【AFTER GAME】 2021-22 横浜戦(4/29〜30)〜執念を燃やし続けるも、遠かった勝利~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

横浜ビー・コルセアーズとの連戦。前節から中1日という過酷さをはねのけようとロボッツは戦った。しかし、相手の強烈なまでのシュートタッチの良さが次第にロボッツを苦しめ、GAME1は91-73で敗戦。GAME2は序盤でリードを築いて走り続けるも、第3クォーターで相手の3ポイントラッシュが炸裂したことで捉えられ、91-85で敗戦。追いすがっても追いすがっても相手の背中が遠のくという、悔しいゲームとなったが、選手たちが戦うことを絶やさなかったからこそ、という激闘でもあった。この2日間を、#0遥天翼、#55谷口大智の言葉を中心に振り返る。

調整の難しさに悩まされ

直前の秋田戦は、今季初のオーバータイムでの戦い。さらに今季唯一、中1日というスパンで試合が行われる。1日で横浜へと長距離の移動をこなし、準備をしなければならなかった。一方の横浜は、中1日という条件こそ一緒ながら、今節と同じ横浜武道館での3試合だ。遥は「言い訳にはしたくない」と口にするが、突きつけられた前提からハードであった。前日の調整について、彼は細かく伝えてくれた。

「秋田戦から、翌日には横浜に移動でした。横浜に着いてから、2時間程度作戦を確認して、もう今日の試合、という形でした。向こうのスカウティングをして、どう守るか、オフェンスはどう組み立てるか。そのレビューをしてから各々の時間を作って、走ったり、シューティングをしたりという形でした。」

せめて十分な休養があれば、という動きも随所で起きていた。GAME2で#25平尾充庸は今季最多の6つのターンオーバーを喫する。なんでもない場面で足をもつれさせたり、ボールが手に付かなかったり…。もはやピークを越えて体力を消耗しきっている中、微妙な心身のズレが形となって現れてしまったようにも見えた。

疲労の色は、他の選手からも見えた。GAME1で今季最長の34分50秒の出場となった遥は、記者会見で開口一番、こう切り出した。

「7人で臨んだ試合だったんですけども…。僕は目の前のことをやるのに精一杯で、あまり試合展開が頭に入っていないんです。」

「負けて悔しいのはある」とも話したものの、勝因にしても敗因にしても、しっかり理解した上で話す彼が発したこの一言に、ロボッツが立ち向かっている状況が詰め込まれているようだった。試合を振り返って、遥はこう続ける。

「アツ(平尾)だったりシェイ(#11チェハーレス・タプスコット)だったりが、いつも以上に動きが遅く感じた試合でした。それはやっぱり疲労があるからだろうと思っています。」

それでも、遥は自らに課せられたミッションを、ひたすらこなし続けた。横浜がシュートタッチがとてつもなく良い状況を維持する中で、#9森川正明をGAME1で6得点、GAME2で8得点に抑えた。横浜が誇る不動のエースまで流れに乗せてしまったら、展開はより厳しいものとなっていただろう。

「彼を乗せないことが僕の役割だったので、僕はそこにフォーカスしていました。一度3ポイントを打たれてしまったのもありましたが、全体を見ればできていたと思います。」

今節の敗戦で、ロボッツがシーズン前から掲げていた「シーズン20勝」という目標は果たせないことが決まってしまった。しかし、遥はしっかり前を向いたコメントで会見を締めくくった。

「アツが秋田戦で言ったように、僕らは目の前の1勝を求めて戦っています。GAME1を終えて、僕はこのまま燃え尽きてもいいなと思っています。ケガも気にせず、プレータイムも気にせず。とにかく出されたらその時の100%を出して、それを1試合1試合やってシーズンを終えようと思っています。残りのシーズンに意味がないだなんて気持ちは全くありません。」

今シーズン、彼にインタビューを試みるのは、決まって苦しい展開の試合を終えた後だった。それでも、これだけ熱意のこもった言葉を残してくれた。こうした苦労が勝利で報われてほしいと、これほど強く思った瞬間はなかった。

リベンジに燃えた男の執念

オフェンスも、ディフェンスも、何もかもが良くならないと、勝利はつかみ取れない。リチャード・グレスマンHCも、修正点は「Everything」と言い切った。そんなGAME2において一際目の色が違った男がいた。#55谷口大智である。必死に足を動かしてディフェンスで粘りを見せたかと思えば、得意の3ポイントシュートも決め続ける。3ポイント4本を沈め、今季最多の12得点。コートで、ベンチで声を張り上げ続け、劣勢のチームを盛り立てて戦わせようと必死だった。試合途中には、タイムアウトを経てコートに立とうとする#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョへ、頭をポンと叩いて送り出す姿もあった。

「ここ数試合、チームに対してプラスになれるようなことを、コート上で表現できなくて、それがすごく悔しかったです。特に昨日、天さん(遥)のディフェンスを見て、『何をやっているんだ』と夜にひたすら考えました。今日の試合は特別な気持ちで挑んでいきました。ベンチ外ながら帯同して座っているメンバーの気持ちを考えて、試合に出る僕以外のメンバーに対して、僕がもっともっと何かをしないといけない、僕が表現しないといけないという気持ちになっていました。そうして作った気持ちが、今日のプレーに出たと思うんです。」

それでもあと一歩が遠かった。試合を通じた3ポイントシュート成功率が48.4%にも上った横浜は、ビッグマンのチェックを受けながらでもシュートが決まる状況だった。お祭り騒ぎに湧く海賊軍団の雰囲気が、一歩、また一歩とロボッツを飲み込んでいった。コート上に立てないメンバーのことを考えさせないレベルで、ロボッツは渡り合おうとした。これ以上のハードさでは選手たちが壊れてしまうのではないか、とも思えたが、それでもチームはやりきろうとした。それでも負けが突きつけられるのが、厳しい現実だ。

幸いなことに、ここから待ち構えるのはホームゲーム3連戦だ。青く染まったアダストリアみとアリーナに、ロボッツが帰ってくる。

「残り3試合、試合に出られるメンバーは少数かもしれませんが、会場でブースターさんが醸し出すホームならではのアドバンテージをしっかり活かして戦いたいです。僕が常々話している『チーム全員』というのは、選手やコーチたちだけじゃなくて、ブースターさんもその中に含まれています。改めて、『全員』で一つになって、1つでも多く勝ちに行くという、僕たちのスタイルを最後まで見せに行こうと思います。」

つくづく、愛に溢れた男である。会見を終えてアリーナを後にした筆者は、少し寄り道をしようとアリーナの周辺を歩いていたところで、偶然、水戸へと戻るバスに乗りこむ直前の谷口とすれ違った。こちらに気付いた谷口に「お疲れ様です」と声を掛けると、

「あと3試合。やり返すよ。」

彼は気丈に、はっきりと伝えてくれた。彼が発してくれる言葉、あるいはメンタリティーに、今年のロボッツは幾度となく救われてきたのだろう。聞いた瞬間から胸が熱くなり、ついその場を離れてしまった。突きつけられた課題に対して、ブレることなく立ち向かって成長を続けてきたロボッツ。そして、口にしたことは必ず形にしてきた今年のロボッツ。その言葉に、何も確証がないと言われればそれまでだ。だが、彼らならやってくれる、何かを起こしてくれる。そう思わされずにはいられなかった。

強烈な「個」に立ち向かえ

長かったアウェーでの連戦を終えて、ここからの3試合は全てアダストリアみとアリーナにて行われる。まずはシーホース三河との代替試合だ。この試合は、本来2月に行われる予定だったが、試合開始直前になって新型コロナウイルス感染症の影響から中止となってしまい、この最終盤に組み込まれた。だが、当時とは両チームの様子がかなり違ってきている。

三河はケガ人続出の難しい時期を戦い抜き、現在西地区4位。東地区のサンロッカーズ渋谷や秋田ノーザンハピネッツとの間で、チャンピオンシップ出場に向けた最後の切符を懸けた戦いの渦中にいる。残り3試合で全勝を果たせば、他チームの動向に関係なくワイルドカードでの枠を勝ち取れるため、必勝を期して臨んでくるだろう。

三河の注目選手には#3柏木真介の名を挙げたい。ゲームを落ち着かせ、しっかりとチームに流れを持ってくる能力は、三河の中で特に抜きん出ている。約2ヶ月の欠場を経て、4月に戦線復帰を果たしてから、チームは6勝2敗。スタッツでこそ目立ったものはないが、ワイルドカード戦線復帰の大きな原動力となっている。この41歳に余裕を与えない流れを、ロボッツは作っていかなくてはならない。

ロボッツとしては、平尾、福澤の負担がピークに達している。相手に的を絞らせないためにも、横浜戦で採用したようにタプスコットをポイントガードに据える策も、時には使っていかなければならないだろう。コートに立つどのメンバーも、攻守ともにエナジーを持ち続けていられるか。覚悟が試される40分となりそうだ。

ハードな連戦を経て、「ホームを守る」という目標に立ち向かう残り3試合。まずは、ここのところ厳しい戦いを送った彼らを労い、そしてこのラストスパートをともに走る勢いを、ぜひ会場で分け与えてほしい。

おすすめの記事