【AFTER GAME】 2021-22 秋田戦(4/27)〜折れず、ブレず、戦い続ける。オーバータイムの激闘を物にして~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

CNAアリーナ☆あきたに乗り込んで行われた、秋田ノーザンハピネッツとの平日ナイトゲームに挑んだロボッツ。開幕戦での激突以来、3戦3敗とロボッツにとっては文字通り壁となっていた秋田というチーム、そして圧倒的なアウェーの空間の中、ロボッツは懸命に食い下がって試合を進めていく。第4クォーター終盤、#11チェハーレス・タプスコットのフリースローで追いついて、今季初のオーバータイムに突入すると、堅守と名高い秋田ディフェンスをかき乱し、最後は#25平尾充庸が3ポイントシュートを炸裂させて勝利。半年がかりの雪辱を果たし、1勝をもぎ取った。逆境上等とばかりに戦い続けたロボッツ。少しでもチーム状況を高めようという気概が、常に見えた一戦を振り返る。

ここ一番に、理想型のオフェンスが凝縮

第4クォーター終了間際、秋田はインサイドの柱だった#9アレックス・デイビスが立て続けにファウルを犯して個人ファウルが5つ達したことで退場となる。#45コルトン・アイバーソンの欠場が続く秋田は、代役のビッグマンが#1王偉嘉のみという状況。その王を投入し、プレーを続けた。

秋田のコートバランスを考えると、ロボッツが渡り合おうと思えば#21エリック・ジェイコブセンがそのパワーでインサイドを制圧することが容易に考えつく。しかし、平尾はこの状況を振り返ってこんな感触を抱いていた。

「むしろ僕らの方が難しいシチュエーションになったと考えています。今まで出てきていなかった選手がコートに立つことによって、オーバータイムの展開が難しくなるということは分かっていたんです。」

ミスマッチであると踏んで、無闇にインサイドにボールを預けようとしてボールが止まれば。あるいはまず預けようとするボールの出所を狙われたら。堅守速攻を地で行く秋田相手に、みすみすポゼッションを明け渡すことになる。1本の攻撃をいかに完成させるかが大事となっているオーバータイムにあって、ロボッツに必要なのは判断力であった。

その結果、ロボッツがチームとして追い求め続けてきた「ズレを作って、オープンからのショットを決める」というバスケットが最後の最後にやってくる。#2福澤晃平がボールを持った場面で、一度スクリーンを仕掛けたジェイコブセンが、インサイドへと素早く戻る。福澤も、相手のプレッシャーを受けた体制から#11チェハーレス・タプスコットへとパスを展開し、タプスコットがドライブに出る。秋田の#5田口成浩がタプスコットに寄ろうとしたところで、福澤が相手のギャップに入り込む「カット」を仕掛け、これで秋田ディフェンスがさらに収縮する。タプスコットがパスをさばいた先には、フリーで待ち構える平尾の姿があった。しびれるような場面でチームとして出した一発回答が、試合を決定づけたのだった。この場面については、平尾がこう説明する。

「難しい展開なのだと、みんなが分かっていたからこそ、動き続けられた部分があると思います。ジェイコブセン選手がゴール下で有利になる部分はあったし、当然彼のポジション取りは見ます。ただ、それを見すぎるのではなくて、しっかり周りで動くというのができた。だから、僕のシュートのところでも、タプスコット選手が持っていたところで福澤選手がカットに入ってくれたから僕のところがノーマークになった。コーチたちが言い続けていた『Unselfish』というところを体現できたから、最後のシュートも決まったのかなと思っています。」

かねてからロボッツが課題としてきたものはいくつもある。終盤戦を勝ちきるというゲームプランに対する遂行力、ハードなボールマンプレッシャーをかわしきるための判断力、その上でチームとしてオープンショットを作り出すハードワーク…。開幕節でぶつかり、敗れた秋田を相手に果たした、半年がかりの雪辱劇。B1での戦いの始まりとともに突きつけられた課題を、一つ一つクリアしていこうとした一貫性がもたらしたビッグショットだっただろう。

目指す姿を最後まで追い求める

誤解を恐れずに書くならば、今のロボッツは足りないものだらけである。前節を欠場したタプスコットが戦線に復帰し、この試合で45分間フル出場を果たした一方で、ディフェンスの要である#29鶴巻啓太の欠場が続いている。加えてこの試合の途中では#14髙橋祐二が相手との交錯から担架で運ばれてコートを去り、粘り強いディフェンスを見せていた#0遥天翼もオーバータイムの途中でファウルアウトとなってしまった。オーバータイムの終盤、ベンチにいてコートに立つことができたのは、#55谷口大智ただ1人である。

ただ、ロボッツはそれらをはね除けるかのように戦い続けた。勝負どころの第4クォーターの序盤、12点差とこの日最大のビハインドを背負った。ただ、ここからがスタートだった。秋田のフルコートプレスを正面から受けつつもボールを運び、ブロックに対しても素早くボールを回してオープンを探る。タプスコットと#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョの連続3ポイントが決まるなど、オフィシャルタイムアウトまでに一気に15-0のランを見せて試合をひっくり返す。その後秋田が盛り返したが、タプスコットがドライブでディフェンスを引きつけ、パスを受け取った福澤が、値千金のフローターを決めて、再びロボッツが勝ち越しに成功する。走り続けた福澤が、肩で息をしながらベンチに戻る姿が印象的だった。

圧倒的なアウェーの環境。残り時間が少ない場面で、ロボッツがフリースローを2本揃えられないかと思えば、秋田もシュートタッチが乱れ出したことで、互いに膠着状態になる。どちらに転ぶか分からない試合を抜け出したのが、ロボッツだった。リチャード・グレスマンHCは、試合後の記者会見でこんなコメントを残している。

「戦術で勝つような試合もあるかと思いますが、この試合については選手のキャラクターが勝ちをもたらしたと思います。タフな立ち上がりで、私にもテクニカルファウルが吹かれてしまいましたが、戦い続けてくれました。この試合の中では、チームのアイデンティティーが出たと思います。タプスコット選手やジェイコブセン選手の得点パターンに対してもより良いルーティーンが生まれています。一方、福澤選手や平尾選手がB1で戦う中で、成長ももちろんありましたが徐々にという形でした。ただ、戦い続ける中でB1でしっかりやっていけていると、証明してくれたと思います。彼らに限らず、選手全員がそれを示してくれたと思います。」

ロボッツは1年をかけて「戦う集団」への成長を勝利で示した。ただ、試合後に平尾に向けて送った質問の答えによれば、まだ成長の余地が残されていると言えそうだ。

「まだまだ、足りない部分があるというのは、コートの上でも、あるいは外でも思うときがあります。でも、1つずつ自分たちの課題をクリアしてきて、シーズン当初と比べれば戦う集団になってきたのかなと感じています。ただ、これが100%の状態だとは僕は思っていなくて、シーズンの残り5試合でそれを感じられるように、僕自身もみんなを鼓舞しながら成長していきたいですね。」

目の前の1勝をどう勝ち取るか。まずはそこにこだわるチャレンジャーとして過ごした1シーズンが、間もなく終わりを迎えようとしている。チームとしての成長、そして選手の今後に対する道筋を付けるためにも、シーズンが終わるその瞬間まで戦い続けないことには、残るものも残らない。どんなシーズンのフィナーレを迎えるか、そしてそれをどう実現するか。張り詰めた雰囲気の中で、追い求め続けてほしいところだ。

次戦は中1日。回復と準備が最優先

この厳しい日程の中、次節の横浜ビー・コルセアーズ戦は中1日の強行軍として行われる。日立開催からわずか2週間での再戦。体のダメージも癒えきらない中だとは思うが、休息からしっかりと準備を行い、試合に入っていきたい。

横浜は前節でハードディフェンスを持ち味とするサンロッカーズ渋谷に序盤からリードを広げられ続ける形で敗れている。#5河村勇輝が8得点8アシストと奮闘したものの、全体的にシュートタッチがまとまらず、苦しい戦いとなってしまった。この試合においては、前回対戦で不在だった福澤・平尾の両名がどれだけアグレッシブに戦い、攻守両面から横浜にプレッシャーを与えられるかが一つのバロメーターになってくるだろう。また、SR渋谷戦ではインサイドアタッカーの#7レジナルド・ベクトンがフリースローを5本全て落とすなど、波に乗れなかった。前回対戦でも早々にファウルトラブルでベンチに退いただけに、ロボッツのメンバーがしっかりと彼のプレーをイメージできるほど戦えていないという事情もある。横浜には帰化選手の#32エドワード・モリスも在籍するだけに、いざとなればビッグラインアップにも出られる。それを防ぐためにも、相手のインサイド陣が嫌がるようなディフェンスを続けての神経戦に挑まなくてはならないだろう。

となれば、ロボッツのキーマンは遥だ。闘志をむき出しにして駆け引きをして、ポゼッションを物にする。時にはゴール下での肉弾戦もこなせる遥が、タプスコットやジェイコブセンにかかりそうな負担を、その泥臭いプレーで減らしてくれることを祈りたい。また、負傷しているメンバーの復帰が可能であれば、それも当然プラスに働く。今のロボッツが出せる100%のパフォーマンスに限りなく近い形で、好ゲームを演じていきたい。

今季最後のアウェーゲーム。ただ、ゴールデンウィークの首都圏開催ということもあってロボッツファンの来場も望まれるところ。会場で、画面の前で、選手たちの躍動ぶりを後押しして欲しい。

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