【AFTER GAME】 2021-22 新潟戦(3/19~20)〜待ちに待ったホーム連勝。流れが来るまで待ち続けて~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

サンロッカーズ渋谷からの逆転勝利を経て、勢いをさらに付けたかったロボッツ。アダストリアみとアリーナに新潟アルビレックスBBを迎えた。2試合ともに満足な展開とは言えないゲームにこそなったが、GAME1では第4クォーターで大差を付けて74-54で勝利。GAME2では最終盤まで続いた攻防戦を制して79-76で連勝。敵地での連敗のリベンジを果たしたと同時に、B1で初の4連勝を達成し、シーズンの勝利数も2桁に乗せた。決して順風満帆ではないチーム事情を酌んだ上で、戦い続けることで勝利を得たロボッツ。B1昇格後、初めてのホーム連勝を飾った週末を、オフコートでの出来事も含めて振り返っていく。

全ては我慢が引き寄せた

ボールを動かしながらオープンを探り、シュートチャンスを作るのだが、肝心のシュートがリングに嫌われる。GAME1の立ち上がりはどこか重苦しい雰囲気になっていた。連敗ストップを果たすべくスタートダッシュを狙った新潟が、まずは前に出る。そこからロボッツが持ち直したかに見えても、流れはどちらに傾くのか分からない。大きく突き放すような連続得点も無く、互いにロースコアのまま経過しまさしく「膠着」という展開になっていった。

そんな状況を、チームはどう戦っていたのか。リチャード・グレスマンHCはこう明かす。

「序盤で少しビハインドを背負った段階で、選手たちが集中し直してくれました。確かに第3クォーターまで、オフェンスが上手くいかないことが続いていましたが、我慢を続けてくれて、第4クォーターに入って、自分たちのやりたい、ターンオーバーを減らしつつアップテンポを目指すバスケットボールができました。」

「我慢を続けた」とグレスマンHCが言葉に残したが、特にGAME1で光ったのが、相手のインサイド陣に対するディフェンスだった。#4ジェフ・エアーズ、#15チリジ・ネパウェという重量級選手たちに対して、持たせない、持っても攻め込ませないことを常に徹底し続けた。一方ではボールが止まったところからの展開に、ガード陣が面取りとディナイを必死にやり続け、ボールを押しとどめた。結果はしっかりとスタッツに表れ、GAME1における新潟のアシストは9、ターンオーバーは20。今季のリーグ戦の平均と比べて、アシストを減らしターンオーバーを増やさせた。特に勝敗を分けた第4クォーターだけ切り取ってみても、新潟のターンオーバーは9つを数えた。ロボッツがかつて直面したように、終盤でのターンオーバーはその後の攻守それぞれに影響を与え、徐々にチーム全体を重苦しいものにしていく。ロボッツがそこに追い込んだ、あるいは追い込めるようになったということもシーズン終盤に向けた成長材料と言えそうだ。

また、選手たちも各々が我慢を前面に押し出した。例えば、GAME2の第4クォーター、ネパウェに挑んでリバウンドに飛び付いた#25平尾充庸がファウルをコールされてしまう。ボールへのチャレンジを意図していたであろう平尾は、一瞬むっとした表情を浮かべるのだが、この場面で#2福澤晃平が「しゃーない、しゃーない」と声を挙げ、すかさずハドルを組みに行った。コート上で、今必要なことは何かを共有して解決を図る。1月に行われた群馬クレインサンダーズ戦で、福澤と平尾が見せたシーンとは、逆のものとなって現れた。これまで、どうしてもこうしたシーンで目立ってきたのは平尾だったため、「平尾だけではない」という場面に出くわしたことが、チームとしての我慢が根付きつつあることを感じさせられたのだった。

インサイドの要として長時間コートに立って奮戦した#21エリック・ジェイコブセンは、GAME2を終えての記者会見で、チームとしての進化をこのように話す。

「シーズンの当初はリバウンドが課題として付きまとい、その次は試合のクロージングといった部分が壁になりました。今、自分たちが努力をしてきたことや、意識をし続けてきたことが、徐々に成果として現れていると感じています。強く意識をし続けたからこそ、とも思いますね。」

勝機を見出しながら敗れたという試合は、今シーズンだけを例にとっても片手では足りないだろう。ただ、それを良しとせず、自分たちの現在地をしっかりと見定めて、どう克服していくかを考え続けた結果が生んだ連勝劇だったとも言える。見ている側からすれば胃が痛くなるような2試合・80分ではあったが、それを勝ちきったことがチームに残すものも、さらに力を伸ばすものもあるはず。これからも一戦を着実にものにする姿勢を続けきってほしいところだ。

帰還のトラソリーニは流石の働き

GAME1で新潟に対して食らいつく展開に持ち込めたのは、この日コートに帰ってきた#15マーク・トラソリーニのシュートタッチによるものが大きかった。GAME1で第1クォーター途中から投入されると、前半だけで3ポイント3発を浴びせて9得点。後半は2ポイントやフリースローでも加点し、終わってみればこの試合で両チーム最多となる18得点まで伸ばした。バイウィークが明けて以来、試合メンバーとしてエントリーしながらもコートに立てない日々が続いたトラソリーニだったが、やはりロボッツの得点源であることを、1試合で示してみせた。

改めて、調整中の期間をどう過ごしていたかという問いに、トラソリーニはこう答える。

「難しさを感じる日々でしたね。ただ、リハビリに一生懸命取り組もうと励んできました。一週間前の段階で、今日コートに立てるかどうかは不確かな状態だったんです。ただ、徐々にではありながら良くなっていったので出場ができました。プレータイムに対して制限はありましたし、そうなるともっとプレータイムは少なくなると思っていたのですが、プレーの中で自分のリズムにも乗ることができたのは良かったと思います。」

様子見だったがゆえだろう、この2試合でのプレータイムもさることながら、彼がインサイドをどっしり守る展開はほとんど訪れなかった。それでも、外からシュートタッチやダイナミックなドライブでゴールを脅かし続けたことで、オフェンスの原動力となっていたことは疑いないところだ。

一方、ディフェンスでも新潟の#4ジェフ・エアーズや#25ロスコ・アレンなど、ウィングから襲いかかる点取り屋たちに辛抱強く相対した。GAME1では20分程度、GAME2では12分程度と、まだフル回転とは行かないだろうが、離脱中の4試合でプレータイムが軒並み35分を超えていた#11チェハーレス・タプスコットと、久々にローテーションを組むことができたことも大きい。トラソリーニが長くコートに立ったことで、タプスコットは久々にプレータイムを30分未満に抑えることができた。ロボッツのビッグマンたちが揃ってタフガイであることは分かっていながら、やはりダメージは少ないに越したことはない。さらに#0遥天翼の復帰がこの新潟戦で果たせず、加えて#55谷口大智もようやくチームに戻ってきたばかりとあっては、彼らに負担を強いることも現実的ではない。シーズン終了まで続くタイトなスケジュールの中、頼れる男がコートに立てたことが、何よりの収穫だった。

GAME1を終えた段階で、グレスマンHCに対してもトラソリーニに復帰に対して質問を投げかけた。グレスマンHCも、上々といった様子だ。

「試合後にマーク選手と話していたんですけど、お互いに『思った以上の良いパフォーマンスだった』と笑っていました。実のところ、想定していたプレータイムよりは長くコートに立ったわけですが、調子の良さから起用を続けてみました。ただ、今後はそれも抑えながらの試合が展開できればと思っています。」

トラソリーニの武器である高い打点のシュートが必要とされる場面は、毎試合訪れる。チームを救うシュートを、まだまだ見せてくれそうだという片鱗が見えただけでも、この2試合は胸をなで下ろしたくなる一時だった。

鶴巻が明かす、サプライズの仕掛け人は…

SR渋谷戦の試合中に負傷し、戦列を離れることとなってしまった#13中村功平。彼に勝利を届けるべく、選手たちは奮闘を続けた。試合のオープニングでは親友の#29鶴巻啓太や、共にシューティング練習を重ねた間柄である福澤が中村のユニフォームを着て登場したほか、ファンやクラブが続々、中村を応援するべくアクションを起こした。この2日間のアダストリアみとアリーナは「13」に染まっていた。

選手たちのシューズにも中村の背番号「13」が書き込まれたほか、先述のユニフォームには、選手やコーチ・スタッフ陣による寄せ書きが施されるなど、改めて彼が愛されていることが伝わるシーンばかりだった。

実際、試合でも目の色が違ったのが、福澤と鶴巻だった。しびれる場面で3ポイントシュートを沈めた福澤は、両手をポーンと叩き、感情を露わにするような仕草を見せたほか、鶴巻も攻守ともに躍動を続けた。GAME1ではインサイドに飛び込み続けて8つのリバウンドを獲得。GAME2ではシーズンハイとなる15得点を記録して、連勝の立役者となった。

今日の鶴巻は目の色が違う。試合での活躍からそんな確信を得て質問をぶつけたのだが、返ってきたのは少々意外な答えだった。

「目の色変えて、というとそうでもなく…。個人的にはいつも通りプレーしているつもりでした。ただ、功平のためにも、という気持ちはあったので、その結果かもしれないですね。」

チームの面々が気合いの入ったメッセージをユニフォームに残す中、鶴巻は「はやくあそぼうぜー」と一言のみ。長い付き合いであるこの2人の間柄であれば、もはや、敢えて書くのも野暮なのかもしれない。さらに、シューズに書き込まれた「13」の仕掛けに対して話が及ぶと、鶴巻はニヤリとしつつ、こんなエピソードを披露する。

「この試合、シューズに『13』と書いていたんですが、ここだけの話、GAME1の前夜に功平と連絡を取り合ってたんです。その時に『別に良いから、シューズに『13』とか書かなくて良いから』と振りをもらいまして…。しっかり、書かせてもらいました。」

ケガもあって、気分が沈んでいるのでは、と気を揉んでいたところだったが、筆者やファンの方々が思うよりも、どうやら中村は明るさを失っていないようだ。新潟戦を終えたタイミングで、本人のSNSからもコメントが出たことで安堵した人もいただろう。とは言え、彼としてもチームの面々が揃いも揃ってここまでのアクションを起こすとは思わなかったはずだ。決して軽いケガではないゆえに、今後、治療やリハビリが続くことにはなっていくだろうが、彼がコートに戻る瞬間が、一日も早く来ることを待ち望みたい。

北の大地でリベンジを

中2日での次戦は、長距離移動が伴うアウェーゲーム。対戦相手はレバンガ北海道だ。舞台は北海道・北海きたえーる。今シーズンは10月に天皇杯が開かれた際に両チームが対戦しているため、会場の雰囲気などは得ている部分もある。昨年12月にアダストリアみとアリーナでの対戦で敗れた分は、きっちりお返ししなくてはならないだろう。

その北海道は、前節に宇都宮ブレックスとの激戦を終えたばかり。GAME1ではオーバータイムの末に宇都宮を下していて、浮上の機会を狙い続けている。#21ショーン・ロングと#24デモン・ブルックスが揃ってハイスコアをマークしていく一方で、宇都宮戦では#0橋本竜馬と#4寺園脩斗の得点力も勝利を手繰り寄せた。特に橋本はオーバータイムに入ってから3ポイントを2本叩き込んで勝負を決定づけてみせただけに、粘り合いの中で爆発力を発揮されてしまうことは避けたい。新潟戦でできていた、チーム全体でディナイとダイブを防ぐディフェンスをやりきれるかが問われるだろう。北海道はいざというタイミングで#5ダニエル・ミラーを投入し、ゴール下を安定させていく。攻守に渡ってペイントエリアをどうせめぎ合うかは、見どころになるだろう。

古巣対戦となる#8多嶋朝飛やトラソリーニへの期待を抱く一方で、前回の対戦でゴール下で手を焼いてしまったジェイコブセンがリベンジを果たせるか。さらには前回対戦で30得点を挙げる猛攻を見せた福澤をはじめ、日本人選手も続々ゴールへアタックし続けることを、展開として目指してほしい。

ここでロボッツに求められるのは、良い流れを維持し続けるという新たなステージへの挑戦でもある。続くつくば開催のホームゲームに対してもイメージをより良くすることを考えた上でも、やはり勝ちにこだわる一戦としてほしい。

遠方でのナイターという一戦。さすがに現地は、という人はぜひ「バスケットLIVE」の活用も含めて、ロボッツへの応援を送ってほしい。

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