【AFTER GAME】 2022-23 名古屋D戦(1/21~22)~修正力を発揮するも、神栖での勝利ならず~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS, B.LEAGUE

今季唯一となる、かみす防災アリーナでのホームゲームとなった、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの2連戦。GAME1を71-90で落としたロボッツは、ディフェンスを修正し、名古屋Dの高さを根気強く抑えていく。しかし、第4クォーターでシュートを中々決められず、73-77で連敗。昨シーズンにB1初勝利の舞台となった神栖での勝ち星とはならなかった。強豪との激闘が続くなか、今のロボッツはどのステージで戦っているのか。少なくとも、僅差の戦いが続いたGAME2では、これまでとは一味違う場所にいるように見えた。指揮官、選手の声をもとに振り返る。

ディフェンス面での「谷」を潰して

せめぎ合いのなかで、ロボッツは簡単なシュートを打たせないことを徹底していた。一つ大きく現れていたのが、ペイントエリアでの失点で、GAME1の42点から28点と大きく減らしている。その鍵となったのがマッチアップで、名古屋Dの#4コティ・クラークに対して#17山口颯斗が立ちはだかる。彼がボールのあるなしにかかわらず、よく守ったことで、インサイドへの突進をケアし続けていった。

そのクラークが3ポイントシュートを連発するものの、リーグでもトップの成功率(36.9%)を誇るシューター陣を相手に、しっかりとシュートコンテストを張る。結果、クラーク以外の得点が伸びず、ロボッツの粘りが出たかたちとなった。リチャード・グレスマンHCも、手応えを覗かせるコメントを残した。

「どちらとも競い合って、両チームとも得点することを難しくしていったし、ロボッツの選手たちがディフェンスで止めることを続けてくれたからです。第4クォーターで、12失点に抑えることができた。得点を量産されることも、ターンオーバーを連発することも、自分たちとしてはほぼ全ての場面で悪いところはなかった、良かったと思っています。だから、選手たちには自信を持ち続けてもらいたいです」

これまで、強豪チームとの対戦で惜しくも敗れた、という試合においては、グレスマンHCが言うとおり、どこかのクォーターでディフェンスを押し破られるシーンが相次ぎ、攻撃も散発になっていく。そこから立て直しても、結果的にそれが勝負の分かれ目になってしまうことがしばしばあった。だが、この試合では大崩れするようなシーンはそう多くなく、名古屋Dに連続得点を決められても、同じ勢いかさらなる猛攻ですぐさま応戦する…ということを繰り返していた。結果的に逆転された第4クォーターも、オープンのシュートを作り出し、それが厚い信頼を集める#2福澤晃平の手にまで来ていた。少なくとも、ロボッツとしては限りなく望んだ形に近い得点チャンスを生み続けていたのだ。ただ、それが決まらなかったことについては、「そこが1本なり2本なり入っていたら」と、福澤本人も少し口調が重くならざるを得なかったようだ。

「ファウルゲームにも出ましたし、それ以外のファウルからフリースローになった場面もあったりという中で、フィールドゴールで言えばほとんど抑えているわけです。自分たちのシュートが入らない中でも、ディフェンスを粘りきれたのは一つ良いことだったと思うんです。ただ、こうやってシュートが決まらない日もあるわけで、あとは思いきり打ち続けること、そして点の取り方というのが大事になるはずなんです」

強豪と戦い続ける中で、1勝が見えそうな位置での戦いを続けている。もどかしさを感じる人もいるだろう。絶えず変わるチーム状況の中で、何ができて、何が不得手か、どこが伸びしろか。探り続けることでしか、勝利への糸口は見出せない。その努力が続いていることが垣間見えた戦いでもあったのかもしれない。

我慢と声でチームを救う

前半戦で10勝を果たし、後半戦に臨んでいるロボッツ。ここからの状況次第では、さらなる上位進出も目指せる位置にはいる。昨シーズン、1月を終えた段階では6勝にとどまり、終盤戦で勝ち星を重ねたものの、東地区の下位から抜け出すことは叶わなかった。改めて、チームの現在地で変わった部分があるとすればどこなのか。福澤に尋ねると、「我慢ですかね」と一言で答えが返ってくる。

「この連戦のGAME1が典型ですけど、オフェンスが悪くなるとディフェンスもつられていく…というのが出ると思うんです。ただ、GAME2では、コート上で声を掛け合うことも含めて、多少ですがディフェンスで我慢するというのができるようになっているのかな、とは思います。なので、それをシーズンを通して続けることができれば、もう少し勝てるようにはなるだろう、とは感じていますね」

声の掛け合い、という点で行くと、実はこの記者会見で登場した#8多嶋朝飛に対しても、問答が交わされていた。

「(声かけについては)自分たちからブレないということの現れだと思うんです。自分たちがコントロールできることに集中しなければいけないですし、何かアクションがあったときにチームがバラバラになることは避けなければいけないし、それは強いチームの戦い方ではないと思っているんです。悔しい、もどかしい空気感になっても、『良かったよ、続けるよ』というのを、一つ一つ声を掛けることで気持ちを切らさずに行く、という小さなことを積み重ねて、初めて40分間切らさずに戦うことに持っていけると思うんです」

チームとしての姿をブレさせないことは、チーム全体の成長の大きな部分を占めるだろう。ただ、「メンバーも替わって、試合に出るメンバーも増えていくという中で、今の前半戦だけでチームが成熟するのは難しい」とも話し、多嶋は現実をしっかり見つめている。その中で、「ただ」と前置きした上で、ロボッツの強みも改めて言葉にする。

「ロボッツはブレないときは強いなと思います。『ロボッツらしさ』、ディフェンスを全員で頑張って、リバウンドやルーズボールを獲って、良いテンポでみんながアタックする。シンプルにスクリーンをかけてアタックをして、チームで良いスペーシングを作れている。それが、自分たちのやりたいバスケなんだろうというのは、練習でも試合でも思うことなので、どんな風に相手に守られても、自分たちは変えちゃいけないと思うんです。そこは、まだ安定していないんだろうなとも感じます」

その上で、多嶋は「勝ちきるには、コーチ陣も選手も、勝つためにできることを模索しなければ」と付け加えた。

「今後も、いろんなチームと対戦があるなかで、自分たちがどういう陣形であっても、自分たちのバスケが貫けるとなればより良いことだと思いますし、メンバーを変えることでそれが上手くいかない、ボールや人が止まってしまうというのであれば、自分たちの戦い方を貫くことをベースにしなくてはいけない。勝った中、あるいは負けた中に、良かったこと、良くなかったことをしっかり受け止めて次の試合に臨みたいんです。そういった部分においても、まだやるべきことはたくさんあるんだと思います」

時に努めて冷静に、時には自ら大胆に。チームとして戦う中では、多嶋に限らず、全員が目まぐるしく役割を変え続けながら、40分間を進めていく。だからこそ、ロボッツは勝つたびに主役が変わっていくのだろう。後半戦に入ってもここをブレさせる必要はない。戦術やアプローチに限らず、様々な面でブレないことが求められ続ける。それが改めて示されたとも考えられそうだ。

順位の近いライバルとの連戦スタート

ここから2月の中断期間まで、ロボッツとしては一つ試される試合が続く。勝敗が近いチームとの対戦が立て続けに組まれるからだ。

次節はアウェーに乗り込み、中地区のシーホース三河と対戦。三河は現在11勝21敗、ロボッツとは地区こそ違えど、実は星の差1つで競い合う状態だ。その後対戦する、西地区の京都ハンナリーズ(12勝20敗)を含め、後半戦のジャンプアップを狙うためにも、ここでの勝利を渇望していることだろう。

昨シーズンは2戦とも敗れたものの、当時とチーム状況が大きく変化している。三河は主力選手の負傷離脱が相次ぎ、#9アンソニー・ローレンスⅡと#22セドリック・シモンズがともにインジュアリーリストへ登録中。代役として#10シズ・オルストンと#30クインシー・ミラーが合流したばかり。ただ、元NBAプレーヤーであるミラーの得点力には気を付けたく、彼がきっかけとなって#54ダバンテ・ガードナーや#19西田優大など、他の点取り屋たちに火がつくことは避けたい。さらに、昨シーズンのロボッツ戦でキャリアハイとなる31得点を奪ってきた#32シェーファーアヴィ幸樹に、再びの爆発は許したくない。的確にマッチアップを組み続け、相手を乗せないことが重要になる。

ロボッツが大切にしたいのは、シンプルな戦い。守りきって、すぐさまゴール下を脅かす、速いパスで相手を振り切り、迷わないシュートで得点を重ねる。百戦錬磨の強者たちが揃う三河を相手に、チャレンジャーであり続けることが重要となる。挙げるとするならば、多嶋の活躍が重要となるだろう。

時にはリバウンド争いにも絡み、時には自らも得点を量産する。そして、大胆さと精密さを併せ持ったプレーで、的確に相手の裏をかいていく。彼に導かれるように、全員が動き続けるバスケットが見られれば、流れをぐっと引き寄せられることだろう。

久々に水曜ゲームがない中で、互いに相手の分析をやり合っての戦いが予想される一戦。敵地で躍動するロボッツ戦士の姿に期待したい。

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