【AFTER GAME】 2022-23 三河戦(1/28~29)~オーバータイムの末、敵地で連敗ストップ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS, B.LEAGUE

敵地に乗り込んでのシーホース三河との2連戦。ロボッツはGAME1で三河の猛追を振り切り、オーバータイムに突入しながら94-95で勝利を果たす。GAME2は#21エリック・ジェイコブセンが欠場する中、序盤の重い展開から立て直しを狙うも、74-65で敗戦。三河が強烈な個の力でロボッツを押し切ろうとする中、チームとしての戦いが随所に見られた。

ボールのない場所をよく動き

GAME1の第4クォーター、オフィシャルタイムアウト明けからロボッツは三河の猛追を受ける。三河は#19西田優大がハンドラーとなって攻撃を組み立て始め、#30クインシー・ミラー、#54ダバンテ・ガードナーへのマークを散らし始め、ロボッツのディフェンスの的を絞らせない状況を作る。

クロージングに向かっていたはずの試合は振り出しに戻り、さらに三河が逆転に成功した。ここでロボッツはタイムアウトを取り、コートに#1トーマス・ケネディを送る。

残り1分を切って三河が時間内でのオフェンスを完成できず、仕切り直しでロボッツの攻撃がスタート。ここでケネディはコーナーからスルスルとポジションを変え、三河の#13ブランドン・ジャワトを振り切る。なおも追ったジャワトが、ジェイコブセンのオフボールスクリーンに引っかかり、ぽっかりとスペースが生まれた。

そのギャップを見逃さなかった#11チェハーレス・タプスコットがケネディへとパスを送ると、代名詞のクイックモーションでの3ポイントシュートを放ち、リングに吸い込まれる。ここからオーバータイムにかけて3本のシュートを決めて、ロボッツは再び勢いを得た。試合後の本人は、ある意味いつも通りに、淡々とプレーを振り返る。

「自分としてはやるべきことをやり続けることを意識していました。シュートタッチもいつも通りという感じで、相手との駆け引きの中でオープンになることを意識して、あとはいつも通り打ちました」

インサイドに大黒柱のガードナーや、日本代表常連のビッグマンである#32シェーファーアヴィ幸樹が控える三河。GAME1ではその高さが活きるかたちとなり、リバウンドで実に17本も多く取られたほか、ペイントエリアでの得点も58-36と大きな差が付いている。それでも、ロボッツはインサイドをきっちり使い続け、ボールの出し入れから相手とのズレを作って3ポイントシュートでたたみかけた。

オーバータイムで点差が離れても、再び三河が追い上げ、またしても逆転を果たす。だが、ロボッツは最後のオフェンスでジェイコブセンとのピック&ロールからタプスコットがゴール下を押し込んで勝負あり。リチャード・グレスマンHCが「Wild」と評した試合はロボッツの勝利に終わった。勝負を決めたタプスコットはその場面をこう振り返る。

「もちろんしっかり決めきることができて良かったのですが、第4クォーターの終盤に似たようなシチュエーションがあって、自分はシュートを落としてしまいました。もう一度アタックできるチャンスができたことは嬉しかったですし、それでチームが勝てて本当に良かったと思います」

ジェイコブセンと#15キャメロン・クラットウィグの存在で、インサイドの強度確保においては一定のタイムシェアが見えてきているものの、タプスコットについてはまだまだ彼に頼る部分が大きい。攻守の忍耐強さと判断力で、たびたびチームを救い続けてきており、おそらくそれは今後も変わらない部分だろう。

これまで、単に1対1での勝負となって、タプスコットが跳ね返されて敗れる…という試合も多くあったロボッツ。選手たちの言葉を借りるならば「正しいスペーシング」に対する遂行力で、最後まで三河を上回ったからこそ、という勝利だっただろう。

一転の苦戦を跳ね返すべく

オーバータイムの翌日という状況で、ロボッツも三河もGAME2の入りはスローペースで、互いに得点が伸びなかった。しかし、ジワジワと三河がディフェンスから主導権を握って、ロボッツを引き離しにかかる。コート上の選手たちも、三河のディフェンスへの対応に苦慮していたようで、#2福澤晃平はこのように振り返る。

「前日よりも、マークマンが切り替わったタイミングでも、相手のインサイドの選手が高い位置に残って守るということが多かったと思います。特に前半でショットクロック・バイオレーションになったり、タフショットに追い込まれたりする場面もあった中で、チームとしてすぐに対応できませんでした」

加えてこの日はジェイコブセンが不在。そのため、クラットウィグが加入後2度目の先発起用となり、そして初の30分越えのプレータイムを得て、インサイドで対峙した。だが、そのクラットウィグは前日に攻守とも精彩を欠き、わずか4分のプレータイムに終わる。チームとしては彼をどう送り出すかが問われた場面でもあった。その舞台裏を、グレスマンHCはこう話す。

「キャメロン選手に対しては『自信を持つこと、昨日のことは忘れて今日のために臨もう』と話しましたし、実際にやってくれたと思います。キャメロン選手はエリック選手がいない中で、たくさんの良いプレーをチームにもたらしてくれたと思います」

1ヶ月ほど前、琉球ゴールデンキングスとのアウェーゲームでもオーバータイムの激戦となったロボッツ。この時はGAME2で大きく水をあけられ、30点以上のビハインドを背負って敗れた。だが、この試合では徐々に流れを再び掴もうとする場面も見せ、ケネディや福澤の活躍で一時2点差にまで詰め寄る。その後再び引き離されて敗れはしたものの、その内容は大きく質を高めたものだった。メンバー構成も変化する中で、チーム状態の変化については、グレスマンHCはさらにこう語る。

「延長戦からの疲れもあったでしょうが、それが全てではないと思います。エリック選手が出られない中で、いつもよりもエラーに対するマージンが少なかった状況です。1ヶ月前と比べて、チームの成長はあると思います。良い面を活かして、より競争力のある強いチームになりたいところです。より良いチームを目指す、というところは引き続きやらなくてはならない部分でしょう」

決して互いに万全ではない中で、いかに前に出続けてプレッシャーを与えるか。グレスマンHCが言うように、勝利を目指す中でエラーを引き起こす余裕は決して多くはない。起きたエラーを次に起こさないために。そして、新たに起きるであろうエラーに素早く対処する。そのスパンが短く、早く行われるほど、チームとしての引き出しは多く、大きく、見つけやすくなっていくはず。残り3ヶ月ほどとなったシーズンで、どれだけチームがブラッシュアップを続けられるか。それが問われる一戦になったはずだ。

ホームゲーム4連戦がスタート

ここからはアダストリアみとアリーナでの4連戦がスタート。オールスターゲームがあったこともあって実感に乏しいかもしれないが、2023年に入って初の本拠地での試合となる。

今節の対戦相手は西地区の京都ハンナリーズ。昨シーズンは互いに苦戦が続く中、アウェーでの対戦で1勝1敗と星を分けた。今季、チームの姿が大きく変わった京都は昨年の課題だった得点力不足を解決しつつあり、中地区の川崎ブレイブサンダースや横浜ビー・コルセアーズなど、上位チームからも勝ち星を奪ってきている。

チームの軸となっているのは2人のポイントガード。アジア特別枠を使って今季加入した#7マシュー・ライトと、在籍4シーズン目を迎える#11久保田義章だ。

ライトも久保田も、コート上のどこからでもシュートを放って得点が取れるタイプであり、アシストもさばける。特に久保田はリーグ5位となる1試合平均6.6アシストを記録しており、攻撃の起点にどうプレッシャーをかけられるかを見ていきたい。

ロボッツはバックコートとインサイドのマッチアップを判断よく入れ替えつつ、コート上のズレを見出したい。カギになるのが、幅広いポジションの選手にディフェンスを張っていける、#13中村功平と#29鶴巻啓太の中大コンビ。

三河戦では大学の大先輩である#3柏木真介とのフィジカルなマッチアップも見せた2人。彼らの元気さが試合の分かれ目になることも考えられるだろう。

ホーム4連戦でB1のリーグ戦は一時中断となるが、ここの星取りがリーグ戦再開後の立ち位置を大きく変えうる。チャレンジャーとしてより力強い戦いを見せ続け、ホームに勝利を届けてほしい。

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