取材・文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO
写真:佐藤 拓也 photo by Takuya SATO
心のバリアフリー化を目指す
2月23日、茨城ロボッツは、「B.LEAGUE Hope×日本生命 地域を元気に!バスケACTION」の一環として「心のバリアフリープロジェクト」を開催しました。
「バスケACTION」とは地方創生への貢献を目指すB.LEAGUEと、全国各地にネットワークを有する日本生命の両者が協力し、地域社会の活性化に向けた活動を各地域で展開・サポートしていく共同事業。全国に広がるクラブと連携し、各クラブが「人」「地域社会」「地球環境」の3領域のサステナビリティ向上に資するアクションを策定し、地域を元気にすることを目指して活動しています。
車いすは決して障がいのある方だけが乗るものではありません。怪我や年齢を重ねるうちに誰でも利用する可能性があるにもかかわらず、車いすユーザーに対してのバリアは日常生活の中でさえもなかなか減っていないのが現状です。
茨城ロボッツは障がいの有無を超えた「交流」や「体験」を提供し、社会側にある障がいを取り除く「心のバリアフリー化」を目指し、以下の2つのプロジェクトチームを立ち上げて活動を行っています。
1つ目は、連携協定を結んでいる茨城県立医療大学の車いすバスケットボールチーム「ROOTs」と共に、車いすバスケットボールを体験する企画を実施し、2つ目は、茨城県を福祉の力で元気にする活動をしている団体「いばふく」や地域の方々と連携をして、車いす乗車体験を通じて街のバリアを体験するアプリ「WheeLog!」で情報を共有するフィールドワークを実施するプロジェクトチームです。
レベルに合わせて車いすバスケを体験

今回は同プロジェクト第2回として開催されました。2月8日に茨城県立医療大学で行われた第1回では「車いすバスケットボールの体験会」が行われましたが、今回はM-SPO南町広場(水戸市)を起点とし、「車いすバスケ体験会」に加え、街中で車いすに乗り、バリアフリーマップを作成する体験イベントを実施。また、茨城県日立市出身の車いすトラベラー三代達也氏による特別講話も開催されました。
10時にイベントはスタート。まず、M-SPO(まちなか・スポーツ・にぎわい広場) ユードムアリーナでは、「”車いすバスケで熱くなろう”車いすバスケ体験会」が行われました。午前は初心者向けの「初めての車いすバスケの部」、午後は経験者向けの「本気の車いすバスケの部」と分けて、それぞれのレベルに合った形で車いすバスケを楽しみました。午後の部には#2 モサク ダミロラ選手も参加。大会形式で熱い戦いが繰り広げられました。


また、午前と午後の間にはバスケットの本場アメリカで南部代表の経験もあるイスバスプレーヤーで、障がいの有無に関わらず、誰もが車椅子バスケットボールを楽しめるチームとして活動している「スピニング・フープス・レボリューション」の代表を務める水戸市出身の齋藤信行氏と茨城ロボッツ代表取締役社長の川﨑篤之による「車いすバスケが果たす役割」をテーマとした特別講演も開かれました。
「長い付き合い」(川﨑社長)だという2人。10年以上前、水戸市の「黄門まつり」の際にユードムアリーナ前の道路で車いすバスケのイベントを開催したことなど思い出話を交えながら、車いすバスケの魅力や活動の意義などについて語り合いました。


街中のバリア情報を共有
そして、「体験会」と並行して、「まちなかでバリアフリーマップを作ろう!~車いす街歩きWheeLog!~」も実施されました。こちらは、水戸市東原にある北水会記念病院内水高スクエア(救護施設もくせい内あかつきホール)からM-SPO南町自由広場まで車いすに乗って移動するイベントで、街のバリアを体感し、当事者の「体験」をすることによって心のバリアフリー化を促すことを目的としたフィールドワークとして行われました。大人から子供まで64人が参加し、全員で交代しながら車いすに乗って、街中のバリア情報をアプリ「WheeLog!」で共有していきました。


昼食を食べた後には車いすトラベラーとして活動する、三代達也氏の講演会が開催されました。
現在36歳の三代氏は18歳の頃バイク事故で首の骨を折り頸髄を損傷、両手両足に麻痺が残り、車いすで生活するようになりました。そうした中、23歳の時に人生で初めての海外(ハワイ)への一人旅を経験したときに大きな衝撃を受けます。日本よりはるかに進んだバリアフリーに触れ、世界観が広がったと言います。その後、海外に興味を持ち、会社を退職。LAやオーストラリアに短期移住する生活へ。帰国後、再度会社員として数年働いた後、多くの人に海外の魅力を届けるべく、車椅子単独世界一周することを決意します。約9ヶ月間23カ国42都市以上を回り、世界一周達成したのです。


その後、車椅子トラベラーとして世界での旅の話などを全国で講演活動を行いながら、旅行会社と提携して国内外に赴き車椅子でも旅行しやすいツアー造成の監修などを行なっています。
また、2021年3月に沖縄へ移住し、当地の魅力をSNSで発信しながら【教育×旅】をテーマに小学校~大学に通う学生達への福祉教育にも積極的に関わっています。
「今日、実際に車いすに乗って移動してみて、様々な気づきの連続があったと思います。気づくことが大切なんです。そうすると、考え方が変わるかもしれません」
講演が進む中、三代氏はそう語りかけながら、5段の階段と、その上に入り口がある建物の写真を見せました。その建物をレストランと仮定し、車いすのお客さんが来たときにどのように対応するかを想像してくださいと三代氏は参加者に問いかけました。


三代氏は今までレストランで「段差があるので難しい」と入店を断られたことが何度もあると明かしました。「その人たちからしたら、車いすはすごく大変だというイメージなんだと思います。だから、あまり来てほしくないという気持ちを感じたんです」と残念そうにその時の心境を語ってくれました。
一方、沖縄に移住してから、「よくわからないけど、普段はどうやって入っているの?」「どうやって手伝えば入れる?」といった言葉をかけられたことがあったそうです。車いすへの対応は分からなくても、「入れない」という考えではなく、「どうやったら入れるか」を考えてくれたことが三代氏にとって「すごくうれしかった」そうです。
「車いすを体験して、気づくことができれば、どうすればいいかがわかると思うんです」と三代氏は参加者に訴えかけました。大事なことは、気づくこと。今回、車いすを実際に体験したことは、その大きな一歩となったに違いありません。

講演会に参加した#25 平尾充庸選手は「一番強く感じたのは、障がいは環境によって変化できるということ。環境を変えることももちろん大事だと思いますが、一人ひとりの心を変えることで、より過ごしやすい世界になっていくと感じました。僕自身もいろんなところに目を配りながら、これから生活していきたいと思いました」と感想を語りました。
「心のバリアフリー化」をもっともっと広げるべく、茨城ロボッツはこれからもこのプロジェクトを続けていきます。
