【AFTER GAME】 2020-21第22節 青森戦(2/20~21)~勝って道を切り開く。そのために必要な「声」~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

アダストリアみとアリーナに青森ワッツを迎えてのホームゲーム。ロボッツはディフェンスからゲームを組み立て、GAME1を82-58、GAME2を86-68で連取。ホーム・茨城のファンやブースターの前で、しっかりと勝利を収めてみせた。しかし、試合を終えた選手たちの声を聞くと、この勝利に決して満足していない姿が浮かび上がってきた。上位陣と立て続けに戦う今後を見据え、課題を見つめ直したい。

「予防」で対応したディフェンス。されど「強度が必要」

青森は、アウトサイドでのボール回しを中心にオフェンスを組み立て、要所では外国籍選手の#15オーランド・サンチェスや#41スティーブン・ハートにボールを預けることで打開を図ろうとする。これに対してロボッツは、ビッグマンやフォワード陣が1on1を中心としたディフェンスで対応し、彼らを外へ外へと追いやり簡単にシュートレンジには入れさせない布陣を敷いた。

インサイドからの得点パターンをなかなか作れない青森のオフェンスは、これで勢いが止まったかに見えたが、今度はキックアウトからの3ポイントシュートに活路を見出すことになる。ロボッツは、GAME1では10本、GAME2では9本の3ポイントを被弾してしまった。一方で、シュートチェックそのものは機能していて、全くのオープンでシュートを自在に打たれ続けたという状況でもなかっただけに、#0遥天翼は「相手の3ポイントが増えたことはあまり気にしていなかった」と話す。だが、一度築いたリードを詰められてしまうという展開そのものには「やはり、一本一本のディフェンスのインテンシティ(強度)や質が必要」だと、自戒を込めて話した。

「一言でいうと、ディフェンスがソフトになってしまいました。1対1の場面で止めてやるという気持ちが足りなかったのか、理由は定かではありませんが、リバウンドにしてもシュートチェックにしても、もう一歩踏み込めていればという場面があったと感じています。試合の途中途中で青森さんに主導権を握られかけたのも、そうしたインテンシティの部分が影響していると思います。」

さらに、戦況を見つめていた#2福澤晃平は、こんな意見を持っていた。

「ベンチから見ていた感覚としては、スイッチするのか、ハードショーに出るのか、ディフェンスがあいまいになってしまったところもありましたし、リバウンドに誰も入っていないという場面もありました。僕の感覚としては、あれはコミュニケーションミスだったのではないかと思います。」

この2戦を振り返るに当たって、「コミュニケーションミス」はかなり大きなキーワードになっていたようだ。そして、それが防げるものであるということは、他ならぬ選手たちが自覚していたことでもあった。

相次いだ攻守のつまずき。解決の糸口は「声」

結果的には「守り勝ち」ともいえるゲーム運びをみせたものの、この2戦、ロボッツのオフェンスが本調子とはいえない状況だったことも無視できない。それは単にチームや個人の得点やシュート精度といった部分に限った話だけではなく、特にターンオーバーの数となって現れていた。今シーズンのロボッツはチーム全体でターンオーバーが非常に少なく、1試合平均で9.9本におさえている。1試合平均が10本を下回っているのは、B2の全体を見渡してもロボッツだけであるといえば、その少なさが際立ってくるはずだ。しかし青森戦ではどこかちぐはぐな場面が増え、GAME1で16本、GAME2で14本と、いずれも平均から考えると上回る数のターンオーバーを記録してしまった。こうした状況を、福澤は「相手に合わせてしまった結果」と振り返った上で、次のように話す。

「難しいパスをわざわざ通そうとして、ターンオーバーを生んでしまったと感じています。ギャンブルのようなパスではなく、一瞬ボールを止めていればターンオーバーにならずに済んだものもかなりありました。点差が開いているかどうかという場面に関わらず、パスの質を下げてしまうと、相手が息を吹き返してしまう可能性もあります。相手に関係なく、自分たちのバスケットができるようにするためにも、ターンオーバーは減らさないといけません。」

「自分たちのバスケットを通す」という点については、遥も同じような意見を述べる。

「今のロボッツでは、自分たちがフワッとしてしまった時間帯を作ってしまうことが一番の課題だと思います。相手に合わせるのではなく、自分たちの100%の実力を出せるような試合にしなければ、今後勝ち進むのは難しくなってしまうのかなと感じています。」

その中で、何が課題なのかを遥に問うと、彼は「コミュニケーションの重要性」を熱く説いてきた。

「何をしたら勝てるとか、どうすればこのチームの本来の実力が出せるのかというのは、正直にいって未だに答えが出せていないところです。その中で何が、今この瞬間に必要なのかと問われたら、僕はコミュニケーションが必要だと思うんです。福岡戦をビデオミーティングで振り返っていたときに、スイッチミスやヘルプのいるいらないといった部分を話していたのですが、ほとんどはコミュニケーションミスに原因があるんです。誰かが思いやりを持って一言話せば、全部解決できるようなシーンがたくさんあるんです。練習中からコミュニケーションが取れるようになればいいと思いますし、声って誰でも出せるはずなんです。英語でも日本語でも、単語で話そうと思えば誰でも出せるものなので、何から良くするといわれれば、『声』なんです。」

「声かけ」にも気を配りながら挑んだというこの青森戦については、「意識が芽生え始めているが、まだまだ」と遥は振り返る。上位対決が続く中、コート上での一つのコミュニケーションミスが試合の決定的な分岐点になってしまう可能性は否定できない。声への意識を切らすことなく、今後の戦いに備えてほしいところだ。

ルーツの地・つくばで、勝利を目指せ!

ホームゲームが続く中、次節の開催地はつくばカピオアリーナ。ロボッツにとってはルーツともいえる地での戦いとなる。相手は佐賀バルーナーズ。今季B2に昇格したチームながら、序盤から西地区の上位争いを繰り広げ、B2の戦いをかき回してきたチームだ。ロボッツとはこれが初対戦。どのような戦いになるかは未知数だ。

佐賀はどのポジションからでも攻撃の手数が豊富なのが強み。ポイントガードでありながらチーム内最多得点を誇る#2レイナルド・ガルシアや、絶対的センターの#25ケニー・ローソンなど、外国籍選手の層の厚さに注目したいところだが、インサイドの要として奮闘する#1中西良太を要注意選手として挙げたい。日本人ビッグマンとして活躍する中西は、今シーズンここまで平均得点が11.5、平均リバウンドが5.6。外国籍選手相手でもひるまないフィジカルの強さは、ここ一番で脅威となってくるだろう。

ロボッツの注目選手は#27眞庭城聖。ロボッツが誇るオールラウンドプレーヤーの能力が、試されるときとなるだろう。1月30日の山形戦では11得点、2月14日の福岡戦では13得点を挙げるなど、徐々にオフェンス面での調子を取り戻しつつある。また、スタッツだけでは計れない粘り強いディフェンスや、体を当ててどん欲にシュートを放つ姿も見られているだけに、相手の屈強な選手とのマッチアップにも注目していきたい。今回の対戦では、眞庭と中西による日本人フォワード対決から目が離せなくなるだろう。

ロボッツにとっても、佐賀にとっても、「仮想プレーオフ」ともいうべき今回の対決。地の利を活かし、ロボッツが連勝を果たすことができれば、今後のリーグ戦の見据え方も変わってくるだろう。熱い試合展開をものにして、上位争いから一歩抜け出せるようなゲームとなるよう、期待したいところだ。

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