【AFTER GAME】 2022-23 信州戦(4/1~2)~プレッシャーにはプレッシャーを。相手のお株を奪って連敗ストップ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

リーグ戦最終盤となる4月の戦い、ロボッツはホーム・アダストリアみとアリーナに中地区の信州ブレイブウォリアーズを迎えた。GAME1で信州のディフェンスとペイントアタックでリズムを作られ、77-84で敗れたものの、翌日のGAME2ではそれを上回るかのようなプレッシャーディフェンスで信州の攻め手を止め続け、3ポイントシュート16本成功とオフェンスも躍動。91-69で勝利して連敗を6で止めた。好対照を成したこの2戦。それぞれの場面で何を目指していたかを振り返っていく。

プレッシャーを超えていく

「今日はどちらかと言えば、スタートで出ている人間が消極的だったのかなという印象で、やっぱり縦にアタックしなければいけないところを、横に行ってしまっていた部分が前半で特に多く見られていたので、(オフェンス面での改善点は)そこの意識だけかなと思います」

こう話したのは、ここのところベンチからの登場でチームを勢いづける、#25平尾充庸だった。それほどまでに信州のプレッシャーが強かった、という言い方はもちろんできるが、この試合のペイントエリアでの得点で26-48と大きな差を付けられたように、なかなかゴール下へ入り込めるシーンが増えてこなかった。平尾はGAME1のオフェンスに対してさらにこう述べる。

「信州さんはディフェンスのチームなので、寄りが早くて、中をしっかりと守るチームです。そういった意味で横に、横にとなってしまったのかなと思っています。その中でいかにズレを作って、縦に割れるかというところが出だしのミソになる部分じゃないのかなとは思います。やっぱり、どうしてもリングを見ない。ノーマークができていても、リングを見ずにパスをさばいているというシーンがちらほらあったので、ミーティングの時に『しっかり前向いて打とうよ』と伝えました。第3クォーターでの(中村)功平、(山口)颯斗のように、リングを見るだけでもしっかり気持ちが乗ったシュートが打てるので」

「なんでこうなったのか、スターターで出た選手たちも分かっているはず」とも付け加えた平尾。明くるGAME2はスタートから全員が全開でゴールへと向かった。寄せに来たところを見計らってアタックをしたかと思えば、ヘルプが来たことで空いたサイドにもボールをつなぐ。そこで相手が少しでもためらうようならば、さらに攻め込んでいく。結果、シュートに持ち込めなくても、信州がファウルで止めざるを得ない場面も生まれていた。得点にならずとも、こういった部分がボディーブローのように相手へのプレッシャーを強めていっただろう。

例えば、GAME2の第3クォーターで1on1をさばくなどで3ポイントを3本決めた#17山口颯斗であったり、インサイドでの存在感を見せるがゆえに、警戒して収縮した相手に容赦なくシュートを見舞った#21エリック・ジェイコブセンしかり。また、ボールが止まるかと思いきや、ポストアップで潜り込んでのシュートで勝負を付けた#15キャメロン・クラットウィグもまた同じ。

出場メンバー12人中11人が得点を記録したことからも、全員が得点を狙う姿勢を見せ続けたことがしっかりと結果に出たと言えるだろう。クラットウィグはオフェンス面の手応えについて、GAME2を終えてこう振り返る。

「コーチ陣に言われたところも含めて、今日はアグレッシブに行こうとしていました。昨日は少し受け身になっていたのかもしれません。アグレッシブにリングに向かっていくことで、信州さんがダブルチームを仕掛けてきました。1on1も、ダブルチームのときにパスでさばくことも、上手くいって良かったです。自分としてはベストを尽くしていこうという思いでした。1対1の中でも、フットワーク、スピンムーブ、シュートフェイクなど、動きが上手くいって良かったなと感じています」

リングを見る、シュートを狙うという意識は、時に思いがけない結果も生んだはず。その一つがGAME2の第2クォーターで飛び出した、#29鶴巻啓太のビッグプレーだっただろう。あの場面について「狙っていたものとは違った」と鶴巻が話すとおり、スローインから誰も触れなかったボールが鶴巻のもとへ転がってくる。一瞬、アリーナ全体の空気が止まったかのようだったが、ショットクロックは1秒。鶴巻がキャッチアンドシュートを図れば得点は認められる。鶴巻のショットはブザーが鳴り響く中でリングに吸い込まれた。ディフェンスのギアを取り戻し、やや信州が押せ押せとなっていた中での一撃。本人は「決まれば良いなという意識だった」と振り返る。乾坤一擲とも言うべき1本にアリーナは沸き返った。

前日の試合で「追いつくところまででエナジーをとても使ってしまったのではないか」とグレスマンHCが話したことを考えれば、「先手を取る、追いつかせない、突き放す」という3拍子をやりきれたという意味でも、この試合の持つ意味は大きい。グレスマンHCがたびたび「今季のベストゲーム」と手応えを語ったところにも現れていたと見える。

終盤戦は、プレッシャーディフェンスを随所に見せる東地区のチームとの対戦が続く。そこに対して、オフェンシブな意識から一つ結果を手繰り寄せた。こうした勝ち方が2つ、3つと増えていくことで、シーズンの終盤、さらには来シーズンへの期待も高まっていくことだろう。

一歩前へ、パスの先へ、粘り強く

この2試合におけるディフェンス面でのトピックは、信州の#24ジョシュ・ホーキンソンが帰化選手となったことで採用できるようになったビッグラインアップとのマッチアップだった。「帰化選手+外国籍選手2人」というラインアップを敷けるようになり、ここに戦列を離れていた#2ドゥレイロン・バーンズを加入後初のスターターとして起用したのだ。

「ベテランの#55アンソニー・マクヘンリーのプレータイムをコントロールする意味合いもあった」と、信州の勝久マイケルHCは起用の意図を明かしたが、バーンズのエネルギッシュなプレーに押し込まれ、また信州のビッグマンたちがゴール下までのスペーシングをしっかり作っていったこともあり、一筋縄ではいかない状況となっていた。

明けてのGAME2。ロボッツはしっかりとそこに対策を打ってきた。その意図をリチャード・グレスマンHCはこう話す。

「福田(将吾)アソシエイトヘッドコーチがディフェンスのプランを立ててくれているのですが、すばらしいゲームプランだったと思います。ボールスクリーンに対するディフェンスをもう少しアグレッシブに行こうという話をして、昨日よりもアタックが減りましたし、実際にペイントエリアでの失点も減らせました」

その考えは選手たちにもしっかりと伝わっていた。「ペイントを守ることを最大に強調していた」というクラットウィグは、ディフェンスの改善をさらにこう語る。

「ヘルプに回る人間を必ず入れることもそうですし、自分やエリック(ジェイコブセン)がしっかりとペイントエリアの中にいて、相手のドライブに備えていきました。GAME1では自分たちの遂行力がゆるんでいたと思います。簡単な侵入をされてしまったことで、ゴール下でのパスもつながれてしまったわけで、しっかりとスペースを潰していく守り方をチームとして確認し合った、それが勝利につながったのではと思います」

相手のドライブに備えるという意味では、その前段階のディフェンスも重要。#12栗原ルイスや#15前田怜緒など、スピードとサイズを備えた選手たちが次々にゴール下に飛び込んでくるだけに、3ポイントラインの外からしっかり対峙することも必要だった。

1on1だけでなく、パスやピック&ロールを絡めたオフェンスに対して、しっかりと先手を取ってその先にもディフェンスがいる、というフォーメーションを簡単には崩さなかった。ディフェンスの肝について、鶴巻はこのように述べている。

「GAME1で、ボールマンに対するピック&ロールのディフェンスをするところで、ボールを持った選手に自由にやらせてしまっていた部分がありました。今日はできるだけ自由にさせないように、前に出るという意識を持ってやれた結果だと思います。今日のボールマンに対するディフェンスをするに当たって、ローテーションというところに関しては確実に必要になるものでした。全員がその意識の中でローテーションができていたことは、そこも良かったんじゃないかと思います」

結果としては、プレッシャーディフェンスを持ち味とする信州に対して、お株を奪うようなプレッシャーで主導権を握ったロボッツ。守ってこそのチームに守りから主導権を握った戦いぶりは、また一つ大きな収穫となっただろう。

ようやくのデビュー戦。緊張もしながら

GAME2の終盤、特別指定選手としてロボッツの一員となっている#7浅井修伍がBリーグでの初出場を果たす。

#2福澤晃平や#88ジャワラジョゼフが離脱する中、今節は2試合ともベンチ入り。試合の終了が近づくにつれ、少し体を動かしてからのコートインとなり、1分50秒の出場でプロデビューを飾った。

「率直に、やっぱり嬉しかったというのは大きくて、やっとBリーグというかプロの世界に入ったんだなっていう実感がありました。出た時は嬉しいとかよりも、緊張の方が大きくて、『どうしよう、どうしよう』みたいな。みんなも思った通り、顔が硬くなっていたなと思います」

実はこの試合、スタンドからは筑波大学時代の同級生たちも試合に訪れていた。浅井の写真がプリントされたタオルを持った彼らに話を聞くと、「ナイスゲームと伝えておいてください!」との返事。それを試合を終えた浅井に伝えると、

「同級生が来てくれたことは、めちゃくちゃうれしいですね。4年間一緒に戦ってきた人たちが見に来てくれて、僕のBリーグ初出場というか、そういう場面を見てもらえて嬉しかったです」

プロ初得点などはお預けとなってしまったが、それはここからの楽しみとして残っていると考えた方が良いのかもしれない。新たな才能が加わっての終盤戦。一つ、また一つと彼が成長することで、これまでの浅井に期待をかけていた人も、これからの浅井に楽しみを託す人も、その想いの度合いが大きくなっていくことだろう。

同地区対決で前に出よう

週末にかけて、水曜ゲームも含めた試合が行われる。水曜ゲームは秋田ノーザンハピネッツとのホームゲーム、その後は宇都宮ブレックスとのアウェー2連戦となる。

秋田とは昨年の12月以来の対戦。#5田口成浩、#51古川孝敏と、チームの核となるベテランシューターたちが負傷離脱を余儀なくされている中で、3月のリーグ戦再開以来2勝7敗と苦しんでいる。敵地からの逆襲を目指すであろうこの一戦で、#12川嶋勇人や#17中山拓哉といったスティール王経験者たちに一瞬たりとも隙を見せず、ポゼッションごとにしっかりゴールまで向かう姿勢を見せ続けたい。ロボッツからすると、信州戦で遂行できたプランを、さらに力強く見せられるかという部分になってくるだろう。

アウェーでの宇都宮戦は、昇格後初めてのこと。また、本来のホームアリーナであるブレックスアリーナ宇都宮ではなく、同じ宇都宮市に位置する日環アリーナ栃木での試合となる。「BREX NATION」によって占められた、圧倒的なアウェーの空間をどう押し破るかというのが最大のキーワード。強靱なフィジカルを有し、終盤に調子を上げてきた#18鵤誠司への対策や、前回対戦で不在だった宇都宮のエース・#6比江島慎とのマッチアップを含め、決して近道のない勝ち筋をしっかりと進み続けられるかが求められる。

その中でも切り札は、ロボッツのポイントガード陣。特に福澤の離脱以降、#8多嶋朝飛、#13中村功平、平尾が福澤の分までプレータイムを埋めつつ試合を繋いでいる。場面場面で準備を重ね、ボールを持った部分、持たずに戦える部分で意思を疎通させあって、連動性を生んでいきたいところだろう。

ここからは3週連続での「週3試合」という過酷な日程。だがそれは相手も同条件。タフな試合を戦い抜く選手たちに、熱い応援での後押しを願いたい。

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