【AFTER GAME】 2021-22 SR渋谷戦(3/16)〜勝負を続けたチーム。20点差を跳ね返しての逆転勝利~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

新型コロナウイルス感染症にともなって、シーホース三河との試合が直前に中止となり、ロボッツは再びチームの活動を止めた。3試合の中止を経て、ホーム・アダストリアみとアリーナでサンロッカーズ渋谷を迎え撃った。#0遥天翼、#55谷口大智がエントリーしなかったほか、#15マーク・トラソリーニもプレーしない状況が続くなど、厳しい台所事情を示すかのように、序盤から点差を付けられていく展開となった。ただ、臆することなくチームとして戦い続け、終盤に逆転を果たし勝利を収めた。ドラマチックな「上位喰い」の裏には、「自分たちのバスケット」と向き合ったからこそ見えるシーンの積み重ねがあった。

流れを呼んだ真っ向からのディフェンス

この試合の前半、ロボッツは相手のボールマンディフェンスに「アンダー」と呼ばれる戦法を選んだ。SR渋谷の#14ジェームズ・マイケル・マカドゥや#55ジョシュ・ハレルソンらがスクリーンになったタイミングで、あえてボールを持った選手を追いかけず、スクリーナーの後ろについて距離をとるものだ。ドライブに備え、外からシュートを打たせるのを目的に使われる動きだが、SR渋谷のシュートタッチが良く、特に第2クォーターでは5本の3ポイントシュートを浴びるなど、前半だけで8本の3ポイントを許してしまった。

結果的に得点差が詰め切れずに前半を終えるのだが、ハーフタイム中、リチャード・グレスマンHCは選手たちのマインドを改めて奮い立たせたという。試合後の記者会見で、グレスマンはこう語っている。

「戦い続けよう、というのを大きなテーマとして選手たちに伝えました。一方で、スクリーナーに対してディフェンスが付くのではなく、ボールマンに対して勝負をしようという部分を伝えました。戦術で変えようとしていたのはここだけです。」

第3クォーターの立ち上がり、ロボッツはSR渋谷のお株を奪うようなハードなディフェンスを展開し、あっという間にビハインドを縮めていく。#2福澤晃平や#29鶴巻啓太などが「ヘッジ」あるいは「ショー」と呼ばれるディフェンスを展開し、ボールマンにプレッシャーをかけ続けた一方で、ビッグマンの侵入に対しては#11チェハーレス・タプスコットと#21エリック・ジェイコブセンがゴール下を必死に守り抜く。結果的にSR渋谷のシュートは、ゴール下を勝ち抜いたものか、タフな体勢で打たされるものかという状況となり、得点が停滞していく。第3クォーター開始時点での14点差はあっという間に埋まり、旗色はロボッツのものになっていった。

そこから再びSR渋谷が点差を付けたものの、ロボッツはしっかり相手と戦い続けていた。攻勢を強める一方でディフェンスの強度も抜かず、第4クォーター残り7分ほどで遂に逆転に成功する。その後のしのぎ合いを経てもリードを譲らず、課題としていた試合のクロージングの部分では、相手が落としたシュートを回収し、オフェンスをきっちり成功させることで流れを渡しきらなかった。最終盤には福澤と#25平尾充庸のビッグショットが立て続けに飛び出し、4ヶ月前の「お返し」に成功した。

特に平尾が見せたジェイコブセンとのピックアンドロールからの3ポイントは、形としては昨年12月に行われた島根スサノオマジック戦でのラストプレーに似通ったものがあった。奇しくも、というシュートではあったが、同じミスショットは打たない。そんな気迫も乗り移ったかのような一本で、ロボッツが勝利を手にした。

試合直後のインタビューで、平尾はゲーム展開をこう振り返る。

「タフなチーム状況ではあるんですけど、それを言い訳にして負けるわけにはいきませんでした。後半に一丸となって全力で戦った結果が勝利になったと思います。」

どんな状況であろうとも、平尾が常日頃から言葉にして伝え続けている、「40分間戦い続ける」という初心を忘れなかった。数多くの不安要素を跳ね返したことは、喜ばしいというほかないだろう。

思い切りと駆け引きで相手の思惑を外す

この試合のオフェンスにおいて一つのカギになったのが、第4クォーターの開始直後に鶴巻が見せた3ポイントシュートだった。ベンチ側のコーナーに陣取ってパスを受けた鶴巻が、しっかりとリングに沈めていく。このシュートが決まったことで、SR渋谷のディフェンスに対してくさびを打ち込んだ。

そこから早々に、またしてもコーナーに近い位置でボールを受けた鶴巻に対して、再びの3ポイントを打たせまいと#12西野曜が寄っていく。鶴巻も一瞬シュートモーションに入る素振りを見せたが、ここでベースラインがガラ空きになる。隙を見逃さなかった鶴巻は、一気に駆け抜けて得点を決めてみせた。きっちり個の判断と能力で得点を取りきった効果は、大きなものだった。

思い切り、となると福澤の活躍は見逃せない。第1クォーターこそ無得点だった彼だが、尻上がりに調子を上げて終わってみれば20得点。3ポイントに至っては5本全てを決めてみせ、得点源としての躍動ぶりが際立った。シーズン終盤にさしかかり、この男が乗ってきたことは好材料そのものだ。福澤自身、調子の良さについては、改めてこのような感触を得ているという。

「京都(ハンナリーズ)戦のころから、シュートタッチが戻っているなと感じています。そこからチームの活動が止まって行動制限期間になってしまったわけですが、それを経ても良い感じでした。空いたら打つと決めて、それが入っていった感じでしたね。」

チーム練習が制限されることにともなって、準備不足やコンディション調整の難しさに直面するロボッツ。その中でも、一本のシュートを決められるかどうかは、ゆくゆく勝敗に直結してくるポイントでもある。迷わないこと、そして決めること。終盤のしびれる場面で福澤が自らに課されたミッションをやりきったことは、彼自身の「BUILD UP」の証でもあっただろう。

また、遥、トラソリーニ、谷口の不在、さらには鶴巻が一時ファウルトラブルに陥るなど、緊急事態が続いた試合展開の中、#8多嶋朝飛や#13中村功平がしっかりと流れをつないだことにも触れなくてはならない。サイズの面でミスマッチになる相手にもしっかり食らいつき続けたディフェンスもさることながら、多嶋は両チームを通じて最多の7アシストで攻撃をかき回し続けた。一方の中村も随所に気迫溢れるプレーを見せ続け、相手の嫌がるプレーを率先してこなし続けた。試合終了間際に、中村がSR渋谷の#55ジョシュ・ハレルソンと交錯したことで負傷し、そのままコートを後にしたことは悔やまれるが、彼がまた元気にコートを駆け抜ける姿に期待を抱かせる一戦だった。

大敗も見えたところからの逆転勝利を手にしたロボッツ。改めて、その波を維持できるかが次の課題となる。この週末もホームゲームでの連戦となるが、しっかりと勝ちきりたいところだ。

ホームを守って、連勝を

次節の対戦相手は東地区の新潟アルビレックスBB。1月にアウェーで対決した際には連敗を喫した相手でもある。今回の対決はロボッツのホームゲーム。今回は連勝を狙うと同時にホームを守るための戦いであることをしっかり意識したいところだ。

新潟は#4ジェフ・エアーズと#25ロスコ・アレンの両外国籍選手が得点を量産していくのが特徴だが、これに呼応するように日本人選手たちが牙をむいてくる展開は避けたいところ。前回の対戦では#21納見悠仁にGAME1で11得点、GAME2で20得点を許し、新潟を勢いづけてしまっただけに、連動性をどれだけ断ち切るかが問われる一戦となるだろう。

ホームを守る上で、一つの山場となるだろうこの試合。平尾も「アウェーで2敗を喫したので、ホームコートを守れるように」と、決意を口にしている。

ロボッツのキーマンは、#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョだ。なかなかプレータイムを得られない日々が続いた彼だが、チームが厳しい状況にあるからこそ、彼が一皮むけたプレーを見せることが重要になる。SR渋谷戦では久々に3ポイントシュートも決めて、波に乗るには十分な要素。前回の新潟戦では、相手の#6コービー・パラスに活躍を許しただけに、今度はゴメス・デ・リアニョの番にしたいところ。独特のリズムから打ち出すシュートラッシュが蘇るか、注目したい。

目の前の試合をしっかり勝ちきること、戦うこと。改めてロボッツに求められていることは実にシンプルなものである。それを実現させて、連勝という流れに持っていけるかどうか。終盤戦を占う一戦、ぜひ会場で応援をお願いしたい。

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