【AFTER GAME】 2022-23 秋田戦(12/28)滋賀戦(12/30~31)~年末に掴んだ上昇気流。期待を持って新年へ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS

今シーズンの年末ゲーム、ロボッツはアウェーからホームへ、4日間で3試合を戦うハードスケジュールとなったが、アウェーでの秋田ノーザンハピネッツ戦を73-83で勝利すると、アダストリアみとアリーナでの滋賀レイクス戦を90-83、87-69で連勝。この3試合、一度も相手のリードを許すことなく戦ったロボッツは、今季2度目の3連勝を果たして年越しを迎えた。新戦力の躍動とともに、ロボッツが目指すバスケットが随所に見られた3試合。内容盛りだくさんで振り返っていく。

待望の男がすぐさま適応

ロボッツは秋田戦から、11月の加入発表以来、チーム合流が待たれ続けていた#15キャメロン・クラットウィグが登録され、すぐさま試合に出場。これがチームにとって大きな材料となった。第1クォーターから登場すると、すぐさまアシストを3つ記録。「パサー系」の触れ込み通りのプレーをさっそく見せていった。ポストプレーと見せかけて、オープンとなっていた#2福澤晃平へ長いパスを一発でつないだり、#25平尾充庸との連係プレーで相手のゴール下を度々割って入ったり…ということで、合流初期とは思えないレベルでの連携度の高さがそこにはあった。

個人のプレーとしても、秋田のインサイド陣に対しての1on1を制して、ゴールへ向かう場面も見られるなど、上々の立ち上がりと言っても良さそうだ。

試合後のインタビューにも指名されたクラットウィグは、自身のコンディションについてこう語っている。

「2、3日前に日本に着いて、チームでの練習がないままに試合に臨んだという状況ではありました。もう少しできる部分はあったかと思うんですが、最終的にはチームの勝利が一番大事ですので、勝てて本当に良かったです。自分としても、修正できるようなターンオーバーがあったので、より良くやっていきたいと思います」

クラットウィグの良さがあった一方、なぜ元いた選手たちも早速連携を決められたのか。試合後の記者会見に登場した#25平尾充庸に話を聞くと、状態のほどが窺える。

「控えからの登場で一緒にプレーをしたので、キャメロン選手のパスの精度とかも確認しながらのプレーでした。良いパスも飛んできて、非常に『見えている』と思わされましたし、継続的に使ってみようかなと思えましたね。パスが上手いとは聞いていたものの、連携を含めたプレーは今日が初めてでした。ディフェンスを剥がしたタイミングで必ずパスをくれました。そこはしっかりと自分たちの武器にもなるのかなと思っていたので、非常に良い選手がうちに来てくれたと思いますね」

一方、滋賀戦のGAME1を終えたところで、チーム内でもクラットウィグを巡るやり取りがあったと#13中村功平が明かしてくれた。

「僕らもキャメロン選手が加入する前の段階で、ハイライトを含めて、彼についてのビデオを見ていました。キャメロン選手がどういうプレーをするのかというのを、ある程度イメージした状態での合流になりました。キャメロン選手がボールを持ったタイミングで、今まで以上にカッティング(ゴール下へパスを受ける動き)を狙ったり、スペーシングを含めて自然と良くなっているのかなと感じます」

この3試合、クラットウィグのプレータイムはいずれも20分未満ではあったのだが、彼がコートで安定感を発揮することで、#11チェハーレス・タプスコットや#21エリック・ジェイコブセンがベンチで休む時間を作ることもできた。リバウンド争いでの強さを含めて、ロボッツに大きなオプションが加わったと言っても十分だろう。

あの手この手を受け止めて

滋賀戦は2試合ともにバランスの良い攻撃が生まれた一方で、相手をディフェンスで抑えた場面が増えたからこそ、という試合展開でもあった。その立役者となったのが#17山口颯斗だろう。少々のディフェンスはものともしない、滋賀の#5ジョーダン・ハミルトンを度々食い止め、滋賀の連携度を削り取っていった。ハミルトンが山口にドライブでの勝負を挑むものの、体で当たり続けて、山口が主導権を渡さなかった。

GAME2を終えて、リチャード・グレスマンHCは彼の働きについて聞かれると思わず頬を緩ませた。

「ハミルトン選手に対して、山口選手は全てをハードにさせる、ということをやり続けて、体をしっかり使って戦ってくれました。もちろんハミルトン選手は能力のある選手なので、それでも決め続けてきましたが、この貢献度は非常に大きな鍵になりました」

このパフォーマンスによって、チームの戦略も変わった。内幕を明かすのは山口自身だ。

「ディフェンスについては、滋賀さんが(#99川真田紘也を投入して)ビッグラインアップにしたときに僕がハミルトン選手に付いて、それ以外のタイミングではシェイ(タプスコット)が付く、となっていました。ただ、シェイがやられる場面があったので、その後も僕が付くことになりました。ハミルトン選手が一番のキープレイヤーで、タフショットも上手い。結果としてGAME2でも26点取られましたけど、リズムは崩せたと思いますし、頑張りましたね」

ただ、元々山口は取材陣に対して「ディフェンスは苦手なので」と言い続けていた。個人としてのパフォーマンス向上もあったはずで、そこにも話が及んでいく。

「特別指定選手としてプレーしていた時代を含めれば、Bリーグで試合に出続けるようになって3年目になるので、外国籍選手に対しての慣れという部分もあります。一方でロボッツに来て、シーズン前から健吾さん(大塚健吾S&Cコーチ)と横の動きを強化しようとトレーニングを続けていて、そのおかげだと思うんですけど、横の動きや、そこからのフィジカルも含めて向上できているというか。当たり負けもしないですし、反応できているなというのは感じています。」

北海道の特別指定選手時代だった2020-21シーズンにも指導を受けた、大塚コーチとのコンビ再結成。そこで自らを鍛えた結果、山口颯斗というバスケットボール選手が殻を破ろうとしている。攻守ともに結果を残したことで、チームの中での彼の立ち位置がまた一つ変わっていくことだろう。

この3連勝を経てチームは東地区の最下位を脱出し、6位まで順位を戻した。東地区は中団争いのチームが詰まっていて、一つ流れを掴めば一気に上位も目指せる状況になりつつある。これまでのチームの姿とは変わりつつあることを、山口も実感を得ているようだった。

「ディフェンスとリバウンドが序盤戦と比べると非常に良くなっていると思いますし、オフボールの状況でもヘルプに入ろうとしたり、リバウンドを争いに行ったり、という部分が意識から見えますし、そこからの速攻が出ている部分もありますよね。あとはキャメロン選手が来たことで、練習できていないからこその噛み合わない部分もあるんですけど、リバウンドを取ってくれること、エリック(ジェイコブセン)やシェイも休めることで、チームが良くなれているのかなと思いますね」

シーズンは間もなく折り返し。この男の立ち回りが、チーム力の底上げをさらに促していくことだろう。

やはり、頼りになる男

クリスマスゲームとなった宇都宮ブレックス戦のGAME2でプレーのなかった平尾が、秋田戦で早速復帰。この3試合で、改めて頼りになるパフォーマンスを見せていった。

いずれもベンチからのスタート。しかし、平尾に代わってスターターを務める#8多嶋朝飛との対比を上手く作り続け、チームを乗せていった。秋田戦で9得点を挙げると、滋賀戦では2戦とも13得点を記録。自ら仕掛ける場面もあれば、パスの受け手になる場面も作っていった。秋田戦の終了後に「具合は良くなりました」と残したとおり、はつらつとしたプレーが随所に現れていた。

「(控えから流れを変える役割である)シックスマンとして出て行く場面が多いとは思うんですけど、そこでしっかりと僕の役割は何か、というのが考えやすいですよね。悪いなら流れを変えに行けば良いし、良い状態ならそれを続けようとすれば良いというところもありますので、良いエナジーをみんなに与えられているのかなと思います」

滋賀戦のGAME1で、ロボッツは今季のホームゲームで最多となる4337人の入場者数を記録して勝利を飾ったのだが、少し特別な意味合いがそこにあった。今シーズンの開幕戦となったファイティングイーグルス名古屋との試合、4028人という大観衆の中でチームは敗れた。試合後の記者会見に登壇した平尾は、「お客さんに持って帰ってもらえたものはない」とその不甲斐なさをバッサリと言い切っていた。

今季の開幕戦、そしてB2時代にアダストリアみとアリーナのこけら落としとなった、群馬クレインサンダーズ戦(5041人が入場)でも敗戦するなど、ロボッツは4000人以上の来場者がいたホームゲームでは、これまで勝利を果たせていなかったわけだが、チームとして一つ歴史を塗り替えたことになる。

多くの人が押し寄せた中での勝利に、平尾も「勝ち試合を見せられてうれしかった」と言葉を残し「笑顔で新年を迎えてもらえるように」とも付け加えた。ある意味有言実行の年末ゲームとなっただろう。

平尾が出場するBリーグのオールスターゲームも、まもなくという時期に差し掛かってきた。B.BLACKの一員としての平尾が、アダストリアみとアリーナでどんなプレーを見せてくれるのか。楽しみが増えてきている。

西の強豪と渡り合え

次節は長距離を移動してのアウェーゲーム。対戦相手は、西地区で熾烈な上位争いを繰り広げる島根スサノオマジックだ。島根は#8リード・トラビスの負傷離脱という緊急事態がありながら、10月のBリーグ月間MVPである#2ペリン・ビュフォードの爆発力を筆頭にオフェンス能力の高さを見せて上位戦線を維持し続けている。その鍵となっているのが、日本人選手の有り余る得点力の高さだろう。

昨シーズン以来、チームの脅威ともいえる#3安藤誓哉はもちろん、今季は#26津山尚大の加入が大きなピースとなっている。津山の存在によってボールシェアに磨きがかかり、結果としてパフォーマンスの波を小さくすることにも成功している。

そして、なんと言っても島根との対戦は、昨シーズンロボッツに所属したエンターテイナー・#55谷口大智との再会にもなる。アウトサイドシュートの精度は今シーズンも健在ということで、ロボッツとしても彼に「恩返し」を許すような展開にはしたくないところだろう。

ロボッツとしてはこの年末3連戦で見せたチームオフェンス、チームディフェンスの精度をさらに高めて強烈な個性を持つ島根と戦いたいところ。2桁得点を記録するメンバーが多ければ多いほど、ロボッツの勝機が見出せるだろう。

島根が#4ニック・ケイ、#28ウィリアムスニカという重厚感あるインサイドプレイヤーを2人抱えるだけに、ジェイコブセン、クラットウィグがいかにそこを振り切って得点できるか、あるいはペイントエリアでの攻防でアドバンテージを取れるかが一つのポイントになる。いわゆる「ツインタワー」的起用も見られただけに、相手の的を的確にずらしていくベンチワークも重要になるだろう。

前半戦最後の土日ゲームでの勝利を目指す、ロボッツの奮闘に期待したい。

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