【AFTER GAME】 2022-23 琉球戦(12/10~11)〜西の雄との熱戦。チームとしての収穫を探る~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

昨季、対戦が無かった琉球ゴールデンキングスとの2連戦。ロボッツは沖縄アリーナでの初試合に臨む中、GAME1でシュートタッチの良さから糸口を見出す。最終盤にインサイドをこじ開けられる形となり、オーバータイムに進んだものの、琉球に押し切られ、95-87で敗戦。GAME2では主力メンバーに疲れが見えたこともあって一方的な展開を許し、94-63とされ、このカードは連敗となった。初めて相見えた強豪との対戦で見えたものもあるはず。この連戦を改めて振り返っていく。

インサイドを動いて分断する

ロボッツはGAME1の第2クォーターでゾーンディフェンスを多用し、琉球のオフェンスを一時的に押しとどめた。もともと#1ジョシュ・ダンカン、#7アレン・ダーラム、#45ジャック・クーリーの3人が強固な布陣を形成し、そこへ向けて日本人選手が意表を突くパスを送り込んでくる。単純に相対するには難しい中で、一つ手を打ってきた。その意図について、リチャード・グレスマンHCはこう語る。

「第1クォーター、大きく悪いことがあったわけではなかったのですが、琉球さんが27得点を奪った、ということもあって『違った形を見せたい』ということからゾーンディフェンスを採用しました。結果として、前半は相手のセカンドチャンスポイント(オフェンスリバウンドからの得点)やペイントエリアでの失点を抑えることができました」

この試合でロボッツが採用した、前に2人、後ろに3人という「2-3」と呼ばれるゾーンにおいては、ゾーンの列の間にテンポ良くボールを通すことが、一つの攻略法となる。実際、この試合でもダンカンがそこに位置取って一時的に受け手となったことで、琉球はボールの流動性を確保していった。だが、この状況では琉球の絶対的センターであるクーリーがゴール下を張るアドバンテージを作れない。さらにはゴール下まで潜り込んでのパス、というチャンスメイクも簡単にはできなくなる。ロボッツは、ディフェンスから琉球の絶対的な長所を消していったのだ。

一方で、オフェンスにおいては度々動きの中で琉球のインサイドを攻略し続けていった。特に#21エリック・ジェイコブセンが縦横の揺さぶりをかけてクーリーとの間合いを制して、ゴール下へと向かっていく。単純な押し合いでは分が悪い相手だからこそ、動きで崩していく。きっちり弱点を突いたこと、さらにこの試合では3ポイントシュートも決まったことで、相手の間合いにくさびを打ち込んだ。さらに、チーム全体で6選手が二桁得点を記録するなど、アップテンポの爪痕を残していった。グレスマンHCはさらにこう話す。

「バランスが取れた攻撃だったのは素晴らしかったと思いますし、得点が伸びたのは、ボールがよく動いていたからだと思います。ただ、琉球さんがそこからディフェンスでテンポアップをしたこともあって、こちらのオフェンスが止まってしまいました」

チームとして目指したアップテンポの形が随所に見られたからこその熱戦。ただ、最後はディフェンスでのギアをもう一段持ち、第4クォーター以降は全てペイントエリアだけで得点を狙うなど、インサイドでの我慢強い勝負を選んだ琉球に軍配が上がった。あくまでチャレンジャーであるロボッツとしては、相手の出方を窺うのではなく、先手を取って走りきれるか、というゲームに持ち込んでいただけに、悔しさの残る結末となっただろう。

信じた結果が見えた2人

GAME2、前日の戦いを経て、改めてディフェンスの根本をセットし直した琉球。ロボッツはオフェンシブな戦いに持ち込むことができず、試合は序盤から琉球が主導権を握った。

その中で、ベンチから登場した#2福澤晃平や#13中村功平が元気の良さを見せて加点をしていく。中村は10月に行われた横浜ビー・コルセアーズ戦以来の2桁得点を挙げ、シュートの思い切りの良さを見せていった。ここ数試合、プレーの波が大きい状態が続いていたのだが、この2試合の中村には心強さが戻ってきていた。

「スターティング5から外れたり、プレータイムが減ったりしたということもあって、いつもだったら自信を持っていたはずの部分も消極的になってしまったところがありました。この2試合に関して言うと、『もう1回、自分を信じてやろう』と決めて行きました。アタックにしても、3ポイントにしても、決められたのが良かったと思います」

また、GAME2では前半から#33林翔太郎が出番を得ていく。第4クォーターには3ポイントシュートを2本決め、今シーズンの初得点を挙げた。ベンチから戦況を見つめることも多い林だが、この日のチームの流れについてはこうコメントを残す。

「相手のシュートが確率高く決まっていたからこそ、早い展開での攻撃を出せなかったイメージがあります。相手陣内で組み立てるというのが続いてしまい、そうすると琉球さんもディフェンスが良いので、少しずつボールを押し上げられてしまったことで、なかなか得点が伸びなかったと思います。チームの中に『大事に行こう』としすぎていたような印象があって、ベンチで見ていると一つシュートが打てそうなタイミングを逃してしまって、後手に回ってしまっていたようでした」

ある意味、林のシュートには、そうしたチームの重さを振り払うような部分もあったはず。本人にとっても、待ちに待った今季初得点だった。

「個人的にもすごくキツいシーズンの始まりでした。ようやく、チームメイトになれたかなという実感が多少なりともあります。シュートにしてもリバウンドにしても、シンプルな役割こそ僕の仕事だと思っているし、シュートを外してしまっても、アツさん(平尾)や朝飛さんを始めとして、チームメイトから『打たないともったいない』とまで声を掛けてもらっていました。今日は良かったと、自分を褒めつつ、これをスタンダードに続けていきたいなと思いました」

グレスマンHCも「ベンチメンバーの活躍があったことはうれしいですが、コーチとしてはそれ以上の期待を持っています。スタンダードをもっと高いところに置けるようにしていきたいです」と、ここで止まらないような奮起を求める。琉球が2日間に渡って発揮した、組織としての厚みを目にした今、チーム全体としての基準をレベルアップさせていくことが、改めて必要だと分かったはず。点差の付いたゲームとなってしまったが、1年後やその先に向けてのベンチマークを、しっかりとチームに刻み込んだ試合となったのではないだろうか。

西へ東へ。水曜ホームゲームで強豪と再戦

中2日で行われる次戦はホームゲーム。対戦相手は先月のリーグ戦でも対戦した東地区2位のアルバルク東京だ。12月に入って4連勝中のA東京を相手に、今季唯一のホームでの対戦となる。前回のリーグ戦、そして天皇杯での対戦を含めれば3連敗中。さらに言えば昨季に続いて勝利を果たせていない相手でもあるだけに、ホームで一矢報いたい戦いとなるだろう。

A東京は、現在#33笹倉怜寿が負傷離脱し、インジュアリーリストに入っている。この事態を受けて、昨季まで島根や新潟などに所属し、今季はA東京の練習生となっていた#3岡本飛竜が新たにチームの一員となっている。前回対戦で爆発した#2藤永佳昭も含めて、相手の懐に潜り込むタイプのディフェンダーが2人いる、というのは守りからの戦いを志向するA東京らしさが出ているとも言えそうだ。

この他、前回対戦で不在だった#8吉井裕鷹も戦線に復帰済み。あの手この手で絡め取ろうとするいやらしさに対して、時に激しく、時にいなすようなオフェンスを組み立てていかないと、相手の術中にはまりかねない。

ロボッツとしてはボールハンドラーの選択肢は多ければ多いほど良い。特に琉球戦GAME2で疲労の色を隠せなかったタプスコットや平尾に加えた選択肢がほしいところ。琉球戦で見せ場を作っていた福澤や中村、あるいは前回のA東京戦でらしさを見せていた#1トーマス・ケネディが攻撃の組み立てから絡めるようになれば、チームとしてのボールの流動性を確保していけるはず。それが増えれば、シュートチャンスもより多く増えていくことだろう。

年の瀬も近づく水戸での一戦。アップテンポなオフェンスか、堅実なディフェンスか。壮絶な火花の散らし合いを期待したい。

おすすめの記事