TSUKUBA PRIDE vol.1~筑波が魅せる戦い方~

写真:茨城ロボッツ、佐藤雅美

関東大学リーグ戦優勝10回、全日本大学選手権大会(インカレ)優勝5回の実績を誇る”筑波大学”。数多くのBリーガー、さらに日本代表選手も輩出する関東大学バスケ屈指の名門校として知られる。今年は新人インカレ優勝、さらに日韓学生バスケットボール競技大会「李相佰盃」では日本学生選抜に最多の4名の選手を送り出した。同じ茨城県のバスケットボールチームとして研鑽を積む筑波大学の関東大学リーグ戦の振り返りとともに、4年ぶりの優勝を目指すインカレへの意気込みを全3回(①吉田健司監督②木林優選手③小川敦也選手)でお届けする。

吉田健司
筑波大学出身。現役時は東芝バスケットボール部に入部し、新人王を獲得するなど活躍を収める。引退後は社業に邁進し、その後34歳で東芝バスケットボール部のアシスタントコーチに。その後、同部ヘッドコーチ、日本代表監督を経て、2004年に母校・筑波大学男子バスケットボール部技術顧問に就任。2006年にヘッドコーチに就任してからはインカレ優勝4回を達成するなど大学バスケ屈指の名将として知られる。

外から攻めるをテーマに

今季は新人インカレ優勝を飾るものの、関東大学選手権大会ではベスト16、関東大学リーグ戦では9勝10敗の7位と苦戦が続いた。しかし、そんな中でも吉田監督からは「育成・勝利」を目指しつつ、12月から始まるインカレに照準を合わせる言葉が続く。

ーリーグ戦全体の振り返りをお願いします

吉田監督「今回のリーグ戦は上位と下位リーグが分かれる形式で行われました。その中で、インカレのシードに入るために6位までに入ることが1つ目標でした。ただ、キャプテンでスコアラーの#34三谷桂司朗が骨折を負い、復帰が上位リーグからとなりました。第1次ラウンドを突破し、上位リーグに入り、ここからだと思いましたが、やはり、まだチームができていない状況だったので、勝ち星は1つしか奪えませんでした。しかし、インカレに向けて、 留学生対策が重要になってくる中で、上位チームの留学生とやり合えたことは、 非常に良い経験となりました。成績はあまり良くなかったですが、経験として良かった部分が大きいです。インカレに向けたチーム作りとして、課題や強化すべき点と、良かった部分も見えた大会となりました」

上位リーグに進んだ7チーム中5チームは留学生を擁し、高さやインサイドでの強さなどでしのぎを削る関東大学バスケ。日本人選手のみで戦う筑波大学にとってサイズで劣る場面も多いが、今年はある戦い方を模索していた。

ー留学生対策として具体的にはどのように戦うことを意識していましたか?

吉田監督「今年は日本代表トム・ホーバスHCがやっていたスタイル『ファイブアウト』を起用しています。全員が外から攻めていく、3Pシュートも打つというようなバスケットに変えていきました。結局、学生はBリーグに進んでいくと、今度は外国籍選手を相手にしなくてはいけません。そこで、身長が2mあってもインサイドのポジションにつくことは難しくなってきます。そういう意味では、アウトサイドプレーを身につけなくてはいけません。そういったことを含めて、『ファイブアウト』を取り入れました。現時点では、昨年より3Pシュートの本数も増えています。ポジションレスになって全員が3Pシュートとドライブで攻められるように、『外から攻められるようになる』ことが今年の大きなテーマでした」

ー筑波大学は長身でアウトサイドプレーができる選手が多いことも強さの1つだと感じます。練習の中で「ファイブアウト」をするために取り入れていることはありますか?

吉田監督「今は特に力を入れているのは、アウトサイドからの1on1です。アウトサイドの1on1、そこからのキックアウト、3Pシュートの流れを取り入れています。後は、各自がファンダメンタルとして、シューティング、ボールハンドリングの強化を行っています」

写真提供:佐藤雅美

5人全員がアウトサイドから攻め、オフェンスを組み立てる「ファイブアウト」。リーグ戦で勝利を目指すだけでなく、日本一を決めるインカレ、また卒業後のBリーグで日本人選手が生き抜く上でも重要な戦い方となる。

試行錯誤を重ねる中、上位リーグ2戦目の日体大戦では「ファイブアウト」での留学生対策が功を奏した。

ー春に惜しくも破れた日体大にも、上位リーグ戦では白星を奪っています。留学生対策が活きた試合だったと思いますが、いかがでしょうか?

吉田監督「あの試合は『ファイブアウト』がまさしく機能した試合です。簡単に言えば、全員が5対5、外から攻めて、 ディフェンスが収縮したところでキックアウトで3Pシュートを打ち続けました。3Pシュートのアテンプトも多く、その上で確率も良く決めることができました」

写真提供:佐藤雅美

この試合、筑波大学は3Pシュートを40%近い確率で成功。中でも、#2木林優選手は5本の3Pシュートを沈め、ゲームハイの29得点。高さを相手に、機動力で挑み勝利を掴み取った。

ー#2木林選手の活躍は吉田監督の目にはどう映っていましたか?

吉田監督「4年生になってチームを引っ張っていく自覚も出てきたと感じます。プレーでは、3Pシュートやドライブなど器用な面が見られます。さらに、ユニバーシアードでの日本代表ではインサイドを役割としてやらなくてはいけないので、そういった意味では、相手が誰であっても、インサイドで攻めることもできているし、オールラウンドに活躍できる選手になっていると思います」

ーキャプテン#34三谷選手の欠場もあった中、#2木林選手、#35平田航大選手など4年生の頑張りもかなり多く見られました。チームを支える彼らの存在はいかがでしたか?

吉田監督「毎年そうですが、やっぱり大学バスケって4年生が重要なんです。4年生がどれだけチームを引っ張って、活躍するか。これがやはり大学バスケなんですよね。そういった意味では、4年生からチーム・下級生への発信を強めてもらい、チームを引っ張ってもらわないとチームがまとまらないと思っています 4年生は『今年で終わりだから頑張る』と理由がはっきりしています。経験もある4年生が常にコート上に立って引っ張っていってほしいです」

写真提供:佐藤雅美

今年の集大成へ

12月2日(土)より学生バスケの頂点を決めるインカレが開幕。筑波大学は2019年以来の日本一を目指し、歩みを続ける。

昨年のインカレは中京大学を相手に4Qで執念を見せるも惜しくも敗戦。8年連続ベスト4を達成していた中で悔しい初戦敗退となった。

ー昨年のインカレは悔しい結果に終わってしまったと思います。この一年、どのような思いで練習に励んできましたか?

吉田監督「昨年は自分たちのバスケットをやらないうちに終わってしまったという悔しさがあります。昨年の負けを踏まえて、今年は『ファイブアウト』を目指し、留学生のいないチームのバスケットをしっかりとやっていかなくてはいけません。ディフェンスから速攻を出すスタイルは変わっていませんし、とにかく平面で動くことを今年の最初に学生に伝えて、今も意識しています」

写真提供:佐藤雅美

ーインカレに向け現在はどのような調整を行っていますか?

吉田監督「得点が取れなかった部分を改善しています。ターンオーバーが多く、トランジションもあまり出ず、攻撃回数が少ない場面がリーグ戦では見られました。必然的にシュート回数が少なく、確率が悪くなってくると得点が伸びません。そこの改善がインカレに向けての大きなテーマになります。やはり点を取らないと勝てないので、まず点を取るところをリーグ戦が終わって2週間ずっとやっています。インカレはトーナメントなので、最初に3日連続で試合をし、その翌週に2日連続で試合。その中で最初の3日間でどれだけ自分たちのバスケットができるかが重要だと考えています。相手にとってはあまりスカウティングができない状況での試合なので、ちょっとリーグ戦と違うバスケット、試行錯誤中ですが、それが上手く当たればと思っています」

ー最後にインカレに向けた意気込みをお願いします

吉田監督「リーグ戦で7位なので簡単に優勝とは言えませんが、少なくともベスト4以上に入ること。そのためにも、まずは最初の3日間を勝ち進んで、翌週の太田市総合体育館で良い試合をしたいと思います」

筑波大学の初戦は12月7日(木)。一年間を通して挑戦してきた「ファイブアウト」を軸に、今年の集大成”インカレ”に臨む。

写真提供:佐藤雅美
おすすめの記事