【AFTER GAME】 2022-23 群馬戦(4/12)、仙台戦(4/15~16)~連敗を経て見出した勝ち筋。堅く守り、動いて攻めろ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

アダストリアみとアリーナでのホーム4連戦がスタート。ロボッツは水曜ゲームで群馬クレインサンダーズと戦ったものの90-94で敗れ、仙台戦のGAME1も90-91で敗れた。GAME2では後半開始直後に一時2点差まで詰め寄られながら、ベンチスタートの#2福澤晃平のシュートラッシュもあって、次第に仙台を翻弄。相手のインサイド陣の突進を粘り強く抑えたロボッツは、94-71で勝利し、ホーム3連敗を阻止。ディフェンシブな戦いを志向する仙台を打ち破る、一つ大きなチームの変化を印象づける勝利だったのではないだろうか。

「みんなで同じリングを目指す」

群馬戦では#13中村功平がこれまでのキャリアハイを大きく更新する30得点を記録。仙台戦GAME1では#17山口颯斗がこちらもキャリアハイとなる24得点を挙げた。ロボッツはかねてから、特定のエースを置かない戦いを続けていて、敗れはしたもののこうした「日替わりヒーロー」が現れていたことは一つの好材料だった。

そうしたオフェンス面での好調について、山口は仙台戦GAME1での記者会見でこう語っている。

「(24得点を取ったとは言え)『僕がヒーローになるぞ』って思っていたわけではないですし、多分、水曜日の功平さんもそうは思っていなかったはずです。全員が同じリングを向いて攻めていくことによって、調子の良い選手がヒーローになっていくと思います。今日だけで無く、これからも『全員がリングを向いて攻める』。そんな意識を忘れずに行けば、今日は僕でしたけど、そのような(日替わりヒーローのような)展開になると思います」

ロボッツのオフェンスは、はっきりと型にはめたような組み立てばかりかと言われればそうではなく、選手たちがその場その場を判断してデザインしていくこともある。そういった状況だからこそ、プレーごとにどう得点機会を最大化するか、という部分は必要になってくる。この日の第2クォーター。仙台のディフェンスの網を抜けてボールを受けた#8多嶋朝飛が、さらに山口へのパスを選択。第4クォーターにも、ピック&ロールから勝負を決めるかに見えた多嶋が、相手のディフェンスをこれでもかと引きつけて、山口へパス。ボールを受けた山口は迷わずゴールへと切り込み、相手のディフェンスをさらに崩して得点を奪っていった。

「正直、僕は朝飛さんがあの場面で打つと思っていたので…。外で見ていたら朝飛さんが打てない状況になってしまいました。相手としてはそこで気が緩んだはずで、そこを僕がゴール下へ走り込んで決める…みたいな感じだったと思います。話がつながるところもあるかと思うんですけど、朝飛さんも『打つぞ』とやっているからこそディフェンスも寄ってきて、結果的に今日の僕につなぐようなプレーも出てくると思うんです。今日も水曜日も、チームとして90点取れているわけで。やっぱり問題はディフェンスになると思いますね」

翌日、試合前のウォーミングアップでも山口のシュートは好調に入り続けていた。多少3ポイントラインから離れていても、スパスパとゴールに吸い込まれていく。だが、実際に試合になって現れたヒーローは、また別の人物だった。

相手の長所に受けて立つ

仙台は#24ジャスティン・バーレルと#25ラショーン・トーマスが、体をゴリゴリと当てながらゴールへと向かってくる。仙台・藤田弘輝HCが「1on1での得点はうちの形ではない」とコメントしてはいたが、エンドライン際でボールをもらってからの打開力の高さは、ロボッツの戦況を厳しくさせていった。

GAME1では#21エリック・ジェイコブセンが個人ファウル5つを記録してしまい、ファウルアウト。強度を保ちつつも、戦術を遂行するためにもファウルをかさませないディフェンスの対応策が不可欠となっていた。

GAME1を終えた段階で、ディフェンス面での改善点を聞かれた山口は、

「まずはペイントエリアを固めること。今日については3ポイントも打たれているので、ペイントエリアを固める分、外にパスされることへの対策など、運動量が増えて疲れるところはあると思います。ただ、そうしなくては勝てない。失点を減らして勝っていきたいです」

GAME2のロボッツは、ディフェンスでダブルチーム(2人がかりで追い込む)、時には「トリプルチーム」に出る勢いで相手のポストプレーを封じていく。そこからビッグマンが遠いサイドへとパスをさばいても、きっちりとそれを見計らったかのように、ディフェンスが追っていく。オープンショットを抑えつつ、深追いすることでのファウルも極力防いだ。前日、仙台の得点源として20得点を挙げた#45ネイサン・ブース、18得点の#24ジャスティン・バーレルを、揃って6得点ずつに抑えたこと。また3ポイントが魅力のブースを3ポイントの成功無しに抑え込み、突破力のあるバーレルに対してもGAME2でフリースローを1本も与えなかったという点で見ても、チームとしてクリーンに強度が高いディフェンスができた証拠だっただろう。

こうした改善について、リチャード・グレスマンHCはこう語る。

「昨日はインサイドの選手に大量得点を与えてしまいました。今日はダブルチームをかけることで、簡単にアタックできるスペースを与えないこと、またプレーのやりやすさを彼らから奪っていくことを念頭に置きました。選手たちはゲームプランを遂行してくれましたし、『Second Effort』、プレーの中でもう一段の努力を見せて、3ポイントシュートにコンテストを張るところまでやってくれました。結果的に、仙台さんの3ポイントシュートは21.2%にとどまりました。インサイドを締め込むと、3ポイントシュートへのリスクが伴うものなのですが、ただ、そこからコンテストをやりきることで、ここまで相手を苦しめることができ、その点は非常に素晴らしかったと思います」

良い守りは、良い攻撃へと伝播していく。GAME2でのロボッツは、例えば勝利を果たした信州戦GAME2や、アウェーでの宇都宮戦、さらにこの仙台戦GAME2のように、ここのところのロボッツはディフェンシブなチームに対して、ハーフコートオフェンスでも得点を奪っていった。ここ数戦のロボッツは手堅い守りのチームに対しても得点力を発揮する試合が増えてきている。チームの戦いぶりも変化しているかに見えているが、グレスマンHCはこんな見解を持っているようだ。

「チームとして、攻守両面での成長は続けていきたいところです。より高いレベルで、安定感のあるディフェンスができている試合もありますが、接戦をものにする、というのはやはり難しいポイントです。ハーフコートオフェンスがはまっているところもありますが、やはりテンポを上げたオフェンスもしていきたいので、私としては、どれだけ効率の高いオフェンスが場面場面でできるかを探りながらやっています。ただ、今日について最大のポイントはディフェンスだったと思います。昨日からのバウンスバックして、すごく効率の高いディフェンスを展開して、相手を止めていくことができました。しっかりとしたディフェンスから、オフェンスにつなぐということを意識していきたいです」

アップテンポの肝は、強烈なオフェンスを生み出す前提となる、ディフェンスから始まっている。苦戦する試合もあった今シーズン、ここに来てはっきりとした「勝ち筋」のようなものを見出せていることは、大きな部分だろう。

相手の癖を見抜いて

仙台はハードなディフェンスがチームの信条。よって、ボールハンドラーに対しても一歩も引かずに責め立ててくる。外国籍選手を含めて、インサイド陣もリムプロテクション(ゴールに近い場所でのディフェンス)に長けているだけに、その攻略は容易ではないはずだった。

相次ぐオフェンスファウルもあってシュートまで持ち込めなかった、仙台戦GAME2の第3クォーター。多嶋の連続3ポイントとジェイコブセンの3ポイントが決まり、11点差に開いたところで仙台がタイムアウトを要求。ここで投入されたのが#2福澤晃平だった。

左手の骨折で一時欠場していた福澤だったが、4月8日の宇都宮戦で戦線復帰。とは言え、パフォーマンスにはまだ波がある状況が続いていた。試合のMVPを獲得してのインタビューで「もう1回骨を折っても良いぐらいの気持ちでやった」とまで言った福澤。記者会見でもその言葉について質問が飛んだ。

「少しずつ調子を上げていたところで骨折してしまって、そこから試合に戻れたわけですけど、どうしても恐怖心があるというか。ディフェンスもいる競技なので、何があるかわからないという恐怖心とかを、頭のどこかで感じながらやっていました。ただ、それを怖がってやっていたら、良いプレーもできませんし、出たところでチームメイトにも迷惑をかけてしまうと感じていました。それを経て、今日は『もう1回折れてもいいや』という気持ちでやれたので、それがアグレッシブなプレーにつながったとも思います。今これだけできるなら、復帰のその日からできたんじゃないかとも思うんですけど、終わったことを話しても仕方がないので。今日できたということを忘れずに、ここからもっとアグレッシブにプレーしていきたいと思います」

この日の前半で2得点にとどまっていた福澤は、混戦模様を抜け出すキーマンとなっていく。一見、体勢が崩れたかに見えても、「タフショットマスター」の手に掛かれば…というようなシュートが次々に放たれていく。止まりきれなかったディフェンダーが福澤に接触してしまい、ファウルとなることもしばしば。福澤曰く、こうした場面にも仙台のマークマンとの駆け引きがあったという。

「ピック&ロールを仕掛けたときに、『ドロップ』と言って相手がインサイド側で守っていたのが目に付きました。仙台さんのインサイド陣は下がっていて、ボールマンに付いている選手が全力で追いかけてくる感じでした。相手の意表を突いたタイミングでシュートを打てば、相手も止まれないだろうというのはもう分かっていたところでもあったので。そこをファウルを奪うことにもつなげられたと思います」

こうなった福澤はもう止まらない。仙台の#21渡部琉を相手に「4点プレー」を完成させたり、その後も3ポイントシュートでのファウルを奪ったり。フリースローも12/12とパーフェクトに沈めた福澤は、後半だけで25得点を挙げて、シーズンハイとなる27得点の活躍を見せた。「周りの選手たちも『打たせよう』という意識を僕も感じていたので、その期待に応えられて良かったです」と、戦いぶりを振り返る。

まだ、左手には少し痛々しい様子も残るが、プレーでの安定感・信頼感は揺らがない。鮮烈な印象を残した福澤から、残り7試合も目が離せない。

2年越しの宿題に、100点満点の回答を

次節は今季最後の水曜ゲーム。ロボッツはホーム4連戦の締めくくりとして、東地区優勝を果たした千葉ジェッツを迎える。千葉JとはB1のリーグ戦でこれまで7度対戦して勝利無し。ただ、どの試合でも接戦になっていることもあり、「もう一歩」のもどかしさを感じている人も多いはず。ロボッツにとっても、昇格以来突きつけられている「宿題」を勝利という結果で示したいわけで、今シーズンのラストチャンスにもなる。グレスマンHCは「まさにラストチャンスだと思いますし、とてもチャレンジングな試合になるはず。ただチャンスは大いにある。勝った勢いをしっかりとつなげたい」と意気込んでいる。

千葉Jは相次ぐケガ人の発生を乗り切り、シーズン最終盤に#21ギャビン・エドワーズを始め、続々とメンバーが復帰しているが、今回の注目選手はそうした復帰組ではなく、たびたびロボッツを相手にクラッチシュートを決めてきた#34クリストファー・スミスをキーマンに挙げたい。ディフェンスが「追い込んだ」と思ったところからでもまだ攻め手を持っているような選手で、チームトップとなる1試合平均17.3得点を誇っている。シュートを放つその瞬間まで、張り詰めたようなディフェンスをし続けることが重要。山口や#29鶴巻啓太など、こうした選手を辛抱強く守る術はロボッツにもある。一つ一つのポゼッションでしっかり守りきっていきたいところだ。

また、ロボッツのポイントガード陣に対してマッチアップしてくる、#31原修太への対策も気を付けたいところ。その強靱なフィジカルで消耗戦に持ち込まれてしまっては、オフェンスの起点が潰れてしまいかねない。「持ちすぎない」という意識を共有して、彼からのプレッシャーをいなしていきたい。

相手の地区優勝が決まっているとは言え、どう出てきたとしても、40分間を万全にやりきることが何より肝心。ロボッツが次につながる戦いをやりきれるかは、試合の内容以上に大きな意味合いを持つ。ロボッツの戦いぶりに火を付けるような応援を願いたいところだ。

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