水戸のど真ん中が熱く燃えた3日間

取材・文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:茨城ロボッツ photo by IBARAKIROBOTS

「ココロ、たぎる。水戸」をコンセプトに、茨城ロボッツの本拠地であるアダストリアみとアリーナを舞台に行われた、「ドットエスティ B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2023 IN MITO」。会場の外も含めてオールスターゲームとの連携で盛り上がろうという中、特にM-SPOを拠点とした「B.STYLE FLOOR」は、バスケットに限らない様々なイベントが行われていた。期間中には約1万人が訪れるなど、街のにぎわいを生み続けた3日間を振り返る。

さまざまなブースが集まって

この3日間のM-SPOは、さながら縁日の屋台が並ぶような様子を見せていた。

茨城の名産工芸品の制作体験ができるコーナーや、スポーツ体験、さらにはロボッツのホームゲームにも出店しているキッチンカーのほか、水戸市発祥の「オセロ」の対局コーナーなどが並ぶなど、賑わいに一役買っていた。

工芸品の体験コーナーでは、笠間焼のプレートを使ったキーホルダー作りを始めとして、水戸市の「水府提灯」をモチーフにしたチャーム作り、さらにはミニ畳の制作体験などのブースが、南町自由広場に設けられた。コーナーで制作したアイテムはそのまま持ち帰ることができたため、アリーナへ立ち寄る前に体験に臨む人も多く訪れた。

DAY1にここを訪れた女性ファンたちは提灯型チャームの制作に挑戦。制作を終えるとその足でアリーナへの来訪を予定していたようで、「平尾選手に見てもらえればうれしいし、見てくれるかな」と、用意されたステッカーでデコレーションを施していった。

スポーツ体験コーナーでは、茨城県内の各プロスポーツチームが参加しての体験ブースも設けられた。サッカー・Jリーグの水戸ホーリーホック、プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツ、そして3人制バスケットボール・3x3のS.LEAGUEに参戦中の茨城BACKBONEがB.STYLE FLOORに参加。特に茨城BACKBONEのブースには、実際の競技でも使われるコートパネルが敷かれ、3x3会場のような装いに。子どもたちも続々とボールを持ち、競技に親しむ様子がみられた。

DAY2に3x3のブースを訪れた親子連れは、DAY1ではアダストリアみとアリーナに訪れ、試合やコンテストを観戦したという。気になった選手・プレーを尋ねると「コー・フリッピンのダンク!」と一言。普段の試合ではそうそう見られないような迫力あるプレーに、思わず目を奪われたようで、家族全員で楽しめたようだった。

「B1に昇格するころにロボッツを知って、息子がファンになりました。それまでサッカーも続けていましたが、今はすっかりバスケに熱が入っています。目の前に有名な選手たちも集まっていて、楽しそうな雰囲気も伝わってきたのが良かったです」

選手たちも一役買って

3日間のイベントにはロボッツの選手も度々登場し、トークショーに参加。DAY1には#29鶴巻啓太、DAY2には#7浅井修伍と#88ジャワラジョゼフが登場し、バスケットLIVEの解説者としてお馴染みの一色翔太さんとのセッションを繰り広げた。選出された選手たち、あるいはロボッツのチームメイトを巡る話も飛び出したほか、DAY1の締めくくりに行われたB.LEAGUE ASIA RISING STAR GAMEの模様を見ていたというジャワラは「かつての同僚や同世代の選手たちが出場していたのを見て、僕も出られるようにならないと」と今後の活躍に向けて意気込んだ。

そんな中、トークショーを終えた鶴巻を尋ねると、地元選手としての想いも見え隠れするようなコメントを残した。

「今までにないM-SPOの雰囲気の中で話したことで緊張もしましたし、2年前は中止になってしまったことで『オールスターだ』という雰囲気も味わうことができませんでした。こうやって開催できたことで全国のBリーグファンが集まっているのを見て、凄さを感じました。多分、子どものころに地元でオールスターがあったら行っていただろうし、身近に日本を代表するような選手たちが来ることは、子どもたちからすれば夢のような場所だと思うんです。それを見てがんばろうと思う子もいるはずなので、楽しんでもらいたいですね」

さらにDAY1・DAY2に出場した各チームの選手のほか、DAY2の試合前には高橋靖水戸市長や島田慎二Bリーグチェアマンもトークショーに登壇。オールスターゲームやその後の盛り上がりに期待を寄せる一幕もあった。

会場を訪れた人の中には、オールスターゲームのチケットが取れずとも、トークショーやパブリックビューイングを楽しみにM-SPOまでやってきた人たちの姿もあった。会場では、アダストリアのブランド「niko and ...」が手がけるアウトドアシリーズ「CITY CREEK」のブランケットやラウンジチェアなどの貸し出しが行われていて、DAY1とDAY2は、やや肌寒い夜間にイベントが行われたこともあり、こうしたアイテムを借りながら、思い思いに過ごしていく様子が見られた。

そんな中、母娘3人で訪れたという、Bリーグ開幕以来のロボッツファンに話を聞くと、ロボッツの存在が、家族の姿をも変えていったことを伝えてくれた。

「ずっとロボッツを応援する中で、上の子は中学でバスケ部に入りました。アリーナも普段とは違って見えましたし、M-SPOも屋台やビジョンがあると、賑わいがどこか違う感じがしました。(2年前に)中止になったことも考えると、遂に、という感じですね」

DAY2のパブリックビューイングでは、B.BLACKの一員として出場した#25平尾充庸が試合に登場すると拍手で場内が沸き立つ。第2クォーターで#7篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)からのパスを受けて3ポイントシュートを沈めたり、後半に入って#45ジャック・クーリー(琉球ゴールデンキングス)との連係プレーを決めてみせると、一際大きく盛り上がった。

最後は主役が締めて

イベント最終日は、前日のゲーム映像が上映される一方、この日集まったファンの楽しみは試合を終えたばかりの平尾の登場だった。M-SPOにはこの3日間で最大級に人が集まり、トークショーが始まるころには、席を増やした中でも、立ち見が出るほどの人出となっていた。出場選手やコーチ陣との裏話を交えつつ、笑いあり、真面目さあり、時には毒もあり…というあっという間の30分を過ごし、イベントは終幕となった。

2018年、オールスターゲーム招致に向けた構想が持ち上がったころからロボッツに在籍し続けてきた平尾。足かけ5年に及んだオールスターゲームの実現を振り返って、こうコメントを残す。

「プレーヤーとしては貴重な経験ができたし、バスケの祭典のようなコートに立てたことは非常に嬉しく思っています。この経験をバスケだけじゃなくて、ファンサービスや人への関わり方など、できることはたくさんあると思うんです。2年前に無観客での配信だけが行われたとき、個人的には悔しい思いもした中、無事に終えることができたのはうれしいです。街中でこういうイベントができるのは素晴らしいし、M-SPOというスペースがあったからこそとも思います。会場とは別の場所でお祭り気分を味わえることは良いことだったと思います。オールスターを招致しようとしてくれた人たちも報われた瞬間だったかなと思います」

ただ開催を待ち望んでいるだけではその機会が訪れなかったであろう、「Bリーグの祭典」オールスターゲーム。大きな街の盛り上がりとともに行われた3日間が、Bリーグの世界にも、あるいは茨城・水戸といった地域にも残したものは大きかっただろう。いつの日か、「もう一度」という機会が訪れること、そしてそれまでにBリーグと水戸がさらなる発展を遂げていることを願いたい。

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