これまで『ROBOTS TIMES』では、地方創生を目指すB.LEAGUEと日本全国に広がるネットワークを持つ日本生命の共同事業「B.LEAGUE Hope×日本生命 地域を元気に!バスケACTION」の一環として、茨城県立医療大学車いすバスケサークル「ROOTs(ルーツ)」と茨城ロボッツが協働してきた「車いすバスケ体験会」のレポートをお届けしてきました。
障がいの有無や年齢・性別の垣根を越え、体験会の参加者がひとつのボールを追いかける空間は、いつも弾ける笑顔と熱気に満ちていました。
昨季から車いすバスケでつながった県立医療大とロボッツとのパートナーシップですが、今季は体験会という一過性のイベントだけに留まらず、より強固な共創へと歩みを進めています。
大学全体の意識改革を促す基調講演、スポーツ×理学療法士のリアルを学ぶ特別セミナー、プロスポーツの現場を体感するアスレティックトレーナーの仕事見学会などを実施。両者が育む地域共創のかたちを、今季の活動を通して振り返ります。
【基調講演】開学30周年の研修会で語ったロボッツ流の組織づくり
2025年10月27日(月)、開学30周年という節目を迎えた茨城県立医療大学内で、教職員と学生合わせ105名が参加する「全学SDFD研修会」が開催されました。
大学運営をより良くし、これからの医療大の姿を考えることを目的に実施された研修会では、基調講演・グループワーク・意見交換会が行われ、茨城ロボッツ代表取締役社長・川﨑 篤之が基調講演に登壇させていただきました。
研修の冒頭では、阿部 慎司学長、桜井 直美教授、橘 香織准教授が登壇し、大学を取り巻く社会環境や現状の課題を踏まえながら、第二期アクションプランの進捗と新スローガン「やっぱり、医療大。」に込めた想いを共有。医療大が地域で果たす役割と、これから届けていく価値について、教職員と学生が一緒に考える時間となりました。
午後の講演に登壇した川﨑は『つないでつくる未来 〜茨城ロボッツ流“借り物共創”のデザイン〜』をタイトルに掲げ、「地域とともに歩むプロスポーツクラブとは」を切り口に10年前のどん底から現在に至るまでのロボッツの歩みを紹介。クラブと地域との関係性について語りました。
川﨑は「大きな資本のないクラブがここまで来られた背景には、地域のみなさんが『ロボッツ頑張れ!』と外から声をかけるだけでなく『一緒にロボッツと頑張ろう、なんとかしよう』と自分事として関わってくれた存在があったこと。そして、地域にあるものを借りて、貸してもらいながら、みんなで成長していく『借り物共創』こそがロボッツのスタイルであり、スポーツの本質は勝敗を通じた感情の共有にあった。」と語りました。
そして「子どもたちの胸に『この街は楽しかった』という思い出の種をまくことこそが、地方創生のコアになる。」と強調。チームを応援するという他人事の関わりを、地域と一緒になって進める自分事へと変えていくことの大切さを示しました。
クラブの歩みを通して語られた川﨑のメッセージは、教職員をはじめ、これから医療・福祉の現場へと羽ばたく学生にとっても、地域共創の未来を考えるきっかけとなりました。


【特別セミナー】アスレティックトレーナーに学ぶプロの教え
次なる取り組みは、2026年2月26日(木)に同大学で開催された神部周仁ヘッドアスレティックトレーナー(HAT)による特別講演会です。スポーツ選手を支える仕事に関心がある高校生や大学生を対象に、理学療法士の資格を持つ神部HATが21名の参加者を前に、スポーツの裏側を支える理学療法士のリアルを語りました。
講演ではまず「アスレティックトレーナー(AT)」という職種の役割や、理学療法士との違いなどを解説。Bリーグのタイトな試合スケジュールの中で、選
手のコンディションを整え、試合や練習に臨める状態をキープする方法、ケガの予防から発生直後の対応、復帰までのプロセス、日々のウォーミングアップやリカバリーに込められた意図など、プロスポーツの現場で求められるトレーナー業務の全体像が、具体的なエピソードとともに紹介されました。
さらに、自身のキャリアの歩みについても共有されました。
学生時代の経験から現在に至る過程を振り返りながら「どのようにしてスポーツの現場で働くチャンスを掴み、何を大切にしてきたのか。」が語られ、プロスポーツの現場で働くチャンスをつかむためには、キャンパス内にとどまらず、自ら現場の門を叩きにいく「自己投資」と「能動的な行動力」が欠かせないと続けました。
神部HATが語ったプロスポーツの世界で働くまでのリアルな道のりは、まさに進路を考え始めている学生たちにとって、自分事として描けるストーリーとなりました。
そのうえで、神部HATが繰り返し強調したのが「日々の座学の重要性」です。
「最近は奇抜なトレーニングやリハビリなどの知識がSNSで簡単に手に入りますが、流行りに飛びつくよりも『基礎』を徹底的に固めることの方が遥かに大切です。解剖学や生理学、運動学といった基礎知識こそが、現場で行うあらゆる判断の強力な根拠になるからです。一見すると退屈に思える授業が、将来プロの現場で必ず皆さんを助けてくれます。」 と語り、土台を築く重要性を学生たちに投げかけました。
華やかに見えるスポーツ現場の裏側には地道な準備と絶え間ない自己研鑽があることを伝えながら 、自身のやりがいについても言及しました。
「自分にとっての真のやりがいは、学生時代から打ち込んできた大好きなバスケットボールに、今なお深く携われていることです。皆さんも『自己投資』と『能動的な行動力』でチャンスを掴み 、自分が本当に納得して仕事に向き合える状態を追求していってほしい。」 そして、「今日から一歩踏み出し、自分らしいキャリアを築いていくことを心から応援しています。」 と、未来のスポーツ医療を担う学生たちに熱いエールを送りました。

【見学会】学生が目の当たりにしたプロの仕事の舞台裏
この言葉を胸に刻んだ学生たちは、2月28日(土)にチームの練習が行われるアダストリアみとアリーナへと足を運び、ATの仕事見学会に参加しました。
学生たちは、練習前に行われるテーピング対応の様子や、実際に使われているトレーニング機器・リハビリ用具について、神部HATから説明を受けました。
目の前で目まぐるしく進む準備の一つひとつを見つめながら、トレーナーの専門性の高さと、その役割の大きさを実感していきました。
見学の合間には、プロの現場で求められる「人との関わり方」についても言及しました。
神部HATは、選手ごとに状況も価値観も異なるからこそ、自分の考えを一方的に押し付けるのではなく、相手の言葉や個性を受け止めていくコミュニケーションが欠かせないと伝えます。「どんなに正しいと思う評価やプランでも、選手との信頼関係がなければ現場では機能しない。」と話し、日々の声かけやちょっとした雑談も含めて、選手との関係を丁寧に積み重ねていくことの大切さを強調しました。
また、現在のBリーグではロスターの約3分の1を外国籍選手などが占めていることにも触れ、コミュニケーションを通訳に任せきりにせず、できる限り自分の言葉でやり取りを重ねていく語学力は、信頼関係を深めるうえで大きな武器になると語りました。
見学会の終盤、神部HATはセミナーでのメッセージを踏まえながら、あらためて学生たちに問いかけます。
大学で積み上げている基礎知識をどう現場で生かすのか―。
そして、目の前の選手とどのように向き合い対話と信頼を重ねていくのか―。
アダストリアみとアリーナでの時間を通じて「基礎」「コミュニケーション」「語学力」「信頼関係」といったキーワードが、学生たちの中でより具体的なイメージへと結びついていきました。

見学を終えた学生たちは、現場のスピード感や選手と向き合う神部HATの姿から何を感じ取ったのでしょうか。スポーツの現場を支えるATを目指す3名の声をお届けします。
華やかな試合の裏側で、練習開始の1時間半以上も前から綿密な準備が当たり前のように進められていることに驚きました。僕たちが観客として見ている練習中・試合中のさらに前の段階から、すでにプロとしての仕事が始まっている。その周到な準備の積み重ねを肌で感じて、圧倒されました。
驚いたのは、選手によってテーピングの巻き方や使用するテープの種類がまったく違っていたことです。選手一人ひとりの体型や筋力、身長などの違いを把握したうえで行われる、きめ細かな個別アプローチの高さに、プロの現場ならではの凄みを感じました。
神部HATをはじめとするスタッフの方々が、外国籍の選手と直接英語で会話しながら、選手の気持ちをリラックスさせている様子が印象的でした。学校のキャンパスの中でただ待っているのではなく、自ら進んで実際の現場に飛び込み、語学も含めて自己投資を続けていくことの大切さを強く実感しました。
医療大×ロボッツが描く、茨城の明るい未来
バスケットボールという共通のツールをハブに、お互いの組織の壁を取り払いながら、全国の模範となるような未来の地域医療人材を共に育てていく―。
今季の茨城県立医療大学と茨城ロボッツの連携は、両者が描く新しい地域共創のかたちそのものです。
車いすバスケ体験会をはじめ、県内各地へと活動の場を広げた多くの学生たちと重ねてきた経験が、両者のあいだに強い信頼関係を育んできました。
その一つひとつの積み重ねが、スポーツと医療が手を取り合って歩む「茨城の明るい未来」を支える確かな土台になっています。
ROOTsの活動や学内講演会やアダストリアみとアリーナでの見学会などを通じ、互いの理念が共鳴し合って生まれたこのエネルギーは、わたしたちの地域と医療現場のこれからを照らし続けていきます。
今後も進化を続ける「県立医療大×茨城ロボッツ」の物語に、ぜひご注目ください。


