【AFTER GAME】ケーズデンキ presents B2 PLAYOFFS QUARTERFINALS 2020-21 佐賀戦(5/08~09)~連勝に見えた、「我慢」と「強心臓」~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

B1昇格を懸けた決戦、B2 PLAYOFFS 2020-21がスタート。ロボッツはホームに西地区3位の佐賀バルーナーズを迎え撃った。互いにオフェンシブに戦いを進めたGAME1、ロボッツが101-93でつばぜり合いを制すると、GAME2では手にしたリードをたびたび詰められる展開を我慢しきって、86-79で連勝。ロボッツはセミファイナルへと駒を進めた。緊張のシリーズを乗り切った選手たち。ただ、まだ安心するには何もかもが早い。選手たちは、それをしっかりと理解していた。今節のAFTER GAMEは、#2福澤晃平、#29鶴巻啓太へのインタビューを中心に、B1昇格・B2制覇に向けた最後の鍵を探る。

「我慢」の裏に、個々の役割の積み重ね

「ちょっと流れが悪くなったときに、コートの内外で我慢ができるようになっていますね。GAME2を例に取ると、一気に逆転されそうな流れでしたし、シーズンの前半ならさらにリードを付けられそうな状況でしたけど、小寺選手がすごく体を張ってくれて、いいディフェンスを何回もしてくれました。そういうところから、いい影響が周りにも伝わっているような気がするんです。」

GAME2を終えて、福澤から出てきた言葉。「我慢」というワードは、レギュラーシーズンの後半戦ごろから#25平尾充庸などがたびたび発するようになったものだ。思えば、シーズン開幕前に取材の際、これまでのロボッツを指して、福澤やアシスタントコーチの岩下桂太は「流れが悪いときに、我慢ができない」と述べていた。ただ、この佐賀戦においては、相手に傾きかけた流れを冷静に止め、再びロボッツに呼び込むという根気強さが確かにあった。この最終局面に来て、ロボッツに生まれた「我慢」の心得。福澤に、その真相を尋ねることにした。

「何が変わったかといえば、選手個人個人の役割が明確になったこと、そしてその役割をしっかり果たしていることが大きいと思います。少しでも雰囲気が緩めば、ベンチから天翼さんがチームを引き締めるような言葉を送ってくれますし、試合が終われば、若手はシューティングをずっとやってますし。そういう姿が各所で見られることで、みんなの気持ちも自然と引き締まっているんじゃないでしょうか。」

さらに、福澤は若手の成長についてこう付け加える。

「功平(#13中村功平)とか鶴巻が試合に出る時間が長くなって、鶴巻なんかは特に、ディフェンスが自分の仕事なんだと明確に分かってきたところ、さらにそれが自信になってきたところもあります。ファウルになってしまう場面もありましたけど、相手のキーマンをしっかり止めて、相手が嫌がるようなディフェンスができていました。相手のエース、あるいは中心選手を抑えてくれるというのは、彼にとっての自信にもなっていると思うので。そういった底上げは大きなことだと思います。」

一度、新型コロナウイルスの影響によってチームが活動を止めた際にも、福澤は中村と鶴巻の成長について言及している。それを改めてここで言葉にしたということは、それだけの実感があるということだろう。

また、ロボッツにとってシーズン中、常に課題として付きまとったリバウンドの獲得。セミファイナルの仙台89ERS戦においても、勝敗の大きな鍵を握っているポイントだと福澤は明言する。そんな中、リバウンドに対して彼はある意識を明かす。そして、それこそが非常に重要なポイントであった。

「半ば冗談ではありますけど、『1試合で3リバウンド取る』って僕は周りに言い続けているんですよね。自分の体のサイズに関係なくリバウンドに飛び込む姿勢を見せることで、そこでまたいい影響が生まれたらいいなと思うんです。」

ガードポジションの選手も含めて、チームでリバウンドを取りに行く。平尾の言葉を借りると「ちっちゃい人間もがんばる」姿勢を見せることで、「40分間戦うチーム」への足がかりとなっていく。実際、福澤はGAME1でリバウンドを3本、GAME2では2本と、福澤は局面局面で戦う姿勢を見せた。この姿勢がチーム全体に伝わっていけば。「戦う集団」としてのロボッツが目指す先は、二段三段と高いものになっていくのではないだろうか。

鶴巻の強心臓に見えた成長

シーズン終盤に入り、スターターとしての出場が増えてきた鶴巻。プレーオフに入っても、それが変わることはなかった。プレーオフの空気感を問うと、彼の強心臓ぶりがいきなり垣間見えた。

「楽しみだったといいますか、思ったより僕自身としてはプレーオフの圧を感じることはありませんでしたね。レギュラーシーズンの延長という感じでした。クォーターファイナルがGAME2で終わったので、GAME3までもつれたら、さすがに経験のないことなので分からないですけども。」

スターター起用について問われると、「まずは小林選手の穴埋めという意識があった」という鶴巻。そこでディフェンスをやりきるという意識の明確化ができたことで、連続してのスターター起用につながっているのではと、彼は自己分析する。スターター起用が増える中で、彼の「守り方」も変わりつつある。例えば香川ファイブアローズ戦では#30テレンス・ウッドベリー、熊本ヴォルターズ戦では#11石川海斗など、相手のエース封じを目的とした、いわば「ジョーカー」的な存在として光を放ってきた。しかし、この佐賀戦では#2レイナルド・ガルシアや#18相馬卓弥など、場面によって守る相手を変えながら結果を残したところに、大きな成長が見えるといえるだろう。

一方、そうした成長の裏には、彼なりの反省もあった。

「終盤戦、越谷と当たったときにテクニカルファウルを取られてしまいました。そこから、どう守ったらファウルじゃないのかをしっかり考えてやってきましたし、納得いかないと思っても、割り切って次に一本守ろうと切り替えるようになりました。」

鶴巻曰く、クォーターファイナルの2試合ではチームとしても判定の基準に惑わされたり、突っかかったりすることなく戦えているという実感を明かす。レギュラーシーズンの終盤戦に負けが込む事態となったロボッツだが、そこでしっかりとチーム内で話し合ったことで、「相手に立ち向かう」という大原則を再確認できた効果だと、彼は語る。

プレーオフ進出の瞬間、東地区2位確定の瞬間、そしてこのクォーターファイナルと、今シーズンのロボッツは節目節目のゲームをしっかりと勝つことで道を切り開いてきている。そして、次のセミファイナルを勝ち抜けば、チームの目標の一つであるB1昇格を果たすことができる。どう戦っていくか、鶴巻に意気込みを尋ねた。

「ホームというアドバンテージもあります。とにかくあと2勝して、B1昇格という目標を達成したいところですが、そこに気負いすぎると硬くなってしまうというか、試合の入りも悪くなってしまうと思いますので、いつも通りのスタイルで、いつも通りのことをして、試合に臨んでいけば、勝てるんじゃないかと思っています。」

鶴巻の自信に満ちた言葉の数々に、インタビューの最後、「なんというか、強心臓ですね。」と、ついこちらの本音が漏れた。それを聞いた鶴巻は、あっさりとこう言ってのけた。

「だって、ウジウジしていてもしょうがないじゃないですか。試合に集中しないといけないと思うんです。ファンやブースターの方も茨城に集まるわけですし、まずは勝って昇格を喜べたらと思っています。」

この思い切りの良さが、今年のロボッツの変化をしっかりと支えてきたのだ。大一番ともいうべき戦いが続くプレーオフで、「いつも通りを目指す」というだけの冷静さも併せ持っている。この度胸が発揮される場面が、楽しみでならない。

全ての道は勝ってこそ開かれる

セミファイナルの相手は、西地区優勝の西宮ストークスを破った、仙台89ERS。この戦いを制することで、ロボッツはこれまでの悲願であった「B1昇格」を手中に収めることができる。ホーム・アダストリアみとアリーナの圧倒的な応援を受けて、選手が躍動する姿を心待ちにしたいところ。一方で、選手たちはクォーターファイナルの結果に安堵することはなく、「僕らはまだなにも成し遂げていない」と気持ちを引き締めており、白熱の戦いが予想される。

仙台は#5ダニエル・ミラーと#21エリック・ジェイコブセンがフル回転でインサイドを手厚く守ることでハイスコアの打ち合いに持ち込ませず、仙台らしい守り勝ちで、セミファイナルへと駒を進めた。シーズン最終盤のロボッツ戦でも見せたゾーンディフェンスとの併用がうまくはまった格好ではあるが、ロボッツとしては同じ手に二度やられるわけには行かない。集中力高く相手を分析し、相手を上回っていきたいところである。

ロボッツのキーマンは1人ではない。#4小寺ハミルトンゲイリー、#11チェハーレス・タプスコット、#15マーク・トラソリーニ、#31アブドゥーラ・クウソーのフロントコート陣、そして彼らを的確に場面を使い分けながら送り出すベンチワークだ。しっかりとマッチアップを挑み、相手と戦っていく。一方では負担をシェアし合うという、総力戦で勝っていくべきだろう。

Bリーグが始まって5シーズン、ロボッツにとっての悲願に、ついに手が届く瞬間が訪れようとしている。戦って、勝って、B1への切符を掴み取ろう。待ってろB1!

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