取材:文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE
勢いを跳ね返し、圧倒した
怒涛の1分間だった。
4月23日に行われた第34節GAME2レバンガ北海道戦第4Q。5:45を過ぎた時に北海道の#7中野司に3ポイントシュートを決められ、逆転を許す。多くの観客が集まった北海道きたえーるのボルテージは最高潮に達した。
そのまま北海道の勢いに飲まれてしまったのが、前日に行われたGAME1。29対24とロボッツがリードして前半を終えたものの、第3Qで強度を高めてきた相手の勢いを食い止めきれず、後半だけで46点を決められて逆転負けを喫した。「後半、相手のローテーションする選手を止められず、相手に得点を増やされてしまった」と#17山口颯斗は唇を噛んだ。
しかし、同じ痛みを繰り返さなかった。昨日の悔しさを力に変え、勝負所でしっかり耐えつつ、さらに攻勢を仕掛けていった。逆転を許しても、ロボッツが崩れることはなかった。直後のプレーで#25平尾充庸が鋭いドライブからゴールを決め、バスケットカウントに。さらにフリースローも決めて再逆転に成功。その直後、この試合39得点を決めた北海道#21ショーン・ロングにペイント内からゴールを狙われるも、#21エリック・ジェイコブセンが魂のディフェンスを見せてオフェンスファウルを獲得。得点を許さなかった。さらに、その後、平尾が2本連続で3ポイントシュートを成功させる。逆転を許してからわずか1分間で一気にリードを8点差に広げた。相手の勢いを跳ね返し、自分たちの勢いで相手を圧倒する。この日のロボッツは力強く、たくましかった。
それまでも前述の北海道のロングや中野を中心とした強力な北海道の攻撃に苦しめられ、リードしては追い上げる展開の繰り返しだった。それでも、北海道の勢いに屈することなく戦い抜き、勝利を得た選手たちに向けて、リチャード・グレスマンヘッドコーチは
「自分たちがいい守備をしても、北海道は決めきる力があるチームだと感じました。それでも、ロボッツの選手たちの努力は素晴らしかった。常に戦い続けて、いい反応をしてくれた選手たちを誇りに思います」
と称賛の言葉を贈った。
そして、北海道戦の勝利でシーズン20勝目を達成。B1昇格1シーズン目の昨季が16勝だっただけに、着実にチームとして前進していることを結果で示してみせた。
「この結果を得ることは決して簡単なことではありませんでした」
とグレスマンHCが言うように、なかなか勝利に恵まれない時期がありながらも、チームとして一体感を失うことなく、自分たちのスタイルを追い求めてきたからこそ、たどり着くことができたのだ。その過程も含めて、グレスマンHCは「我々にとって大きな勝利」と喜びの言葉を口にした。
「20勝」は通過点に過ぎない
とはいえ、「20勝」は通過点に過ぎず、目的地ではないことは言うまでもない。目指すべきはさらなる高みであり、そして、頂点である。「もっともっと勝っていきたい」とグレスマンHCは視線を高めた。
そういった意味で、4月19日に行われた第33節千葉ジェッツ戦はロボッツにとって、今後への指標が提示された一戦だった。すでに47勝を挙げて東地区1位としてプレーオフ進出を決めている千葉Jと対戦して得たものは決して小さくなかった。
「オフェンス面もディフェンス面も非常に苦しい展開だった」
とグレスマンHCが振り返ったように、前半は千葉Jの強さに圧倒された。
日本代表のPG#2富樫勇樹を中心とした千葉Jの多彩な攻撃に振り回される展開が続き、前半だけで7本の3ポイントシュートを決められるなど失点を重ねた。
攻撃面においても、
「自分たちがやろうとしているオフェンスの入り口や導入部分ではある程度形になっていたけど、ズレがなかなかできなくて、難しいところがありました」
という#8多嶋朝飛の言葉通り、ロボッツらしいアップテンポの攻撃は影を潜め、攻めあぐねる展開が続いた。そして、23対42と大差をつけられた状態で試合を折り返すこととなった。
ただ、そこで屈しないのがロボッツだ。
「前半でそれだけリードされる展開だと、最終的に25点差ぐらいで負けてしまうケースも多いのですが、選手たちは戦い続けてくれて、接戦に持ち込んで勝つ兆しが見えるところもありました」(グレスマンHC)
後半に入って、ディフェンスの強度を高めて千葉Jに立ち向かい、勢いのあるオフェンスを発揮。
「後半はディフェンスでタフなシュートを打たせてリバウンドを取って、自分たちが走る展開に持ち込むことができれば、いい試合になると思っていました」
多嶋が話す狙い通りの展開に持ち込み、ロボッツの勢いが千葉Jを上回る時間が続いた。そして、第3Qは23対20、第4Qは19対14とリードしてあと一歩まで追いつめた。最終的に前半の点差が響き、65対76の敗戦を喫したものの「後半のディフェンスは非常によかった」とグレスマンHCは称え、多嶋も「後半は粘り強く戦い続けることができた」と手ごたえを口にした。
「ポジティブな面として、かなりの大差で負けるということはなくなった」とグレスマンHCは言う。
接戦を勝ち切るという現状の課題を克服することはできなかったものの、リーグ後半戦に入って上位チームが相手でも接戦に持ち込むことができるようになっていることはチームとしての成長。リーグ首位の千葉J相手でも接戦に持ち込んだことはチームにとって新たな自信につながったことだろう。「自分たちの色を出しながら40分間戦うことができれば、どんな相手でも接戦に持ち込むことはできている。そして、どんな時でも諦めずに戦い抜くということにおいては、間違いなく昨シーズンよりレベルアップしていると思います」と多嶋は力を込めた。
前回対戦のリベンジを果たして締めくくりたい
接戦に持ち込んだからこそ、その差も明確に見えてくる。この一戦で如実に差として表れたのが3ポイントシュート。ロボッツは25本を放って6本しか成功できなかったのに対して、千葉Jは35本中11本成功させていた。前半においては20本中8本を決められた。その差が最終的な結果につながった。
「3ポイントシュートに関して、我々が25本なのに対して、千葉Jさんには35本打たれてしまいました。まず、35本も打たれたくないという思いがありますが、オフェンス面として25本しか打てていないことも問題。千葉Jさんがしっかり抑えてきたところもありますが、自分たちが効率的なゲームをするためには3ポイントシュートをもっと決めないといけない。この数字だと足りないです」(グレスマンHC)
それ以外の様々なプレーでも差を感じたことだろう。ただ、「悲観してもしょうない」と多嶋は言い切る。現状での力の差を受け止め、その差を埋めるべく、ここからさらに強くなっていくのみ。立ち止まっている時間はない。リーグ戦も残り4試合。多嶋は「何も変わらず、自分たちが今までやってきたことを積み重ねて、コート上で表現していきたい。あとは気持ちを合わせて、チーム全員で目の前の試合に挑む姿勢で最後まで戦い抜きたい」と「20勝」のその先へ、最後まで前進し続ける強い意志を示した。
そして、今週末(4月29日・30日)、ついに今季ホーム最終節を迎える。対するは秋田ノーザンハピネッツ。4月5日に行われた前回対戦では第4Q途中までロボッツがリードしていたにも関わらず、終盤に猛反撃を食らって逆転負けを喫するというホームでこの上なく悔しい思いをさせられた。だからこそ、リベンジを期して挑む一節。
「自分としても非常にワクワクしていますし、チームとしてもワクワクしています。応援してくれるみなさんのためにハードにプレーして、勝利を届けられるように戦います」
#11チェハーレス・タプスコットは必勝を誓う。
前回対戦からの成長を結果で示し、シーズン通して後押ししてくれたブースターと喜びを分かち合って、ホームゲームを締めくくりたい。