【AFTER GAME】 2021-22 北海道戦(12/15)~リードした中で相手を寄り切れず。問われた『危機感』と『遂行力』~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

今シーズン初めて、ホームでの平日開催となったレバンガ北海道戦。キャプテン・#25平尾充庸が出場しない中で、B1昇格後初の連勝を目指したゲームは点の取り合いとなり、ロボッツは5点のリードを持って第4クォーターを迎える。ただ、ここでロボッツは一気にこのクォーターで32失点を喫し、あっという間に形勢が逆転。92-103で手痛い敗戦を喫してしまった。あの10分間にコート上で何が起きていたのか、できる限り探っていくことにする。

「福澤祭り」の裏で見え隠れした焦り

この日のロボッツはガード陣が好調に得点を積み重ねていった。平尾の代役として久々にスターター起用された#8多嶋朝飛が、ピックアンドロールからフローターを次々に沈めて、今シーズン最多となる12得点を挙げた一方で、この日の主役はなんといっても#2福澤晃平だった。第1クォーターからコンスタントにシュートが決まり、第2クォーターの終盤には北海道の#24デモン・ブルックスの壁を越えての3ポイントを決めるなど、乗りに乗っていた。第3クォーターを終えた段階で、こちらもシーズン最多となる18得点を稼ぎ出していた。

運命の第4クォーター、福澤がこの日一番の活躍を見せる。ピックアンドロールやハンドオフを効果的に用いると、相手に追いかけられた中でもシュートを放っていく。時にはファウルももらって「4点プレー」を完成させるなど、あっという間に10点を奪う。

だが、この間福澤以外に得点した者は居らず。北海道が#7中野司の速攻と、#21ショーン・ロングがインサイドを切り開いての得点がどんどんと決まるのとは対照的な展開だった。0-15のラン(連続得点)で一気に逆転を許したロボッツ。失った流れを取り戻すことは叶わなかった。リチャード・グレスマンHCは試合を振り返ってこんな言葉を残している。

「チームとしてディフェンスの『危機感』が十分ではなかったと思います。相手を突き放すようなディフェンスができれば良かったのですが、そこで危機感が足りませんでした。」

リードこそ奪っていたロボッツだが、この試合ではここぞという場面で北海道に食らいつかれ続けていた。この一本をしのぎきれば、という場面でブルックスや#25葛原大智に起死回生の3ポイントシュートを浴びてしまう。一方では少しでも緩んだところが出ると#11桜井良太にポゼッションを繋がれての失点もあった。スタッツ上で見るとセカンドチャンスポイントは19-8とリードしているものの、その8点の質が、ロボッツの課題ともいえるだろう。

一方で、最終局面では互いのディフェンス強度が勝負のあやを握った。北海道がロングやブルックス、中野などが代わる代わるペイントエリアに攻め込んだ一方で、その後のポゼッションで北海道はペイントエリアを閉めきっていた。ロボッツのインサイド陣がタフショットに挑むが、リバウンドを取れずに速攻を許すという、良くない連鎖が起きていた。第3クォーターまでは28-28とイーブンだったペイントエリアでの得点も、第4クォーターだけで6-24。このクォーターの残る得点はロボッツが先述した福澤の10得点、北海道がフリースローのみで8得点。本来的にはロボッツが形にすべきだった「2点を取る」のお株を奪われてしまった格好だった。

グレスマンHCは、残り5分を例にとってこうも語る。

「最終局面では北海道さんのディフェンスに危機感があったように感じました。92点を挙げましたが、ターンオーバーは減らさなくてはいけません。相手は非常に効率よくシュートを決め続けてきましたし、そこに改善点があると考えています。」

結果から見れば点の取り合いだったが、その中身には点差以上に重たい結果が待ち受けていた。ロボッツが勝ち進むためにはアップテンポなオフェンスと、それを実現するためのハードなディフェンス。それしかないことを改めて身を以て知る結果とも言えた。

できるを続ける難しさ

この試合は、両者の攻守にある程度傾向じみたものがあった。北海道はロボッツのピックアンドロールやハンドオフパスを追いかけた選手がファウルを連発。しっかりと形作った攻撃の中で、相手をはめ込んでいくことができていた。

一方では、特に前半で相手のインサイド陣に対して積極的なダブルチームで勝負をかける。そこからのキックアウトで確かに失点を重ねていたかもしれないが、前半を終えてロングを2点に抑え込むなど、一定の効果はあったと見ても良いだろう。

チームとして40分間守り続ける。シンプル極まりない話だが、40分間を終えて1点でも勝っていればその時点で勝負はこちらのものなのだ。コートに立っていた福澤は、最終局面でチームに一種の迷いがあったことを明かす。

「第3クォーターで少しはディフェンスが良くなったのですが、最後の10分で相手がどこを攻めてきているのかを僕らで考えられず、同じ所を何回もやられてしまったし、相手は相手で僕らのオフェンスを見極めて対策をしてきていました。その結果がこの点差になってしまったのかなと思います。もっと、どこでやられていて、それに対してどうディフェンスを変えるべきか、コートの中で話していかないとなりません。」

個々の能力では決して負けていない場面も多く見られるようになった今年のロボッツ。特にシーズンの入りでこそ苦しんでいた福澤も、コンスタントに得点を挙げられるようになった。そのような状況下で必要なのは、「後の先」とも言うべき、相手の動きに対しての能動的な仕掛けだろう。そして、その仕掛けをいつ発動し、相手を絡め取れるかという「判断力」の世界でもある。これを攻守に渡ってやりきれるようになれば、もっと勝利は手に届くところに近づいてくるだろう。

ただ、これが一発でいきなりできるようになるというものでもない。幾多の失敗を積み重ねた末に、ようやく「ここぞ」をつかめるようになるのだ。もう少し時間のかかるターンかもしれないが、これも「BUILD UP」の道半ばと思うほかない。福澤は自ら、判断力の重要性を戒めている。

「判断が悪かったらターンオーバーも生まれてしまいます。島根に負けてしまった時もそうですが、味方を活かす上でも判断力はもっと必要なんだと思います。」

一朝一夕ではできない問題だが、問題意識無くしては始まらない。リベンジのチャンスも多く残す中で、ロボッツが再びやり返せることを祈りたい。

最強集団と相見える

中2日で行われる次の試合は、アウェーでのアルバルク東京戦だ。A東京とレギュラーシーズンで激突するのは、当然Bリーグでは初めて。全身のNBL時代以来、5年8ヶ月ぶりの対戦となるが、Bリーグが誇る最強集団を相手にどんな戦いが繰り広げられるかが注目される。

12勝7敗でここまで東地区の5位に付けるA東京(4位の宇都宮ブレックスと勝敗は同じ)。その巨大戦力は一人一人上げればキリがないほどで、日本代表経験者のオールラウンダー、#22ライアン・ロシターや#24田中大貴など、スター選手が猛威を振るう。

突出した得点力こそ披露される場面がなかなかないものの、守りの中に勝機を見出してきている。今季ロシターが加入したことでビッグラインアップを敷くことが可能となり、#11セバスチャン・サイズや#53アレックス・カークがより守りに集中できるようになった効果は計り知れない。特にロシターはこれまで苦手とし続けていたフリースロー確率を今季74.6%と飛躍的に伸ばしてきており(昨季55.6%)、これが得点を下支えする。ロボッツとしては今節も根気強いマッチアップをし続ける必要があるだろう。

ロボッツのキーマンは、インサイドの守護神、#21エリック・ジェイコブセンだろう。チーム最長身のビッグマンでありながら、ゴール下からゴール下へと走りきるスピードも持ち合わせているジェイコブセン。ここのところ得点力が発揮できない試合も出てきているが、それでも彼を欠いた戦いは考えづらい部分がある。スペーシングやマッチアップで、オフボールの中でも戦ってくれる存在。こうした働きはスタッツになかなか表れないが、その献身性は誰もが評価するところだ。相手の強固なインサイド陣を、彼がどのように攻略していくか、楽しみにしていきたいところだ。

A東京とはここから年始までに一気に4試合を戦うことになる。いかに爪痕を残し、勝利をもぎ取るか。その遂行力次第で今後のリーグ戦を大きく変えることになる。「危機感と遂行力」の戦いで、勝利を期待したい。

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