【AFTER GAME】 2022-23 群馬戦(1/11)~チームで守り、チームで攻める。今季最大点差で勝利~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

オールスターゲームを前にした最後の試合。ロボッツは敵地に乗り込み、群馬クレインサンダーズとの「北関東ダービー」に臨んだ。ロボッツが前に出ては群馬がそれを猛追するという展開が続く中、第2クォーター終盤から後半にかけて一気に突き放したロボッツが66-89で勝利。今季最少失点に抑え、さらに23点という今季最大点差での勝利としてシーズン10勝目を挙げた。短期間の準備で勝利を収めた裏にあった、遂行力の高さを紐解く。

見せ続けた「チーム」の形

群馬はここぞという場面での合わせのプレーが光るチームだが、その要である#3マイケル・パーカーが負傷欠場中。攻撃は#16並里成や#4トレイ・ジョーンズが組み立てていくこととなった。その並里には#13中村功平や#25平尾充庸、#2福澤晃平がピッタリとマークに張り付き、ジョーンズの行く手は#17山口颯斗や#29鶴巻啓太らが阻む。

ズレを生もうとしたところに、#21エリック・ジェイコブセンや#11チェハーレス・タプスコットも参加して、簡単なシュートを打たせなかった。試合後の記者会見で、リチャード・グレスマンHCはこう振り返っている。

「山口選手や鶴巻選手がジョーンズ選手にすばらしいディフェンスをしてくれましたし、ここは私たちのディフェンスにおけるゲームプランの大きなところでした。平尾選手、中村選手、福澤選手も並里選手を抑えてくれて、多くの選手がいろいろな面でチームの勝利に貢献してくれました」

第2クォーター、群馬の控えから登場した#14菅原暉や#7五十嵐圭が得点を重ねたこともあって、群馬が一時逆転に成功するが、ロボッツはここで慌てず、またディフェンスから群馬の流れを止めていった。さらに、意表を突くロングパスを使った攻撃を群馬が狙うと、そこにきっちり反応し、簡単な得点を許さない。ロボッツはペースを握り続けて試合を展開していった。試合を通じてのターンオーバーは、ロボッツが6つなのに対して群馬が15。なかなか脚が動いてこないところで打開を狙った群馬のパスを絡め取り、ロボッツが着実にピンチの芽を摘んでいく。前節・島根スサノオマジック戦ではやりきれなかった「ディフェンスでの先手」をやり続けた40分であった。

また、オープンショットを極力防いだ結果、この試合での群馬の3ポイントシュートは前半に菅原が2本を決めたのみ。一瞬ディフェンスが遅れたように見えたシーンでも、ジェイコブセンや#1トーマス・ケネディがしっかりコンテスト(手を上げてシューターの動きや視界を妨げること)を続けていくことで、シューター揃いの群馬を相手に、3ポイントから反撃の糸口を作らせなかった。ここについて、グレスマンHCは手応えを語っている。

「チームとして、今ディフェンスを向上させることができていて、対戦相手の3ポイントを抑えていくというところで、良いところが見せられています。相手の3ポイントを『33%以下にする』ことを目指している中、3ポイントへのコンテストを意識していったこと、ここは勝ちに繋がった大きな部分だと思います」

かねてから「楽な3ポイントを打たせない」というディフェンスを目指しながら、それがなかなか結果に結びついてこなかったロボッツ。リーグでも上位を争うオフェンシブ集団に対して、結果で示せたことが大きかっただろう。

全員が躍動したオフェンス

チームとして戦う姿勢は、オフェンスにもたびたび現れた。試合開始直後こそ、タプスコットが1対1のポストプレーからの得点を重ねたが、その後はそういったシーンばかり、という状況にはならず、連動性の良さを次々に見せていく。ビッグマンがアウトサイドでプレーする中、コーナーにいた鶴巻や山口は度々空いたゴール下へと駆け込む。パスを着実に受けて得点したかと思えば、相手がインサイドを絞り込んでいるときには3ポイントシュートを見舞う。オフェンスで輝いたメンバーも多彩で、出場12人中9人が得点。2桁得点も4人が記録するなど、バランスの良さが光った。

連動性の良さは数値にも表れる。この試合のアシストはBリーグによる速報値で27。先述したターンオーバーの数と合わせて考えれば、ボールが繋がり続けたオフェンスだったとも言える。ただ特定の誰かが起点になり続けた、ということでもなく、個人の最多アシストは福澤とタプスコット、そして#8多嶋朝飛、#15キャメロン・クラットウィグの「4」と分散できている。

誰から始まっても、誰を絡ませても得点が生まれたということも大きかった。グレスマンHCはここにも言及し、「アシスト数について、また様々な選手がアシストをしていることも素晴らしかった」と述べ、オフェンスの連動性についてこう付け加えた。

「チーム内にボールを動かし続けるということが波及したこともあると思います。1人がしっかりとボールを動かし続け、人も動く。それを1人1人がやっていくことで、動かしやすい状況になります。チームとしてそれをやり続けられたのが、良いオフェンスにつながったと思います」

時に起点となり、時に強烈なフィニッシャーとなり。オフェンスでも躍動したのが山口だった。この試合でも14得点・7リバウンド・2アシスト・1スティールと、どこにでも顔を出すような活躍を見せ、オールラウンダーの面目躍如となった。試合後のフラッシュインタビューに現れた山口は、チームオフェンスの良さについてこう話す。

「(6試合連続2桁得点ということで)自分の調子も上がってきていますし、チームも島根さんに2敗してしまいましたが、この6試合で4勝できている。チームの調子が良いのも嬉しいです。(スタッツについて)ターンオーバーの少なさについては分かっていなかったのですが、フリースローの多さは感じていました。全員がアタックしてファウルをもらえていたと思いますし、オフェンス面は非常に良かったと思います」

攻守両面で、遂行力の高さを切らさなかったからこそ、最後まで主導権を渡さなかった。オールスター明けの試合もオフェンシブチームとの戦いが多く待ち受ける中で、この戦果はチームに大きな自信を与えるだろう。

オールスター明けは敵地から

アダストリアみとアリーナで行われた「ドットエスティ B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2023 IN MITO」も終了し、すぐさまリーグ戦が再開する。次節もアウェーでの水曜ゲーム。対戦相手は千葉ジェッツだ。千葉Jとは12月にも敵地で2連戦を行い、この時は連敗に終わっている。B1昇格後、千葉Jに対して7戦目での初勝利を狙う一戦となる。

千葉Jは#13大倉颯太に加えて#9二上耀も膝の負傷で離脱中。加えて#4ヴィック・ローが前節の秋田ノーザンハピネッツ戦を欠場するなど、チーム全体がコンディショニングとの戦いになっている。しかし、秋田戦はスターターのうち4人が30分以上の出場、#2富樫勇樹を始めとして3人が35分以上のプレーをするような状況になりながら勝利していて、改めて地力の高さが垣間見えた。

ロボッツが気を付けたいのが、#14佐藤卓磨、#31原修太の2人。フィジカル・パワー両面で暴れ回られてしまうことは避けたい。また、前回対戦では不在だった#11西村文男がゲームを落ち着けるようにしてしまうと、ロボッツのペースは出しづらくなる。ボール運びの選択肢が豊富な千葉Jに対して、的確なマッチアップでそれを防いでいくことが重要になるだろう。

ロボッツの注目選手はクラットウィグ。前回対戦では合流できていなかったため、千葉Jとは初対戦となるのだが、ビッグマンを多く擁する千葉Jのインサイドの中で、高さと動きで勝負できる存在は貴重。クラットウィグをきっかけに、チームとして打開できるかがポイントになりうるだろう。

オールスターゲームを終えて、混戦模様になりつつある東地区での上位争いに再び割って入りたいところ。もう一つ高いレベルでプレーし、上位チームに勝ちきるロボッツの姿を楽しみにしたい。

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