【AFTER GAME】 2020-21第19節 山形戦(1/30~31)~試練のゲームで連勝。チームディフェンスをより強固に~

取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

ホーム4連戦の幕開けは、山形ワイヴァンズを迎えての一戦。GAME1から互いの意地がぶつかり合う展開となり、クロスゲームを粘り強く戦ったロボッツは、最終盤に逆転を果たして90-88で勝利をもぎ取った。GAME2は序盤から相手をディフェンスで封じてリードを広げる展開に持ち込み、94-72でこのカードを連勝。ホーム・アダストリアみとアリーナに集まったファンやブースターの前で、力強い姿を見せつけた。試合を終えた選手たちの言葉からは、ロボッツにとってこの2試合が一つのベンチマークになるのではという感覚を得た。

立ち直った戦士たちが見せた集中力

山形戦からさかのぼること3日前(1月27日)。ロボッツはアウェーで越谷アルファーズに敗れた。中2日で試合に挑むことになったロボッツの面々だが、やや重苦しい雰囲気がチームを包んでいたという。舞台裏を話すのは、#27眞庭城聖だ。

「水曜日に負けた後、金曜日の練習で上原GMやグレスマンHCに、『ちょっと雰囲気が暗い』と言われてしまいました。自分たちでは気づかなかったことですが、周りの人からは落ち込んでいるように見えてしまったのかもしれません。」

一方で、敗戦を引きずりすぎてもいけない。選手たちは目の前の相手に集中し直し、山形戦へと挑んだ。GAME1のロボッツは、大きなリードを作り出せず、一方で大きなビハインドともならず、終始一進一退の試合を展開していく。第4クォーター、この試合最大となる8点のビハインドを背負ったところから、試合は大きく動き出した。#11チェハーレス・タプスコットがインサイドで奮戦し、得点を量産。山形のチームファウルが早々にかさんだこともあり、ロボッツは時計が止まった状態で点差を詰めていくこととなった。チームはこの時、無類の強さを誇ったタプスコットを活かすことを選んだ。眞庭は当時の状況を、「乗りに乗っていた、ゾーンに入っていたようなシェイ(タプスコット)に対して、どうやってスペースを空けるかを考えた」と話す。タプスコットも、託されたボールをシュートしきることで応え、このクォーターだけで15得点を挙げる大活躍を見せた。

点の取り合いの様相を見せる中でも、ディフェンスは最後まで高い集中力を切らさず、残り30秒あまりという局面で#15マーク・トラソリーニが豪快なブロックショットを決めるなど、ビッグプレーも飛び出した。ロボッツは、山形とのねじり合いを制してGAME1をものにする。眞庭は「この1勝は大きかった」と話し、こう続けた。

「敗戦から切り替えられるか、そうでないかという部分は大きいです。僕らはB2東地区の3位ですが、2位の越谷さんとは同率にいるわけですし、形勢なんてまだまだ変わりうるものです。そんな中で、ここ最近GAME1を落としていたロボッツが、乗っている山形さんを相手にGAME1からしっかり勝てたということは大きかったなと思います。」

しびれるような展開の試合を勝ち取ることは、ゆくゆくはプレーオフのような一発勝負の舞台にも生きてくる。選手たちが口々に「課題」としつつあった2連戦のGAME1をものにしたことは、一つ壁を乗り越えたともいうべき出来事だったのではないだろうか。

小林が語る「ディフェンス」と「ツーモアパス」の意識

GAME2は、前日と打って変わってロボッツのワンサイドゲームとなる。第3クォーター、山形の#37河野誠司に連続で3ポイントシュートを浴びるなど、一時は山形に追いすがられたが、終盤で再び点差を離して勝利をつかみとった。これでロボッツのシーズンの戦績は24勝11敗となったわけだが、#6小林大祐は「ここまでの11敗すべてで、敗因は共通しているんです」と、ロボッツの現状を分析する。

「現時点で11敗というのは、B2の優勝を狙うチームとしては負けが多すぎます。その上で共通している課題というのがボールシェアです。また、そこからさらにディフェンスも悪くなるところがあります。特定の選手にボールが偏りすぎるところが解消されることが、一番の解決策なのではと思います。」

激戦の末に勝利を掴んだものの、GAME1の内容について小林は「勝ちを拾った」ようなものだったと話す。試合展開の要素が、負け試合のパターンと似通っていたからだという。

「試合の多くの局面でなかなかボールが回らず、さらにその状況で、選手たちも『僕が僕が』となってしまっていました。そこで必要なのは『ツーモアパス』の意識です。自分が攻められるタイミングになっても、もう2本パスを回す。そうすることで、他の選手にもリズムが出てきますし、いいシュートになる確率も、そのあとのディフェンスを良い形で入れる確率も上がってきます。」

小林はさらに、具体的な場面を挙げてパスワークの重要性を説く。

「特にGAME1では福澤選手にシュートチャンスが巡ってきませんでした。結果的に試合を通して1本しかシュートを打てなかったんです。彼のようにすばらしい選手がいるのですから、もっと周りに頼っていいはずです。1本のパスで周りを頼れば、マークマンが寄ってくるかもしれません。ボールを散らすことで、相手のディフェンスが集中すべき選手も分散しますし、それが効率の良いオフェンスにつながるのではないかと思います。」

また、小林はロボッツがB1へ昇格するための要素として、「解決策をディフェンスに求めないといけない」と話す。これは、小林がかねてからチームに訴えかけてきたことでもあり、このコラムでも過去に触れている。

「ディフェンスで相手を止めれば、相手の得点をおさえて勝つことができますし、結果としてオフェンスに余裕を生むこともできます。ディフェンスができなければ、チームがいい方向に回っていきませんし、例えば仙台(89ERS)さんのような、チームディフェンスのすばらしい集団になるのが理想です。チームのディフェンス能力の高さは、最終的に個人の体力や攻撃力に勝ります。B1に上がって、B1に定着することを考えたときにおいても、この姿勢は重要になると思うんです。」

実際、GAME2においては山形の強力な攻撃カードである#0アンドリュー・ランダルに対して、チームディフェンスで対抗し、前半でフリースローの2点におさえたことで山形をリズムに乗せなかった。個人がマッチアップで引けを取らなかったことももちろんだが、彼に対するボール供給を組織的に断ち切っていった姿勢も、得点をおさえたこととは無縁ではないだろう。相手の攻撃を分断していくディフェンスは、今後においても重要性を増してくるはずだ。

神栖のファンの前で、勝利を積み重ねよう

ホームゲームが続く後半戦、次なる相手は仙台89ERSだ。仙台はここ10試合で5勝5敗。粘り強い守備を持ち味にしているチームだが、前節の越谷アルファーズ戦で今季初の100失点を喫してしまうなど、やや苦戦が続いている。プレーオフへの自力進出やワイルドカード争いを考えると、これ以上は負けられない状況なだけに、ロボッツ戦から反撃の狼煙を上げたいと考えているはずだ。

仙台は#5ダニエル・ミラー、#21エリック・ジェイコブセンなど、強力なインサイドの選手がいる中で、シーズン途中に#2ルブライアン・ナッシュが加入。加入後はゴール下を果敢にこじ開け、怒濤の勢いで得点を量産するプレースタイルでチームを引っ張っている。山形戦におけるランダル同様、彼をどうおさえるかが勝負の分かれ目になっていくだろう。

ロボッツの注目選手は#0遥天翼。守備からエナジーを与え続け、ロボッツを鼓舞する存在となっている。フォワード陣に点取り屋が多い仙台の勢いを止めるためには、彼のディフェンス能力が大いに試されることとなるだろう。

次節は今シーズン唯一となる、かみす防災アリーナでの一戦となる。#27眞庭城聖は「これまで神栖では勝っていることもあり、いいイメージの場所」とその印象を述べる。ともに昇格を争うライバル同士の一戦、ロボッツが勝利を収めることで、神栖のファンやブースターを元気づけてほしい。

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