【AFTER GAME】 2021-22 群馬戦(4/20)〜チームとして見せたバスケットの形。ブレない力の勝利~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

今シーズン最後の平日ホームゲームとなった、群馬クレインサンダーズとの対戦。コンディション調整を続けていた#2福澤晃平、#25平尾充庸が復帰を果たしたゲームは、ロボッツが走っては群馬が追ってという展開が続いた。しかし、ここぞという場面でしっかりと守備の遂行力を切らさなかったロボッツが群馬を引き離し続け、終わってみれば96-78と点差を付けての勝利。個人の記録にフォーカスしても、#11チェハーレス・タプスコットが今季のB1の1試合個人最多となる45得点を奪い、勝利に花を添えた。しかし、それ以上にチームとしての完成度の高さが際立っていたこの一戦。足早にではあるが振り返っていくことにする。

「Cold blood」の面目躍如

この試合のロボッツにおいて、タプスコットのシュートタッチは異次元のレベルにあった。内に外に高確率でシュートを沈め続け、前半終了時点で25得点。特にインサイドでの思い切りが良く、2ポイントの成功率がこの段階で100%をキープしていた。

確かに1on1やドライブから積極的に得点を重ねていたが、タプスコット1人で作り上げた得点パターンかと言われると、そうではない。彼が力を発揮できるように、#21エリック・ジェイコブセンがスペーシングを行い、群馬の#12オンドレイ・バルヴィンや#40ジャスティン・キーナンなどをしっかり外に誘い出すことで彼が侵入できるだけのギャップが常にあった。タプスコットもそれを見逃さなかったことも大きな部分だった。逆にここで群馬ディフェンスがタプスコットに深追いをすれば、ゴール下にジェイコブセンが飛んでくる。オフェンスのパターンで、まず先手を打っていた形でもあった。出だしからのアタックが見事に決まったわけだが、そこに対しては本人も手応えを口にする。

「チームとして良い入りができたと思います。自分のチームメイトと、その戦いぶりについて誇りに思います。良い先制攻撃からリードをすることがこの試合でできました。決して簡単なことではありませんが、何度もインサイドに入り込むことができましたし、シュートも決めきれました。後半でも良い遂行力をチームとして繰り返すことができましたし、ターンオーバーの数やリバウンドでの競り合いでも相手を上回れました。自分たちの目標をしっかりと達成できましたね。」

3日前の横浜ビー・コルセアーズ戦では40分間のフル出場。プレータイムが40分に達するのはB2で愛媛オレンジバイキングスに在籍していた2020年2月以来の出来事だったのだが、この日も45点目をフリースローで決めてベンチに下がるまで、38分28秒のプレーとなった。この試合MVP獲得のインタビューで「疲れたね」とつい日本語で本音を漏らす場面もあったが、ハードに走り続けてのプレーが続いただけに、偽らざる部分だっただろう。

レバンガ北海道の#21ショーン・ロング、大阪エヴェッサの#25ディージェイ・ニュービルと、リーグ全体でも一目置かれるスコアラーたちが記録した44得点を上回り、最終的に45得点まで伸ばしてみせたタプスコット。全得点シーンに関しては、YouTubeチャンネル「ROBOTS TV」にもアップされている。先述の通り、1on1での得点がある一方で、チームとして形作った攻撃シーンも見られる。今のロボッツのバスケットスタイルが凝縮した動画とも言えるため、この機会に見てほしいところだ。

1試合で30得点を超えたのはこれで今シーズン4回目。それぞれの試合を見比べていくと、チームとしての戦いぶりも徐々に良くなっているのが見て取れる。そうした部分も含めて、チームの成長が続いていると言えるだろう。どこかで、B1での手応えを感じた瞬間があるのではないかと考えて質問をぶつけると、率直な考えを明かす。

「今シーズンは、まず学びのシーズンだと思っていましたし、そこからアジャストしていくことが必要だと思っていました。今は自信を持ってプレーできていると思いますし、僕個人だけでなく、チーム全体としても経験を積めば積むほど、慣れてくるものですし、チームとしてより良くなっていると思います。」

タプスコットと言えばおなじみとも言える「Cold blood」のポーズを何度も披露したこの試合。もうしばらくタフな戦いは続くが、最後まで「Chey Time」が続くかは大きな楽しみである。しっかりと見届けたいところだ。

層の厚さを前に、戦いきって守り抜く

この試合は#8多嶋朝飛がベンチ入りメンバーとしてエントリーをしたもののプレーをせず。結果的に残る9人で40分を戦うこととなった。一方の群馬はベンチ入りした12人全員が出場し、30分以上のプレーをした選手は無し。相手のプレータイムのマネジメントにも現れるように、終盤戦のタイトなスケジュールの中で控え選手が力を発揮することは、ある意味絶対条件であった。

そういった中で、この試合においては#0遥天翼、#14髙橋祐二の活躍が際立った。まずオフェンスで口火を切ったのは遥だった。第1クォーター、#29鶴巻啓太の3ポイントシュートが相手のチェックを受けてリングまで届かずにゴール下に落ちるのだが、ここで遥がスルスルとゴール下に潜り込んでフォローを決め、ファウルももらって3点プレーを完成させた。その後もタフなディフェンスを受けながらもシュートタッチが冴えて今季最多の7得点。ディフェンスでも異なるマッチアップに直面し、個人ファウルも4つまで達する中、耐えに耐えてロボッツの流れをしっかりと保ち続けた。

一方の髙橋も、得意のディフェンスで魅せていく。この試合では相手のガード陣の他、#15アキ・チェンバースなどのフォワード系選手にも付く中で、しっかりと地を這うようなディフェンスを続けて相手を乱した。一方のオフェンスでもフェイクから#4トレイ・ジョーンズを振り切るベースラインアタックを披露。ファウルを受けてしまい、惜しくも3点プレー完成とはならなかったが、貴重な一撃となった。

2人の働きについては、「髙橋選手、遥選手のように交代して出てきた選手が素晴らしいディフェンスをしてくれた」と、試合後の会見でリチャード・グレスマンHCが名指しで称えている。

また、この試合ではベンチワークの思い切りも見られた。点差を詰められ、これ以上は相手に流れが渡りそうになる。そんな瞬間が訪れてはグレスマンHCが的確にタイムアウトを取って落ち着けていく。人数や選手層といったウィークポイントを飲み込んだ上で、戦いきるのだという意志を明確に感じるシーンだった。

「点差が詰められた部分では、選手たちに疲れが見えていて、選手を休める、またそのために交代をさせるという意味でもタイムアウトを使っていきました。ハーフタイムでは『良いオフェンスを引き続きやってアタックモードであり続けよう』、『ディフェンスでもっと集中をしよう』と言葉をかけていました。」

選手たちも、こうした目標に対する遂行力を高く持ち続けた。第4クォーター、追い上げムードの群馬が2連続でターンオーバーを犯し、ここをきっちりロボッツが得点に結びつけた。ロボッツのバスケットスタイル実現のためには、リバウンドやスティールなど、トランジションオフェンスのためのスイッチが必要だ。終盤になってもこの強度が落ちなかったところも、勝敗を分けたと言えるだろう。

「スティールに追い込めたことは、チームが目指すアップテンポなバスケットにつながりましたし、非常に良いことでした。また、これを連続でやりきったことでチームに勢いをもたらせました。アップテンポなバスケットを実現することや、我々がシーズンをより良い形で終えるためにも、スティールへの意識は重要だと思います。」

思えば、昨季の終盤にB1昇格を手繰り寄せたのも、ある意味「オフェンスでの殴り合い」という試合からディフェンシブな戦いを心得たからこそという側面も大きかった。しっかりと何を積み重ねるかという「BUILD UP」がしっかり息づいている、そんな受け止め方もできるだろう。シーズン終盤戦はタイプこそ違えど、点取り屋を多く抱えるチームとの対戦が増える。そこを勝ちきるためにも、ディフェンスにさらに一段高い強度を出せるかが、新たな鍵となりそうだ。

敵地連戦がスタート。まずは北の大地から

ロボッツはここからアウェーでの連戦となる。茨城を離れたまま戦いに赴くことになるため、コンディションの維持・管理は普段以上に怠ることなく行っていきたいところだ。次節は北海きたえーるに乗り込んでのレバンガ北海道戦。今シーズンはここまで平日ゲームで2試合を戦って1勝1敗。天皇杯でのロボッツの勝利を含めて、実はここまでホーム側のチームがいずれも敗れるカードとなっている。北海道としても、これ以上ホームでロボッツの好きにはさせたくないゲームとなるはず。互いの意地が見える一戦となりそうだ。

北海道は現在リーグの得点王である#21ショーン・ロングと#24デモン・ブルックスの2人がとにかく得点を重ねていく。インサイドを制圧させないことが最重要ポイントになるだろう。また日本人選手も#7中野司や#17山口颯斗がグイグイとドライブで侵入してくるため、ボールを持たせないこと、あるいは外で持たせてしっかりマークマンが正対して後手を踏まないこと。いずれにしても我慢強いディフェンスが求められるゲームになるだろう。

ロボッツとしては前回対戦時のように本来のマッチアップとは違う選手がマークに入る「クロスマッチアップ」と呼ばれる手法を採るかどうかも注目。この時は#29鶴巻啓太がブルックスに対する守備で躍動したほか、フィールドゴール、フリースローともに成功率100%を達成して、注目の的となった。この再現を、というと少々できすぎな感もあるが、彼のようにオフェンスで爆発する選手が多く現れれば、グッと勝機が近づくだろう。

シーズンエンドに向けたカウントダウンを迎えているBリーグ。このメンバーで戦えるのも、残りわずかである。1試合1試合をしっかり戦いきっていくためにも、まずはアウェー連戦の始まりでの勝利を目指してほしい。

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