チャレンジャー、かくあるべし~2021-22 開幕前特集 髙橋祐二〜

相手をコート上に置き去りにするようなスピード感あふれるプレー。B2でも屈指のスピードスターとして名高い#14髙橋祐二も、今シーズン念願とも言うべきB1の舞台へと殴り込む。新加入選手と混じり合って激化するガード陣の争いの中で、髙橋は「B1仕様」にバージョンアップを果たし、意欲的にシーズンへ乗り込もうとしていた。チーム最古参・ロボッツ5シーズン目の戦いを間近に控えた彼を直撃する。

反省も込めてフィジカルを強化

B1の戦いに向けて、新加入の大塚健吾ストレングス&コンディショニングコーチと体作りに励んだというオフの髙橋。「目に見えて体の大きさに表れている」と、本人も実感を語る。「B1仕様」とも言うべき体で、順調に調整を続けている。一方で、昨シーズンはコンディション不良から一時的に戦列を離れることもあっただけに、彼自身も感じる部分はあったようだ。

「ケガをしない体作りということ、またこれまで通りではB1で戦えないという思いもあります。体を強くするという方針のもと、健吾さん(大塚健吾ストレングス&コンディショニングコーチ)とも話をしながら、トレーニングを進めています。」

B1昇格というミッションを託され、ロボッツに加入したのが2017年。しかし実際にはプレーオフにもたどり着けぬまま、時間が流れていってしまった。本人も「時間がかかってしまった」という実感があるという。それから4年、ようやくとも言える大舞台。長きにわたってロボッツに在籍していたからこその感慨もあるという。

「ロボッツに入った2017-18シーズンに『いわきの悲劇』があって、そこから年々補強もして、皆さんの期待という部分も大きかったと思います。B1に向けてはやっぱり楽しみという部分が大きいですね。フロントスタッフを含めて、ロボッツは成長をしようっていう意欲や向上心はすごく感じるところがあって、一方でチームを見てみれば良い意味で上下関係の壁が無いし、思ったことも話しやすいです。僕も段々キャリアを積んできましたので、そういった部分は引き継がなくてはいけませんね。」

先輩選手にちょっかいをかけて和ませるなど、ロボッツの明るさを身を以て表現してきた髙橋。そうしたチームの風土を指して、「これまでロボッツにいた人たちの想いも受け継いでいく」と、最古参らしい意気込みも見せた。一方で、髙橋はコートに立てば毎年のようにチーム内の競争に揉まれてきた。今シーズンも新加入の#8多嶋朝飛やキャプテン#25平尾充庸などと、ガードの座を争うことは変わらない。まずは持ち味を存分に活かして、彼らに渡り合おうとしている。

「ディフェンスという部分では、他の選手と比べても自信を持っています。一方では少ないシュートチャンスを決めきる力も、出していかなければならないとも感じています。」

ここを守って、相手の流れを止めてほしい。そんな時、リチャード・グレスマンHCは決まって髙橋をコートに送り出した。明確な役割があったことで「自信にもなった」と髙橋は言う。しかし、シックスマンやスーパーサブといった所で満足するような選手では無いはず。ロボッツのスピードスターが輝けば輝くほど、チームにとっては誰をコートに送り出すか、ぜいたくな悩みとなることだろう。

チャレンジャーの心得を携えて

目前に迫ったシーズンの開幕。B2とB1の大きな違いを問うと、髙橋は先ほどのフィジカル強化を引き合いに出し、「体の強さ」と話す。また、B1の経験者も多く顔を揃えた今シーズンのロボッツ。練習から白熱のマッチアップをこなしていくことで、強度の部分も鍛えられていると実感を明かす。

「映像越しではありますけど、ガードの選手でも強さというのが伝わってきます。早く試合に出て、マッチアップしてみたいという思いもあります。一方では練習から競争が激しくて、練習の中でもレベルが上がってきていると感じています。そこを積み重ねていくことで、試合にもすんなり入っていけると思うんです。」

チームメイトとの競争も、髙橋にとっては収穫が多い。特に多嶋のプレーを目にした感想を聞いてみると、「プレーに余裕を感じるし、とても勉強になる」と話す。充実のシーズンイン、と言っても過言ではなさそうだ。

B1に向けて徐々に戦術の研究も進む。髙橋は最高峰の戦いを見た上で、プレーのキーポイントも把握していた。

「千葉(ジェッツ)さん、宇都宮(ブレックス)さんのチャンピオンシップを見ていても、リバウンドにしっかり入ってきています。ポゼッションを奪いに行くという気迫が全然違うように感じました。それを考えると、ロボッツはインサイドの選手にサイズがあるわけではありませんのでチーム全体でリバウンドを取れるようにしないといけないと思っています。B2の頃のようにハイスコアの展開はなかなか来ないでしょうし、僕らも90点以下、80点以下に抑えないと勝てないはずです。」

さらに、髙橋はチームとしての精神面の準備も必要と話す。

「『B2の強豪』なんて言われては来ましたが、結局の所、僕らは何も成し遂げられていませんでした。ミーティングでもアツ(平尾)が口酸っぱく言っていたことですし、チャレンジャー精神で行くということは、変わりないのではと思います。」

厳しいシーズンを送るからこそ、ロボッツにおけるチャレンジャー精神は、間違いなくブレてはいけない所だ。現状におごることなく、ひたむきに立ち向かい続ける。それこそがチームスローガンである「BUILD UP」を果たす土台となる。チームが立ち向かい続ければ、シーズンを終えたころには何段階も違った姿が見られることだろう。

チームは、オフ返上の日を設けるなど、急ピッチで開幕に向けた調整を続ける。それを受けて迎える開幕節は、髙橋はチームとしての状況を測る格好の舞台になると話す。

「開幕節では秋田(ノーザンハピネッツ)さんと当たるわけですが、ガード陣もインサイド陣もハードなディフェンスをしてくるチームという印象です。そこを最初に経験できることはB1を戦っていく上でもいいことではないかと思います。今まで手が出てこなかったような所から当たりに来るでしょうし、相手のサイズも大きくなります。通っていたパスが通らなくなることもあるでしょう。」

逆に言えば、開幕節をどう戦えるかで、チームとしての自信も変わってくるはず。昨シーズン、B1のプレーオフ出場を争った秋田は、さらに戦力を充実させてロボッツを迎え撃つ。開幕のその瞬間から、ロボッツが100%のパフォーマンスを出せるか、ティップオフの時が待ち遠しい。

応援して良かったというチームに

髙橋がロボッツに加入してからの4年間だけを切り取っても、ロボッツのチームとしての歩みは激動そのものと言える。あと1つという戦いを勝ち取れなかった「いわきの悲劇」、アダストリアみとアリーナのこけら落としで5000人の熱狂と共に戦った「4.6」、そして、コロナ禍の中でも多くのファンが集い、B1への切符を手にしたB2プレーオフ…。そうした日々を選手として送ってきたからこそ、髙橋は「茨城におけるロボッツ」の変化を実感する。

「茨城でのチームの認知度も上がってきたと感じています。駅やショッピングモールに出かけたときに、声をかけられるようにもなりました。つくばカピオはお客さんとの距離の近さを感じられますし、神栖(かみす防災アリーナ)や日立(池の川さくらアリーナ)もとてもきれいな会場です。ホームゲームの規定もあるので、なかなかアダストリアみとアリーナ以外での試合はできないのですが、こうしたゲームも大切にしていきたいですね。」

特に日立開催のゲームは、髙橋にとってもいい思い出が残っているようで、今シーズンも楽しみにしている会場だという。が、ここから話は思いもよらぬ方向へと飛び火した。池の川さくらアリーナでの試合は、2022年4月16日・17日に横浜ビー・コルセアーズとの対戦が予定されている。だが、この4月の日程がとてつもなくハードであるということに、髙橋と筆者は気づくのだった。1ヶ月間に11試合。しかもそこには長い距離を移動しながら平日も戦うというアウェー5連戦が含まれている。コンディショニング面がどうしても心配になってくるところだが、髙橋はその状況でも毅然とした意見を持つ。

「1週間の中で北海道に行って、秋田に行って、そこから横浜へ行く…。日程が詰まっていて、かつ移動もあるとなると練習も時間が限られるでしょうし、ホテルよりは、自宅のベッドで寝たいと思っている人もいるはずなんです。タフな1ヶ月になるとは思いますけど、僕らが特別厳しいというわけじゃありません。言い訳にせず、やっていかなくてはいけませんね。」

改めて、B1への抱負を髙橋に尋ねる。彼はチームの現在地をしっかりと見据えながら、こうコメントを残した。

「勝利という面では、昨シーズンほどのペースではできないかもしれません。それでも、僕らは勝てるように努力をしていきますし、たとえ負けたとしても勝ちに向かっていく姿勢を見て、何かを感じてもらえるように。応援して良かったというチームにしていきたいですし、そんなプレーをしていかなければダメだと思っています。」

チャレンジャー精神を引っさげて、今季のB1に乗り込むロボッツ。激闘の中に糧を見出そうとする姿勢を、ぜひとも応援し続けてほしい。そして、勝利という最高の結果をもたらした時には、ぜひ万雷の拍手で称えてほしい。今シーズン、そんな場面をいくつ作ることができるのか。厳しくも楽しいシーズンの、幕開けの時は近い。

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