「茨城ロボッツU15」が目指す未来。【指導者】根本雅敏の覚悟

2018年4月、茨城ロボッツU15発足時からコーチとして指揮を執る根本雅敏。
様々な葛藤と向き合いながら努力でバスケと向き合い、道を拓き続けてきた彼が考える「指導」、そして、茨城ロボッツU15として目指す未来とは。

根本 雅敏(ねもと まさとし)
■出身地:茨城県坂東市
■生年月日:1996年3月4日
■出身校:延岡学園高等学校→日本体育大学
■指導暦:茨城ロボッツU15コーチ(2018~)
茨城県出身。延岡学園高等学校では全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(ウィンターカップ)優勝(2回)をはじめ、数々の大会での優勝経験をもつ。
その後、日本体育大学に進学し、プレーヤーとして活躍。大学卒業後、2018-19シーズンの茨城ロボッツU15発足時よりコーチとしての道を歩み始めた。

原点は中学校ーコーチになりたい、だから選手を頑張ろうー

根本がバスケを始めたのは小学校2年生の時。
実はもともと野球をやるつもりで、野球を習い始める日を楽しみに、買ってもらったバットで毎日素振りをしていた根本少年。
しかし、いとこがバスケをやっていた関係で練習に行くようになり、「野球のユニフォームを洗うのが大変」という母親の勧めもあり、ミニバスチーム(くわがたミニバス)に入ることとなる。
意外にも気が進まない中でのバスケ人生のスタートだった。

 

「見るのは好きだったんですよ、バスケ。でもやることはそんなに好きではなくて。運動神経が悪かったので、自信がなかったんです。野球をやりたい、と親に直訴した1週間後にまさかバスケをやることになるとは思ってもいませんでした。笑」

そんな彼がバスケに対して「向上心」を持つようになったのは、今まさに彼が指導をしている【中学生】の時だったという。

「中学校では周りは本当に初心者ばかりで、選手だけでなくコーチという立場もやらなければならなかったんです。試合をやっても僕が全部シュートを打つ。目立てたのは良かったのかもしれませんが、なんせ勝てない。笑 それで、勝つためにどうしたらいいのかな、というのを中学生なりに必死で考えて、先生と話しながらメニューを一緒に作ったりしていました。そうしているうちに"将来先生としてバスケ部を教えたいな"という思いが芽生え始めて。それでプレーヤーとしてのモチベーションも上がるようになっていました。選手としてバスケの知識をたくさん身につけて、よりレベルの高いところで経験を積んで、それでコーチになろうと」

強豪校でもなく、周りも初心者ばかり。自分がいくら頑張っても試合に勝てない。
そのような環境でも、腐ることも威張ることもなく、根本が向き合ったのは「勝つためにどうしたらいいか」「周りに何をどう伝えたらいいのか」ということだった。
そして、そのプロセスにやりがいを感じ、「コーチになりたい」と思うようになったという。
「良いコーチになるために、高いレベルで選手を経験したい。学びたい」
そんな強い思いを持って、根本はその後、延岡学園高等学校、そして日本体育大学へと進むこととなる。

茨城ロボッツU15発足1年目で感じた手応えと高い壁

 

日本各地からBリーグU15チームが集結し、凌ぎを削る「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP」。
昨年、茨城ロボッツU15は創設4ヶ月でこの大会に臨み、34チーム中6位と大健闘をみせた。

「CHAMPIONSHIPでは、昨年はとても悔しい思いをしました。あと1回勝てばベスト4だったんですが、その壁が果てしなく高いような感じで。15点差くらいだったんですけど、実力的には40、50点差くらいはあったと思います。個人的にもCHAMPIONSHIPで優勝させる、といいう目標を掲げて、子ども達もそこには連れて行ってあげたいです。今シーズンは1月に大会があるので、ここでの結果にはこだわっていきたいです」

新しいことも積極的に取り入れる。愛情に溢れた柔軟なバスケ指導

「U15の生徒を教えることに大きなやりがいを感じています。楽しいっていう感覚は、正直僕はあまり持っていないです。
使命感、ですかね。
指導では、結構新しいものを取り入れることも大切にしていて、例えば膝に手を置くこと、疲れた時とか膝に手を置くのがダメっていう文化みたいなものがあったりすると思うんですけど、きついと膝に手を置きたくなるじゃないですか、息が切れた時に。
それが本当にダメなことなのかっていうと、科学的に見るとそういうわけでもなかったりして。膝に手をついた方が回復が早いとか。そういう新しいことはどんどん取り入れていきたいと思っています」

精神論だけでなく、立証された科学のもと「新しい知識」も積極的に取り入れていくことで、成長にこだわる。
スポーツ科学を軸に新しいものを取り入れていけるようなチームでありたい、と、年に数回アメリカへ研究に行ってる恩師のスキルコーチから情報を得るなどもしているという。

また、大学で専攻した運動生理学も今の指導の役に立っている。
練習メニューには世界最高峰NBAで実践されているものなども参考にしているという。
その徹底した姿勢には、大切な育成年代を預かる覚悟と子ども達への愛情が溢れている。

 

「勉強」の大切さ

中学1年生〜3 年生が在籍するU15。
バスケットボールだけでなく勉強とも向き合わなければならない年代である。

「今大学とかもNCAA化*で、勉強ができないと、例えば試合に出れなかったりっていうことがあったりします。高校入学の時も、評定が3以上ないと入れないとか。バスケで呼んでもらってもっていう学校が出てきているので、勉強はしないといけません」
*NCAA(全米大学体育協会)が定める成績評価値(GPA)を基準の成績より下回ると、試合出場や練習参加ができないなど、アメリカでは大学スポーツの学業との両立が非常に重要視されている。

「勉強」へのアプローチはどのようにしているのか。

「テストが終わったら、報告をしてもらっています。何点取りましたっていう報告を。今はまだその成績によって活動を制限する、ということまではやっていないですけど、今後は取り入れていくことを考えています。保護者の皆様にもお話をしながら、賛成はいただいているので、あとはいつ取り入れるかを模索しています」

「頭を使う」ことはバスケをプレーするにあたっても非常に大切な部分だという。

「体で覚えるだけではなくて、バスケは頭です。昔と今でバスケも変わってきている部分もあります。
走ることは大切ですが、もちろんただ走ればいいだけということではないですし、頭を使うバスケが現代的、現代バスケットボールの主流だと感じています。
勉強の重要性を早く気づいてもらいたいなっていうのは常に思っていることです」

その重要さに気づいてもらうために、時にシビアに【危機感】で感じさせる。

「理解度に差があるときは、時に理解ができない子を置いていくこともあります。理解をしている方に合わせる。ちょっとシビアですが、理解をしていないと試合にも出さないとか。ある程度シビアにしないと危機感を持ってやらないといけないと思っています。分からなくても教えてくれると甘えてしまうと、絶対に伸びないと思っているので。シビアに置いていきます。そこで這い上がってこなければ、そこまで、というくらいの気持ちで。もちろんそこは中学生なので、状況によってアプローチを変えながらではありますが、それくらい厳しい部分も出していかなければ、と強い思いを持って指導にあたっています」

 

信頼関係を築く-コートを離れたところでのコミュニケーションを大切に-

"使命感"のもと、時に厳しい指導を意識する根本だが、一番大切にしているもの、それは「信頼関係」である。

「バスケをしている時はコーチと選手の関係ですけど、コートを離れると年もどちらかというと近く、兄貴と弟みたいな関係なので、悩み相談じゃないですけど、ちょっとバスケから離れた会話をすることもあります。
そうすることでちょっと心を許してくれる部分があったりもします。
嫌われてこそ、という考え方があったりもしますが、自分は良い関係を築けていてこそと思うので。
例えばこのコーチに教わりたいって思ってもらえなければ、きっと貪欲に取り組まないですし、この人に教わりたいと思ってもらえるように何ができるかっていうのは、日々模索しています」

根本が「信頼関係」を大切にするのは、高校時代本気で向き合ってくれた先生との出会いも影響しているという。

「実際に教えてもらったのは短い期間だったのですが、延岡学園で内村昌弘さんに教わったことが今の自分に大きく影響しています。何がかっていうと、【情熱】です。バスケを教えてくれるっていうよりは、情熱で人を動かすっていう方で。
そういう方に出会ったことがなかったので。本気で向き合ってくれる先生で、怒る時は怒るし褒める時は褒める、一緒に泣く時は一緒に泣く、という先生でした。かなり影響を受けましたね、熱かったです、すごく。
先生が先行してエナジーを出すタイプで、先生が1番声を出すので、引っ張られるんですよ。試合中も「何をやっているんだよ」じゃなくて、試合中に大きな声で「お前ならできるから」みたいなワードを平気で言ってくれる人なので、自分の指導に取り入れている部分もたくさんあります」

真っ直ぐな眼差しでU15への思い、バスケットボールについて語ってくれた指導者・根本雅敏。
頼もしい言葉の一つ一つに茨城ロボッツU15の未来が光って見えるようだった。
若き指導者が我々にどんな景色をみせてくれるのか。
今後のさらなる躍進に期待したい。

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