2022-23SEASON 開幕前インタビュー #25 平尾充庸~「ロボッツの魂」が向かう先

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取材・文:荒 大 text by Masaru ARA

今シーズン、3季連続のキャプテンに就任した#25平尾充庸。ロボッツでの在籍期間も、チームとして歴代最長となる6季目に突入した。今や、ロボッツのことを話題にするなら欠かせない男の1人だろう。そんな彼の胸の内を、シーズン前にじっくり尋ねてみた。今シーズンも発売されるファンブックのインタビューでも思いの丈を述べているのだが、そこには載せきれなかった言葉があまりにも多い。そこで、インタビューの未公開部分を、ROBOTS TIMESにて掲載していく。

目次

たどり着いたB1で

キャプテンになって以来、「覚悟」「責任」、あるいは「闘う集団」など、端的な言葉で向かうべき先を示し続けてきた平尾。昨シーズン、ようやくB1の舞台でのプレーが実現したわけだが、「ようやく土台に立てた」と、引き締めるような言葉を残す。

「入って1年目とか2年目のころは、全然『闘う集団』にはなれていなかった。点差が開けば諦めるし、逆に自分たちが点差を広げていたら、気を抜いてしまう。練習中も、簡単なミスを許してしまう。そんなところがずっとあって、でも、やっと自分自身も口酸っぱく言ってきたことを分かってくれるプレーヤーもたくさんいるようになって、今のロボッツの土台ができた。そこはすごく嬉しく思うけど、あくまでも土台。これを崩しちゃいけないし、積み上げなければいけないものがたくさんある。」

髙橋祐二の移籍や、遥天翼やマーク・トラソリーニの引退など、B1昇格を知るメンバーも次々にチームを去っている。その一方で今季は若く、エネルギッシュなメンバーが揃ったことで、「のびしろしかない」とチームを評する。先日行われたプレシーズンゲームでの試合運びがそうであったように、アップテンポでダイナミックなバスケットは、ロボッツの持ち味の一つとなっていくだろう。平均身長の低いチームの戦い方として、例えば秋田ノーザンハピネッツのように、全員が初手からのディフェンスを徹底して相手を食い止め続ける、という方法がある。一方では現在の日本代表チームがそうであるように、全員で走って得点を狙いに行くのも一つの方法論だ。ロボッツが選んでいるのは、後者の考え。平尾は、そうした戦略にも責任を自負しようとする。

「他がやってないことをやろうとしているだけに、ロボッツへの注目度は、今年は結構高いと思っていて。その中で、このスタイルを成功例にするのか、失敗例にするのかはロボッツ次第になる。例えば、ポジション関係なく走るバスケットを全員でやるというスタイルが成功すると、他のチームは必ず真似を始める。絶対にその成功例にするためにも、自分たちはそれだけの責任を持たなきゃいけないし、もちろんGMも、そうした自信や責任を持って僕らを集めたはずだから。それに応えられるのはプレイヤーしかいない。」

かねてから、平尾は「お客さんに試合を通じて心に持ち帰ってもられるものがあれば」、と話してきた。今季のスタイルは、まさにそこに当てはまるのでは、と、さらなる持論を展開する。

「お客さんから見て、『こんなに速い展開でプレーをするのか』とか、『こんなにエネルギーを出してパスを出して走るんだ』とか、初めて来た方でも感じてもらえるのかなと思います。さらに言えば、小学生から、中学生、高校生。特に日本のジュニアの年代なんかはサイズもないし、その子たちが目指すバスケットの一つの例に挙げられてもおかしくないようにしたい。ビッグマンに頼らず、ちっちゃい人間が相手を崩す。ちっちゃい人間がどうやったらバスケットができるのかという、いい例にはなるのかなって思ってます。」

恐らくは、誰よりもロボッツのバスケットに対して理解を深めようとしているからこそ、具体的なところまで踏み込んだ言葉が出てくるのだろう。そうした責任感がコート上で誰よりも闘いを前面に出す「キャプテン・平尾充庸」を作り上げているのかもしれない。

表裏一体の『闘う男』と『茶目っ気』

平尾の人となりを、一言で示すのは難しい。コート上の姿ばかりを追っていると、どうしても「責任感のあるキャプテン」と形容したくなるのだが、試合が終わってしまれば、その姿は一気に見えなくなる。後述する「勝手に選手兼広報」のSNS投稿に代表されるように、茶目っ気を忘れない男に早変わりだ。

「テン(遥天翼)が昨シーズンで引退したけど、その直前に『平尾充庸という男』ってnoteを書いてくれた。そこに書かれているように、正直、僕は練習がそこまで好きじゃない。『しんどい』『疲れた』とか、弱音を吐くこともある。ただ、いざコートに立ったり、練習が始まったりすると、なんだろう、『普段の平尾充庸じゃなくなる』というか。やっぱり、大好きなことを仕事にできていることもあるし、だからこそしんどいけど、一生懸命頑張れるところもある。」

今にして思えば、キャプテンに就任したばかりの時期の平尾は、いつも張り詰めた表情を崩さなかった。端から見れば、その表情は息苦しそうだった。改めて、その頃のことを尋ねると、彼なりに考え続けたゆえの結果なのだろう、とも思わされる。

「僕自身は、責任感が強い方だから、どうしてもいろんなことを考えてしまう。自分のことだけじゃなくて、『自分をうまく活かせるためには』とも考えるし、周りを巻き込みたい。ただ、それをやるには、僕自身がキャプテンとして責任を果たさなければいけない。そこから、一つでも勝ちに繋げられるはずだとか、そういったことをすごく考える。正直、疲れることもあるよね。もちろん、自分の言動一つでファンの皆さんも、スポンサーの皆さんも、喜んでくれる一方で、自分自身の首を絞めていることもある。僕自身は『言葉は生きいてる』と思っていて、言葉にして、目標を追い続けることがすごく大事だと思っている。だからこそ、自分自身に責任と覚悟を負わせて、達成できるようにしている。そんなところかな。」

キャプテン就任当時の裏話も、改めて聞くことができたのだが、ぜひそちらはファンブックを購入して、その目で見てほしい。

広まりつつある「勝手に…」のきっかけ

時に、ロボッツファンであり、Twitterで情報を集める人ならば、こんな投稿を見た人もいるのではないだろうか。

昨シーズン以来、チームでのトレーニングが行われる日に、平尾がまめにTwitterを更新するようになった。誰が呼んだか「勝手に選手兼広報」というタグとともに、注目を集めている。1年越しにそのきっかけを尋ねる機会にもなったので質問してみると、隣に座っていた広報スタッフを指さし「こいつが仕事せんからよ」と茶化しつつも、種明かしが始まる。

「B2にいた2020-21シーズンまで、当時の広報さんがかなりの頻度でSNSを更新されていたんですけど、その方が退職した直後に、チームからの投稿がめっきり減ってしまった。Twitterで言うと1日1ツイート、あるかないかぐらいだったと思うんです。その中で手助けできるのは何かって考えたら、『俺らのSNSを上げればいい』ってだけの話だった。選手の裏側じゃないけど、トレーニング中の風景を見せられたらいいなっていうところから始まって。僕だからこそ撮れる動画もあるし、楽しみの一つになっていただけたらと思って始めたんです。」

カメラの前でおどける選手もいれば、平尾の無茶振りに応えに行く選手、冷静にツッコミを入れ続ける選手も。はたまたカメラの追っ手から逃げ出す選手や、果ては無茶振りの「共犯」になろうとする者まで…。この1年余りの間で、動画から見える人となりも様々である。

「カメラの前でふざけてもらえるようにするのも僕の仕事だし、またそれを楽しみにしてくれてるファンとかブースターもいますからね。みんなが喜んでもらえるような動画や投稿ができれば良いよね。」

試合やイベントがない日、ロボッツ戦士たちは何をしているのか。彼のSNSもこまめに見ておくと、今季も良いことがあるだろう。

サバイバルも、「4000」も飲み込んで

改めて、今季に向けた意気込みを尋ねる。

「昨シーズンのところから考えれば、やっと、チームとして本当の意味で戦う集団になってきたのかなって思っていて。今シーズンは、多分昨シーズン以上に、ファンの方やスポンサーさんの評価が上がっているはず。その評価に恥じないようなプレーを、僕たちはやらなければいけない。」

今季は、コート内外の出来事が、クラブの未来のあらゆる部分に直結しうる。コロナ禍の中で凍結されていた降格制度が復活したほか、4年後に再編が予定されている「新B1」に向けた査定の開始など、見るべきポイントは多くある。平尾は、そうした部分も見通した上で、こんな言葉を残してくれた。

「やっぱり、まず会場で僕たちのプレーを見てほしいですね。もちろん降格制度の復活ってものもあるし、また、2026年からの新B1への査定も始まる。となると『平均観客4000人』ってところが、ロボッツでの一番の鍵になってくるはず。チームの強さとか、すごいプレイヤーたちがたくさんいるとか。試合が終わって『楽しかった、また行きたい』とか、『誰かを今度誘ってこよう』とか、『こんなに面白いことがある』って部分は、僕たちが絶対に頑張らないといけない。僕らは競技者でもあるけど、エンターテインメントの集団でもある。そういった意味でも『強くて、かっこいいチーム』を作って、その上でお客さんが1人でも多く、今後に向けて友達や家族、周りの人を1人ずつでもいいから連れてきてもらいたい。会社としての『茨城ロボッツ』だけが頑張っても、『4000人』のハードルは絶対に達成できない。4000人の目標は、ロボッツに関わる全ての人で達成しに行く。みんなが参加して、みんなで作り上げることで目指すものだと思う。だから僕たちも頑張るし、4000人を目指す道のりに協力してほしいとも思います。もちろん、チャンピオンシップや日本一を目指して戦う姿も見てほしいけど、そこを目指して頑張った先に、『4000人をクリアした』ってことが待っているはず。まずは一生懸命頑張ります。」

ロボッツが戦う、ありとあらゆる場所で、平尾充庸という男は、きっと背中で引っ張ってくれるはず。今シーズンも、キャプテンの姿から目を離してはいけない。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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