【AFTER GAME】 2022-23 秋田戦(4/5)、宇都宮戦(4/8~9)~“背中を追う存在”に敵地で連勝。ロボッツの進化の証明~

取材:文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO

写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

4月9日に開催されたB1リーグ第30節GAME2。宇都宮ブレックスのホームゲームとして今季最多となる5351人もの観衆の前で歓喜の瞬間を迎えたのは、茨城ロボッツだった。

ロボッツに関わったすべての人の力

宇都宮はBリーグ発足以降6シーズンで5度チャンピオンシップ出場経験を持ち、そして2度も優勝を収めているBリーグを引っ張ってきたチーム。隣県の宇都宮市をホームタウンとするチームであり、北関東のライバルではあるものの、B2時代から「いつかブレックスに勝つ」と背中を追い続けてきた存在であると同時に、「同じ北関東のチームとして宇都宮にできて茨城にできないことはない」というモチベーションを与えてくれた存在でもある。

はじめて同じB1リーグの舞台に立った昨シーズン。宇都宮と2戦して2敗と力の差を見せつけられてしまった。しかし、今シーズンは違った。ホームで行われた12月24日の対戦で初勝利を飾り、そして、今節敵地で2戦とも勝利をおさめることに成功したのだった。クラブ創設以来、艱難辛苦を味わいながらも、前進し続けた結果、ついに“その時”が訪れたのだった。

「選手、スタッフ、全員を誇りに思います」とリチャード・グレスマンヘッドコーチが胸を張ったように、現状のベストを出し尽くして掴んだ勝利である。そのチームを後押ししようとアウェーの地に足を運んだ多くのブースターの存在がチームに大きな力を与えたことはもちろんのこと、今までロボッツに関わって、クラブとチームを支え、育んできたすべての人たちの努力があったからこその勝利と言えよう。歩んできた道、そして、これから進もうとしている道が決して間違っていないことを証明する、ロボッツにとって大きな意味を持つ勝利だったはずだ。

「Bプラン」を共有して見せた勝負強さ

序盤から主導権を握り、前半終了時点で38-27と11点差をつけていたものの、後半開始から宇都宮の猛追を受け、第3Q終了時点で2点差にまで詰め寄られてしまった。頭をよぎったのは、4月5日に行われた秋田戦。第3Q終了時点で59-53でリードをしていたのにも関わらず、第4Qに秋田の勢いを止めきれず、逆転負けを喫してしまったのだ。

「今シーズン、この試合だけでなく、多くの試合で接戦を落としてしまっている。チームの問題として考えないといけない」

上位相手に対して接戦に持ち込む力をつけることはできている。しかし、これから上に行くためには、さらに勝ち切る力を身につけなければならないことをキャプテンの#25 平尾充庸は厳しい口調で訴えた。

そして迎えたGAME2の第4Q。一気に逆転を狙おうと勢いを持って襲い掛かってきた宇都宮に対して、ロボッツは粘り強く対応。体を張ってリバウンドを取り、そして、攻撃から守備に入れ替わった際には素早く自陣に戻って守備組織を形成。宇都宮の勢いを最小限に抑えながら、勝負所で3ポイントシュートを確実に決めて、流れを引き寄せながら試合を進めていった。そして、逆転されるどころか、リードを広げて試合を終えることに成功したのだった。

「宇都宮は昨シーズン優勝しているチームです。自分たちに簡単にやらせてくれないことは分かっていましたし、難しい時間があることも分かっていました。その中で選手たちは我慢強く戦ってくれましたし、試合を通してしっかり戦い続けてくれました」

グレスマンHCは成熟した姿を見せた選手たちを称えた。

勝負強さを身につけるために必要なのは、自分たちのバスケができない時にどのようなプレーを見せるか。いわば「Bプラン」をチームとして共有して出すことが求められているのだ。

「自分たちのやりたいファーストアクションが止められたり、できなかったりした時、選手たちが次のセカンドアクションでアジャストしてくれたし、うまく遂行してくれた。それは決して簡単ではないのですが、しっかりセカンドアクションを出して戦い続けてくれたことが良かったと思っています」

グレスマンHCが振り返ったように、秋田戦で発揮できなかった「Bプラン」への切り替えを共有できたことが接戦を勝ち切った要因として挙げることができるだろう。

リーグ前半戦はなかなかリバウンドを取れずに失点を重ね、中盤戦は勝負強さを欠いて接戦を落とす試合が続いた。だが、そうした痛みを無駄にすることなく、チームとして着実に成長をしてきた。それを証明する勝利だったと言えるだろう。「非常に素晴らしい勝利だった」とグレスマンHCは笑みを見せた。

そして、この試合で際立ったのが、選手たちの動きの量の多さと質の高さ。後半になっても、動きが落ちることなく、守備に回ったら素早く帰陣して、攻撃になったら相手コートに飛び出した。動きの量と質で宇都宮を圧倒し続けた。そして、プレーの質も落とすことなく、第4Qでは5本の3ポイントシュートを打ち、3本も決める正確性を発揮して、流れを宇都宮に渡さなかった。

シーズン終盤に入り、これまでの試合の疲労が蓄積されている状況であり、3月は7試合、4月は12試合が組まれているハードスケジュールの真っただ中。コンディション的に非常に厳しい状態であるにも関わらず、それを微塵も感じさせることなく、相手を圧倒するだけの運動量を見せ、最後まで躍動し続けたことが勝利を引き寄せた。

昨シーズン終盤戦はけが人の多さに泣いた。その苦い経験を繰り返さないように、入念にコンディション調整が行われてきたことが選手たちのプレーぶりからうかがえる。選手やコーチ陣だけでなく、メディカルスタッフのプロフェッショナルな仕事ぶりがチームを支えている。それを再確認することができた勝利であった。

再び北関東のライバル対決。意地を見せろ

宇都宮に連勝するという歴史的な瞬間を経験することができた。ただ、それは通過点に過ぎない。これからさらにロボッツは進化していかなければならない。残り10試合となったリーグ戦をいかに戦うか。そこにロボッツの未来はかかっている。

「当初の目標はCS出場だったのですが、それを達成することはできませんでした。それでも応援してくれるブースターの皆さんのために残り試合すべて勝つために戦います」

中村は力を込める。

次なる相手は群馬クレインサンダーズ。今節に続き、中2日で再び「北関東ダービー」に挑む。宇都宮が背中を追ってきた存在だったのに対し、群馬はB2時代から常にしのぎを削ってきたライバルだ。

ただ、昨シーズンも今シーズンも順位で上回られていることは受け入れがたい事実。直接対決で叩いて、意地を見せなければならない。

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