【茨城ロボッツ×WheeLog!街歩き】車いすから見えた水戸のまち 地域一丸で取り組む「心のバリアフリー」

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取材・文:茨城ロボッツ text by IBARAKI ROBOTS
写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKI ROBOTS

2026年2月28日(日)、アダストリアみとアリーナにて「みとまちなか車いす体験DAY」を開催しました。
「車いすバスケ体験会(A・Bコース)」と、バリアフリーマップを作成する「WheeLog! 街歩き体験会(Cコース)」の2種の企画を実施。さらにCコースでは、茨城県警による交通安全講話に加え、各地で講演活動を行う加藤さくらさんによる「心のバリアフリー」をテーマにした特別講演が開催されました。複数の団体と連携しながら、多角的に学びを深める一日となりました。

本企画は、地方創生を目指すB.LEAGUEと、日本全国に広がるネットワークを持つ日本生命の共同事業「B.LEAGUE Hope × 日本生命 地域を元気に!バスケACTION」プロジェクトの一環として実施しています。

今回のレポートでは「茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクトいばふく」、「茨城大学コロンブスの卵の会」、茨城県立医療大学車いすバスケットチーム「ROOTs(ルーツ)」と協働した取り組み、バリアフリー情報を地図で共有するアプリ「WheeLog!(ウィーログ)」を活用したフィールドワーク「WheeLog!街歩き」の様子をお届けします。

【11月30日に開催されたB.LEAGUE Hope×日本生命 「地域を元気に!バスケACTION車いす体験DAY in 牛久」の様子はこちら】

目次

#25 平尾 充庸選手がアダストリアみとアリーナ周辺を徹底調査

当日は茨城ロボッツの平尾選手も参加。約70名の参加者とともに「アダストリアみとアリーナ周辺コース」「偕楽園コース」「路線バスを利用した泉町周辺コース」の3グループに分かれ、それぞれのエリアを調査しました。

平尾選手は通いなれたホームアリーナ周辺の調査を担当。開始前には、「怪我をした際に車いすを使用した経験はありますが、車いすでアダストリアみとアリーナの周辺を巡るのは初めてです。皆さんと一緒に、車いすユーザーの方々の視点をしっかりと学びたいと思います。」と笑顔で挨拶しました。各コースには、アンバサダーとして車いすユーザーも同行。使い方のレクチャーを受け、初めて車いすを体験する参加者も不安なく、フィールドワークへと出発しました。

アリーナを出て最初に向かったのは隣接するテニスコート付近。一見すると整備された緩やかなスロープでしたが、実際に車いすで下ってみると、その印象は大きく変わります。車いすを捜査していた平尾選手の表情にも徐々に緊張が走り、「下りはスピードが出すぎて、自分の腕の力だけでコントロールするのは難しいです」とコメント。操作を誤れば転倒の危険もある中、ブレーキをしっかりと握る腕には、試合中さながらの力が込められていました。

続いて訪れたのは、ウォーキングを楽しむ人たちの目を和ませる芝生と石畳が混在するゾーンです。一見すると季節の景色を楽しめる心地よい散歩コースでしたが、車いすで進んでみるとその印象は大きく変わります。平尾選手は「ガタガタとした振動がダイレクトに体に伝わりますね。一つひとつの石畳に、これほど体力を奪われるとは思いませんでした」と驚いた様子。歩行者にとっては美しい景観であっても、車いすユーザーにとっては走行が難しい道になり得ることを参加者全員が体感した場面となりました。

さらにアリーナの外周では、横断歩道までのわずかな段差や駐車場出入り口付近の傾斜など、普段は意識せずに通り過ぎてしまうポイントでも車いすには負担がかかることが見えてきました。
「まっすぐ進もうとしても、勝手に車道側へ流されてしまいますね。常に力を入れ続けるので、たった数十メートルでも腕が予想以上に疲れます。」と歩道を直進することの難しさを実感。アスリートである平尾選手でさえ、思わず音を上げてしまうような現実に直面する時間となりました。

参加者同士がバリアフリーに対する学びを深めながら、普段は気づかなかった難所を乗り越えるたびに、「今の段差は危なかったね」「この道は進みにくいから介助しますね」など、車いすに乗る人と介助する人が自然に声を掛け合う姿も印象的でした。短い距離の移動の中にも、多くの気づきと対話が生まれるフィールドワークとなりました。

フィールドワークで見つけたリアルな街の景色

こうした体験を経て、平尾選手はホームタウン・水戸の街への見方にどのような変化を感じたのでしょうか。フィールドワーク後に語ってくれた言葉から、その思いをご紹介します。

#25 平尾 充庸 選手

フィールドワークを終えて痛感したのは、僕はホームタウンである水戸の街のことを知っているつもりでも、実はまだまだ理解できていなかったということです。普段は気にも留めない数センチの段差や歩道のわずかな傾斜が、車いすユーザーにとってどれほど大きな「壁」になるのかを、今回初めて自分の体で実感しました。
そして、この現実を変えていくには、自分一人の力ではなく、クラブや行政、パートナー企業、ブースターの皆さんといったロボッツに関わる多くの方々と力を合わせて取り組むことが不可欠だと強く感じました。
その第一歩として、日常の中で困っている人に迷わず声をかけることや、助け合いの輪を広げていくことを大切にしていきたいと強く思いました。この経験をコート内外の行動につなげ、アダストリアみとアリーナを日本一バリアフリーなアリーナにしていくことを、新たな使命として取り組んでいきます。

水戸の街をいつもとは違う高さから見つめ直した時間は、平尾選手だけでなく参加者一人ひとりにもさまざまな発見をもたらしました。
続いては「アダストリアみとアリーナ周辺コース」「偕楽園コース」「路線バスコース」に参加した3名が体験したそれぞれの景色をお届けします。

「アダストリアみとアリーナ周辺コース」参加者(20代女性)

普段の生活ではなかなか接点のない車いすの世界を体験したいと思い参加しました。実際に車いすに乗って街へ出てみると、一見平らに見える道路でも排水のための細かな傾斜がついていて、まっすぐ進むだけで想像以上に腕の力を使うことに驚きました。自分からは先が見えない段差や下り坂に差しかかったとき、後ろから「今から降りますね」と一言声をかけてもらえるだけで、安心して進めたのも印象的でした。徒歩では気づかないようなポイントばかりで、見慣れたアリーナ周辺の景色がまったく違って見える貴重な体験になりました。

「路線バスを利用した泉町周辺コース」参加者(40代男性)

路線バスの乗降時に車いす用スロープを出してもらう一連の流れを体験し、段差やスペース、周囲の人からの視線など、これまで意識してこなかった要素がいくつもあることに気づかされました。乗務員さんが丁寧に声をかけてくださったことで安心して乗車できた一方で、もし混雑時や時間に追われている状況だったら乗客はどう感じるだろうかと、自分なりに想像するきっかけにもなりました。今回の体験を通して、街で車いすユーザーを見かけたときには、自分からもさりげなく声をかけてみたいと思うようになりました。

「偕楽園コース」参加者(30代男性)

梅まつりでにぎわう偕楽園を巡りました。観光地として何度も訪れた場所でしたが、坂や砂利道、トイレまでの導線などが車いすにとっては想像以上に大きな壁になることを肌で感じ、歴史的な景観を守りながら誰もが移動しやすくすることの難しさを実感しました。一方で、園内の一部には車いす優先コースが整備されているなど、利用する人のことを考えた工夫も見つかりました。こうした情報をアプリで共有していくことで、「行ってみたいけれど不安がある」という人の背中を、少しでもそっと押せたらうれしいなと感じました。

それぞれの立場から見た「共生の未来」

午後のプログラムでは、難病を抱える娘さんとの暮らしを通して違いを認め合うことの大切さを発信している加藤さくらさんを迎え、心のバリアフリーをテーマにした特別講演が行われました。
家族として向き合ってきた不安や葛藤、周囲のさりげない一言に救われた経験などが語られ、参加者は一つひとつのエピソードに耳を傾けながら、自分の日常の中でできる一歩を考える時間となりました。

フィールドワークに加え、車いすユーザーの視点や当事者家族の声など、様々な側面から学びを深めた今回の企画。講演の中で加藤さんが語った「障がいは人ではなく社会の側にある」というメッセージは、街歩きで体感した段差や傾斜の記憶と重なり、多くの参加者にとって印象的な言葉になりました。

こうした学びの場を共に作ってきたメンバーは、この一日をどのように受け止めたのでしょうか。
ここからは、茨城大学コロンブスの卵の会・加藤純奈さんと、茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクトいばふくプロジェクトリーダー・小林信彦さんのコメントをご紹介します。

茨城大学「コロンブスの卵の会」
OriHimeパイロット5期生 加藤 純奈さん

車いすアンバサダーとして街歩きに参加し、改めて人と人とのつながりの大きさを感じました。ふだん私ひとりで街を移動していると、行く手を阻む段差や坂道を見つけるたびに「またか」と落ち込んでしまうことがあります。でも今日のように、#25 平尾選手やさまざまな年代の方たちと一緒にワイワイ歩いてみると、そうした大変な場所も「ここは気をつけたほうがいいポイントなんだ」と、新しい発見として受け止めることができました。
みんなで情報を共有し合える「WheeLog!」を活用しバリアフリーマップをつくることは、私たち車いすユーザーが出かけるときの心強い判断材料になります。今日、参加者の皆さんが投稿してくれた一つひとつのスポット情報は、「このルートなら行けそう」「ここは誰かと一緒に行こう」と考えるヒントになります。自分の体験が、どこかの誰かの「行ってみよう」という気持ちにつながるかもしれないと思うと、とても励まされますし、水戸の街をまた違った意味で身近に感じられるようになりました。

いばらきから福祉で世界を元気にするプロジェクト「いばふく」
プロジェクトリーダー 小林 信彦さん

活動も3年目を迎え、回数を重ねてきたことで、運営側としても「ここが学びのポイントです」と参加者の皆さんに自信を持って示せるようになってきました。当初は、移動のしづらさや困難なポイントを確認することが主な目的でしたが、今はそれだけではありません。たとえば、今日の偕楽園の調査では、新しく車いす優先コースが整備されていることに気づきました。このように、街の中にあるささやかな工夫を見つけて「ありがとう」と感謝する活動へと、少しずつ姿を変えてきたと感じています。
バリアという困りごとを指摘するだけでなく、良い取り組みを見える形で共有し、みんなで称賛していくことができれば、自治体や企業もより前向きにバリアフリーへ取り組みやすくなるはずです。茨城ロボッツを一つのハブとして、学生や行政、地元の団体など、さまざまな立場の人たちが垣根を越えて集まり、「茨城の福祉、ちょっとやべぇぞ」と胸を張って言えるような動きを少しずつ増やしていきたい。そんな思いで、これからも一歩ずつ取り組みを広げていきたいと考えています。

知ることから始まる、水戸のバリアフリーな未来

「WheeLog! 街歩き」を通して、参加者は“いつもの街”をこれまでとは違う視点で見つめ直しました。段差や傾斜といった目に見えるバリアだけでなく、「ここを通るとき、どんな気持ちになるのか」という車いすユーザーの心情に想像を巡らせながら歩いたことで、日常の景色の意味合いそのものが変化していきました。

アリーナ敷地内、偕楽園、バス乗車体験と、それぞれの場所で集められたリアルな車いす目線の情報は、アプリ「WheeLog!」を通じてバリアフリーマップに蓄積されていきます。こうして記録された一つひとつの情報がアプリを開いた誰かに届き、「ここなら行けるかもしれない」という一歩を後押しする確かな希望へとつながっていきます。

バスケットボールは、一人では成り立たないスポーツです。仲間を信じてパスをつなぎ、全員でゴールを目指すその姿は、茨城ロボッツが地域と共に進めている心のバリアフリーの取り組みにも重なります。すぐに設備を変えることは難しくても「お手伝いしましょうか」という小さな声かけのパスを街の中でつないでいくことは今日からでも始められるはずです。

これからもM-HOPE活動を通じて、誰もが楽しくまちなかを歩ける優しい未来を地域の皆さまとともに形にしていきます。

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