【AFTER GAME】 2021-22 秋田戦(3/2)~151日のBUILD UPが生んだもの。そしてなお見つめるべきもの~

取材・文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

昨年10月、ロボッツにとって、B1での最初の対戦相手となった秋田ノーザンハピネッツ。2試合ともに大敗を喫してから、実に5ヶ月を経て再戦の時を迎えた。ロボッツは日本代表「AKATSUKI FIVE」招集の影響で#55谷口大智を欠いたほか、#15マーク・トラソリーニが欠場。総力戦で競った戦いを演じたが、最終盤で秋田に突き放されてしまい、70-76で敗戦。開幕節のリベンジとはならなかった。開幕からの151日という時間を経て、改めてチームとして伸びたものもあったが、突きつけられた課題も存在した。

層の厚さが物を言う展開に

この試合、両者ともに3ポイントシュートのタッチに悩まされた。両チームの成功率(ロボッツ:18.2%、秋田:27.3%)はいずれもシーズン平均から10ポイント以上低いものであったことからもそれが分かるだろう。

両チームともに攻撃がなかなか完成しづらい展開の中、両者の命運を分けたのは、ベンチから登場した選手の得点力だった。ロボッツのベンチポイントは#8多嶋朝飛の5得点と#13中村功平の2得点のみ。前半を終えた段階では無得点だった。一方の秋田で一際異彩を放ったのが、#24保岡龍斗だった。タフショットを沈める中で流れに乗ると、シーズンハイとなる20得点を記録。ベンチポイントは43に達した。試合を通して外国籍選手のファウルトラブルが付きまとった秋田において、控えメンバーの活躍は勝利をたぐり寄せた活躍と言っても過言ではなかっただろう。リチャード・グレスマンHCは、この様子をこう振り返る。

「ベンチポイントの差は、秋田さんに対して大きく感銘を受ける部分です。層の厚さと言いますか、ベンチ入りした全員が能力を発揮できるようにロースターを揃えていることは、秋田さんの強みの一つだと思います。こうしたことがあると分かっていたので、驚くことではありませんが、素晴らしいという印象でした。」

層の厚さはあればあるほど良いものだろう。特に今月のスケジュールだけを切り取って考えても、喫緊の課題であると言える。代替試合が移動したことなどを含めて、3月27日のサンロッカーズ渋谷戦まで、常に水曜開催と土日連戦を繰り返すのだ。秋田戦のようにフルロースターが揃いきらない日も出てくる可能性も、タイトスケジュールの中で主力メンバーが調子を落とす可能性も、決して否定はできない。1回の離脱が、多くの試合に絡んでしまいかねない状態は、やはり避けておきたいし、プレータイムを得ることで芽吹きを迎える選手もいるはずだ。グレスマンHCは試合後の会見で、さらにこう続ける。

「自分たちは、まずしっかり『Compete(戦う)』ということをやろうとしています。谷口選手が日本代表に選ばれたことは本当にすばらしかったと思います。ただ、彼の不在ということ自体は、秋田さんにも古川選手(#51古川孝敏)がいなかったので同じことです。京都戦の2試合が週末に待っていますし、今月は週3試合が常に控えている状態です。層の厚さは大きく影響するでしょうし、そこがB1とB2の大きな違いでしょう。現に秋田さんはプレータイムのシェアやコントロールといった部分を非常によくやっていました。ロボッツとしてはこの状況を言い訳にすることもできるかもしれませんが、自分たちが今できるベストを尽くすことが大事になってきます。プレータイムの偏りも自覚していて、ケガに対しても懸念はありますが、同時に自分たちは勝ちに行かなくてはいけません。難しいところだとは感じています。」

コロナウイルスの影響と、さらには日本代表の活動というイレギュラーな影響が重なり合うことで、リーグの終盤戦に向けてスケジュールはタイトとなる一方だ。とは言え、これを乗り越えなくては勝利は掴めないし、BUILD UPも果たすことはできない。改めて直面したこの課題を、真っ向から解決しにいく残りシーズンであってほしい。そう願いたくなるゲームでもあっただろう。

接戦の中、戦う姿勢は随所に

トラソリーニと谷口が不在とあって、この試合のロボッツはともかくインサイドでのローテーションに負担が生じていた。しかし、その中でも我慢強さは最後まで残り、#21エリック・ジェイコブセンは度々相手のオフェンスファウルを勝ち取り、#11チェハーレス・タプスコットもマッチアップを変えながら守り続けていた。機動力とパワーで度々秋田のインサイド陣を振り切って得点を奪っていく様は、一種の爽快感も感じさせた。時折互いにベンチに下がる展開もあったが、最終的なプレータイムは2人とも35分を超えた。ジェイコブセンは改めて、チームとして力強さを養う必要性を感じるようなコメントを残した。

「バイウィーク前にも話したことではあるのですが、接戦を勝つ力が必要だと思わされました。良い時と悪い時の波を小さくして、堅固に戦っていけるようにしたいですね。それは、チームとしても、僕個人としても同じ事だと思います。」

戦う、という姿勢で言えば#25平尾充庸の躍動ぶりも見逃せない。シュートタッチが合わず、得点こそ伸びなかったものの、ルーズボールへの飛び込みや、相手のガード陣のフィジカルプレーに一歩も退かず、渡り合う姿勢を見せ続けた。全くの余談ではあるが、すっかり黒髪が馴染んでいた彼だが、バイウィークの間に髪色が明るくなったことで、どことなく懐かしさを感じたファンの方もいたはずだ。敗戦に悔しさはにじませつつも、平尾はこのように試合を振り返った。

「久々の試合でここまで戦うことができたことは、自分たちが少しは成長できたのかなと思っています。ただ、まだまだ勝ちきる力や戦い方は修正しなくてはいけないので、次に向けてがんばっていきたいところです。開幕節では1対1の場面でスティールをされたり、パスカットをされたりという場面がありましたが、今日に関してはそれを減らしていけました。一方では自滅のようなターンオーバーもあったわけです。フィジカルや、場面判断というところは成長できているのでは、とは感じています。」

第4クォーターの残り7分半あまりというところ。ゴール下のこぼれ球に、平尾は飛び込んでロボッツのポゼッションにしてみせた。つないだボールを受けたタプスコットがゴールへと押し込んだことで同点に追いつくわけだが、あのハッスルプレーは、シーソーゲームが続く中でチームに一つ喝を入れに行くようにも見えた。改めて、その意図を問うと平尾はこう応える。

「自分たちは、一つのボールを泥臭くプレーしなくてはいけないと考えていて、どっちに転ぶか分からないボールを、必ず自分のものにしなきゃいけないとも思っています。その中で、僕自身が体を張って、みんなに見せるべきプレーをするポイントだったと思いました。」

ただ、と平尾は付け加える。

「今日の試合に関しては、勝負どころに入って僕がターンオーバーをしてしまったことが勝敗に響いたと感じています。そこは自分の責任でもあると思います。まだまだ、成長しきれていない。そこは反省しながらも、またBUILD UPしなくてはと思っています。」

開幕節。2試合ともに20点以上の差を付けられたチームは、最終盤まで競り合うところまで成長を見せた。ただ、ここから勝ちを得ることが果てしない道のりであることは、選手やスタッフも改めて噛みしめる一戦になったことだろう。秋田との直接対決は、もう1試合残されている。次の舞台は「クレイジーピンク」が待ち構える秋田のホームではあるが、ここを勝利することで、さらなる成長の爪痕というものを残してほしい。

敵地で京都を倒し、上り調子を掴み取れ

次節の対戦相手は西地区10位の京都ハンナリーズとのアウェーゲーム。bjリーグにルーツを持ち、B1の座を守り続けてきた京都との対戦は、Bリーグにおいては初となる。因縁や伏線といったもののない、純粋なぶつかり合いとも言えるだろう。

バイウィークの中でも宇都宮ブレックスとの対戦があった京都。2月13日のGAME2では後半の猛追で宇都宮をあと一歩のところまで追い詰めた。#32ジャスティン・ハーパーがほぼフル出場をして31得点を記録したこと、さらにこのプレーの長さの中、ファウル無しで戦いきったことは特筆すべきポイントだろう。出場34試合全てで2桁得点を記録しているアタッカーが、ロボッツ戦でも大きな脅威となることは間違いない。

ただ、それ以上に活躍が光ったのが、この試合で久々の2桁得点を記録した#43永吉佑也だった。強固な日本人ビッグマンの存在は、京都の攻守両面を下支えする上に、活躍がチームに+αの影響を与えていく。ロボッツは短いインターバルの中でしっかりと対策を練りきって、この試合に挑みたいところだ。

対するロボッツは、この2試合においても谷口の復帰が微妙な状況である。地元に近い関西でのゲームではあるが、隔離期間が明けてすぐの試合という事情もあるので、出場やコンディションには慎重を期したいところだ。ただ、AKATSUKI FIVEのユニフォーム姿で鮮烈な活躍を残した彼が、再びのBリーグの舞台でどうなるかは、目に焼き付けておきたいところでもある。

となれば、サイズのある日本人選手の活躍が欠かせない。#0遥天翼、#29鶴巻啓太がどれだけ相手コートをかき乱していくか。特に鶴巻は秋田戦でシュートタッチに終始苦しめられた部分もあるため、リベンジを期待したいところだ。

勝ちに行く。そのための準備をやりきり、プレーで全てを解き放つ。勝利を待ちわびるファンに、一つ、吉報を届けてほしいところだ。

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