【AFTER GAME】 2022-23 富山戦(10/8〜9)〜シーズン初勝利も、一進一退の日々は続く~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA

ロボッツは敵地に乗り込み、富山グラウジーズとの2連戦に臨んだ。共に開幕カードで連敗していただけに、勝利を欲した両者の迫力が随所に垣間見える試合となった。GAME1ではロボッツが試合開始直後に16連続得点を記録して大きく突き放すと、そのまま相手に追いつかせずに70-82で試合を締めくくり、今シーズンの初勝利を飾る。逆にGAME2は、序盤の混戦を抜け出して逃げ続ける相手を最後まで捉えるには至らず、86-75で敗れた。収穫もあった一方で、伸びしろもまだまだ残されているはず。一つの形が見えた2試合を振り返る。

一瞬を逃さずに

開幕節での連敗があったとは言え、チームが下を向く時間はなかった。1週間という限られた時間でのチームの立て直しについて、リチャード・グレスマンHCはこう語る。

「開幕節、特にGAME2について、結果にこそ結びつきませんでしたが、選手たちの戦いぶりは本当に良かったと思っています。そこから『戦い続けよう』というテーマを掲げた1週間でした。全てにおいて、より良くならなければいけないという状況のなかで、戦い続ける、やり続けることを選手たちが意識し、結果につながったと思います」

富山は2試合を通じてゾーンディフェンスを多用した。そのゾーンをくぐり抜けても、ゴール下には大黒柱の#34ジョシュア・スミスが待ち構えている。これは覆しようのない部分であると同時に、彼がいる中でも、ロボッツにアドバンテージとなる状況を見出さなくてはならなかったはずだ。ゾーンの中からでもシュートを打つ、あるいは相手のゾーンの手が伸びてこないポイントから得点を狙う。GAME1で#11チェハーレス・タプスコットがフリースローラインに近い部分で得点を量産したことや、#1トーマス・ケネディが相手のディフェンスが収縮したところでパスを受け、3ポイントシュートを決めるなど、得点パターンとしてはお手本に近い部分があったはずだ。これらのプレーについても、グレスマンHCは言及している。

「相手のゾーンディフェンスを攻めていくことを考えたとき、シンプルなパスから良いプレーが生まれる…という流れがあると思います。TK(ケネディ)選手のようなシュートは、私たちを助けてくれました。ゾーンで守られたこともあって攻撃回数が減った中、80得点以上を挙げられたので、オフェンス面としては良い結果だったでしょう」

明くる日のGAME2では、富山の浜口炎HC曰く「ゾーンでの守り方を調整した」ことで、インサイドでのシュートがなかなか決まらない。ペイントエリアでの得点が減ったほか、ターンオーバー、つまりシュートまで持ち込めないシーンが増えてしまった。こうした対策との兼ね合いについては奇しくも、GAME1を終えた段階で#8多嶋朝飛が勝負のポイントとして挙げていた部分だった。

「自分たちがブレずにやらなきゃいけないことがある一方、相手の対策に対して、自分たちもそこをアジャストしてプレーしなきゃいけない、今日とはまた違う部分で我慢しなきゃいけない部分が出てくると思うので、それをどれだけチームとして対応できるか。耐えるだけじゃなく、自分たちも勝つために必要なことを考えて、同じ方向を向かなくてはと思います」

GAME2での敗戦から、改めて次の勝利に向けて何が必要になるか。この2試合の状況から、今後の対戦相手もロボッツを止めるための策を練ってくるはず。相手が仕掛けた罠を、一つ一つ超えていくことが、時間がかかったとしてもその後の結果をより良くするはず。まだこんなものではない、という部分を見せる日はきっと来るはずだ。

ディフェンスで違いを見せて

GAME1の第4クォーター開始直後、富山は#8コーディ・デンプスがステップワークでロボッツのディフェンスを翻弄して得点を重ね、1桁点差に迫る。嫌なムードが漂い始めた場面で投入されたのが、この日が誕生日でもあった多嶋だった。多嶋はデンプスの足元をピッタリとふさぎ、インサイドへの侵入を阻む。富山の大きな攻め手を、大事な場面で一つ削ってみせた。この場面での起用、そして多嶋のパフォーマンスを見たグレスマンHCはこんなコメントを残している。

「誕生日だった彼のためにも、今日勝てたことは良かったと思います。ああいったハッスルを見せてくれることは非常にうれしいことですし、それが必要とされた時間帯に素晴らしい戦いぶりを見せてくれたことで、相手が狙っていたオフェンスを崩せたのだと思っています」

改めて、本人にプレーでの実感を尋ねると、多嶋はこう返す。

「マークにつく可能性があることはコーチ陣からも話がありましたし、プレシーズンでやった分、イメージはなんとなくついてはいました。デンプス選手が出るときは、特に向こうはスモールラインアップでの勝負を仕掛けてくると考えていたので、少しでもイージーにやらせないようにしたかった。コート上のメンバーを見た限り、彼が起点にならないときついプレーになってくるとも思えたので、少しでもタフにしようと考えた結果でした」

「他にもああいったプレーができる選手はいたはず」と謙遜するような言葉を残した多嶋。一方で、「試合の締めくくりの場面だったので、少しでも勝利を呼び込めて良かった」とも話す。自分たちに流れを持ってくるために、まずは相手を止める。勝利のための最適解を着実に実行したことが大きかった。

「自分たちとしては、そんなにずっと優位性があるわけではないですし、やるべきことができてないとやっぱりすぐ追いつかれる。実際に、そうなりかけた時間もあったわけで、チームとしてもそこを理解できたんじゃないかと思います。そこに声を掛け合っていけたことで、最後までリードを保つことができた。それが勝因じゃないでしょうか」

常に張り詰めた空気をまといつつ、勝利をもぎ取る。勝利をもぎ取り続けるからこそ、段々と勝ち方も分かってくる。昨シーズンのロボッツはB1での初勝利までに7試合を要した。まず1つ勝った。勝利を増やしていくためには、どんなプレーを再現し、あるいはどんなプレーを今後してはならないかを細かく導き出さなくてはならない。気が遠くなるような日々にもなるかもしれないが、ここからがロボッツの勝負どころになるだろう。

吹っ切れも垣間見えて

この富山戦では、開幕節で少々大人しいぐらいの状況にあった選手たちが、次々に見せ場を作った。2試合続けて2桁得点を記録したケネディや#17山口颯斗、さらにはこの2試合でスターターを務め、伸びやかなプレーを見せた#13中村功平といった面々だ。GAME1で3ポイントラッシュを見舞ったケネディは、「何があっても打ち続けるのが大事」とした一方、自らにかかる期待については「今日のようなプレーを増やさなくてはいけない」とも言葉を残した。

その一方で、まだ若い中村と山口は、多少の不安もあったようだ。ケガからの復帰を経て、熾烈なガード陣争いに参戦している中村の言葉からも、それが垣間見える。

「開幕節の段階では『このメンバーの中で、どれくらいプレーできるだろう』とか、ある意味考えなくてもいいことを考えてしまっていました。今節は、会場入りしたぐらいのタイミングで『スターターで行く』と言われたことで、いつも以上に準備に集中することができました。思い切り行こうと思っていましたし、それができて良かったです」

グレスマンHCも、「前の2試合でプレータイムが短かったこともあって、スターターで行くには難しい場面はあったはず」としながらも、そのプレーを高く評価。GAME1では深い位置からのシュートや、ファウルを受けながらのシュートも決めるなど、チームを波に乗せていくには十分過ぎるインパクトを残した。

そうした裏で、開幕から4試合連続でスターターとなっていた山口も、自らのパフォーマンスに危機感を募らせていた。

「開幕節では実戦での合わせ込みの部分がまだ整っていなかったこともあって、結果を残すことができませんでした。そこから、この2試合も同じように終わったら、自分の今後にも関わってくると思っていました。積極性の部分は意識していましたね。2桁得点はできましたが、インサイドでの攻撃がもっとできるようになれば、エリック(ジェイコブセン)ももっと生きてくる。もっと成長しないと、と思っています」

どちらのものになるか分からないボールにも積極的に飛び込み、ボールを我が物にしようとするプレーも見せた山口。昨シーズンまでを過ごしたレバンガ北海道での経験も、彼を形作っているようだ。

「北海道時代に、桜井先輩(#11桜井良太)のプレーを見て衝撃を受けたんです。感銘を受けたというか、かっこ良さがあった。そこに近づけるように…とまでは言わないですけど、自分のマインドの元にはなっていると思います」

チーム最年少にして、泥臭いプレーも決してためらわない。そんな彼の姿は、間違いなくチーム全体に伝播していくはずだ。この2試合で見せたプレーが、チームを押し上げるとともに、他の選手の原動力になることを願ってやまない。

日立決戦は、一新されたチームを相手に

次節はホームでの開催。年に一度の日立市・池の川さくらアリーナでの試合となる。対戦相手は、昨シーズン、B1での初勝利の相手となった三遠ネオフェニックス。ただ、当時とのチームの姿はあまりにも違っているため、こちらとしても全く新しいチームと戦うと思っておきたい。昨シーズンまで千葉ジェッツを率いた大野篤史を新指揮官に迎えた三遠は、開幕節でこそ連敗を喫するも、前節はホームで北海道に連勝を達成。2試合ともに2桁点差をつけての快勝だった。

三遠の武器はガード陣も含めた、高さのある布陣で勝負ができること。シーホース三河から加入した#55カイル・コリンズワースや、看板選手の1人となった#0サーディ・ラベナがいる一方で、新加入のビッグマンである#1ヤンテ・メイテンと#4アイザイア・ヒックスもオールラウンドに得点を取ってくる。チームの象徴的存在の#8太田敦也は今季も健在で、インサイドをどっしりと守り抜く。結果として1試合平均リバウンドが42.8本と、リーグトップの数値を誇る。この値をどう下回らせるか、そしてその上でどうロボッツが主導権を握るかが、戦術のキーポイントとなるはずだ。一方ではインサイドに集中しすぎると、#14金丸晃輔や#24佐々木隆成など、威力抜群のシューター陣が容赦なく襲いかかってくる。常に守りに気を張り続ける一戦になるだろう。

ロボッツは、打ち合いを望む…という戦いを目指すことも一つの策だが、相手のドライブアタックをまず食い止めることを目指したい。注目選手を挙げるならば、#11チェハーレス・タプスコットだろう。今季は開幕から好調に得点を重ねるタプスコットだが、シュートタッチについては、まだ本調子ではない部分も垣間見える。それでも、ディフェンダーとしても要所を抑えているからこそ、という信頼もあるはず。この試合でも相手の高さや迫力を受け止めた上で、ロボッツの自慢のオフェンスが火を噴く展開へとつなげられるか。攻守にわたる「Chey Time」で会場を沸かすことを期待したい。

昨シーズンは勝利とならなかった日立開催。2年ぶりの勝利を届けようとする選手たちに、ぜひ1人でも多く会場に足を運んでもらうと同時に、応援と白熱のプレーで盛り上げ合うような展開を願いたいところだ。

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