【AFTER GAME】 2022-23 群馬戦(12/4~5)〜「VICTORY FACTORY」初勝利。チームをまとめる1勝になったか~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA 写真:茨城ロボッツ photo by ©IBARAKIROBOTS

群馬クレインサンダーズを迎えてのホームゲーム2連戦。共にオフェンシブな戦いを信条とするチームの対戦は、すさまじい点の取り合いに終始した。ロボッツはGAME1で終盤にオフェンスが鈍ったことで得点が停滞し、88-90で敗れたが、GAME2では相手の攻勢を耐えしのぎ、88-85で勝利。B1昇格以来最長となっていた連敗を「7」で止め、「VICTORY FACTORY」アダストリアみとアリーナでの今季初勝利を飾った。喜びを爆発させた選手たちの言葉を中心に振り返る。

Unselfishの再定義

B1昇格以来、大きな連敗自体はなかったロボッツ。実は今シーズン、11月に5戦全敗となるまで、「B1で月間未勝利」という状況にはなっていなかった。そして、GAME1での敗戦で、B1で初めての7連敗。選手たちはこのトンネルをどう抜け出そうとしていたのだろうか。#25平尾充庸は前節からの立て直しについて、こう振り返った。

「チームとしての方向性をブレさせずに、とは言っているものの、『アップテンポなバスケットって何だろう』というのを、多分みんなが疑問に思っていたのかなと思っていました。正直、僕自身もいろんな方に『元気がないよ』とか、声をかけていただく中で、僕自身、コートの中でも見極めをたくさんしていました。何が駄目か、どうしなきゃいけないかと考えたら、アップテンポだからとタフショットを打っていいということではないし、早く打ちたくなる部分もあるかもしれないけど、その中でやっぱりボールを触る回数や人数を増やして、よりフリーに打たせてあげることが自分たちのバスケットだろう、と。自分たちの原点に戻って、Unselfishなバスケットをしよう、というのを、コーチを始めとしてチーム全体で共有したんです。『ここをちゃんとしなきゃいけないよね』というところで1勝できたことで、自分たちがやるべきことが何かというところが見えたと思います」

前節・仙台89ERS戦でボールが停滞したロボッツだが、この2戦では大胆なボールムーブを常に続けていった。一見して無理筋のようなドライブを見せて相手を引きつけたかと思えば、オープンで待ち構えていた選手にポンとパスを出す。#8多嶋朝飛、#13中村功平、平尾など、ハンドラー陣が次々に見せ場を作った。逆に次はそうさせまいと、相手の間合いが少しでも緩くなれば、ライン際でも容赦なく突破をしかけ、相手のフォーメーションを崩していった。

「朝飛さんが僕にボールを渡してくれたあと、エリック選手とのピック&ロールで崩した…という場面がありました。朝飛さんは僕にピック&ロールをしてほしかったでしょうし、そこでエリックがしっかりスクリーンに入ってくれた。それがしっかりできたからこそ、エリックのところにもボールが渡ったわけです。共通理解ができていることが今節は大きかったと思っていて、誰が出ても、そういった役割ができるようにならないといけない。やっぱり1対1というのは、うちのバスケットではないので、動かした中でズレを作っていければ良いんじゃないかと思います」

また、ショットクロックがギリギリになったところでも、突くべきポイントを探し、積極的にシュートを打ちきった。前日はこういったシュートを群馬が沈める場面があったのだが、この日はお返しとばかりに多嶋が終盤に3ポイントシュートを見舞う。これも、ギリギリまでチャンスを探った中村からのパスだった。動いた先に、糸口はある。それを信じ続けた、チームとしてのオフェンスの成果だっただろう。

ようやくの勝利を得て

今までで、一番大きな声での「やったー!」だった。今シーズン初めて、ホームゲームのMVPを獲得した#11チェハーレス・タプスコットは、ヒーローインタビューで一際喜びを露わにした。改めて記者会見で勝利の瞬間について尋ねると、こう振り返る。

「ここ最近の連敗をついに、やっと脱出できたし、また全員が本当にエキサイトした勝利だったと思います。体を使ってタフに行くこと、アグレッシブに行くことをしっかりコート上で見せられたと思います。昨日よりもゴールに向けてのアタックもありましたし、最終的にリバウンドの数でも勝てましたし、試合を通してUnselfishなバスケットボールを続けることができました。それが自分の勝ちにつながったと思います。」

今季は開幕から長時間の出場が続いているタプスコット。プレータイムが30分を切ったのは、第4クォーターでコートに立たなかった、11月26日のアルバルク東京戦のみという状況で、群馬戦の2試合に限って言えば、コートを離れた時間はGAME2の第1クォーター終盤、わずか36秒のことだった。一方で、GAME2の終盤には#21エリック・ジェイコブセンが個人ファウル5回に達して退場となってしまったため、攻守に渡ってより強い負担がかかることになる。それでも、タプスコットは彼なりの基本に立ち返って、連敗が続くチームの中でもう一度自らを奮い立たせた。

「昨日よりも、よりアグレッシブにやりたいと思って試合に臨みました。昨日はそこが足りなかったと思ってしまったので、個人的なアジャストとして今日は思い切っていくことにしました。アタックしていく中で、相手のディフェンスを引き付けることができればパスをするし、来なければ行く、というのをやりきれましたね」

上位を狙うチームとの対戦が続く12月のスケジュール。東地区の上位固めを狙っていたであろう群馬から1勝をもぎ取ったことで、ロボッツとしてもここからの「反抗」へのエネルギーとしたいところ。次節以降に向けては、こんなコメントを残して会見を締めくくった。

「積み重ねたこと、またUnselfishなバスケットボールを続けることを大切にしたいです。そうすることで、対戦相手にとっては自分たちを止めるのが難しくなるはずです。自分たちにはオフェンスに長けた選手たちが揃っている、ユニークなチームだと思うので、準備をして守る、というのは相手チームにとってはタフなことだと思います。今日のように、ハイスコアで良いゲームを、引き続きやれたらいいと思います」

不敵な男が、また一人

GAME2を終えて、タプスコットに続いてマイクを持ったのが、#17山口颯斗だった。一言、挨拶を促されると、「みんなブラボー…ブラボー…ブラボー!!」と、ちょうど今の日本を盛り上げている、サッカー男子日本代表・長友佑都の言葉を拝借してアリーナを沸かせた。言い出す直前に、少しだけはにかんだように見えたのは彼の愛嬌だろう。

一方でプレーを切り取ると、この日の山口はとにかくギラついていた。ミスマッチを突いて群馬の#7五十嵐圭をポストアップ(体を当ててゴール下へ攻め込むプレー)で追いやって攻略したかと思えば、その後には帰化選手の#3マイケル・パーカーや日本代表経験もあるビッグマン・#11野本建吾との1on1を振り切ってシュートを決めていく。前日、出場時間が今シーズン初めて10分を切り、無得点に終わったのを自ら晴らしに行くような動きを随所で見せた。

「1on1はチームとしての狙いじゃない…っていうわけではなくて、むしろ僕はそれが武器だと思っているし、ポストアップについては普段から狙ってほしいと言われているんです。非常に良い形で行けたのかなと思っています」

その裏で、緊迫した試合の中で驚くような仕草も見られた。第4クォーターの終了間際、群馬の#15アキ・チェンバースの3ポイントシュートが外れ、リバウンドを獲った山口がファウルを受ける。群馬のチームファウルが貯まっていたため、ファウルを受けた山口のフリースローとなるのだが、フリースローラインに向かう途中、平尾や#29鶴巻啓太と話すような仕草を見せた山口は、その場でニヤリと笑みを浮かべたのだ。点差は1点、試合の残り時間は2.3秒。彼に託された2本のフリースローが持つ重要度は、あまりにも大きかった。ただ、言われた当人の記憶はやや曖昧だったようで…。

「…何を言われたんだったかな。多分『外しても良いよ』とかだったと思います。気が楽になる言葉だったな、っていうのは覚えているんですけど。言葉をかけられて、自然に笑顔が出たんだと思います。言葉が良かったんだと思います(笑)。僕は、実はフリースローが昔から上手じゃなくて、大学時代にはフリースローを落として負けたこともあったんです。そこからフリースローを決める、というときは気持ちだけで打っているんです。今日は本当にそういうマインドでやってたんで、外さないかなと思ってました」

2本決まるか決まらないかで、群馬が選択できたプレーはかなり変わる。仮に2本とも落としていたなら1点差ゆえに「2点でOK」という突破を狙うだろうし、2本とも決まったからこそ「3ポイントでなくてはダメ」という状況を生んだ。

その後のラストプレーで、群馬の#4トレイ・ジョーンズが同点を狙って3ポイントシュートを放つが、決して万全な体勢からではなかった。山口はシュートが外れたとみて、放たれたボールを見送りながら真っ先にガッツポーズを作った。

時に「強心臓」的なキャラを見せる選手を挙げるとするならば、これまでのロボッツでは鶴巻や中村が目立ってきた。しかし、この日の山口の仕草で、ロボッツの次なる「不敵な男」は、間違いなく彼であると、思わずにはいられなかった。

「夢のアリーナ」へ初見参

次節はアウェーゲーム。対戦相手は西地区の上位常連、琉球ゴールデンキングスだ。昨シーズンのB1では対戦がなかったため、これがBリーグでの初対戦となる。また、試合会場は「夢のアリーナ」と名高い沖縄アリーナ。もちろん、ロボッツが公式戦で訪れるのは初めてのことだ。強烈な個の能力が絡み合うチームバスケット、というスタイルでB1西地区を5連覇中。今季もここまで西地区の首位を走っている。

広いシュートレンジを武器に得点を量産する#14岸本隆一や#30今村佳太、ケガから復帰した#24田代直希や#88牧隼利がいれば、#1ジョシュ・ダンカン、#7アレン・ダーラム、#45ジャック・クーリーの外国籍トリオなど、チーム全体としての厚みはBリーグでも一段抜けたレベルにある。それをまとめるのは、bjリーグ時代も琉球の指揮を執った桶谷大HC。仙台89ERSのHC時代には、ロボッツと度々激闘を繰り広げたことも記憶に新しい。昨季、離脱者が続出する中でもとにかく負けないバスケットを築き上げた琉球を相手に、どう挑むかが注目される。

ロボッツとしては、仙台時代の指揮官である桶谷HCとの再会となるジェイコブセンに注目。特にクーリーやダンカンとの肉弾戦が長時間続くと予想されるだけに、圧力をどう止めて、一方のオフェンスでどう攻略するか。止まってしまってはまともにプレッシャーを受けることになりうるだけに、動きとズレを意識して得点したいところ。さらには群馬戦のGAME2のように、選手全員がインサイド攻略への動きを見せ続けることで、相手の的を散らしていく…ということが求められるだろう。

リーグ屈指の強敵との対戦であることは間違いない。ただ、勝機は往々にして訪れるもの。糸口を見つけたら逃がさない、というゲームを演じて、勝利を狙ってほしいところだ。

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