文:小沼 克年、茨城ロボッツ|text by Katsutoshi Onuma, IBARAKI ROBOTS
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ|photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS
昨シーズン、188cmのポイントガードは初のB1の舞台に足を踏み入れた。青森ワッツ、越谷アルファーズ、熊本ヴォルターズ――。B2ではプロ1年目から日本人トップとなる平均12.8得点を挙げ、その後も自慢のオフェンス能力を武器に順調にキャリアを積み上げてきた。しかし、B1という場所は、まるで別世界だった。
B1の壁に打ちのめされ、「変わる」と決めた夏
本当に悔しい、壁を感じる1年だった。昨季、#7 駒沢颯は試合後のインタビューでこんな言葉を残している。
「最初から相手のプレッシャーに押されて、正直ビビってしまった部分がありました。気持ちの弱いプレーをしてしまって、チームに悪い流れをもたらしてしまったと思っています」
ロボッツに加入する前の2023-24シーズンは、熊本の先発ガードとして平均2桁得点の活躍を見せていた。だが、昨シーズンは出場した53試合のうち42試合がベンチスタート。平均4.5得点と苦しみ、プレータイムも平均10分以上減少した。

こうした状況も覚悟した上でのB1挑戦だったかもしれない。チームとして15勝にとどまった悔しさも、もちろんある。だがそれ以上に、何もできなかった自分に打ちのめされた。
「根本的に自分を変えなきゃいけない」
誰かに答えを求めることはしなかった。「1人で悩みに悩みまくった」駒沢は、腹を括った。オフシーズンに徹底して取り組んだのは身体づくり。B1ではプレー以前にフィジカルで負けていた。
「筋トレは週4、5日くらいやってて、今日は胸と背中、次の日は足、みたいな感じで1日ごとに鍛える箇所を変えてました。あと、ランニングでは体重が増えないと思ったので、坂道ダッシュ。誰もいない時間帯に、近所にある急な坂でひたすらダッシュしてました。食事の量もめちゃめちゃ増やしましたね。元々食べるタイプではないのでラーメンとかお肉も今まであまり食べてなかったんですけど、はじめの頃はそういった油があってとにかく太るものを食べてました。ある程度体重が増えてきたら筋トレで脂肪を落として、食事のメニューも体にいいものを多く摂るようにしました」
ウエイトトレーニングを積み、坂を駆け上がり、食べ続けた。その結果、体重は昨シーズンより6kg増。「去年のシーズン中は77、8kgでしたけど、今は82、3kgあります」。オフシーズンの成果は、思いのほかすぐに現れた。
迷いを捨てた覚醒の28得点
2025-26シーズンのホーム開幕戦、駒沢は1人で28得点を叩き出した。
「1本目のスリーが入ったので全部打つって決めていました」。この一戦では前半だけでキャリアハイを更新する18得点。試合を通して両チーム最多となる19本のシュートを打ち続けた。3ポイントシュート成功率は驚異の6/9。群馬クレインサンダーズを破る立役者となり、ロボッツに今季初勝利をもたらした。

「自分が一番びっくりしました(笑)」
開幕早々に成長した姿を披露できたのにはいくつか理由がある。まずはフィジカルが増したことで簡単に押し負けることがなくなり、シュートの際も体の軸がブレなくなった。もう1つは役割の明確化だ。
「昨シーズンは1番(PG)と2番(SG)の両方のポジションでプレーしていて、個人的にはすごく難しかったです。指示もしなきゃいけない、得点も取りにいかなきゃいけない、しかも初めてのB1だったので苦戦しました。でも、今シーズンは点を取ることが一番の役割なので迷いがなくなりました」
開幕節にアウェーで行われた仙台89ERS戦では、まだ躊躇してしまう場面があった。その反省をしっかりと活かしたことも群馬戦の爆発につながった。

「仙台戦はプレーに迷いが出てしまいました。その時の悔しさがありましたし、ラオさん(#25 平尾充庸)からも『もっとシュートを打っていいんだぞ』みたいなことを言われて、何も考えずに思い切って打ち続けたら結果的に上手くいきました」
この活躍を皮切りに、駒沢へのマークは一変した。ボールを受ける前から密着され、相手のベンチからは「打たせるな!」「シューターだぞ!」という声が飛ぶようになった。ある種、駒沢がB1でも認められた証でもある。
「今は簡単にボールをもらえない状況が多くなりました。けど、そういうディフェンスをされるということは成長できてるのかなとも思うので、これからも一歩ずつステップアップしていきたいです」
ロボッツに欠かせない“コマの魅力”
クリス・ホルムヘッドコーチとも、昨季以上に良い信頼関係が築けている。ある日、指揮官から印象的な言葉をもらった。
「コマはコマのままでいてほしい」
迷わずシュートを打ち続けろ――。そんな意味が真っ先に浮かぶ。だが、この言葉の真意は、もっと深いところにある。自由で、型にはまらず、つかみどころがない。それがコマの魅力だ。指揮官はそう言っているのだ。

今回の取材でも、駒沢らしさが存分に伝わってきた。自らを「めずらしい人種」と表現する27歳は、大学時代はケガの影響でバスケットが嫌いになった。「プロになりたいとは全く思っていなかった」とさらりと言い、「銀座のZARAとかで働きたいとか思ってましたね。東京のお店で働いて、適当に生きていこうかなって感じでした」と笑った。
自覚している性格は「ちゃらんぽらん」。周りからも「バカとかアホとか、何も考えてないでしょ、とかはよく言われるっすね」と明かし、「マジでそんな感じっす。こんなこと言ったらダメかもしれないですけど、『将来こうなりたい』とかもない。正直に話してるんで、全然(記事で)使ってもらって大丈夫ですよ」とあっけらかんと続けた。自分のパーソナルな部分を一通り語ったあと、駒沢は訂正するように言った。
「まあ、バスケにはちゃんと向き合ってるんですけどね。バスケは真剣にやってます。はい……」
個人の成長を実感しつつも、チームの成績がついてきていないことにはもちろん不甲斐なさを感じている。それでも駒沢は我が道を行く。コートの中でも外でも、自分を見失わずにいることがチームの力になると理解しているからだ。
「なかなか勝てていないですけど、ホームでもアウェーでも応援してくださるブースターの皆さんには本当に感謝しかないです。個人的にはまた1つレベルアップした姿を見せて、勝利で恩返しできるように頑張ります」
インタビューの最後、駒沢はホルムHCのメッセージに応えるように、誇らしげに締めくくった。
「僕は僕なので」



