#7 浅井修伍「進化を示した前半戦。新たなスタイルへの挑戦」

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取材・文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS

目次

不完全燃焼のルーキーイヤー

10月12日に行われた千葉ジェッツとの第2節GAME1。試合には敗れてしまったものの、#7 浅井修伍はあるプレーに自らの変化と手ごたえをつかむことができたという。

「昨シーズンまでは第4Qで試合に出場させてもらうことが多かったですが、その試合では第2Qで出場することができ、ディフェンスで良いプレーができたんです。それ以外にもカッティングで良い合わせができて、チャンスを作ることができました

その後、順調に出場機会を重ね、16試合終了時点で昨シーズンのプレータイムの約半分に当たる34分23秒を記録。チーム内で着実に存在感を強めつつある。

浅井の武器は、3Pシュートである。美しいフォームから繰り出される正確なシュートで学生時代から多くの得点を積み重ね、大きな注目を集めてきた。そして、筑波大学4年生だった2022-23シーズンにロボッツに特別指定選手として登録され、昨シーズン正式に加入を果たした。

しかし、思い描いていたようなルーキーイヤーを過ごせたわけではなかった。26試合に出場したものの、試合終盤からの起用が多く、プレータイムは71分43秒に留まった。スターティングメンバーに選ばれたことは一度もなかった。そして得意の3Pシュートも、22本中わずか3本しか入れることができず。成功率は13.6%と、力を出し切ることができない不完全燃焼のシーズンを過ごすこととなった。

「自分の努力不足でもあるのですが、頑張ってもチャンスを見いだせない、めちゃくちゃ苦しいシーズンでした」

浅井は険しい表情でそう振り返った。

今までと異なるディフェンスのタスク

プロ2年目のシーズンに向けて、浅井に大きな転機が訪れた。

今シーズンからチームの指揮を執るクリス・ホルムHCから求められたのは、「スモールフォワード」としてのプレー。状況に応じて、アウトサイドでもインサイドでもプレーするオールラウンダーとしての能力が求められる、いわゆる「3番」ポジションを与えられたのだ。昨シーズンまでは「パワーフォワード」や「センター」といったペイント内でのプレーが多いポジションでの出場が求められていただけに、浅井にとって新たなチャレンジの舞台が用意された。

強みである3Pシュートをより打ちやすいポジションでの起用が増えているが、クリスHCからは攻撃よりも守備面でのタスクを求められているという。

「クリスHCから言われてるのは、ディフェンスで貢献してほしいということ。全体的にディフェンスにフォーカスしてるチームなので、ディフェンスについて厳しく言われていて、ビッグマンと外のプレーヤーのどっちにもつくような役割を求められています。あとは、身長が高いので、アウトサイドだけでなく、リバウンドでも力を発揮してほしいと言われています」

攻撃的なプレーヤーとして評価されてきたが、今シーズンからはディフェンス面を多く求められるようになっている。その変化が浅井の新たな魅力を引き出している。

「今までと異なるディフェンスの役割を求められています。だからこそ、ディフェンス面をもっと伸ばしたいという気持ちが強くなっています。自分が出ている時間帯はディフェンスでやられないという気持ちや得点を取られないという意識がすごく高まっている。自分の変化と成長を感じることができています」

決して簡単なスタイル変更ではない。それでも、新たに課されたタスクに対して、前向きかつ真摯に取り組もうという気概に溢れている。

ロボッツの強みはそうした選手をしっかりサポートする体制ができていること。その中で浅井は新たなトライを行うことができている。

「本当にロボッツで良かったなと思うのは、選手一人ひとりに対して、スタッフがしっかりサポートしてくれること。コーチやスタッフがワークアウトに付き合ってくれて、ディフェンスの仕方やステップの仕方など、丁寧に指導してくれるんです。良いアドバイスをたくさんいただいているので、自分の中で変化を感じることができていますし、コツもつかめるようになってきている。本当に感謝しています」

その自らの変化を実感できたのが、前述の千葉J戦だったのだ。

シュートフォームを変えた

ただ、強みが変わったわけではない。

あくまで浅井修伍の強みは遠隔からのシュートであり、3Pシュートの正確性こそが、武器であることに変わりはない。ディフェンスという新たなベースの上で、自分の武器を発揮できるプレーヤーへ、進化を遂げようとしているのだ。

その強みに対しての自信も積み上げてきた。

2022-23シーズン、筑波大学在学時から特別指定選手として登録されてロボッツの一員として活動し、昨シーズンは正式にロボッツに加入してルーキーイヤーを送った。前述の通り、思ったような活躍ができず、悔しさをにじませる日々を過ごしてきた。

そんな浅井に刺激を与えたのが、同じアウトサイドシューターの福澤晃平(現アルバルク東京)やトーマス・ケネディ(現富山グラウジーズ)だ。勝負所で高い成功率で3Pシュートを決めて、チームを引っ張った2人に共通していたのが、毎日のように全体練習後に長い時間シュート練習を行っていたことだった。

「バスケに対しての向き合い方が違った」

2人の姿勢に浅井はショックを受けたという。

「シュートを武器として活躍している選手ほど練習後のワークアウトに時間を割いていて驚きました。それがプロとしてあるべき姿なんだと気づかされたんです。『もっとやらなきゃいけない』と思わされました」

その現実を突きつけられた浅井は、すぐに自分を変えた。毎日ワークアウトで300~500本のシュートを打つことを自らに課したのだった。出場機会には恵まれなかった。それでも、自らと向き合い、来る日も来る日もシュートを投げ続けた。

さらに、今シーズンに向けて、「シュートフォームを変えたんです」と明かす。

「知り合いから『シュートを手で打っている』と指摘されたんです。それだと、疲労が溜まりやすく、たくさんシュートを打っていると、試合の終盤に精度が落ちてしまう。なので、もっと軽く打てるような打ち方がいいんじゃないかということで、シュートの打ち方を修正したんです」

その成果を実感したのが、10月23日に行われた第4節広島ドラゴンフライズ戦だった。試合は75対84の敗戦を喫したものの、浅井自身は6分03秒のプレータイムを得て、3Pシュートを2本立て続けに決める活躍を見せた。

「広島戦のプレーはインパクトが強かったなと思っています。千葉J戦もそうですけど、強豪相手に活躍できたことに手ごたえを感じています」

充実した表情で振り返った。

目指すスタイルは明確

これまで6試合に出場し、5本の3Pシュートを沈めている。3本だった昨シーズンの記録を早くも抜いており、キャリアハイを更新中。成功率も35.7%と「悪くない数字」(浅井)を出すことができている。日々の努力の成果、そして、新たなトライの成果が結果に繋がり出している。

ただ、「まだまだ納得していない」と言い切る。得意の3Pシュート成功率を「40%以上にしたい」と意気込みを口にする。また、昨シーズンよりもプレータイムが増えたとはいえ、いまだスターティングメンバーに選ばれたことはなく、メンバーから外れる試合も少なくない。昨シーズンから状況が大きく変わったわけではなく、さらなる進化とアピールが求められている。

それでも、浅井に迷いはない。自らが目指すプレースタイルと、そのためにやるべきことが明確に見えているからだ。そして、先を見ることなく、足元を見つめながら、一歩一歩踏み出すことができている。

「いきなり15分や20分試合に出してもらえるとは思ってないので、5分でも出してもらえたら、しっかり期待に応えるプレーをして、そこから徐々に出場時間を増やしていければ良い。そして、シーズンが終わる頃にはコンスタントにプレータイムがもらえるようになっていれば良いと思っています」

焦らず、慌てず、貪欲に前に進んでいく。そして、新たな「浅井修伍」を築き上げていく。

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この記事を書いた人

茨城県のスポーツシーンを取材するフリーライター。現在は水戸ホーリーホックを中心に活動しており、有料webサイト『デイリーホーリーホック』のメインライターを務める。
Twitter @takuyabeat69

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