

「昨シーズンはどちらかというと『引っ張らなければいけない』というところを重視していました。今シーズンは、各ポジションでリーダーシップを発揮してくれる選手がたくさんいますので、そう言った意味では、僕自身もすごく楽ができていると思っています。その上で、『責任』や『覚悟』、あるいは勝たせられるガード、勝たせられるキャプテンというところは今シーズンも目指していきます。今シーズンは、自分自身がより成長していくためにも、大切なシーズンになると思っています。今までの考えはブレることなく、自分自身やチームが成長していけたらいいですね。」

「やっぱりB2レベル」では嫌だ

かつてはトップリーグのJBLやNBLを戦った平尾。天皇杯では決勝のコートにも立ち、多くの猛者とも渡り合った。B2での5シーズンに及ぶ戦いに別れを告げ、ついにB1に挑戦する。大舞台に向けて、平尾は着々と戦いへの準備を進めていた。

「今までの『B2の茨城ロボッツ』であれば、そのままで良かったようなようなこともあるでしょう。今シーズンはチームスローガンとして『BUILD UP』を掲げている中で、僕らも新しい歴史を作っていかなければなりません。僕自身も新しい気持ちで、今シーズンからの戦いに臨まなくてはいけないのかなと思っていますし、『新しいロボッツ』を今のメンバーで作っていかなければいけないとも思います。」

B1を戦い抜く、あるいは勝っていくカギを、どのように捉えているのだろうか。平尾はこれまでのロボッツのカラーを大事にしつつも、重要なポイントはいくつかあると答える。

「ロボッツは爆発力のあるチームだと思っています。それをコンスタントに試合で出せるか、と言うところが一点。あとは、今までも重視していた『ディフェンスから』というところをブレさせることなく、B1の舞台でもやらなければいけません。あとは強度を高く、というのは当たり前のことです。40分間戦って、初めてB1の土俵に立てると思っています。気持ちの部分もそうですが、泥臭いところ、リバウンドやルーズボールを必ず自分たちの物にする。そして攻撃回数を増やす、そういった部分を意識できれば今まで通りのバスケットも展開できるはずです。」

「とは言え、そんなに甘い物ではない」とも付け加える平尾。開幕戦の相手である秋田ノーザンハピネッツは、激しいディフェンスからガツガツとボールを奪い、相手のペースを乱してくる。「戦い続けるバスケット」の力試しとしては、この上ない相手と言えるだろう。

一方で、B1は平尾にとっても思い入れのあるチームが多く名を連ねる。平尾は、自らを育て上げた指揮官との戦いに思いを馳せた。

「今まで自分が在籍していたチームとは戦いたいとは思っていますし、個人的なところで言うと、レバンガ北海道のヘッドコーチになった佐古(賢一)さんであったり、千葉(ジェッツ)の大野(篤史)さんであったり。川崎(ブレイブサンダース)の佐藤賢次さんもそうですが、そう言った方々がいたから今の僕がいると思っています。そう言った人たちに、自分がどこまで成長したかというのは見せたいです。それが恩返しにつながりますし。」

さらに、マッチアップしてみたい選手も尋ねると、平尾はBリーグ切ってのファンタジスタ、琉球(ゴールデンキングス)の並里成の名を挙げた。残念ながら、琉球との対戦がレギュラーシーズンで無いのが悔やまれるところだ。しかし、そこに続く話で、平尾のB1に懸ける想いが次々に飛び出すのであった。

「相手に負けられないと言うよりは、『負けたくない』というのが正しいのかなと思います。B2を勝ち上がって、B1で戦えるわけですけど、『やっぱりB2レベルだね』と思われるのはすごく嫌です。やっぱりB1の舞台で戦うために僕らはB2の厳しい戦いを勝ち抜いて、この場所に立てたと思っています。やはりこれまで応援してくださった方々のためにも、負けたくないですね。」

平尾は今のチームを指して「40分間戦えることを当たり前のようにできるメンバーが揃っている」と手応えを口にする。闘争心の炎をむき出しにして戦おうとする、バージョンアップしたロボッツが、より楽しみと言えるだろう。

納得のいく後悔をするために

厳しい道のりは、誰もが予想している。では、それを乗り越えて1年を戦いきった時に、ロボッツは何を手にできるのだろうか。まだまだ先のことだとは思いながら、平尾にシーズンエンドの青写真を尋ねることにした。

「スポンサーの方やファン・ブースターの方に、一人一人、全員が『やりきったよ』という表情が見られたらと思っています。『これ以上はできなかったよ。今のロボッツはここまでだよ』と、全てにおいてやりきったという姿を見せたいですね。」

そのためのカギも、平尾はしっかりと心得ていた。

「1試合1試合、あるいは1回の練習というのを無駄にしてはいけないですし、一つのことを無駄にすることで、『やりきった』とは言えなくなると思うんです。後悔はするとは思うんですけど、『あのときこうしていれば』なんて思いたくないんです。だからこそ、日々を全力で取り組むことで後悔も納得のいく後悔になるのかなと思っています。」

チームとして充実した日々を送るためにも、選手たちの自覚にも一段高い物を求める。「ただアドバイスをしたり、発言をしたりするだけではいけない」とした上で、平尾はこう続ける。キャプテン就任時に「覚悟」「責任」を掲げた彼が、それを1年かけてかみ砕いた「深化」が垣間見えた。

「『なぜロボッツにいるのか』『なぜロボッツに呼ばれたのか』というところを一人一人が理解しないといけません。まずは、成長のために必要なことを一人一人が理解しなければいけないと考えています。」

まだまだ先が見通せない世の中ではあるが、今シーズンもロボッツに熱視線を送る人たちは多くいるはずだ。コロナ禍の中、ロボッツとしてできることを、平尾はこう話した。

「チームやアリーナの感染対策はやっていかなければなりませんし、ならば『どこよりも安全なアリーナだよ』とアピールしてもいいぐらいだと思います。そこで安心して応援してくれる方もいらっしゃるでしょうし。その上で自分たちのやるべきこととしては『何かを感じてもらって、帰っていただく』。そこをしっかりやらなきゃいけないと思っています。それは選手である以上、絶対的な使命だと思っていて、『ロボッツの試合で元気もらったよ』とか『頑張っていたよね』とか。一人でも多くの人を笑顔にできるようなプレーをしたいと思います。」

眞庭城聖が移籍したことで、#14髙橋祐二と並んでチーム最古参となった平尾。せっかくの機会なので、この先のロボッツが歩むべき進路についても聞くこととした。

「茨城にいて、いろいろな所にロボッツを感じられるようになったのは大きいですし、ロボッツとしての成長なのではと思います。ただ、まだ『ロボッツって何?』って人は茨城の県内にも多いはずです。僕たちは『茨城県のために戦っている』ことを、アピールしていければと思います。千葉さんだったり宇都宮さんがあれだけの人を集められるのは、県全体の応援あってこそだと思うんです。栃木の人でブレックスを知らない人はいないはずで、千葉の人でジェッツを知らない人はいないはずです。B1のチームには、そういった意味での良いモデルのチームもあります。そこを目指して行ければと思いますし、そこには良いプレーがあることが必須条件です。チームも、現場も、フロントもレベルアップしていく。そんな日々を送れたらと思います。」

ロボッツを「B1で勝てるチームにする」、あるいは「B1で人気のチームにする」。ロボッツの今後の目標を達成するためにも、平尾は欠かすことができない存在だ。今シーズンも、時に厳しく、時に茶目っ気たっぷりのキャプテンの姿に、大いに期待を寄せたい。

おすすめの記事