【AFTER GAME】 2022-23 新潟戦(2/11~12)~今季3度目の3連勝。際立った「備え」~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

「CITY EDITIONユニフォーム」を着用して行われた、新潟アルビレックスBBとの一戦。ロボッツは2試合を通して相手にリードをほとんど許さず、GAME1で93-74、GAME2で94-76と勝利。今季3回目となる3連勝を飾った。カード連勝も久しぶりとなったわけだが、GAME1相手の出方をしっかり受け止めきり、GAME2でより強く主導権を握った戦いぶりがあったからこそだった。

「下がれ」と言うほどのプレッシャーを

新潟は#21コフィ・コーバーンが強靱な体格でインサイドを切り開き、得点を重ねていく。ここにおいては#15キャメロン・クラットウィグと#21エリック・ジェイコブセンが辛抱強く体を張り、シュートに持ち込まれたとしても時間を使わせ続けた。

一方で、この2試合のロボッツはそこに至るまでの「予防」も欠かさなかった。相手のハンドラー陣に対して、ボールプッシュの段階からプレッシャーをかけ続けていく。スターター陣で言えば#8多嶋朝飛、#13中村功平などが、ベンチからの登場選手であれば#2福澤晃平や#25平尾充庸などが、代わる代わる相手を追い詰めていった。そして、それはGAME1よりGAME2でさらに強まった。こうしたディフェンスについて、リチャード・グレスマンHCはこんな指示を与えていたという。

「昨日の試合後にコーチ陣3人で話した中で、『ボールマンに対してのプレッシャーをかけ続けよう』という話になりました。タプスコット選手も含めて、全員がその意識を持ってくれていたと思います。私たちから『もう少し下がった方が良い、下がれ』と言わせるぐらいプレッシャーをガンガンかけていってくれと伝えていました」

まさに有言実行となったシーンを挙げるとすればGAME2の第2クォーターの序盤だろう。新潟の最初のオフェンスで、福澤がハーフコートライン近くで#5冨岡大地を押しとどめる。冨岡の手にボールが付かなかったところを福澤は見逃さずに奪取。たまらず冨岡がファウルで止めるが、アンスポーツマンライクファウルを宣告されてしまった。

また、前日はスティールやアシストで新潟に流れを取り戻そうとした#3澁田怜音に対しても、そもそものチャンスを与えず。ハーフコートオフェンスでのテンポを度々遅らせ、新潟が時間を使わざるを得ない展開にさせた。ハンドラーとの対峙について、平尾に尋ねた。

「特に新潟さんは選手層的にハンドラーが少ないチームということもあるので、そこを守っていくことができれば、コーバーン選手へのボールも遅らせることができる。ゲームプランでもそこをしっかりと伝えられていたので、簡単なパスを出させないことも含めて、自分たちでしっかりプレッシャーをかけようとしていきました。良いディフェンスができたと思いますけど、寄せすぎたことで3ポイントを打たれるなど、やられてはいけない部分も見えたわけで、そこは修正していけたらと思います」

相手が追い上げたいポイントに入っても、#11チェハーレス・タプスコットが前線ディフェンスに参加し、プレッシャーをかいくぐろうと出されたボールを#29鶴巻啓太がさらう…というシーンも見られた。その鶴巻は新潟の#7スティーブン・グリーンとの1on1を徹底的にケア。今節においては守りの手数の多さも際立っていた。

ペイントエリアでの勝負が起きる前に、出所から叩きにいったディフェンスが、結果的にロボッツが目指す「守りからの速攻」をよく引き出した。そしてそれを続けることで局面局面で新潟を突き放していった。もちろん平尾が話すような反省点はあっただろうが、目指すバスケスタイルへの準備の度合いで、一つ大きな差を付けていった試合だっただろう。

電光石火のシュートラッシュ

GAME1で言えば#1トーマス・ケネディや中村、GAME2で言えば#17山口颯斗や平尾など、試合序盤から確率の高い3ポイントシュートを見舞ってチームを勢いづけた。今節を前にしたテレビ取材で、「3ポイント3本」を掲げていた中村。無事に公約達成となったわけだが、GAME1を終えたところで本人は少し安堵したような表情を見せた。

「『3本』って言っていても、変に考えすぎたら…と思って。ここ最近、3ポイントの確率も悪くなっていたので、無心で打っていこうと思いました。1本目が結構タフショットだったんですけど、個人的には1本目が決まったことで安心したのと、そこから良いリズムを掴めるところもあるので、『行けるかな』という感じでした」

ちなみに、シュートタッチについては山口もこぼれ話を隠し持っていたようで、GAME2を終えての記者会見で明かした。

「ウォームアップで最後まで入らなくて、結局3ポイントの練習を諦めたんですよね。でも、自分の中で入る気がしていて、『打てば入るだろう』と思っていたら、試合で入ったんですよね。気持ちを強く持って最初から打ちきったからこそかな、とは思います」

調子の良さからか「もっと出ればもっと点が取れたかも」と、あっけらかんと話す山口。当初は誕生日(10月1日)に重なっていたことから、開幕節でのMVPを宣言していたのだが、なかなか自身の活躍との巡り合わせが回って来ず。このGAME2でようやくのMVP獲得となった。それだけに、「(時間が)かかりましたね」と率直な一言も飛び出した。

ただ、今節の中村・山口の活躍からも分かるように、ロボッツは特定の誰かが突き抜けた活躍をして、それができるかがバロメーターになっていく…というチームではないことが改めて示された。例えば前節の京都ハンナリーズ戦であれば福澤がそうだっただろうし、もちろん安定したパフォーマンスを見せるタプスコットやジェイコブセンの力も見逃せない。

「昨日の試合を勝っただけに、『今日も最初から走って勝とう』という話をチームメイトともしていました。みんなが自信に満ちあふれてプレーできていたことは良かったと思いますし、調子が良い選手が活躍することはもちろん良いことだと思います」

チームとしてはこれで今シーズン3回目の3連勝。苦しんだ時期もありながら14勝24敗と勝ち星を少しずつ重ね、B1全体の中団争いに割って入れるポジションまで再び戻ってきた。現状、B1の中団争いは熾烈さを増していて、ワイルドカード争い6位に位置する大阪エヴェッサからロボッツまで、実に8チームが4ゲーム差以内にひしめき合う。直接対決を残すチームもこの中に含まれていて、ロボッツとしては1試合・1勝の重みがさらに増してくるはずだ。中断期間前までの状況についてキャプテン・平尾はこう話す。

「プレイヤーからすれば『連勝』ではなく、1勝1勝の積み重ねだと思っています。ここまで接戦を落としてきているので、チームの状況についてはなんとも言えないですけど、ロボッツのバスケットとしては、一つ固まりつつあるのかなと思っています。リバウンドが取れている、あるいは取れなくても弾くことができるようになっていて、それがチームとして良くない時間帯を減らすことにつながっています。ただ、40分間を戦っても反省することはたくさんあるわけで、残りのシーズンではその『反省する』という部分を少なくする。そこができれば良いのではと思っています」

平日ゲームから再開

B1のリーグ戦は日本代表の活動や天皇杯の開催などがあるため一度中断となる。約3週間の中断を経て、次節はアウェーでレバンガ北海道との対戦だ。今シーズンはアダストリアみとアリーナで一度対戦があり、この時はロボッツが80-93で敗れている。ここからの北海道戦は全て敵地での開催となる。1試合でも多く勝利を奪うためにも準備と休息を重ねたい。

北海道はなかなか上昇気流をつかめないままのシーズンを過ごしており、中断期間前まで9勝29敗で東地区8位。つい先日には佐古賢一HCから小野寺龍太郎ACへ、指揮官の交代が発表されたところだ。直後に行われた宇都宮ブレックス戦に勝利したことで、降格圏からは一歩脱出に近づいたが、サバイバルのためにはさらなる勝利を欲しているところだろう。

気を付けたいのが破壊力抜群のビッグマン、#21ショーン・ロング。宇都宮戦でシーズン最多となる29得点を挙げて、昨季得点王のパワーが錆びついていないことを示してみせた。チーム唯一とも言えるインサイドの大黒柱が躍動すると、チーム全体が乗ってくることは十分に考えられる。さらには前回対戦で揃って2桁得点を記録した、#0橋本竜馬、#4寺園脩斗、#7中野司といった面々に、再びの活躍を許したくないところ。スピード・駆け引き・集中力をフルに働かせて、先手を打ち続ける戦いにしたい。

ここからの2ヶ月ほどのシーズンはあっと言う間に過ぎ去っていく。ロボッツが確かな積み重ねを続けていることを、実感できるようなシーズンエンドを迎えるためにも、まずこの試合、あるいは試合の入りが重要になるはず。バイウィークでバージョンアップを果たすことができるか。この一戦に注目してほしい。

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