文:小沼 克年|text by Katsutoshi Onuma
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ|photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS
一見、20歳とは思えないほどクールで淡々とプレーをこなす姿が印象的な赤間賢人。しかし、その内側には、大学を中退してまでプロの世界に飛び込んだ凄まじい覚悟が渦巻いている。”ロボッツの未来”と期待される男は、今の自分、そしてチームの行く末をどう見据えているのか。
※この記事は後編です。前編をご覧になっていない方はこちら↓

指名の喜びと、プロの厳しさと
2026年1月29日。この日は、赤間賢人という若き才能と、茨城ロボッツの未来が結ばれる運命の1日となった。
事前に行われた指名順を決める抽選で、ロボッツは全体2位を引き当てた。迎えた「B.LEAGUE DRAFT 2026」当日、クラブは1巡目で20歳のスコアラーを指名。初開催となったドラフトは「指名回避」が相次ぎ、1〜3巡目を含めて11名のみが指名を受けた。会場にいた選手の中では最初に指名された赤間は、運命の日をこう振り返る。
「指名されてから待合室に戻ることはなかったですけど、ドラフトが始まる前は意外とみんなリラックスしていたと思います。自分としてももっと多くの選手が指名されると思っていたので、少しびっくりしたというか、厳しいんだなって感じました」

華やかなスポットライトの裏で、赤間はプロの世界の厳しさを感じ取っていた。その狭き門をこの上ない形でくぐり抜けたということは、夢が叶ったと同時に、大きな期待と重圧を双肩に背負うことを意味する。込み上げてきた想いは、これまで自分を信じ抜いてくれた人々への感謝と、新たなステージでさらなる恩返しを果たそうとする決意だった。
「初めてのドラフトで1巡目2位という順位で選ばれたことは嬉しかったです。当日の会場には親や康平さんとかも来てくれましたし、そういった人たちに指名された姿を見せることができて良かったなと思います。でも、これからの方がもっと大事だと思うので、プロの舞台でも活躍する姿を見せられるように頑張りたいです。」
限られたチャンスで、確実に射抜く
ドラフトから日も浅い2月3日。ロボッツは赤間を特別指定選手に登録。期待のルーキーが非凡な得点能力を発揮するのに、さほど時間はかからなかった。
「昨日の試合では色々考えすぎてしまいました。今日は考えすぎずに、振りきって自分のできることをやろうという気持ちで試合に入りました。」
デビュー戦となったホーム・FE名古屋戦はわずか2分5秒の出場。何もできなかった。しかし、翌日の2戦目は第1クォーターから出番がくると、思い切りのよいドライブでファウルを誘った。記念すべきプロ初得点は、フリースローで1点を刻んだ。

それだけでは終わらない。最終クォーターには2連続で3Pシュートを射抜き、ホームに大歓声を呼び起こす。約15分の出場で9得点。日立市池の川さくらアリーナでの今季最終戦に勝利を添えた。
「今日は第1クォーターから3Pシュートを狙っていこうと思っていましたし、その気持ちが第4クォーターの結果につながったと思います」
その後も限られたプレータイムの中で役割を遂行し、着実に得点と経験値を積み上げていった。今季最後のアウェー2連戦となった第35節 島根戦 GAME1では、圧巻のシュート精度を披露。この日放ったフリースロー2本、2Pシュート2本、3Pシュート3本をノーミスで沈め、キャリアハイを更新する17得点で白星をもたらした。
「オフェンスで得点を取るという部分では貢献できているのかなと思います」。赤間自身も一定の手応えを口にする。それでも、ディフェンス、フィジカル、状況判断など、これから越えなければならない“プロの壁”がいくつも待ち受けていることも重々理解している。
「プロの試合だと外国籍の選手にディフェンスが寄って、自分のところが空くことが多いのでアウトサイドシュートを打てていると思っています。まだまだディフェンスのルールだったり、高い強度の中での判断ミスが多いので、そこは改善しなければいけないです。」
「無心」の先に広がる新たな景色
縁もゆかりのない茨城でプロキャリアをスタートさせ、3か月が経とうとしている。いざコートを離れれば、「何も考えていない」と自負する等身大の姿が顔を出す。オフの日はもっぱら家でゲームを楽しみ、心ゆくまで眠る。水戸の観光地巡りも、今のところ心を突き動かすまでには至っていない。
「ハヤテさん(#7 駒沢颯)は練習中に結構アドバイスをくれますし、ご飯にも連れてってもらいました」。先輩たちも日頃から赤間を気にかけ、彼の成長を温かく見守っているようだ。
ドラフト会場で自分の名前が呼ばれた日から、ロボッツの一員として迎えてくれたファンの存在も大きな支えだ。「赤間賢人」のネームタオルは発売と同時に驚くべきスピードで売れ、一時は完売という事態を招いた。自分を取り巻く環境が一変したことは、プロという舞台に身を置く責任と喜びを強く実感させた。
「まだ自分のグッズが出てない時に作ってくれている方もいたので嬉しかったですし、会場に入った瞬間に拍手とか応援も聞こえてきます。シュートを決めた時の歓声を聞くと、次も決めてやろうとか、もっと良いプレーをしようという気持ちになるのでファンの方の応援が力になってるなと感じています。」

赤間にはよく、「ポーカーフェイス」というワードがついて回る。本人に言わせれば、「それはしゃべるのが苦手で、何も考えてないから」。すでにファンも気づいているかもしれないが、無理に笑う必要はない。ただ淡々と、無心でシュートを打ち続け、決める。それが赤間賢人という男であり、観る者を惹きつける最大の醍醐味なのだから。
「日本代表に入りたいとかはまだ考えてないです。とにかく今は、得点のところでチームを引っ張れるようになりたいです。」
来る日も来る日もリングと向き合い続けたあの頃と、何も変わらない。その積み重ねが、自分自身を、ロボッツをまだ見ぬ景色へと導く原動力となる。



