【AFTER GAME】 2021-22 京都戦(3/5〜6)〜見せた修正力と遂行力。復活のシュートラッシュで五分に~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

秋田ノーザンハピネッツとの試合から中2日でのアウェーゲーム。京都ハンナリーズとの連戦に臨んだロボッツだったが、GAME1では前節に続いてシュートタッチに苦しみ続けて得点が伸びず、86-81で敗れてしまう。翌日のGAME2ではキーマンを抑え込むディフェンスと、1試合16本の3ポイントシュートが決まるなどオフェンスも噛み合って、70-96の大勝を収めた。26点差をつけての勝利がB1昇格後最大の点差ならば、試合の開始から終了まで一度もリードを失わないという、B1昇格後初の快勝でもあった。その裏には、ロボッツがチームとして戦うのに欠かせなかったポイントが浮かび上がっていた。選手・コーチの言葉で、この2試合を振り返っていく。

キーマンを絞る。そして時間いっぱいにやりきる

GAME1でロボッツを苦しめたのは、京都の司令塔・#25鈴木達也だった。周囲を活かす視野の広さがある一方、自らもシュートチャンスを作り出して打ちきることができる。GAME1で記録した16得点・7アシストは脅威というほか無かった。まずは彼がボールを持つ中での連動性を断ち切る。GAME2は激しいボールマンプレッシャーで鈴木のドライブを阻んでいった。その戦略について、#11チェハーレス・タプスコットはこう振り返る。

「相手のキーマンである鈴木選手など、ポイントガードの選手にできるだけゴールから遠い位置でボールを持たせたり、そもそも持たせないことで、ペイントエリアに入らせないことを徹底しました。」

高い位置でプレッシャーをかけることで、ゴールから遠い位置でスクリーンプレーを使わざるを得なくなった京都。ロボッツはこのプレーに対してスクリーンを抜けて相手に食らいつく「タグ」と呼ばれるディフェンスを積極的に使うことで、ボールマンにさらなるプレッシャーを与えた。また、ゴールから遠い場所でのスクリーンとなるため、ゴール下での数的不利も発生する。そこを守りきったロボッツが、ディフェンスから優位を作り出していった。

思えば、昨シーズンの終盤戦、B1昇格に向けた大きな原動力になったのは、相手のスクリーンプレーに対するディフェンスの精度が上がったことも大きな要因であった。後半戦・終盤戦において、B1基準でもこうしたプレーができていることは、一つ収穫とみて良いだろう。

鈴木には結果的にはGAME1と同じ16得点を許すことになったが、アシストは2に抑えた。京都のチーム全体のアシストも、GAME1の21から12と大きく減っている。コート上を「個」として孤立させたことが、数字の上でも現れていると言って良いだろう。

一方GAME2では、京都のエーススコアラーである#32ジャスティン・ハーパーを封じ込めたことも大きな戦果だった。プレースタイルを考えればややミスマッチとなる#21エリック・ジェイコブセンがしっかり足を動かしつつハーパーに正対して壁となる。簡単なアタックを許さなかったことで、京都のオフェンスを分断気味にした。さらにハーパーは前半の9分程度のプレータイムで4つのファウルがかさんだこともあって、早々にファウルトラブルに陥り、京都は終盤までローテーションに苦しむこととなった。終わってみればハーパーはこの試合で6得点。シーズン初の1桁得点に抑えてみせた。

こうした守り勝ちの裏には、コーチ陣の采配にも光るものがあったと話すのは、リチャード・グレスマンHCだ。アシスタントコーチの福田将吾、岩下桂太との打ち合わせを経て、ディフェンスを改める決断をしたと記者会見で明かしているが、これがピタリとハマる格好になった。その上で、グレスマンは選手たちを称えた。

「ゲームプランの変更こそありましたが、やはり選手たちのおかげだと思っています。ディフェンスにおける素晴らしいメンタルを持って試合に臨んでくれましたし、よくやってくれました。」

ベンチワークの意図と選手の遂行力が最後まで噛み合った試合。GAME2では、悪い流れが来れば、まだリードを持っていてもタイムアウトを積極的に使って、相手の時間を断ち切ろうとした。こうした噛み合い方を増やすことができれば、勝ち星は自ずと増えてくる。終盤戦に向けて、意義ある勝ちだったと言っても良いだろう。

「暁」の舞台での刺激を得て

茨城ロボッツ所属選手として初めて、日本代表に選出された#55谷口大智。「AKATSUKI FIVE」のユニフォーム姿や、国際試合でも見せたシューターとしての活躍に、胸を打たれたロボッツファンも多かったことだろう。代表戦を終えた谷口は、隔離期間が明けてすぐとなる京都戦でベンチ入りを果たし、GAME2では3ポイントシュート3本を含む10得点を挙げた。2桁得点は昨年12月のアルバルク東京戦以来のこと。一方、インサイドのラインアップに悩んだ京都が#43永吉佑也などを投入することでビッグラインアップを採用する中、ディフェンスでもパワフルさを見せた。

これぞ谷口、と思わせたプレーもあった。第2クォーター残り4分あまりと言う場面。#13中村功平からのパスを受けた谷口がこの試合2本目の3ポイントシュートを決める。目の前にはシュートチェックをするべく飛び込んできた#7ジェロウム・ティルマンがいたのだが、お構いなしと言わんばかりのシュートだった。この日決めた3本の3ポイントシュートは、いずれも相手の長身の選手が飛び出してきた中で決めたもの。長身シューターとしての面目躍如とも言えた。アンダーサイズであることがクローズアップされがちなロボッツにおいて、やはり彼のアクセントが大きな意味を持つことが、改めて証明された形でもあった。

そんな彼が、日本代表での活動を経て、学びを得た部分があったのだろうか。試合を終えたばかりの谷口は、こんなコメントを残した。

「代表活動で吸収できたのは、『自分のシュートに自信を持って良い』ということを、しっかり身に付けて帰ってくることができましたし、ポジティブな言葉がどれだけチームにとって大事なのかも、トム・ホーバスヘッドコーチから学んできました。それをしっかり、チームに還元しようと思いました。」

日本代表でも、ベンチの中から声をかけ続ける姿、一方では練習場でのムードメーカーぶりに、「らしさ」を感じたファンもいたはずだ。それは何も、闇雲に体現しようとしていたものではない。国を背負ったプライドがぶつかり合う舞台で、自らを含めて初めて日本代表に選出された選手もコート上にいる状況。谷口はどのように鼓舞を続けていたのだろうか。

「気が付いたことは遠慮せずに言ったり叫んだりしようと思ったし、へこんでいる暇も無いので、そういった選手がいれば、立ち上がるように声をかけて、全員で盛り上がろうとしていましたね。」

彼がいるといないのでは、ベンチの雰囲気が大きく様変わりする。劣勢でも声を張り上げ続け、ブースターにノイズを煽り、味方の良いプレーには大きなリアクションを送る。青春時代を送った京都で、再び谷口大智というバスケット選手が何たるかを見せつけてくれた。これからもロボッツをブーストし続ける存在であってほしいと、願いたくなるようだった。

新戦力が躍動する古豪にリベンジを

次節はシーホース三河をアダストリアみとアリーナに迎える。ロボッツとは昨年10月に対戦し、この時は敗れている。ただ、三河はその後離脱者が続出し、現在も#5カイル・コリンズワースと#14ジェロード・ユトフがインジュアリーリスト入り。さらにアキレス腱断裂の大ケガを乗り越えたばかりの#21橋本晃佑が、骨折により再び離脱する事態に見舞われている。

その中でも勝率が5割を超えている三河において、ロボッツ戦でのキーマンは2人の新戦力だろう。まずは3月4日に加入が発表されたばかりの#0ジョナサン・オクテウス。193cmとポイントガードとしては長身を誇り、ダイナミックなドライブでゴールを脅かす。加入間もないため、まだチームへの順応は未知数だが、昨シーズン在籍した滋賀レイクスターズでは1試合30得点を記録するなど、点取り屋としての素質も十分に持っている。まずボールを持たせない、ボールを持った時には外へ外へと押しやるようなディフェンスができるかを注目したいところだ。

もう一人は、2月5日に選手登録がされたアンソニー・ローレンスⅡだ。伸びやかに全身のバネを活かすプレーも見せる一方で、シュートタッチも繊細な部分を見せる。加入後4試合中3試合で20得点超えを記録しており、#54ダバンテ・ガードナーと対を成す得点源となっている。ガードナーを含めた外国籍トリオから自由を奪っていけるかが注目されるだろう。

対するロボッツは、ジェイコブセンによる献身的なプレーがカギを握ると考えられる。京都戦では2試合連続で得点とリバウンドが2桁となる「ダブルダブル」を達成したジェイコブセン。彼がリバウンドを取りきっていくことが、シューターたちの思い切りをより良くさせていく。両チームを通じて最長身となるジェイコブセンが、文字通りゴール下の番人となっていけるか。攻守両面で期待がかかるだろう。

今のロボッツに必要なのは、見出した勝機を逃さずに、勝利という結果につなげること。今度はホームのファンの前で、胸のすくような戦いを心待ちにしたい。

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