【AFTER GAME】 2022-23 FE名古屋戦(10/1〜2)〜開幕から生じたズレ。あくまで「チーム」で前へ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA

Bリーグ・2022-23シーズンの開幕を、ロボッツは3年ぶりにホーム・アダストリアみとアリーナで迎えた。対戦相手はB2時代に幾度となく勝負を繰り広げたファイティングイーグルス名古屋。B2王者を迎えての開幕節は、GAME1を79-88、GAME2も69-72と連敗。「堅守・速攻」というロボッツが目指した形を、逆にFE名古屋に許した形となってしまった。コート内外で、どのようなことが起きていたのか。浮上への糸口を探るAFTERGAMEとする。

「時既に遅し、だった。」

GAME1を終えて記者会見に登壇した#25平尾充庸は、敗因を尋ねられるとそんな言葉を残した。

敵将たる川辺泰三HCの言葉を借りれば「インサイドへ攻め込むつもりだったが、外からのシュート確率が高い状態で入ることができた」「(アンドリュー・)ランダルに持たせすぎないようにと考えていたが、本人のシュートが入り続けていた」という言葉の通り、FE名古屋は第1クォーター開始直後、15得点全てが3ポイントシュートというお祭り状態。後半に入るとランダルがミドルシュートをとにかく決め続けて波に乗っていった。方やロボッツは、ハードにしつこく手が伸びてくるFE名古屋のディフェンスに手を焼き続けていた。リチャード・グレスマンHCは開幕前、今シーズンのバスケットを指して「我々は相手陣内だけでオフェンスを組み立てるのではない」と述べ続けていたのだが、そうせざるを得ない40分間が続いた。

第4クォーターのしびれる場面に入ってディフェンスからの攻撃…という流れがようやく見え始め、ロボッツ猛追を仕掛ける。一時3点差まで迫ったのだが、そこから再び差を広げられてしまった。そうした試合を総括した平尾の言葉からは、重さがにじみ出ていた。

「攻守ともに、どちらかといえば自分たちが仕掛けなきゃいけないバスケットをしなければならない流れでもあったんですけど、それすらもできてなかった。みんなの頭には、どうしても『追いつけるだろう、追いつけるだろう』っていうのが多分あったと思うんです。だからこそ、最後の最後まで追いつくことができなかった。」

この他にも「後手を踏んだ」とも話していた平尾の言葉を聞きながら、筆者は今年1月の出来事を思い出していた。当時、B1東地区で低迷していた新潟アルビレックスBBとの試合で敵地に乗り込んだロボッツ。しかし、そこでチームは連敗を喫してしまう。この際も平尾は「後手を踏んでしまった」と話していた。さらに、リチャード・グレスマンHCはこの時、「ただ試合に来れば勝ち星を得られる、そんなことは無い」とも述べていた。

ロボッツは昨シーズンにB1での1年を戦ったことで、経験値も、実力も確かに積み上げてはきただろう。ただ、勝っておきたい相手、連勝しておきたいカードで負けが込んだこともまた事実だった。たかが2試合、されど2試合。チームがチャンピオンシップ出場を狙っているとしたら、なかなかに手痛い2敗だったし、こういったことが訪れないことを目指さなくてはいけない。

「チームで守って、チームで攻めるというのがロボッツのスタイルです。今日(GAME1)では攻守ともにボールに寄りすぎる場面がいくつかありました。”Unselfish”を掲げる以上、誰かがピンチにならないために、誰かが助けに行く、ということを徹底しなくてはいけません。また、プレシーズンに比べてシュートタッチが良くなっていたので、今日は得点を取れましたけど、僕が点を取っているようじゃダメなんです。ケネディ、福澤、ピーク…山口だってそう。彼らの得点がどこまで伸びるか。僕が得点しているってことは行き詰まっていると言っても過言ではない。僕も周りを活かせるようにならなくてはいけません。」

ここからのカムバックが見られるか…というところに、GAME2の焦点は移っていく。そこで待っていたのは、前日を上回るかのような守り合いの展開だった。

「策を見出さねばならない」

前日、リバウンドで差を付けられたのだが、この日のロボッツはオフェンスリバウンドの獲得も多く(GAME1で4本、GAME2で17本)、波状攻撃を度々見せていった。ただ、リバウンドを取れても、シュートタッチがなかなか良くならない。2ポイント、3ポイントともに低調に終わり、フィールドゴール全体の成功率は36.6%だった。セカンドチャンスポイントでFE名古屋を上回ったとは言え、17本のオフェンスリバウンドに対して12得点では、得点の効率としては決して良くはない数値だっただろう。グレスマンHCはGAME2終了後の会見でこう述べている。

「オフェンスリバウンドが増えたことは、数字の上では確かに良かったことなのですが、それが得点にはつながりませんでした。例えばFE名古屋さんでは、(ジョナサン・)ウィリアムズ選手がオフェンスリバウンドをきっちり得点につなげていました。選手たちはポジティブに戦い続けましたし、72失点に抑えたのですが、今日の試合では71本のシュートのうち、45本を外したわけです。FE名古屋さんがすばらしかったということもありますが、自分たちのオフェンスがこのレベルに終わってしまうと、相手にアタックの機会を与えてしまうことになります。そこを考えても、間違いなく改善が必要になると言えそうです。」

チームとしてのオフェンスの改善については、#11チェハーレス・タプスコットからも思いの一端が垣間見えた。記者会見ではこのようなコメントを残している。

「試合終盤の遂行力の部分で、FE名古屋さんはすばらしいものを持っていました。一方で僕たちは決めるべきシュートを決められなかった。個人的には、この1週間ほどシュートタッチが良くなかったのが試合にも現れてしまいました。GAME2でチームが外したフリースローは、5本全てが自分の失敗でした。ここについては練習を通して『自分の仕事をする』ことをやるしかありません。チームとしては、一体感を持って戦い続けることが必要です。パフォーマンスの波は、得てしてどのチームにも来るかと思えますが、僕らはそれが開幕の瞬間に来てしまった。目の前にできてしまった壁を、チームとして一体となって越えていくことが必要で、それしかないと感じています。」

もう一つ、筆者がこの2試合で気になったのは、ベンチでの雰囲気だった。この2試合、ベンチの盛り上がりだけを切り取るなら、FE名古屋の方が元気すぎるようにも見えた。チームメンバーの入れ替わりが激しいバスケットの世界。昨シーズンから考えればおよそ半分のメンバーが入れ替わったロボッツだが、まだまだ堅さが取り切れていないのではとも思わされた。この様子を#29鶴巻啓太に尋ねると、彼なりに感じ取っていた部分があったようだ。

「去年はやっぱり、ベテランながらベンチでの盛り上げを得意にしている選手がいたので、僕たちがひょっとしたらそこに頼ってしまっていた部分もあったのかもしれないです。もちろん、出すべきポイントでは声を掛け合えている…とは感じているので、ベンチの雰囲気というのは、ここからもっともっと良くなっていくだろうし、良くしていかなければならない部分だとは思っています。全員で修正をしつつ、次の試合に向かっていかなくてはいけません。」

シーズンは、始まってしまえば怒濤のような流れで時間が過ぎていく。コートの内外でチームの一体感を高めつつ、「茨城ロボッツ」を示しに行く。難しい挑戦だとは思うが、ここも乗り越えなくてはならないポイントだっただろう。

復帰を遂げて、再発進

開幕節では、鶴巻が今年4月以来となる実戦復帰を果たした。昨シーズン、4月23日に行われたレバンガ北海道戦で左膝半月板を負傷し、手術・リハビリを重ねていたが、いざコートに立てばその頼もしさを全力で見せていった。GAME1で途中出場し、7分43秒の出場を果たすと、グレスマンHCが「もう少し出場しても良かったのでは」と振り返るほどキレのあるプレーを披露して、翌日への期待を抱かせた。

すると、GAME2では相手のエースガードである#11石川海斗への対策も込めてスターターとして起用。まだロボッツがB2で戦っていた2020-21シーズン、当時熊本ヴォルターズに所属していた石川を抑えきったことで、鶴巻の評価は大きく上がった。試合開始とともに、その再現とばかりに鶴巻は石川に貼り付いていく。第1クォーターで、石川をインサイドまで飛び込ませず、無得点・1アシストに封じ込めることに成功。その後のプレータイムでも、石川がコートに立てば鶴巻がそれに応じるように起用されていく。最終的に、石川は鶴巻と対峙する際には自らボールを持たないプレーを選んだ。それを考えると、大当たりとも言うべき起用だった。

「GAME2の前に行われたミーティングでスターターにすることを告げられたわけですが、はっきりと『石川選手のボール運びを好きにやらせないでほしい』と伝えられていました。なので、そこに対しては全力でやっていこうと決めていました。」

波に乗せてはいけない選手に、変わらぬパフォーマンスで勝負を挑み、チームとしてのディフェンシブな展開に持ち込んでいった。プレーの手応えについては、改めてこう口にする。

「ディフェンスに関してはほとんど100%の状態に近いんじゃないかと思っています。その一方で、去年以上にできること、やれることを増やしていかなくてはならないと思っています。今シーズンのロボッツでは、僕のポジションであってもリバウンドに参加したり、アシストを決められるかも重要です。どんどんやれることを増やして、チームに貢献していきたいです。」

チーム全体としては「昨シーズンより、オフェンスの力は上がってきている」と話す鶴巻。改めて、チームの姿と自らの役割について尋ねると、こう話す。

「どのポジションからでも、得点を取ることはできると思うので、オフェンスでの力を伸ばすことは重要だと思うんです。ただ、そうやってオフェンシブな戦いを目指そうとする中で、全員がディフェンスもできなくてはいけない。そういった中では、去年から僕はディフェンスを評価されているわけですし、そこでもっと存在感を出せるようにしたいですね。」

今シーズン、誰よりもコートに立つ姿を願われたであろう男も帰ってきた。ディフェンスにおける彼のアクセントの強さは、今さら説明するまでもない。コートを駆け巡る背番号29の頼もしさを感じる瞬間は、今季も幾度となくやってくるだろう。

強力インサイド陣を打ち破れ

次節はアウェーに乗り込み、中地区の富山グラウジーズと対戦する。富山とは先日、プレシーズンゲームで対戦があったが、この時の仕上がりとは別物と考えておかねばなるまい。

富山は開幕節でサンロッカーズ渋谷にオフェンス合戦の末、連敗を喫したが、強力なオフェンスとインサイド陣は好調そのものだった。ロボッツとのプレシーズンゲームで脚を負傷していた#5ブライス・ジョンソンが開幕に間に合い、絶対的なセンターである#34ジョシュア・スミスもインサイドに陣取って得点を量産。この他、#33晴山ケビンも2試合合計で33得点を稼ぐなど、手数の豊富さを見せている。また、要所では#0小野龍猛など大柄な日本人選手や、帰化選手である#1ファイサンバを投入することでの「ビッグユニット」も仕掛けてくる。個人技に秀でた#8コーディ・デンプスや#16松井啓十郎の存在も光っており、コート上のメンバーを見て、的確に対策を練り続けなくてはならないはずだ。

対するロボッツは、開幕節で出場機会をなかなか得られていなかった、#2福澤晃平、#13中村功平、#33林翔太郎の3人に注目したい。彼らが相手の集中力を分散させるようなロングシュートを見舞っていくことで、#1トーマス・ケネディやタプスコット、さらには#21エリック・ジェイコブセンといった面々の負担も軽減され、「重戦車軍団」富山をいかに守るかという部分に集中していける。今シーズンの初勝利を、多彩なメンバーの活躍から引き起こせるかを見届けたい。

熱狂的な富山ブースターが埋め尽くす真っ赤な空間を、ロボッツのブルーが切り裂いていく。それを40分間続けてこそ勝利が得られるはず。次のホームゲームである日立市開催に向けて、少しでも良いイメージを持っていけるかも気になる一戦となるだろう。

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