若き才能が目指す道~2021-22 開幕前特集 ハビエル・ゴメス・デ・リアニョ〜

待ちに待った、B1での戦いの幕がいよいよ上がる。7月に入って始動を迎えたチームは、来るべき戦いに向けて、徐々に準備を進めている。そんなロボッツに加わった、1人の選手がいる。アジア屈指のバスケ大国・フィリピンが誇る若き才能、#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョだ。シーズン開幕前特集として、ROBOTS TIMESでは来日前の彼にインタビューを実施。日本でのプレーを選んだ理由や、彼の思いの丈をぶつけてもらった。

日本でプレーすることは憧れ

フィリピン大学在学中から、鮮烈な活躍を見せてきたゴメス・デ・リアニョ。ツボに入ったら止まらない3ポイントシュートのラッシュや、スピードに乗ったドライブなどを武器に得点を重ね、昨年行われたFIBAアジアカップの予選でフィリピン代表デビューを飾った。そんな彼が大学卒業に当たって選んだプロの舞台が、日本、そしてBリーグだった。本人曰く、実は日本とは浅からぬ縁があるのだという。

「幼い頃から、海外でプレーすること、また日本で戦うことが夢でした。日本という国は、フィリピン人にとって夢や憧れのある国の一つなんです。2年前、大学生たちの合同トレーニングで東京を訪れ、練習試合も経験しました。そこで日本の方々の振る舞いや接し方に触れて、日本でプレーしたいと思うようになりました。」

引く手あまたとも言うべき有望な選手。そんな彼をロボッツに加入した縁とは。彼自ら、舞台裏を明かしてくれた。

「お誘いがあったチームはいくつかあったんですけども、ロボッツは素早く、そして『LOVE』を持って交渉をしてくれました。リッチコーチ(リチャード・グレスマンHC)ともオンラインで面談をさせていただいて、『君が必要だ』というメッセージがとてもよく伝わってきました。グレスマンHCは『君のプレースタイルはロボッツにフィットするだろう』と言ってくれたことも加入の1つのきっかけでした。」

結果、他のクラブからの誘いを断って、ロボッツの一員となったゴメス・デ・リアニョ。フィリピン代表として、いわゆる「バブル環境」でのトレーニングを続けていたこと、また6月までFIBAアジアカップ予選に出場していたことから、動ける体のままトレーニングを続けて、来日を待っているのだそうだ。同じくBリーグに加入することとなった弟のホアン・ゴメス・デ・リアニョ(アースフレンズ東京Z)ともワークアウトに励んでいるという。昨年、フィリピン代表に帯同する中で、コーチの助言を受け入れて体重を30ポンド(≒13.6キロ)落とすという、大幅な肉体改造を行ったゴメス・デ・リアニョ。現在は「プロ仕様」のボディを目指して、さらに自らを追い込んでいる。

「大学でHuman Kinetics(生物力学)を学んでいたので、その知識と組み合わせながらトレーニングをしています。今はアスレティックトレーナーさんと、パワーを付けるための筋力トレーニングを行っていて、今は体重が220ポンド(≒99.7kg)まで増えました。ここから来日までの間にトレーニング内容を変えて、体を仕上げていくのが目標で、最終的には185ポンド(≒83.9kg)まで減らせればいいなと思っています。」

サイズのあるロングシューターとして活躍するか、あるいはガツガツとドライブで切れ込むウイングプレイヤーになるか。ロボッツには#7西川貴之や#11チェハーレス・タプスコットなど、お手本になるような人材が揃う。この1年、ゴメス・デ・リアニョがプレイヤーとしてどのような成長を果たすのか、ぜひ期待の目を向けてほしい。

国を背負って戦う

プロの舞台の第一歩として選んだロボッツでどんな選手になっていきたいか。ゴメス・デ・リアニョに尋ねてみた。

「ロボッツではまずコート上で存在感を示していきたいです。チームはBリーグのアジア特別枠を僕に使うことを選んでくれたわけですし、そこには大きな責任があると思います。また、チームメイトが元気を無くしているようだったら、しっかり励ますこと、それによってみんなが気持ちよくプレーできるようになってほしいです。個人としては、得点能力を買ってくれていると思うので、そこで貢献できればと考えています。ただ、自分勝手にプレーするということではなく、チームメイトにリスペクトを持つのは当然のことだと考えています。ディフェンスをハードに行うことを含め、自分の全てをコートに置いてくるつもりでプレーしたいと思います。」

さらに、ゴメス・デ・リアニョの言葉の端々からは、母国・フィリピンに対する誇りが見え隠れする。ロボッツファンへのアピールポイントを尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「自分がフィリピンを代表してプレーするときには、どこへでもフィリピンの国旗を持って行きます。母国へのプライドがその理由です。フィリピン人が国を離れて戦うということは、とても難しい挑戦ですし、母国のためにも戦う姿というのを、皆さんにも感じてもらえたらと思っています。」

フィリピン出身の選手は、Bリーグに続々と現れている。先駆者として、昨シーズンにBリーグデビューを果たしたサーディ・ラベナ(三遠ネオフェニックス)を始めとして、今シーズンはその兄のキーファー・ラベナ(滋賀レイクスターズ)、ボビー・レイ・ジュニア・パークス(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)など、B1の舞台でも数々の選手が躍動することだろう。そうした選手たちとの対戦を熱望しているのか、と思えば、答えはそうではなかった。

「僕自身としては、どの試合に対してもイコールに捉えています。もちろん、フィリピン人の選手たちと戦えることは、プラスアルファとして楽しみではありますが、そうは言ってもどの対戦相手に対しても、フラットな精神状態で臨めるようにしたいですね。」

特別な相手を作らずに、目の前の試合に集中しようとする姿勢は、グレスマンHCがチームに求める姿勢にもつながっている。そうした面から考えても、彼がチームにフィットするために、そう時間は必要としないだろう。

日本語は勉強中

来日に先立ってオンラインでミーティングに参加することで、チームメイトと多少の顔合わせを行ってはいるが、ゴメス・デ・リアニョには、じっくりとチームや日本のことを学ぶ時間は残されていない。チームに合流すれば、すぐさまシーズンでの戦いが待ち受けているからだ。彼としてもそれを理解しているようで、すでに勉強を始めているのだという。チームメイトのSNSをフォローし、人となりを把握しようとしているほか、日本語を読解できるように独学にも励んでいる。チームからの発信なども、翻訳機能を使って吸収しようとする。一方では、彼の好みが日本語習得の役に立っているようだ。

「実は日本の映画やアニメが大好きなんです。Netflixでアニメを見ていて、日本語版を見ながら、言葉をピックアップして覚えようとしているところです。『SLAM DUNK』ももちろん見ています。ただ、一番好きなのは『NARUTO』なんです。特にサスケが一番好きなキャラクターなんですよね。」

楽しみながら、日本に溶け込もうとするゴメス・デ・リアニョ。シーズンを追って、語学力の成長も見られるかもしれない。インタビューで日本語を繰り出す瞬間が訪れるかにも注目だ。最後に、彼からファンに向けたメッセージももらった。

「ファンの皆さんに会えるのを、本当に楽しみにしています。コロナ禍なので、なかなか直接のコミュニケーションも取りづらい状況ではあるのですが、SNSでどんどん質問やメッセージを送ってきて下さい。ファンの方々はとても重要な存在だと考えています。ファンのために、チームのために、そして母国のために戦っていきたいですし、皆さんに対する感謝もしっかり伝えていければと思っています。」

フィリピンからやってきた、若き挑戦者が歩もうとする道のり。今シーズン、彼がどんな戦い様を見せてくれるのか、一つ楽しみにしてほしい。

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