【AFTER GAME】 2021-22 A東京戦(12/18~19)~思い切りの良さで勝負。主軸不在の中でも見せた戦い様~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

レバンガ北海道戦から中2日で敵地に乗り込んで行われた、アルバルク東京戦。前節欠場した#25平尾充庸に加えて、#15マーク・トラソリーニも今節はベンチエントリーしながらもプレーせず。ロボッツは「飛車角」を欠いた中で、どのような戦いに出るかが見どころだった。GAME1では一時13点差を追い上げながらも79-73で敗戦。GAME2では展開を追って強固になったディフェンスをこじ開けられずに73-98で連敗という形になった。しかし、その裏で今節は今後への期待がかかるようなプレーがいくつも見られた。今節は特にそうしたプレーが多かった#11チェハーレス・タプスコット、#13中村功平、#14髙橋祐二に注目して試合を振り返る。

できることで戦う重要性

「3ポイントが壊滅的に入らなかったので。空いたら狙うとは、決めているんですけども…」

GAME1の後、報道陣との会話で飛び出した中村の言葉。チームにおいてはシューターであることを期待されているし、中村当人も求められた自らの働きを重々理解している。本来はハンドラーも務められるだけの器用さも持ち合わせている。ただ、今シーズンはそのシュートタッチがなかなか合わない状態が続いていた。今節の試合前までの時点で3ポイント成功率は13.9%。昨シーズンの36.9%と比べれば、B2とB1の違いを考慮したとしても、いかに苦しんでいるかが分かる。加えて、今シーズンはディフェンスの中でガード陣よりもスモールフォワードの選手とのマッチアップが目立つ。現在であれば#29鶴巻啓太や#0遥天翼、昨シーズンであれば小林大祐などが就いていたポジションも担っているわけだが、体格に押される場面もあって、こちらでもなかなか苦しんでいた。昨シーズン、「苦手だとしてもディフェンスから」と度々口にしてきていた彼が、袋小路に陥りかけていた。

ところが、平尾の欠場で回ってきたチャンスを彼は逃さなかった。GAME1ではペリメーターからでも迷わずにシュートを放って6得点を挙げると、GAME2では久々に3ポイントも決まってシーズンハイの7得点。ディフェンスでもA東京の#2ジョーダン・テイラーを押しとどめ、ファウルをコールされてもスティールを積極的に狙いに行くなど、「らしさ」が戻っていた。先述の言葉に続いて、心構えを明かした。

「3ポイントが無いならばディフェンスでハードワークをするというのと、自分より大きなマークマンに付かれても、自分の方がスピードで分があると感じていたので、ピックアンドロールからのドライブに出ることにしました。テイラー選手に対しては、スカウティングの段階で自らドライブして3ポイントを打つ感じではないと分析していたので、プレッシャーをできるだけかけて、少しでも攻撃を遅らせようとしていました。」

どんな競技であっても共通する話だが、調子の悪い部分で無理に戦おうとすると、他に残っている長所さえも潰してしまいかねない。彼のシュートセンスや身体能力で見せつけてきた結果を、今さら疑う者はいない。そうであるがゆえに、中村が選んだある種の割り切りが、チームをしっかりと戦わせ続けた。

一方で、今節のガード陣では髙橋のディフェンスが光る場面があった。テイラーや#24田中大貴などに徹底して貼り付き、決定的なシーンをそうそう作らせなかった。18分19秒のプレータイムは、開幕戦の秋田ノーザンハピネッツ戦に次ぐもの。アシストも4つを記録して攻撃面でもチームを引っ張った。スポットディフェンダー的な起用が目立っていた中で、髙橋ここにありと見せつけるものもあっただろう。GAME2を終えて、試合への意気込みをこのように持っていた。

「プレータイムが短い中でも、我慢をして、我慢をして、自分らしいプレーができるように準備を続けてきました。平尾選手、トラソリーニ選手がいない中で、厳しい戦いではありましたが、ベンチから試合に出る自分たちがステップアップしなくてはなりません。GAME1では中村選手がとてもいい活躍をしていたので、そこに続きたいという思いで試合に入っていきました。競ってる試合ではどうしても主力にプレータイムが偏ってしまうので、長いシーズンを考えると主力ばかりに負担をかけていられません。」

ディフェンスで献身的に体を張り続け、めきめきと成長を続けている#29鶴巻啓太の負担が徐々に大きくなり、時には30分を超えるプレータイムも記録していた中で、この2人がしっかりとディフェンスでの見せ場を作ったことは、チームにとっても心強い上に、ここぞという場面で投入するディフェンダーの選択肢も増えていく。彼らの復調、あるいは成長なくして、この先の戦いがより良くなることは考えづらい。今後の中でバックコート陣がより熾烈な争いになることを期待したいものだ。

ミスマッチに果敢に立ち向かう

GAME2の戦いぶりは、タプスコットの爆発力無しには語れない。第1クォーター、第2クォーターでそれぞれ12得点を挙げ、終わってみればシーズンハイの30得点。インサイドへのアタックだけでなく、3本の3ポイントを沈めるなど、バランスの良さを見せた格好だが、ディフェンスでも相手のスティールに対して素早く戻ってゴール下に入り、「スティール返し」を見せるなど、攻守に渡る活躍には目を見張るものがあった。

特にオフェンスにおいては、相手の#22ライアン・ロシターや#53アレックス・カークなど、ビッグマンたちの壁をものともしなかった。特にA東京の最長身選手であるカークに対しては、スピードで潜り込んで振り切る動きをいくつか見せて得点を演出。振り切られまいとするカークからファウルも誘うなど、久しぶりにスコアラーとして面目躍如の舞台となった。GAME2を終えての記者会見で、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチHCから「彼はゾーンに入っていた」と言わしめる、鮮烈な活躍。そのシュートタッチについて、彼自身はこう振り返る。

「試合全体を通してシュートタッチは良かったと思いますし、1つ決まって『今日は行ける』と思えました。自分にパスをさばいてくれるなど、チームメイトの助けで打たせてもらえた部分もあります。ディフェンスにおいては自分の目の前の選手を止めて、リバウンドを奪うこと、を意識し続けていました。」

特にGAME2の前半においては、彼に打たせるためのお膳立てがかなり明確だった。#21エリック・ジェイコブセンはタプスコットのゾーンを作るために相手のビッグマンとの競り合いを繰り広げ、ペリメーターエリアでは#2福澤晃平がロシターを押しとどめるなど、孤立させすぎずに打たせるというセットができていた。当然それを決めきったタプスコットも見事である。

もともと、相手の壁がある状態でのタフショットをねじ込むことには定評があったタプスコット。ただ、B1のディフェンスを攻略することはさしもの彼でも容易とは言えず、フィールドゴール成功率や平均得点はここまで昨シーズンと比べると低い値となっている(昨季:52.2%・17.8得点、今季:41.7%・10.8得点)。そこに腐ることなく戦い続けた結果が、今回のハイスコアを生んだとも言えよう。

シーズンの3分の1を終えて、中盤戦へと突入していく。ここからの戦いのイメージを問われると、こんな言葉を返した。

「強いチームにもコンペティティブに戦えているわけですから、今後はその経験を活かして勝ちにつなげたいところです。僕自身も自信はあります。今後いくつか勝利を掴むことで、そこから軌道に乗って行けたらと思います。」

そもそも、シーズンが始まる前には「ハードな状況も楽しむ」と言い切ったタプスコット。ホームゲームでも「シェイ・タイム」発動となるか、注目してほしい。

堅守・忍耐が求められる試合に

A東京戦を終えて、次なる戦いは、アウェーでの信州ブレイブウォリアーズ戦。かつては共にB2で激闘を繰り広げた間柄で、対戦はおよそ2年ぶりとなる。信州は2019-20シーズンでのB1昇格に貢献した選手たちが現在も多く在籍しており、ロボッツが目指す「BUILD UP」スタイルの先輩ともいえる存在。ケガ人や欠場者が続出したこともあって目下7連敗中ではあるが、平均失点はリーグ5位の75.3で踏ん張る戦いを続けており、現在西地区の7位につけている。この堅守をどう崩すかが勝負のカギを握るだろう。ロボッツはB2時代の2019-20シーズンの2月に48-88で信州に敗戦。このときのロボッツの48得点は、Bリーグ開幕後の最少得点として記録に残っていて、これが両者の最後の対戦となっている。そこから2年、共にステージをB1に移したもの同士、互いにどのような成長を果たしたのかを見せ合う場でもある。

チームを引っ張るのは#55アンソニー・マクヘンリー。チーム在籍5シーズン目、琉球ゴールデンキングス時代から数えれば日本在籍14シーズン目を迎える38歳の大ベテランだ。今季は全試合でスターター出場を続けており、得点(1試合平均13.0)やリバウンド(同7.9)などでは、昨シーズンよりスタッツを向上させるなど、衰え知らずといった格好だ。つい先日には、9シーズンを過ごした琉球時代を知るバスケファンたちの熱意が実って「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN OKINAWA」にB.WHITEの特別枠として選出された。ロボッツとしては、この日本バスケ界が誇る鉄人を食い止める戦いをしなくてはならない。

ロボッツとしては現在離脱中の平尾とトラソリーニの復帰に注目したい。リチャード・グレスマンHCは彼らの状態を「大きなケガではない」と明かしており、再びコートに立つ瞬間が望まれる。一方では、信州との対決で久々の地元凱旋となる福澤の3ポイントラッシュが見られるかもポイント。3ポイントシュートの成功数では49本と、現在千葉ジェッツの#2富樫勇樹と並んで5位タイに位置しており、それをどこまで伸ばせるかも注目だ。

上昇ムードを持って年末年始の上位対決に乗り込むためにも、より多くの「勝ち味」は知っておきたい。「BUILD UP」の現在地を試される中盤戦が、まもなく幕を開ける。

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