【AFTER GAME】 2022-23 島根戦(1/7~8)~強豪との激戦も、あと一歩が及ばず~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

ロボッツの新年最初の試合は、アウェーに乗り込んでの島根スサノオマジックとの一戦。GAME1は島根の猛攻を受けてしまい、今季初の100失点オーバーで敗戦。GAME2は序盤のビハインドから猛追を続け、第4クォーターで一時逆転に成功するも、そこからシュートが中々入らず島根の再逆転を許し、このカードは連敗に終わった。リーグ戦の折り返しが迫る中、チームは改めてどのような戦いを目指そうとしているのか。選手や指揮官の言葉で振り返る。

"攻め"のための先手

GAME1の大量失点を受けて、ディフェンスでの修正が注目されたGAME2。しかし、第1クォーターで27-14と、またしても大きなビハインドを背負ってしまった。島根の口火を切ったのは、#2ペリン・ビュフォード、#3安藤誓哉、そして#4ニック・ケイである。しかし、そこからのロボッツはディフェンスでの立て直しをしっかりとやりきっていく。

まずは第2クォーターの立ち上がりで、ゾーンディフェンスを採用。前日はそこを縫って入られる展開もあったのだが、この日はゴール下に相手を入れさせず、相手のテンポをまず落とさせた。島根が打開策を出し切れない間に、ロボッツは10連続得点を挙げるなどで一気に島根を追い上げていく。

ただ、ゾーンディフェンスが長くなる中で、島根も安藤やケイの3ポイントが当たり始める。特にケイはGAME1の序盤に3ポイントラッシュを見舞ってロボッツの出鼻をくじいているだけに、2日続けての大当たりは許したくない。

このあたりから顕著になってきたのが、島根のボールハンドラーに対するプレッシャーのかけ方だ。安藤がケイのスクリーンを使おうとしたところに、ロボッツはビッグマンたちも一緒になって安藤を一瞬追い詰める。前日はケイがスクリーンをかけたあとで外に展開してパスを待つことも多かったが、思ったようなテンポでパスが来ない。このクォーターを14失点に抑えたことで、ロボッツが糸口を掴んだ。

こうした、さまざまなディフェンスの仕掛けについて、リチャード・グレスマンHCはこう振り返る。

「点差があって簡単な展開ではない中でしたが、ゾーンディフェンスは効いたと思います。リーグでもベストプレーヤーに入るであろう、ビュフォード選手、安藤選手、ケイ選手たちがコートに立つ中、ゾーンにすることで3ポイントシュートを打たれることこそありましたが、全体的にはよく守れていました。前日の試合ではシーズンの中でも最もディフェンスが悪くなってしまいましたが、この試合でのディフェンスのパフォーマンスは良かったと思います」

こうして、先手を狙った仕掛けをすることで、ビハインドの展開ながらロボッツが主導権を狙える状況を作っていけたわけだが、GAME1の終了後に#25平尾充庸も、「やはり後手に回ってしまったことが今日の敗因」と言葉を残した。

一方、早い仕掛けでの勝負を望んでいたのは、島根とて一緒だったようだ。同じくGAME1を終えたタイミングで会見に現れたのは、昨季のロボッツ戦士の1人、島根の#55谷口大智だった。谷口はこの会見の中でチーム内でのやり取りを明かしてくれた。

「『ロボッツは絶対にリベンジを狙ってくる』というのをミーティングで話して締めくくりました。やっぱり、勢いに乗られる前にしっかり対処したいというのを一番に考えていましたし、勢いに乗ったら止まらなくなるのがロボッツのスタイルだと思うので、そこに行く前にしっかり勝負を付けに行こうとしていました。(GAME2でのポイントを問われて)試合が始まって3分、もしくは5分という段階で相手に『今日は行けるぞ』と思わせないようにしたい。出だしから相手に気持ちよくプレーさせないようにしなきゃいけない、そこが一番重要だと思っています」

上位陣との戦いの中で、相手を叩くチャンスを、ロボッツは着実に作り続けている。ただ、その上でやはり勝つことが相手に強烈な印象を与えていく。島根との今季の対戦は終わったが、西地区の上位勢との戦いそのものはまだ残っている。そこでロボッツが勝つことで、外から見たチームの評価はさらに変わっていくはず。負けも多かった序盤戦を過ごしたからこそ、「あの時のロボッツに勝っておいて良かった」と言わしめるようなチームになっていかなくてはならない。次の1勝につなげるための1敗になったと、振り返られるような試合になってほしいところだ。

現在地を噛みしめて

年末ゲームでの3連勝を経て、連敗となったわけだが、チームとしての良さが出なかった部分もあり、改めてそこを引き締め直す時間にもなったはずだろう。GAME1を経て、平尾は敗因についてさらにこう語っている。

「チームの共通認識のところで、ズレが起きてしまっていた部分もあって、全員で共通認識をした上でプレーしないと、どうしても後手に回ってしまうし、自分たちのリズムも作れません。相手の選手たちに高確率でシュートを決められてしまうと、どうしても気持ちの面で焦りだとかも出てくると思うんです。ただ、試合全体を見れば、キープレイヤー以外を抑える、ということはできていたわけで、そこをよりフォーカスしていければ、とも思いました」

一方、冷静にチーム状況を見据えているように思わせたのが、#17山口颯斗だった。「勝てそうだったのは悔しかった」とGAME2を振り返りつつ、敗戦をこう受け止めている。

「やっぱり僕らは今のところ下位にいるチームなので、勝ったときであっても挑戦を続けていたからこそ勝てていたと思うんです。そうした日々を送ることは、ずっと変わらないと思いますね。良い試合ができている一方で、今までやってきたことを積み重ねていくこと。キャム(#15キャメロン・クラットウィグ)が入ってきたことで取り組める新しいこと。この2つを積み重ねていけば、結果も付いてくると思うんです」

山口はさらに「精度を高めることが大事」とも話す。そのためには改めて「ディフェンスとリバウンドが大事」と説いた。「アップテンポ」やオフェンスが強調されるロボッツバスケ。その一方で、多くの面々がディフェンスとリバウンドの重要性を繰り返し求め続けていた。改めて、ロボッツが継続性の中で戦っていて、若い山口にもそれがしっかり受け継がれているのだろう。

昨シーズンの同じ時期と比べると、ロボッツの成長の度合いは確かに現れている。昨シーズンにオールスターゲーム前まで日程を終えた時点で、チームは5勝にとどまっていたわけだが、今季はここまで9勝を挙げている。これを良いと捉えるか、そうでないと捉えるかは、受け取った人次第な部分ではあるが、着実にチームは成長の階段を上がっているところだろう。

ただ、ここでその手を緩めるわけにはいかない。グレスマンHCは、「全てに対して戦わなくてはならない」と話し、「全く簡単ではない」と付け加えた。これがロボッツの現在地であり、さらに途方もないステップを踏まなくてはならない。それでも、そこを乗り越えなくては始まらない。戦うこと、戦い続けること。ロボッツにとっては、これからも目の前の日々が重要であり続けるだろう。

勝利でオールスターを迎えよう

オールスターゲームを前にしてのラストゲーム、ロボッツはアウェーで群馬クレインサンダーズとの水曜ゲームに臨む。群馬とのアウェーゲームは、今シーズンこの試合のみ。敵地での勝利を掴みたい。今季は12月にアダストリアみとアリーナで対戦しており、この時は1勝1敗と星を分けている。

群馬は12月に2度の3連敗を経験し、年明けに行われた天皇杯で横浜ビー・コルセアーズに逆転負けを喫した。さらにその試合でB1昇格を争った時期からの大黒柱である#3マイケル・パーカーが負傷離脱。チーム最長身の#25ケーレブ・ターズースキーも不在となるなど、チーム全体を見れば緊急事態ともいうべき状況だ。ただ、その中で行われた仙台89ERS戦では連勝を果たしており、再びの上昇気流を掴もうとしている。

オフェンシブチームを相手とするのだが、ロボッツとしてはやはり守りで先手を打っていきたい。島根戦のGAME2で見られたように、もう一歩追い立てるようなプレッシャーを増やしていくことで、群馬のオフェンスのテンポにズレを生ませたいところ。#16並里成や#4トレイ・ジョーンズらが組み立てる群馬のオフェンスに対して、#13中村功平や#29鶴巻啓太らがディフェンスで相手を絡め取れるかが重要度を増す。

その上で、オフェンスでは相手を走力で上回っていくことで、ジワジワとロボッツのペースにしていきたい。そうしてペースを握ってきたところで、平尾や山口らが見せる手数の豊富なオフェンスが活きてくると言うもの。選手たちが度々口にする「自分たちのバスケット」に対する遂行力の高さが、最後はものを言うことになるだろう。

ハードなスケジュールのなかで1勝をつかむことが、チームを軌道に乗せていくはず。「北関東ダービー」で前に出るのはロボッツであると、結果・内容ともに示せる試合を願いたい。

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