【AFTER GAME】 2022-23 京都戦(2/4~5)~ディフェンスで見せた回答。相手の波を封じて~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

上位に食らいつきたいロボッツにとって一つの試金石となるホーム4連戦。西地区の京都ハンナリーズとの一戦は、コート内外で繰り出される互いの策がぶつかり合う試合となった。GAME1では京都のペースを攻略できずに79-85と敗れたロボッツだが、GAME2では相手のキーマンへのディフェンスがはまってから一気に流れを掴み、90-75で勝利した。チームとしてのカムバックには高い遂行力が存在した。その舞台裏に迫る。

徹底したケアで妨げて

この2試合において、京都の#1ジェロード・ユトフのシュートタッチは群を抜いていた。1対1の場面でビッグマンたちがシュートコンテストを張っても、その上を越えていくように3ポイントシュートが吸い込まれる。GAME1では20得点、GAME2の前半だけでも18得点を許し、彼をどのように止めるのかが試合の生命線になりつつあった。

そのキーマンとなったのが、#11チェハーレス・タプスコット、そして#29鶴巻啓太だった。まず鶴巻が京都のハンドラーである#7マシュー・ライトを守り、ユトフのスクリーンを呼び出させる。

スクリーンを使ったあと、そのままユトフが外に展開する「ピック&ポップ」の状態となるのだが、ここでタプスコットがユトフへのパスコースを遮って、ライトのテンポを遅らせる。遅れてボールが入ることで、タプスコットが1対1の主導権を握ったかたちとなり、ユトフは無理に引き剥がしてのシュートではなく打開を狙ってインサイドへのドライブを選ぶ…。

結果として後半はユトフによる3ポイントのシュートアテンプトそのものを0に抑え、後半でのチーム全体の3ポイント成功も0に。京都の得点源を断ち切る答えを見つけてみせた。実際にディフェンスで対峙したタプスコットは、そうしたプレーをこのように振り返る。

「チームとして後半にアジャストをした一方で、自分としても相手を押さえ気味に、ユトフ選手に対して体を当てるようにしてガード陣にアンダー(この場合タプスコットの後ろを通って守る)できるように守りました。そうしていくことで、ユトフ選手が外に展開してもくっついていける。3ポイントを打たせないで、やや得意ではないであろうインサイドへ向かわせることを意識していました」

外のチャンスを断ち切れば、次なるディフェンスのターゲットはインサイド。ライトが攻め込もうとするならば、シュートを放つ最後の瞬間まで鶴巻の手がよく伸び、一方では簡単にはファウルにしない粘り強さも見えた。また、#31シェック・ディアロや#8ティージェー・ロールへ攻め込まれても、#21エリック・ジェイコブセンがゴール下で待ち構える。ミスマッチに見えたところも#13中村功平が胸を張って守り抜く。一つ一つ、相手の攻め手を削ぎきっていく強さが光った。ディフェンスの修正とその結果について、リチャード・グレスマンHCはこうまとめた。

「特にボールが絡んだところでのスクリーンに対するディフェンスが良く、鶴巻選手や平尾選手、山口選手も戦いに行ってくれましたし、タプスコット選手を始めとしたインサイド陣も良いカバーリングをしてくれました。ここが悪くなってしまっては、ペイントエリアに簡単に攻め込まれてしまいますし、そこから楽な3ポイントも打たれてしまう。ここをよく守ってくれたので、相手へのアドバンテージを与えずに終わることができました」

行ったり来たりという展開が続く中、相手を止める手立てを見出して勝利したことは大きい。一方、それと同じか、より大きな効果をもたらしたのは、チームで組み立てたオフェンスにもあった。

手数豊富に攻め立てて

GAME2で控えから登場した選手たちの得点はロボッツの42に対して京都が4。流れを絶やさず、かといって特定のメンバーに得点が偏りすぎることもなくというチームバスケットとしての"らしさ"が見えた。グレスマンコーチも選手たちの名前を挙げて、試合展開の良さを称えた。

「ハードに守って、速い展開のオフェンスをする、その中で交代を繰り返していく。選手たちには『次の選手がいるから、ここで全力を出す』とか、交代メンバーにも『今出ている選手たちを支えよう』というメンタリティでやっていこうと伝えています。交代メンバーも含めて勝ったGAME2の方がよりよいプレーだったと思います。福澤選手がしっかり得点することでチームを引っぱってくれましたし、クラットウィグ選手の助けもありましたし、平尾選手や鶴巻選手もそうです。これが自分たちのやりたいことなんです。非常に良いサインでしょうし、強みだったかと思います」

相手がゾーンディフェンスをたびたび用いてロボッツの攻撃ペースを落とさせようとする中でも、判断の良さで打開を図った。第3クォーターの終盤、京都の追い上げムードの中で3ポイントシュートを沈めた鶴巻は「入ってホッとした」とした一方、オフェンス面の打開についてこう話す。

「外でパスが回っていただけだったので、ハイポスト(フリースローライン付近)に一度ボールを入れてあげることによって、ゾーンのディフェンスが一度中に収縮する。そこでもう一度外に出すという状況でいろいろズレが作れたんじゃないかと思います」

ポストで誰がボールを持つのか、というところで、ロボッツは#15キャメロン・クラットウィグをくさびにすることを明確化した。彼個人にもそこから押し込んでいけるだけの打開力がある一方で、しっかりパスをさばけるという強みもある。結果的にゾーンの攻略に時間を使う中でも得点を重ねていった部分も、一つのキープレーだった。

選手・コーチともに外からのシュートパターンを作りたいと話すのがロボッツのバスケット。ただ相手のディフェンスのズレから3ポイントを打つ…というのももう一つの大きなポイントとなっているため、それがゾーンディフェンスを前にした状況では活きづらいのも確かな課題でもある。ただ、その中でもコート上での修正からリードを広げ、選手たちの言葉を借りれば「勝って反省」とすることができた。現状のチームのバランスについて、この日チーム最多の20得点を挙げたタプスコットはこう話す。

「オフェンスもディフェンスも、まずは自分たちのアイデンティティを理解することから始まると思います。例えば、エリック選手やキャメロン選手が良いスクリーンをかける。リバウンドを獲る。鶴巻選手が良いディフェンスをしていく。選手一人一人が役割を実行する、自分ができることをよくやっていけば、チームとしても良いプレーになるでしょうし、一つになっていくこともできるかと思います」

チームでもたらした結果が、ロボッツをさらに良い循環へと持っていくはず。速い攻めばかりでなく、かといって停滞しすぎることもなく攻め続ける40分を作ったことには、これまでと一味違う良さがあった。

「CITY EDITION」をまとって

次節もホームゲーム、対戦相手は中地区の新潟アルビレックスBBだ。今季はケガ人の発生などでベストメンバーがなかなか揃わず、さらにはヘッドコーチの交代もあり、現在5勝31敗で地区最下位。B1でも全体最下位となっており、残留争いに食らいつくためにも喉から手が出るほど勝利を欲しているチームといえる。昨シーズンは2勝2敗と星を分けていて、アウェーでの2試合で連敗を喫したことを覚えているロボッツファンもいることだろう。

シーズン途中の加入ながらインサイドの大黒柱となっている#21コフィ・コーバーンは前節を欠場。復帰も含めて注目ポイントである。コート上でのコーバーンは強烈なまでの打開力を見せていて、彼の攻略は一筋縄ではいかない。1試合平均リバウンドは13.0本と、リーグの個人成績トップを行く千葉ジェッツ#33ジョン・ムーニーの12.2本を上回る(コーバーンは出場試合数が足りないためランクインせず)。彼をチームとしてどう守るかが最大のポイントとなるだろう。

そして今節のさらなる注目が、ロボッツが着用する「CITY EDITION」ユニフォーム。梅の写真をデザインの一部に取り込んだかたちとなっており、京都戦GAME2終了後には平尾と#17山口颯斗が着用してのお披露目となった。

その中での注目選手はタプスコット。「3rd」「4th」と2種類の特別ユニフォームが採用された2020-21シーズンで、4試合中3試合で20点超え、3rdユニフォーム着用の2試合はともに30得点超えという抜群の相性を誇った。梅まつりの雰囲気もまとう今回のCITY EDITIONユニフォームで、どれほどのパフォーマンスを見せてくれるかに期待したい。本人も「限られた期間だけ着られるユニフォームなので、特別な気持ちにもなります。自分たちもファンの方々も、この機会をすごく楽しみにしていると思うので、全員で楽しんで、そして良いプレーができたら」とコメントを残してくれた。

観梅の季節が迫る水戸に、まずは勝利の花を咲き誇らせる。デザインに込められた願いのように、白熱した試合を見せてほしい。

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